2017年7月6日更新

やっと理解出来る!『仁義なき戦い』シリーズで描かれる、対立の構図を詳しく解説!

このページにはプロモーションが含まれています
仁義なき戦い Blu-ray COLLECTION

AD

終戦から20年間続いた暴力団同士の抗争をモデルにした『仁義なき戦い』

仁義なき戦い1
『仁義なき戦い』は、1073年~1974年に公開された、暴力団同士の抗争を描いた作品です。実際に起こった事件を基に、5部作にわたり映画化されました。 菅原文太、松方弘樹、梅宮辰夫、田中邦衛など、堂々たるメンバーが集結し、当時の状況をリアルに表現した演技にも注目です。 名作と名高いにも関わらず内容が全く分からない、どことどこが抗争したの?という方が多いのも事実です。そんな方にも分かりやすいように、それぞれの作品を解説していきましょう。

暴力団の内部抗争を描いた第1弾『仁義なき戦い』を解説!

仁義なき戦い
「仁義なき戦い」のラストシーンより、銃を構える菅原文太。(c)東映

第1弾『仁義なき戦い』のあらすじ

暴力団同士の抗争の始まりは、戦争の爪あとが残る昭和22年。広能(菅原文太)がいさかいを起こし、服役する刑務所内で山守組若頭の若杉(梅宮辰夫)と兄弟分になったことから始まります。 出所した広能は山守組長(金子信雄)の命で、敵対する暴力団土井組長を殺害し、再び刑務所で服役。大組織になった山守組では若頭の坂井(松方弘樹)一派と、幹部の新開(三上真一郎)一派の内部抗争が始まり軍配は坂井にあがりました。 しかし山守は、反逆の意を表す坂井の暗殺を目論むみ、恩赦で仮出所した広能に、今度は坂井暗殺を頼み込みます。広能は坂井に和解を解きますが、暗殺のことを聞いた坂井は、山守の自宅に押し入り引退を迫ったのです。 一方、広能は山守に再び協力を求められますが、嫌気が差した広能は山守を非難して縁を切ってしまいました。その後、坂井は殺害され敵対していた山守組が葬儀をあげていることいに、坂井の無念さを思い、葬儀場で銃を乱射するのです。

わかりやすく解説

『仁義なき戦い』は、山守組を公平に運営しようとした坂井と、それに不満を抱いた新開との内部抗争が主軸となっています。 また、山守も坂井のやり方が気に入らないと暗殺を目論み、坂井が自分の組長に裏切られた形になりました。次に組長自身が招いた問題を自分で解決できず、広能に尻拭いさせようとしたことが、事態を大きくした結果でしょう。

大戦争への序章を描いた第2作『仁義なき戦い 広島死闘編』

仁義なき戦い 広島死闘編

『仁義なき戦い 広島死闘編』のあらすじ

『仁義なき戦い 広島死闘編』の物語の舞台は昭和20年代後半。1950年から1972年に実際に起こった、第一次広島抗争を舞台に、実在した二人の人物にフォーカスを当てた作品です。また1作目で山守と縁を切った広能は、広能組組長として登場します。 大友(千葉真一)の経営するテキヤで無銭飲食をして、リンチを受けた山中(北大路欣也)は、看病してくれた村岡組長(名和宏)の姪と、深い仲になってしまいました。 岡村組長の怒りをかった山中は、若頭の松永(成田三樹夫)の指示で九州に逃れます。しかし、九州で和田組組長(鈴木康弘)を殺害した山中の名は広まり、結果として村岡は姪と山中の仲を認めざるを得なくなってしまったのです。 一方で、大友はシノギを上げるため、村岡組の管理する競輪場を爆破。村岡組の江田(山城新伍)と対立することとなるのです。このこともあって、大友は前組長の時森(遠藤辰雄)から跡目を継ぎ、正式に「大友組」を旗揚げしました。 また、広能は山守に頼まれ時森の身柄を預かることになりましたが、時森の命を狙った山中もまた、広能の元にやってきたのです。 広能と山中は刑務所で親しくなった間柄です。広能は山中に時森を殺害させて、事態を収拾しようと考えました。しかしその計画が漏れてしまい、今度は広能が大友に狙われることになったのです。 すると広能は組員を使って時森を殺害させます。後ろ盾のなくなった大友は、広島から追放されると村岡襲撃を計画。しかし、それを察知した村岡は先手を打って山中を差し向け、大友の手下を射殺させます。この事件で大友は服役することになってしまうと、その間に村岡は姪を別の男と再婚させようとしました。 山中は刑務所内で知り合いから姪のことを聞かされ、村岡に復讐してやろうと脱獄したのです。しかしそれを知った村岡は、急いで姪を元にもどし、何事もなかったように見せかけました。 山中は誤解だったと陳謝しましたが、後に松永からすべては村岡の計略だと聞かされたときにはすでに遅く、八方塞りとなった山中は自分には何も無くなったとして、拳銃自殺してしまいます。

