©Daniel Modjesch/picture alliance / SuccoMedia //Newscom/Zeta Image

ガス・ヴァン・サントが監督した、心に刻まれる10の映画たち

2018年1月12日更新

人間の感情を繊細に描き、深く心に残る作品を創り出す監督ガス・ヴァン・サント。重厚でダウナーな作品から心暖まる感動の作品まで、彼を知らない方にも、知っている方にも是非見ていただきたい映画を10作品、ご紹介します。

ガス・ヴァン・サントのプロフィール

ガス・ヴァン・サント

出典: www.asahi.com

1952年7月24日生まれ、アメリカのルイビル州出身の映画監督です。コマーシャル制作の仕事を経て1985年にゲイの青年の物語『マラノーチェ』で映画監督デビュー。1989年の『ドラッグストア・カウボーイ』では、批評家協会賞最優秀脚本賞を受賞して注目を集めました。

映画以外では、ロックバンド”レッド・ホット・チリ・ペッパーズ”やシンガーソングライター”エルトン・ジョン”のミュージックビデオを手掛け、1997年には小説も出版するなど、幅広い分野で活躍する人物でもあります。

1,ガス・ヴァン・サント監督デビュー作、美しき最悪の夜(1985)

マラノーチェ

出典: eiga.com

1985年の映画でガス・ヴァン・サントのデビュー作となっています。ティム・ストリーター演じるゲイの青年ウォルトは、ある日、メキシコからの不法移民ジョニー(ダグ・タティーヤ)に一目惚れ。

ウォルトはジョニーにアタックしますが、英語が通じない事やゲイではない事からジョニーには受け入れられずに落ち込み、仲間の1人ロベルトと関係を持つようになります。

この映画は1986年にベルリン国際映画祭で上映され、『ドラッグストア・カウボーイ』『マイ・プライベート・アイダホ』と並んで「ポートランド三部作」といわれています。

2,麻薬の恐ろしさと魅力を映像で描く(1989)

ドラッグストア・カウボーイ

35ミリ映画での監督デビュー作で、麻薬の魅力と恐ろしさを描いた作品です。麻薬に溺れる主人公が、仲間の死をきっかけに更生を図ろうとする本作品では、麻薬が及ぼす快感や恐怖を映像で表現しています。

この映画でガス・ヴァン・サントは全米映画批評家協会賞の監督賞と脚本賞を受賞しており、主人公・ボブ・ヒューズを演じたマット・ディロンもインディペンデント・スピリット賞の男優賞を受賞しています。

3,美少年同士の愛と友情の物語(1991)

885fdc8b182742135adaaf9a3b0a08bf-635×360

HMworldtraveller リヴァー・フェニックスとキアヌ・リーブスが出ているだけで眼福な一方で、ひどく複雑な気持ちにさせられる映画でもある。

スコット(キアヌ)とマイク(リヴァー)。共に仲間達と体を売って日銭を稼ぐ生活をしているが、2人の生い立ち, バックグラウンドはまるで違う。スコットにとってこの生活は必然性があるわけではなく市長である父親への反抗心から家を飛び出した、言わば若気の至りに過ぎない。やがて結婚相手を見つけ男娼生活から足を洗い元のポジションに収まる。そんなスコットに比べ、近親相姦により生まれ母親に捨てられナルコレプシーの持病があるマイクには他に行くところがあるわけじゃない。

社会的な意味での”持つ者” と”持たざる者” の対比と、その境遇の違いの前に 実を結ぶことのなかったマイクの想い。画面を分かつように続くアイダホの田舎道とその上を流れ行く雲が、真っ直ぐで一途な気持ちと 時が来れば過去をふりほどいて違う場所へと移るマイクとスコットのようだった。

焚き火のシーン、2人バイクに乗るシーン、葬儀の際に一瞬交わったかに見える2人のまなざし。なんとなく刹那的なその佇まいが理由無き感傷を煽る。

設定や やや冗長なストーリー展開など、正直に言うとあまり好きな映画とは言えない。が、それでも、ナルコレプシーと自分のアイデンティティに苦しみ 道に横たわる本作のマイクと、夭折したリヴァー・フェニックスその人が重なり、何とも言えない苦味と酸味と儚さを後に残していく印象深い1本であることには違いない。

