2018年6月3日更新

【連載】カルト(少数の熱烈な信奉)を産む映画たち⑥『裸のランチ』

(C) Recorded Picture Company (Productions) Limited and Naked Lunch Production

現在も支持され続ける前衛作家ウイリアム・S・バロウズの代表作がまさかの映画化!悪夢としか思えないグロテスクでシュールな映像に不思議と引き込まれてしまう、映画『裸のランチ』についてご紹介します。

「カルト(少数の熱烈な信奉)を産む映画たち」とは?

「カルト(少数の熱烈な信奉)を産む映画たち」とは、有名ではないかもしれないけれど、一部の人には熱烈に愛される映画を紹介していく週刊連載です。

文学ファン必見!知る人ぞ知るカルト映画?

一口にカルト映画といっても、作品で描かれる内容や支持者はさまざまです。あなたがその映画を見る理由はなんでしょう?好きな俳優が出演しているから?あるいは原作となっている小説やアニメのファンだから?それともメガホンを撮った監督に憧れているから? 今回ご紹介する作品は、1991年に公開された『裸のランチ」という映画です。この作品は、50年代・60年代に活躍した作家ウィリアム・S・バロウズの長編小説『裸のランチ』を原作としています。 こちらの小説は、あらすじや背景となる物語などはありません。さまざまな文章から作者がツギハギした異形とも言える文体で全編構成されています。その前衛的な手法は当時の文学界に多大な影響を与え、後のサブカルチャーにも大きな影響を残しました。 そんな原作を映像化した映画『裸のランチ』。それは、文学ファンなら絶対放っては置けない奇怪な魅力に輝いているのです。

映画『裸のランチ』のあらすじ

原作小説『裸のランチ』をもとに、メガホンを撮ったクローネンバーグ監督がオリジナルのストーリーを紡ぎ出したのが本作です。 害虫駆除員として働くリーは、薬物中毒であった重い過去を抱えています。現在は妻を得て仕事に勤しむ、傍目からは幸せな毎日であるというのに、あろうことか妻はリーの扱う薬剤の中毒者となってしまいました。 日々、リーの仕事道具である駆除薬を盗み出し身体に注入しては快楽に溺れる妻。リーはその事実を知ってもなにもできないでいました。ある日、リーは麻薬密売人の汚名を着せられて逮捕されてしまいます。リーが収容された部屋には、上司だと名乗る、1匹の巨大なゴキブリがいて……?

気になるキャストは? 

ビル・リー/ピーター・ウェラー

害虫駆除員として働きながらも謎の麻薬に溺れてしまう主人公リーを演じているのは、ピーター・ウェラーです。 『ロボ・コップ』や『リバイアサン』などの人気SF映画に多数出演しているピーター。役者としての活動を始めたのは70年代頃で舞台を中心に活動していました。1979年に公開された『新・明日に向かって撃て!』で初めての映画出演を果たします。 次々に映画に出演し、人気作のメインキャストを務める人気俳優となったピーターですが、近年は、テレビドラマの監督としても活躍しています。

ジョーン・フロスト/ジュディ・デイビス

リーの妻で害虫駆除薬の中毒となってしまうジョーンに扮するのはジュディ・デイヴィスです。 多数のコメディ映画に出演してきたジュディですが、映画デビューとなった『わが青春の輝き』では英国のアカデミー賞で主演女優賞に輝くという快挙を成し遂げています。その後は1992年の『夫たち、妻たち』や1997年の『地球は女で回ってる』など、ウディ・アレン作品の常連となりました。

監督はデヴィッド・クローネンバーグ!

デヴィッド・クローネンバーグ (ゼータ)
©DUPUY FLORENT/SIPA/Newscom/Zeta Image

今作でメガホンを取るのはデヴィッド・クローネンバーグ。ハエと合体してしまった男の恐怖を描いた『ザ・フライ』のヒットで知られるクローネンバーグ監督ならではの魅力が今作でも発揮されています。 また、今作はクローネンバーグが脚本も担当。原作から得たイマジネーションを元にオリジナルストーリーを描き、斬新な発想で見事に映像化されたのです。クローネンバーグはこの作品で、さまざまな映画賞で最優秀監督賞や最優秀脚本賞を受賞しました。

裸のランチって?

タイトルだけ聞けば、素っ裸で昼食を食べることかと勘違いしてしまいそうですが、この映画や原作小説はそんなストリップ趣味の人を描いたものではありません。 映画にも原作小説にも一貫して流れているテーマは麻薬との付き合いです。脈絡のない文章で埋め尽くされている原作小説ですが、その中でもはっきりと作者ウイリアム・バロウズは述べています。 麻薬とは裸の、むき出しの食事であると。細胞そのものが渇望するむき出しの食事であるというふうに。 今作では、一度は克服したものの、妻が薬物に溺れていく様子を見て、再び自分も悪夢に身を投じる主人公の葛藤と苦悩、そして遭遇する奇妙で不可解な世界が描かれます。人間の愚かさと脆さ、弱さ滑稽さが痛いほどに伝わる一作となっています。

原作者バロウズについて知ろう!

映画『裸のランチ』は、監督が原作からインスパイアされたオリジナルストーリーで構成されていますが、映画の魅力により深く浸るためにも原作や作者について知ることは有意義なことだと思います。 原作者バロウズは、映画の主人公リーと同じように妻を射殺しています。その事件の詳細は、ウイリアム・テルごっこを行っていた結末だというのだから驚きです。リーと同じように長年重度の麻薬中毒に苦しみながらも多方面で活躍し、若い世代にも絶大な影響を誇りました。

話す巨大なゴキブリなどシュールな展開に注目!

麻薬を密売しているとの疑いをかけられ逮捕されたリーが出会ったのは、人間の言葉を話す巨大なゴキブリ。ゴキブリはリーの上司だと言い、妻のジョーンはスパイなので殺さないといけない、と奇妙な命令を下します。 再び麻薬に溺れ、ついに『ブラック・ミート』という謎の麻薬に手を出してしまったリーを待っていたのは、魚の化物のような姿をした男でした。男の命令で手に入れたタイプライターは、巨大なゴキブリに変身したり、虫の化物のようになったりと七変化します。 この作品には、薬物による幻覚がそのまま現実の世界に起こってしまったかのようなシュールでグロテスクなシーンが多数登場するのです。

映画『裸のランチ』に出会うには

裸のランチ
(C) Recorded Picture Company (Productions) Limited and Naked Lunch Production

映画『裸のランチ』は2018年7月4日にキングレコードからBru-rayが発売。2,500円(税別)というリーズナブルな価格で、クローネンバーグ監督のいちばんの問題作、『裸のランチ』が自宅で手軽に見られるのは嬉しい限りですね。原作と合わせて奇妙な世界にどっぷりと浸ってみてください。

次回の「カルト(少数の熱烈な信奉)を産む映画たち」は?

次回は2018年6月10日に更新予定です。 次は一体どんなカルト映画が取り上げられるのでしょうか?お楽しみに!