2018年10月30日更新

『君の名は。』を深く知るための8つの考察と解説【ネタバレ注意】

(C)2016「君の名は。」製作委員会

公開から2週間で100億円の興行収入を叩き出した新海誠監督によるアニメ映画『君の名は。』をより深く楽しむための考察・解説をまとめました。これを読めば理解が深まることは間違いなし。もう一度観たくなることを保証します!

解説・考察を知れば『君の名は。』はもっと面白くなる!

2016年8月26日に公開され、わずか2週間で100億円の興行収入を叩き出した、新海誠監督によるアニメ映画『君の名は。』。あなたは本作の魅力についてどれぐらい理解していますか? この記事では、各シーンに隠された知られざるトリビアや謎を、ネタバレ付きで紹介していきます。このストーリーの緻密さを知ったら、もっと本作の虜になるはず!

あらすじ・声優についてのおさらいはこちらから!

1.『君の名は。』の原点はCMだった?【Z会CM『クロスロード』との関係性】

2014年に新海監督が製作した『クロスロード』という通信教育会社Z会の120秒ほどのCMがあります。 キャラクターデザインは『君の名は。』と同じ田中将賀で、東京に住む少年と離島に住む少女が受験という同じ目標に向かって奮闘するという内容です。二人は東京でもしかしたら出会うかもしれない、ということを匂わせる終わり方をしています。 新海監督はこのCMに手応えを感じ、この物語を押し広げられるのではないかと考えたそうです。そして、「出会う可能性の前日にいる男女」という設定は『君の名は。』でも大きなテーマとなっています。

2. 過去作へのオマージュ

本作で一気に知名度が上がった新海監督ですが、今までも何作もアニメ作品を作ってきました。そんな今までのファンが「あ!これって!」と思うような過去作品へのオマージュがいくつかあるので、紹介します。

電車内の吊り広告に!『クロスロード』

1で本作と『クロスロード』の関係性を説明しましたが、本編中何度も描かれる電車内のシーンの一つで、吊り広告にZ会の広告があるそうです。 新海監督の作品の細部へのこだわりが感じられますね。

足元を映しているカットの多さ!これって『彼女と彼女の猫』?

1999年に新海監督は、女性に飼われている猫を主人公とした『彼女と彼女の猫』という作品を制作しました。その後、何度も新海監督の短編映画では猫が登場します。2016年にはオリジナルストーリー『彼女と彼女の猫 -Everything Flows-』として新たにテレビで放送されました。 『君の名は。』の中で、襖戸を開けるときや扉を開けるとき、異様に下から足元だけを映すカットが何回か入ります。このカットは猫の視点を意識したものではないか、とファンの間では考えられています。 実際に猫の目線ぐらいの高さからのカットになっているので、もう一度見る人は是非チェックしてみてください!

あ、このコンビニは!『秒速5センチメートル』

初恋を乗り越えた女と乗り越えられない男を描いた連作短編映画『秒速5センチメートル』の第2話『コスモナウト』では、あるコンビニが登場します。 その鹿児島県種子島の「アイショップ」というコンビニが、本編では糸守町にある9時に閉まってしまうコンビニとして三葉たちが利用しています。

ユキちゃん先生、そしてタカオが再登場?『言の葉の庭』

2013年に公開された『君の名は。』の前作にあたる『言の葉の庭』では、雨の日しか会えない女性と男子高校生の淡い恋心を描かれています。本編ではその女性であるユキノ先生が主人公・三葉の通う高校の古文の先生として登場します。 このユキノ先生の再登場に関して、新海監督は自分の作品を見てくれているファンにサービスがしたいと思って登場させたそうです。 また、『君の名は。』は新海監督の作品が初めての人に向けたものですが、今までのファンにも楽しめるシーンを盛り込みたかったともコメントしていました。 他の細かいオマージュも新海監督なりのファンサービスだったのでしょう。 ちなみに、もう一度花澤香菜に会いたかったから出演させたのか?というファンの冗談まじりの質問に対しては、「半分くらいはそうですね」と冗談交じりに返していたそうです。

また、「タカオ」こと秋月孝雄も本作に登場していました。しかし、これはコマ送りをしないとわからないレベル。緻密すぎて、監督自身がネタバレするまで誰もわからなかったでしょう。 そのタカオの登場とは、瀧が乗っていた電車が代々木駅に停車する直前のカットでのこと。このカットでは、代々木駅のホームに一瞬だけ三葉の後ろ姿が見えるのですが、そこにはタカオの横顔もほんのわずかに映っているのです。