売春、同性愛、ドラッグ、近親相関などを組み込んだ作品です。マイクとスコットは男娼仲間で、少年を好んで買う男性に身体を売って日銭を稼いでいました。マイクには、突発的に睡眠が襲う、ナルコレプシーという持病があり、仕事中に発作に襲われた時、彼を助けたのがスコットでした。

スコットは何不自由なく暮らしていましたが、上っ面だけの家庭に嫌気が差して家を飛び出し、行方不明の母を探す決というマイクと共に旅立ちます。しかし、共に行動するうちに友情や愛情、背景にある人間関係が複雑に絡み合い、2人の進む道は徐々に別れてしまいます。

自分とは何か、というアイデンティティの模索をテーマとした本作品。マイクにはリヴァー・フェニックス、スコットにはキアヌ・リーブスがキャスティングされ、美少年の共演としても話題になりました。

4,ニコール・キッドマンの好演が光る映画(1995)

誘う女

Satoko_Suzuki ニコール・キッドマンがエッジの効いた作品に出始めた頃の野心作。監督のガス・ヴァン・サントにとっても、サスペンスタッチで他と作風が違った野心作のように思います。私はニコールではなく、リバーの弟のホアキンが観たくて(今やもう、そんな形容詞は無用ですが)、観に行った記憶が。 期待していなかったニコールがすごく良かったです。「トム・クルーズの恋人」でしかなかったあの頃、、確実に一人の俳優として認識しました。

ニコール・キッドマン主演のサスペンススリラーで、実際に起きた事件を題材にした小説『誘惑』を映像化した作品です。ニコール演じる主人公・スザーン・ストーンは天気番組のキャスターで、自己顕示欲の強い女性。とにかくテレビで有名になる事が人生において大切だと信じており、もっと有名になろうと奮闘します。

しかし、自分に理解を示さない夫に苛々を募らせたスザーンは高校生を唆して夫を殺害。それを知った夫の両親が、今度はスザーンを殺そうとします。強烈な主人公スザーンと、彼女に振り回される人々を描いており、ブラックコメディの要素も加わっています。

ニコール・キッドマンはこの作品でゴールデングローブ最優秀主演女優賞を受賞しているのですが、クールビューティーのイメージが強い彼女が、思い込みが激しく、とても知的とはいいがたい女性を演じており、ニコールの新たな一面を見られる作品でもあります。

5,孤独な天才少年と、最愛の妻を失った心理学者(1997)

グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち

出典: www.hulu.jp
edinburghttt 掲示板にある問題を天才ウィルが簡単に解いてしまうシーン、数学を専門とするショーンがウィルの才能を羨みながらも尊敬するシーン、最後の掛け合いのシーンはとても印象的。虐待を受けた子供時代をひきづるウィル役マッドデイモンの演技はさすが。不良友達がいいやつすぎて辛い。心痛いが感動する名作。

主演であるロビン・ウィリアムズとマット・デイモンが脚本を担当した、孤独な少年と心理学者の心の交流を描いた物語です。幼少期に受けた虐待から心に傷を持つ、天才少年ウィル(マット・デイモン)。そんな彼の非凡な才能に気がついた数学科の教授・ジェラルド・ランボーは、ウィルを更正しようと試みます。

しかし、ウィルは周囲をあざ笑うばかりで、困り果てたランボーは、同級生の心理学者ショーン(ロビン・ウィリアムズ)をウィルに会わる事に。最初はショーンをバカにしていたウィルでしたが、妻を亡くした過去を持つショーンの心の傷を知り、徐々に心を開くようになります。

本作品は1997年度米アカデミー賞9部門にノミネートされ、マット・デイモンはアカデミー賞やゴールデングローブ賞において脚本賞を受賞しています。

6,銃乱射事件をを元にした衝撃の作品(2003)

エレファント

o325 コロンバイン高校銃乱射事件をテーマにした実話ベースの映画。 語りは無く、ただただ淡々とした日常が描かれている、理不尽なまでな圧倒的暴力で壊される。ただ加害者側も淡々としているそこに最も恐怖を覚えました。自分もまた被害者にも加害者にもなりうる世の中だからこそなにが正しい何てことは言えない。 映像が美しいのもまた何とも言えないですね。