わかりやすく解説

2部でも騙し騙されといった内容がメインで、1作よりも構図が複雑になってきましたが、広能は今作でも第3者という立ち位置にいます。 繋がっているのは広能と山中は親しき仲。山守・大友・時森は組同士で繋がりがあり、村岡組は時森や大友組・山守組と対立しています。広能はもともと山守と縁を切っていて組も立ち上げているので、組織対立や内部対立など第3者という別組織の見方で、全体を捉えていますね。 また、広能には人脈もありますがやたらと抗争を起こさない、周りをみて我がフリ直せという面があるようです。まさにヤクザ同士の死闘を繰り返した広島死闘編は、義理人情という言葉にはまだ程遠いようです。

抗争へ発展した群像劇を描いた第3作『仁義なき戦い 代理戦争』

仁義なき戦い 代理戦争

『仁義なき戦い 代理戦争』のあらすじ

物語の舞台は昭和35年、村岡組の跡目騒動からはじまります。 白昼堂々、村岡の舎弟が何者かに殺害されてしまいます。これによって村岡組の跡目の席が空いてしまいました。一方で山守は打本組長(加藤武)と仲のいい広能を、自分の傘下に引き戻し、村岡組幹部連合と広能を利用して呉市での勢力を広げようとしていたのです。 また打本は広能や幹部連合と兄弟盃を交わし、神戸の明石組舎弟とも盃を交わしました。この行動に広能は、直の兄貴分はふたり持てないというしきたりを無視した、打本の姿勢に幻滅してしまうのです。 盃をとり直し新生山守組として再起した山守は、披露目の席を設けました。そして山口の豊田会、岩国で抗争中の小森組と浜崎組、神戸の明石組、広島の打本組が顔をそろえた席で、浜崎組に肩入れすると宣言しました。 すると山守は次に打本組を切り崩しにかかり、打本組の幹部の早川(室田日出男)をそそのかし、自分の身内に引き入れたのです。それによって打本は、自分の組幹部に裏切られた形となり孤立してしまいました。 絵図にはまった打本を尻目に、跡目の話をすすめる山守でしたが、打本と盃を交わした明石組がだまっているわけがありません。結果、山守組は明石組と対峙することになるのです。 明石組との対峙で総崩れになってしまった山守組。一方明石組長の舎弟として、打本も完全復帰すると、山守と打本の立場が逆転することに。 すると山守は勢力拡大するためには、神戸の神和会と手を組むことが必要として、村岡組の武田(小林旭)を若頭に指名しました。また豊田会との取持ち人として広能を指名したのです。 しかし広能は武田が反対するなか、山守が打本組の早川を抱きこんだまま、神和会と盃をかわすのはスジが通らないと、打本との盃を復活させることにしたのです。 披露目の席で浜崎組を応援すると宣言した山守でしたが、参加していた他の組のものからすると、コケにされたと思ったはずです。打本との立場が逆転した以上、自分の身を守るには他の組との結束を強めるしかありません。 ここでもずるがしこい策略で自分の尻拭いをさせているのです。山守にとって信じられるのは、自分しかいないということでしょう。舎弟たちはあくまでもコマとしてしか考えていないのです。

わかりやすく解説

3作目は組織や人物たちが、それぞれの思惑から抗争へと発展していく群像劇となっています。 山守組には一家としての一体感はなく、組長の自己中心的な考えに舎弟たちが振り回されているだけ。また打本は、明石組と盃を交わしていたことは結果としてよかったのですが、しきたりを無視したゆえ起こってあたりまえということかもしれませんね。