3. 『君の名は。』での彗星と宮水家の関係性は?【ここから重大ネタバレあり】

1200年おきに訪れる彗星落下

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『君の名は。』では彗星落下が大きなストーリーのキーポイントとなっています。本編では明確には描かれませんでしたが、すでに糸守町には二回彗星が落下していると考えられます。 1度目は御神体がある山頂の近く、2度目は糸守湖で、それぞれに大きなクレーターがあります。このことから、本編の世界では1200年おきに彗星落下が起きていることがわかります。 実はこの1200年という周期は、東日本大震災の地震の周期と同じなのです。また新海監督は、東日本大震災の自身の作品への影響を明言しています。本編中において災害というテーマに対しては、「災害という設定は、架空の物語の中に“確からしさ”を感じさせるための装置である」と語っていました。

糸守町を守るための宮水一族

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男女が入れ替わる、という宮水家の特異体質は、この彗星落下を防ぐためです。本編では、「繭五郎の大火」と呼ばれる火事で過去の彗星落下などを記録した書物が燃えてしまいますが、最後の入れ替わりのキーアイテムになった口噛み酒や舞踊などは、宮水家が代々受け継いでいます。 ちなみに、大火同様、スマートフォンで三葉がつけていた日記という記録も一瞬で消えてしまいますが、瀧という人が覚えています。そんな記録の脆さと人の記憶や感覚の強さも、本作で描かれている重要なテーマだといえるでしょう。

宮水家の女の能力

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宮水家一族が代々入れかわりを経験してきたことは作中でも明らかになっていますが、『君の名は。』小説版アナザーサイドストーリーでは、三葉の母親である二葉と父親であるトシキが以前入れかわっていた、という描写があります。 実は二葉の死は無駄なものではなく、二葉の死があったからこそトシキは町長になり、彗星落下の当日に町民に避難指示を出すことができたのです。使命が濃く受け継がれる宮水の一族の運命が強く感じられる設定になっています。 ちなみに、本編中で三葉と瀧の入れ替わりに実際に気づいたのは、トシキと一葉おばあちゃんだけでした。これはこの二人だけが、あの時点の世界で入れかわりを経験していたからだと考えられます。

4. 『君の名は。』というタイトルと和歌との関係

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前作『言の葉の庭』でも和歌が重要な要素でしたが、本作でも重要な役割を担っていました。本編中で重要な意味を持つ「黄昏時」という言葉は、和歌から由来しているのです。

「誰そ彼(たそかれ)と われをな問ひそ 九月(ながつき)の 露に濡れつつ君待つ我そ」
引用:万葉集

意味は「誰、あれは、と私に尋ねないでください。あれは9月の露に濡れながら君を待つ私なのですから。」というものです。「黄昏時」というものは夕方を指し、妖(あやかし)やこの世のものではないものと出会う時間でもあります。 相手の姿が見えにくくなる、夕方のその様子から「誰そ彼」という言葉になったのです。本編において、瀧がスケッチブックに記す「お前は誰だ?」という言葉にもつながりますね。 また映画が公開された日時もこの和歌を意識しているため、夏休みではなく、9月の少し前になりました。

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「思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば 覚めざらましを」
引用:小野小町/古今和歌集

また、新海監督は、古今和歌集に収められた小野小町による上記の歌から着想を得たとコメントしています。 この和歌は「あなたのことを思いながら眠ったからあなたが出てきたのだろうか、夢と知っていたならば目を覚まさなかったのに」という意味であり、『君の名は。』の夢のモチーフとなっています。 ちなみに『男女とりかえやば物語』や『夢と知りせば』といった、古典「とりかへばや物語」を意識したタイトルも候補として挙がっていました。前作『言の葉の庭』でも、和歌の教師であるユキノがヒロインであったように、新海監督の和歌への強いこだわりが本作にも現れているということでしょう。

5. 3年のズレを表す描写って?そして互いが時間のズレに気がつかない原因とは……

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3年も時間がズレていたという事実は、「入れかわり」というインパクトの大きい出来事の陰に隠れており、その事実が明かされるまでに私たちが気付くのは至難の技。 しかし、よくよく見れば3年の時間のズレを暗に示している描写が組み込まれています。 例えば、入れかわり時に三葉(中は瀧)が休日の朝に制服を着てしまったり、奥寺先輩と瀧が休日にするデートが気になって三葉は平日に学校を休んで行ったりしたことが挙げられます。 中でも最大のヒントとなるのが、「デートが終わる頃には彗星が見えるね」と三葉が日記に残していたこと、そしてそのまま音信不通になってしまったことでしょう。また、使っているスマートフォンの機種が違うこともポイントだったとか。

