お正月休みこそ、長尺の映画を観るチャンスです。
お正月休み、いかがお過ごしですか? せっかくのお休みなのに寝正月はもったいないと思いませんか? こんな機会こそ、普段は見るのを躊躇している、3時間超え、4時間超えの長い映画を鑑賞しましょう。暖房の効いた暖かい部屋で、家族と、あるいは友だちと観るのにうってつけの名作を選びました。 時間は充分にありますし、自宅で鑑賞するのですから、トイレに行ったり、観ながら食事したりも自由です。しかも、内容は多少過激で全く退屈することはありません。 名作にもかかわらず見逃している作品たちを、是非ご覧になってください。
尋常ではない愛をめぐる物語
237分の作品、つまりほぼ4時間ありますが、あまりにも波瀾万丈な内容なので、あっという間に終わってしまします。本作『愛のむきだし』は園子温監督にとっても、満島ひかりにとっても転機となった作品と言って良いでしょう。 神父である父(渡部篤郎)から罰を受けたいためだけに、パンチラの盗撮を繰り返すユウ(西島隆弘)、男性不信になり、サソリという女性(実はユウが女装している)に惹かれる女子高生ヨーコ(満島ひかり)、そして新興宗教「ゼロ教会」の教祖の側近、コイケ(安藤サクラ)。 この3人が自分に欠けている「愛」を求めて奮闘する模様を鬼才、園子温が描き出します!
日本映画の古典とも言える痛快活劇
207分で3時間超えの作品ですが、途中でインターミッションがありますので、そこでトイレなどに行きましょう。『荒野の七人』(1960)、『宇宙の七人』(1980)、『マグニフィセント・セブン』(2016)など、ハリウッド・リメイクもされた傑作活劇です。 戦国時代、盗賊となった野武士にたびたび襲撃され、困り果てた農民は浪人を雇い、野武士の盗賊団を追い払ってもらうことに決めます。集められた七人の侍は村人たちと協力して、野武士撃退に取り組むのですが……。 ヴェネツィア国際映画祭、銀獅子賞受賞作品です。
孤独な魂が惹かれ合う、もうひとつの青春の形
カンヌ国際映画祭で最高賞パルム・ドールを獲得したフランス映画で、主演の2人の女優にも特別にパルム・ドールが贈られたことで話題を呼びました。また、レズビアン女性を描き、女性同士の激しいセックス・シーンがあることも話題になりました。 高校生のアデル(アデル・エグザルホプロス)は、青い髪の美学生エマ(レア・セドゥ)に強く惹かれ、やがて2人は同棲を始めます。画家を目指すエマはアデルをモデルにして制作を続け、教師を目指すエマは教育実習に取り組むのですが……。 当時、弱冠19歳だったアデル・エグザルホプロスの瑞々しい演技に注目してください。
莫大な予算を費やして描かれた戦争の狂気
劇場公開版は153分ですが、監督による特別完全版は202分です。カンヌ国際映画祭パルムドール受賞、米アカデミー賞の撮影賞と音楽賞を受賞しています。 舞台は1970年、ベトナム戦争末期。ウィラード大尉(マーティン・シーン)はCIAからカーツ大佐(マーロン・ブランド)の暗殺を命じられます。カーツ大佐は任務を放棄し、カンボジアの熱帯林の中に王国を築いていたのです。 ウィラード大尉は河を遡り、苦心の末、王国にたどり着きますが、カーツ大佐に捕らえられてしまい……。前半はベトナム戦争の狂気を、後半はカーツ大佐の王国のカオスが哲学的に描かれます。 ドアーズの『ジ・エンド』や、ワグナーの『ワルキューレの騎行』など、効果的に使われる音楽が印象的です。
スタッフの執念がこもった力作揃い
いかがでしたか? いずれも名作、話題作ですので、観ておいて損はないはずです。 どれも内容がかなり濃いものばかりで、これを長尺で撮り上げた監督やスタッフの執念が感じられます。これほど長い映画というものは大抵、予算がオーバーしてしまうものです。 例えば、『七人の侍』(1954)は当時の通常作品の7倍の製作費がかかったと言われています。黒澤明監督は前半だけ取り終えた時点ですでに予算を超過していたことに気づいていましたが、映画会社は必ず追加予算を出してくれるはずだと踏んでいたそうです。 また、『地獄の黙示録』(1979)の撮影はトラブル続きで、コッポラ監督は『ゴッド・ファーザー』(1972)で得た報酬を全てつぎ込んで、破産寸前になりながら完成させました。 そんな製作陣の思いと苦労が詰まった長尺映画の数々を、この機会に是非味わってみては。