同じ頃の映画で『ボウリング・フォー・コロンバイン』と比較されているようなのでソチラも観てみたいと思います。

1999年にコロラドで実際にあった、高校生による銃乱射事件を元にした映画となっており、ドキュメンタリーとしての要素も含む作品です。映画のキャッチコピーは「キスも知らない17歳が銃の撃ち方は知っている」で、凄惨な事件をテーマにした事から注目された作品です。

本作品では惨劇となった学校の日常風景を追いながら、犯人である2人の少年が何故このような犯罪に至ったのか、という経緯を辿ります。生徒役は実際の高校をオーディションで選び、彼らの日常生活や体験を組み込むことで、より強いリアリティ感を出しています。

この映画は高く評価され、R-15指定2003年の第56回カンヌ国際映画祭で、最高賞のパルム・ドールと監督賞を同時受賞。この快挙は史上初となりました。犯人役の少年はオーディションで選ばれたジョン・ロビンソンとアレックス・フロストはこの映画でスクリンデビューを果たし、現在も俳優として活躍しています。

7,カートコーバンがモデル。死を目前にしたミュージシャンの最期(2005)

ラスト・デイズ

sakitym27 NIRVANAのカート・コバーンに捧ぐ、カートが死ぬ直前の二日間を描いた映画。冒頭からもうロックスターの面影はなく、抜け殻のようなカート。麻薬矯正病院から抜け出したカートを慕う者はいなくなり、孤独な二日間だったことがわかる。特にNIRVANAが好きとか嫌いとかそういった感情はないけど、多くの孤独だった子供を救ったカートの最後がこんなものだったのかと思うととても寂しい気がした。

ロックバンド”ニルヴァーナ”のカートコーバンをモデルに、ロックミュージシャンの死の直前の2日間を描いた作品です。主人公はカリスマロックミュージシャン・ブレイク(マイケル・ピット)で、ブレイクは麻薬の更生施設を抜け出し、1人森の中を彷徨います。

自宅の豪邸に戻るブレイクの元を尋ねる人もありましたが、ほとんどまともな会話にはなりません。ブレイクは女装をしたり、麻薬を掘り起こしたり、曲を演奏して絶叫したり、と気ままな日常を過ごしますが、最後には温室に閉じこもり1人静かに生を終えていくのでした。

8,犯罪を犯した時、少年の感情はどう揺れ動くのか(2007)

パラノイドパーク

出典: eiga.com
whentheycry 意図せず人を殺してしまった16歳の少年。誰にも見られてない、バレてない、何事も無かったかのように無情に過ごす少年はあの日の事を回想する。

2016年映画初め良いスタートでした。 ガス・ヴァン・サント監督はどうもしっくり来る作品が無かったけどこれは凄く良い! ガス監督は少年・青年を撮ることが上手くて、それに加え音楽とカメラワークが完璧で凄く綺麗。重いテーマが単なるお洒落映画として終わらせてないのも良い。

ここからネタバレ↓

結局最後まで少年は裁かれることはないというある意味衝撃的なラストなんだけど、逆に誰かに打ち明けるという選択が出来ず苦しむのは凄いリアル。 映像、演出にこだわっているんだけど1番好きなシーンはシャワーシーン。よく、人間は殺人を起こすとその時点から壊れていくと聞くけど、まさにあのシャワーシーンは髪先からお湯と共に人間にとって大切な何かが黒い液体となって流れ落ちているように思えました。

殺人を犯してしまった少年の心の葛藤を描いた作品で、第60回カンヌ国際映画祭60周年記念特別賞を受賞しています。主人公・アレックス(ゲイブ・ネヴァンス)は16歳の高校生で、スケボーに夢中になって遊んでいました。ある時アレックスは無人の貨物列車で遊んでいる所を警備員に見つかり、咄嗟にスケボーで警備員を殴って死なせてしまいます。

平静を装おいつつも恐怖と不安に怯える日々を過ごすアレックスは、恋人の勧めから、殺人を犯した時の出来事を自分の気持ちと共に日記に綴る事に。犯した罪の重さに怯える少年の揺れ動く感情を繊細に描きます。

9,ゲイをカミングアウトした政治家、ミルク・ハーヴィーを描いた作品(2008)

映画 ミルク

Tanaka_Hirofumi 大きな目標のためには犠牲にしなければいけないこともあるし、それは各人の人生の選択で、多くの場合、すべてを選ぶことはできないんだと思う

