思い出すだけで震えるトラウマ級のセンパイたち
入学や就職、新学期に転職を迎え新天地で頑張るあなたの前に立ちはだかる大きな壁。 そう、それは「先輩」です。 1年だろうが1日だろうが先にいたならば先輩として敬意を払うべきであるという、島国・日本ならではの底暗い独自文化によって苦しめられている人も少なくないのではないでしょうか。しかし映画の中では、年上ばんざいの前時代的な威圧感を放つ先輩たちが世界各国色んな作品に登場していました。 今回はそんな映画の中に登場する「怖い先輩」たちを見て、5月病にさせられた雪辱を晴らそうと思います。
岸和田最強の男・カオルちゃん
『岸和田少年愚連隊』(1996)
若き日のお笑いコンビ・ナインティナインが主演を務め、バイオレンスの巨匠・井筒和幸監督がメガホンを取ったヤンキー映画の金字塔『岸和田少年愚連隊』に登場する先輩は、小林稔侍演じる岸和田最強の男・カオルちゃんです。続編やスピンオフ作品では竹内力が演じました(※写真)。 己の信念に従ってまっすぐに生きる彼は、邪魔するものは例え電車であっても力づくで止めてしまう強烈なパワーの持ち主です。普段は岸和田界隈をうろつき、商店街を歩くカップルの写真を勝手に撮影しては高値で売りつけていますが、そのクレイジーさはヤクザも恐れるほど。 その反面、人情にもろく他人のために涙したり、「チャッピー」という愛犬を可愛がっているなど人間らしい一面も持つ魅力的な先輩です。
冷静になれ!ちょっと怖いぞ!夏希センパイ!
『サマーウォーズ』(2009)
2009年公開当時、突然可愛い先輩の彼氏のフリをして実家に連れて行かれるという夢のような展開で、世の男子たちを興奮させた『サマーウォーズ』の篠原夏希センパイ。 憧れのセンパイのお誘いにウキウキワクワクしているのもつかの間、主人公は世界を救う戦いへ身を投じることになってしまうのですが、みなさんよく考えてください。 ほとんど知らない後輩を突如として「彼氏」として雇った上、実は好きな人がいるという恐怖。高校生だからまだいいものの、大人になったらと思うと震えが止まりません。 劇中で成長を遂げた主人公にデレる場面もありましたが、これから先の人生でどれほどの男の人生を狂わせるのでしょうか。
とにかく口が悪い!傍若無人・ハートマン軍曹!
『フルメタル・ジャケット』(1987)
言わずと知れた『フルメタル・ジャケット』の鬼軍曹、サージェント・ハートマン。彼の口の悪さは映画界随一のもので、トラウマ的パワハラブルドーザーとしてあまりに有名です。 新兵にも人格否定とも取れる訓戒を、サブリミナルどころか永久的に与え続け、戦争マシーンに育て上げていく様が非常に胸糞悪い最強のヒールです。 このハートマン軍曹を演じたR・リー・アーメイが2018年4月15日に惜しまれつつもこの世を去ったと言うニュースは、映画ファンの間で非常に大きなニュースとなりました。
美女怖い!モデル怖い!嫉妬怖い!
『ネオン・デーモン』(2016)
『ドライブ』(2011)のN・W・レフン監督の最新作である『ネオン・デーモン』に登場する怖い先輩は、エル・ファニング演じる新人モデル・ジェシーに対する嫉妬に狂うサラとジジです。 いくら頑張っても鳴かず飛ばずだった二人の前に現れた美しき新人モデルが、自分たちが成し得なかった夢を次々に叶えていく様にいてもたってもいられず、罠にかける計画を立てます。 最終的にはジェシーを殺害し、美しさと名声を得るためにその肉を喰らい、人道から逸れてしまうという悲劇的な顛末を迎えるのでした。 羨ましくて殺すまでは、わかります。……食うなよ。
まさに極悪非道!闇へ引きづり込む村井刑事!
『日本で一番悪い奴ら』(2016)
★『#日悪』著名人コメント紹介★
— 日本で一番悪い奴ら (@nichiwaru) July 19, 2016
北海道警察のノルマに追われた腐った体質。中でもはぐれものの刑事を綾野剛が迫真の演技で熱演。まだ問題は続いている。
——堀江貴文(実業家) pic.twitter.com/Dz22Tb5vBc
白石和彌(かずや)監督による汚職警官の悪事とその悲しき人生を描いた名作『日本で一番悪い奴ら』に登場する村井刑事は、綾野剛演じる主人公を悪の道に引き込んだ張本人です。 大学時代に馴らした柔道の腕を買われ、北海道警に配属された主人公・諸星は真面目一貫で正義感の強い男でしたが、なかなか活躍する機会もなくうだつの上がらない日々を過ごしていました。 そんな時に諸星を甘言で誘惑し裏社会とのつながりを作らせた村井は、夜な夜なキャバクラで大酒を食らい女の乳を揉む不埒者でした。 飲み込まれやすく流されやすい若者に自分の正義を押し付けて、その後の人生を大きく狂わせる彼はまさに死神そのものです。
出世を堰き止めるダム上司でありダメ上司・デイヴ!