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そこで観客が疑問に思うことは、「瀧も三葉も、曜日や社会の様子のズレで気づくはずだ」ということだと思います。しかし、このことに対する真相は公式からは発表されておらず、未だ謎のまま。 そもそもお互いがズレに気がついてしまうと物語が展開しないので、触れてはならない疑問なのかもしれません。もし理由があるとすれば、お互い違和感を感じていたものの、入れ替わりという大きな事件で手一杯だったため、無意識的に見て見ぬ振りをしていた……と考えるのが無難だと思われます。

6. 「三葉」という名前の由来は?

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ヒロインである三葉の名前の由来は新海誠監督がツイッターで、

とコメントしています。

公式から発表はされてはいませんが、特徴や立地などの特徴から、三葉が通う高校のモデルとなったのは「長野県諏訪二葉高等学校」ではないかとされています。この「二葉」という高校の名前も、三葉という名前の間接的な由来になっているのかもしれません。 また、本作では「3」という数字が頻繁に登場します。瀧と三葉の年齢差が3歳なこと、時間軸のズレが3年なこと、三葉を探しに行くメンバー構成が3人だったり、仲の良いメンバーが3人組なことなど、「3」という数字との強い繋がりがみられます。 しかし実際に何らかの意図があるのか、はたまた偶然なのかは未だに謎のままです。

7. なぜ、入れ替わった2人は山頂で会うことができたのか?

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御神体が祀ってある場所へ向かう三葉(中身は瀧)と、御神体を前に目を覚ました瀧(中身は三葉)。彼らは、その山頂で会うことになります。 しかし、三葉と瀧は本来違う世界を生きているため、存在を感じることはできても、お互いの姿を見ることはできません。ところが、「片割れ時」になった瞬間、彼らは本来の姿で会うことができたのです。 なぜ、「片割れ時」だけお互いの姿を見ることができたのでしょうか。 それは、三葉のおばあちゃんのセリフから読み解くことができます。「片割れ時」とは、黄昏時という言葉の方言、そして輪郭がぼやける時間帯であり、人ならざる者に出会う時間だとおばあちゃんは語っています。 つまり、「片割れ時」だけは生きていないはずの三葉と生きている瀧との世界の区別が曖昧になり、互いの姿が見えるようになるのです。

また、月の形でも2人のすれ違いや出会いが表現されています。 例えば、瀧が三葉を探している時の夜空は半月で、さらに着用している服には「HALF MOON」という文字と半月のマークが付いています。 このことは、片方(三葉)がいない世界を暗に示しています。

8. 入れ替わりが発動する条件とは?

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三葉と瀧が入れ替わるためには条件があります。それは、瀧が組紐を身につけた状態で互いが睡眠状態に陥り、夢をみること。 夢が入れ替わりのための引き金となるのですが、組紐を身につけないと二人が入れ替わることはありません。なぜなら、組紐とは「結び」の一種だからです。 「結び」という言葉については、作中でおばあちゃんが「糸を繋げることも結び。人を繋げることも結び。時間が流れることも結び。全部神様の力や」、「水でも米でも酒でも、人の身体に入ったもんが、魂と結びつくこともまた結び」と語っています。 つまり「結び」とは、「私たちの人生を繋げるあらゆるもの」ということであり、「結び」がないと入れ替わることができないのです。 また、中盤に三葉が亡くなったことで入れ替われなくなってしまいますが、口噛み酒を飲むことで再び入れ替わりを発動させることができました。口噛み酒は三葉の半身であり「結び」の一つでもあります。 つまり、瀧は口噛み酒を飲むことによって、現代に残っていた三葉の魂との「結び」を得た、ということになります。

考察・解説を読んで『君の名は。』がより好きになること間違いなし!

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ストーリーや設定が緻密に作り込まれている本作は、1度では満足いくまで味わうことができないものです。 この考察・解説を頭の片隅に置いて2度目の鑑賞をすれば、1度目とは違った新しい『君の名は。』がそこにはあるかもしれません。