わたくしとしては、公に生きることを選べる人が尊敬に値すると思うので、ハーヴィーミルクさんのような生き方をする人の頑張りのおかげで、自分たちが社会の恩恵を享受できるのだということを常に心に留めたいと思う。

ゲイであることを公表した活動家ハーヴィー・ミルクの生涯を描いた物語です。1970年代のアメリカは、まだ同性愛者が市民権を得ていなかった時代でした。ハーヴィー・ミルクは、自らがゲイであることを公表し、同性愛者や有色人種、高齢者や下級労働者など、地位の低い社会的弱者を救うべく立ち上がります。

落選を繰り返し、ようやく政治家としての地位を得たミルクの活動は人々から理解されるようになっていきます。しかし、それは同時に反発を生む事にもなり、1978年彼を敵対視する市政執行委員に撃たれ、志半ばで亡くなります。

本作品は第81回アカデミー賞で作品賞を含む8部門にノミネートされ、ハーヴィー・ミルクを演じたショーン・ペンが最優秀主演男優賞を受賞、脚本を担当したダスティン・ランス・ブラックも脚本賞を受賞しています。

10,死を通して少年と少女の愛を描く(2011)

____RiN____ 出会ったときから彼は彼女の余命を知っていて、ふざけて死の瞬間の練習をしたり霊安室でデートしたり、死について興味津々な2人の、不思議なラブストーリー。ちょっとダサい服装やドリーミンなハロウィンの街並みなど、ちょっとトボけた映像も印象的。短めの尺もちょうどいいね。 「初めての感想は?」って聞かれたときの得意げなにやけ面と、それを見た加瀬亮の悔しそうな屁の字眉が最高にチャーミングでした。 オープニングの、車窓からの乾いた冬の風景と字体の、雰囲気たっぷりの映像が一番好きだったかなあ。あとミア様のベリーショートは最強。 ガス・ヴァン・サントって作風コロコロ変わるから面白いな〜別のひとが撮ってるみたいだ。

余命3ヶ月の少女と、死に囚われた青年の恋の物語です。青年イーノックをヘンリー・ホッパーが、少女アナベルをミア・ワシコウスカが演じ、日本のドラマ『スペック』で瀬文を演じた加瀬亮が、イーノックの唯一の友人であり、特攻隊員の幽霊・ヒロシで登場します。

イーノックは他人の葬儀に参列する、という趣味の持ち主でした。ある時、いつものように葬儀に参列していたイーノックは、アナベルという少女と出会います。2人はお互いを知り合い惹かれていく中で、イーノックはアナベルが、がんに侵されている事と余命3ヶ月である事を知ります。

アナベルの死を知ったイーノックがアナベルやヒロシを含む周りの人と反発し合いながら、死と向き合っていく、という成長の物語でもあります。

ガス・ヴァン・サント監督最新作(2016)

EllyMimy 映画館に行きそびれた作品。 あまり予備知識なしで観たので、舞台が日本の、まさか青木ヶ原樹海だとは思わなかった… 原題を訳すとそのまま『樹海』だし! 樹海で彷徨うアメリカ人と日本人の話がベース。何故そんなことになったのか…そして2人はどうなるのか… ミステリアスな雰囲気とスリリングなストーリーに惹かれました。 ラストは驚愕。 そういうことだったのか!と暫し呆然としました。 大切な人を失った経験がある方に是非観て欲しい作品だと思いました。 マシュー&謙さん共に好演でした。ガス・ヴァン・サントの作品はやはり好み!

日本の自殺の名所と言われる富士山の麓、青木ヶ原樹海にやってきたアメリカ人と日本人。共に自殺を目的に樹海を訪れた2人が心の交流を通して人生を見詰め直す物語です。アメリカから自殺しようとやってきたアーサー(マシュー・マコノヒー)は、樹海の中でナカムラタクミ(渡辺謙)と出会います。

ケガをしたタクミを放っておけず、アーサーはタクミと行動を共にする事に。そして、樹海という過酷な環境の中で共に行動をするうち、アーサーはタクミと心を通わせ、自分がここに来た経緯を話し始めるのでした。

所々に伏線が張られ、謎を秘めたミステリー作品にもなっており、樹海という独特な場所が物語に神秘的要素を付け足しています。