『モンスター上司』(2011)
友人3人が集まって、それぞれの自分の仕事の邪魔をする最悪の「モンスター上司」を退治するため立ち上げるコメディ映画『モンスター上司』に登場する先輩は、主人公の一人であるニックの直属の上司・デイヴ。 彼は優秀なニックを飼い殺しにして、いくら業績を上げても難癖つけて昇進させない絵に描いたようなクソ上司です。出勤早々にグラスにウイスキーを注ぎ、ニックの飲むことを強要するパワープレイは最高にリアルで腹立たしいものとなっています。 ここで紹介する先輩たちの中で私たちの生活で出食わす可能性が高いキャラクターですが、その顛末は悲惨で可笑しく爽快な仕上がりとなっていますので、日々のストレス発散に一度ご覧になってはいかがでしょうか。
触れるもの皆傷つけるモンスター・泰良!
『ディストラクション・ベイビーズ』(2016)
2018年4月から放送されているドラマ『宮本から君へ』の監督としても熱い注目を集める真利子哲也の商業映画デビュー作であるこの『ディストラクション・ベイビーズ』に登場する怖い先輩は、柳楽優弥演じる主人公・泰良その人です。 路上でいきなり見知らぬ人に殴りかかり、野獣のようなストリート・ファイトに明け暮れる若者である泰良は、その異形のオーラとカリスマ性で様々な人を惹きつけていき「先輩」となっていく異端者です。 特別後輩に何かすることはありませんが、手当たり次第に人を傷つけていく様は実に恐ろしく、本編中ほとんど言葉を発さない特異性も相まって、異質な空気を放っています。
サイコで最高な狂い咲き・ミツコ!
『恋の罪』(2011)
1997年に東京都渋谷区で実際に起こった東電OL殺人事件を題材にした映画『恋の罪』は、奇才・園子温による衝撃的な演出と主演・水野美紀の体当たりな演技で公開当時大きな話題とともに波紋を呼びました。 この映画で登場する恐ろしい先輩は、神楽坂恵演じる一介の主婦・いずみを売春の道へ引きずり込む悪女・ミツコです。「無料のセックスより金で買われるセックスの方が価値が高い」とする心情を貫き通し、いずみの売春における「先輩」として手ほどきをしていきます。 表の顔は大学教授という金銭的にも安定していたはずの彼女が売春を行っていく様は、まさに猟奇的で恐ろしく後輩であるいずみが畏怖する存在として煌めいていました。
悪魔以外の何者でもない鬼畜の編集長・ミランダ!
『プラダを着た悪魔』(2006)
今なお高い人気を誇るお仕事サクセス映画の代表作『プラダを着た悪魔』の「先輩」といえばもちろんメリル・ストリープ演じる編集長・ミランダです。 嵐で止まった飛行機を動かせ、発売前のハリー・ポッターの最新作を用意しろ、など新人のアンドレア(アン・ハサウェイ)に対して無理難題を押し付ける歴史的パワハラモンスターとして描かれているミランダは、実在の人物をモデルにしているというから驚きです。 なんやかんやで最後はいい感じに終わっていくこの映画ですが、冷静になってみればラスト以前までに行っていた所業が悪徳すぎるため、最終的に「いい上司」とは言い切れない不思議なキャラクターとなっています。
怖い先輩といえば彼!名前を言ってはいけないヴォルデモート!
『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』(2010)他
「怖い」「先輩」といえばこの人。みなさんご存知の闇の帝王・ヴォルデモートです。 寮は違えどハリー・ポッターくんの大先輩である彼は、同じくダンブルドア先生に師事しました。のちに後輩となる赤子のハリーを殺そうとしましたが、あえなく失敗。反対に自分が封印されてしまうという可愛い一面も持ち合わせております。 とはいえ最終的には彼の策略で恩師を殺し、母校も盛大に破壊するわんぱくさに嫌気が差した後輩・ハリーに討ち滅ぼされ、塵となって消えるのでした。
怖いセンパイともうまく付き合うことが大人になること
ここまで名作に登場した数々の先輩をご紹介してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。 ちょっとサイコな狂人から可愛げのある闇の帝王まで、世界にはいろんな先輩が存在しています。こんな人たちと比べたら今あなたの前に立ちふさがる「先輩」なんてまだマシだと思いませんか? 言いたいことは言ってみて、ダメだとしてもめげずに頑張ってみると、きっと今まで気づかなかった先輩のいいところが見つかるはず。 綺麗に和解ができたなら、お酒でも飲みながらこの記事で紹介した作品を肴に語らう夜を過ごすのも良いのではないでしょうか。