第4作はさらに激化する頂点抗争へ『仁義なき戦い 頂上作戦』

仁義なき戦い 頂上決戦
「仁義なき戦い 頂上作戦」 (c)東映

『仁義なき戦い 頂上作戦』のあらすじ

本作では抗争が激化し、さらには警察の介入により終焉を迎えます。頂上決戦の舞台は昭和38年、高度成長期を迎えた日本では社会の秩序を守るため、暴力団に非難の目を向けるようになりました。 山守組が広能を破門したのをきっかけに、連合を結んだ広能組と打本組は、山守組との抗争が激化していました。また広能の要請で広島の義西会も応援に加わり、一大戦争に発展します。 そんななか広能組組員と打本組組員の数名が、山守系組員によって殺害されてしまいました。また一方で、打本組員が誤って一般市民をも射殺する事件が起きてしまったのです。 ただでさえ暴力団に向けられる目が厳しい中、警察による徹底的な監視が行われてしまうことに。警察のマークが厳しく思うように動けなくなった暴力団ですが、明石組の岩井(梅宮辰夫)は葬儀を行うという名目を立て、1000人以上の組員を広島に送り込んだのです。 それを知った山守は警察に密告。広能が別件で逮捕されると、広能組組員も次々と逮捕されてしまいました。劣勢状態になると今度は義西会が広島の川田組を買収し、山守との対決を決めるのです。 しかし動きを読まれた義西会会長(小池朝雄)は山守に射殺されてしまいました。今度は組長を殺された義西会会員が報復として、山守組の各事務所を爆破。続いて打本組組員も応戦を開始するのです。 事態を重く見た警察は打本と山守を逮捕。すると岩井組と義西会は連合を組み、武田との間で激しい銃撃戦が繰り広げられました。 義西会の若頭(松方弘樹)は、打本の舎弟・川田組組員に殺害され、結果として同士討ちになってしまったのです。結果、義西会は自然消滅となり、打本組も解散を表明。短い懲役を科せられた山守とは違い、広能と武田には長い懲役がかせられました。

わかりやすく解説

義西会は川田組を買収したはずが、裏切られて同士討ちという結果になってしまいました。打本も重い腰をあげてまで、抗争する意思はなかったようです。様々な組が介入したことが要因で、大戦争へと発展してしまったようですね。

一大抗争の終焉を描いた第5章『仁義なき戦い 完結篇』

仁義なき戦い 完結編

『仁義なき戦い 完結篇』のあらすじ

前作では終焉を迎えた一大戦争でしたが、次の時代の血の気の多い若者たちによって、新たな火蓋が切られるのです。 広能組・打本組連合と山守組との抗争は、幹部たちの一斉検挙によって終焉を迎えます。山守組幹部の武田は市民たちの目くらましとして、武田(小林旭)・江田(山城新伍)・大友(宍戸錠)・早川(織本順吉)で、政治結社「天政会」を立ち上げました。 武田の企てを察知した警察が、武田を逮捕。武田は自分の舎弟の松村(北大路欣也)を後継者にするも、大友と早川が裏で松村殺害を目論んだのです。 しかし松村は、天政会傘下の組長たちと直盃を交わし、天政会で強大な権力を手にした一方、呉市では組長不在の広能組と天政会傘下の組とが睨みあいに。 その後、広能が出所すると松村は広能に武田の引退を知らせたあと、手厚い待遇を条件に広能にも引退するよう迫りますが、拒否されてしまいます。松村の天政会会長襲名を機に広能も天政会へ参加したものの、名前もしらない若い組員が死んでいくのを見て、広能は引退を決めたのです。

わかりやすく解説

『仁義なき戦い 完結編』に相応しい幕切れとなりました。結局このような仁義の世界では、盃を交わしたとしても、兄弟と呼び合っていても裏切りという縁はそう遠くないのかもしれません。 抗争は終焉を迎えましたが、続くものが後をたたない仁義の世界。20年に渡って繰り広げた縄張り争いで、いったい何が残ったのでしょうか。 『仁義なき戦い』で登場したキャストが、完結編では違う役柄で登場していますが、これには当時のキャストたちの都合もあったようです。