自主映画出身の入江悠監督とは?
入江悠監督は、日本大学芸術学部映画学科監督コース出身で学生時代から自主映画を製作してきました。その中で、2008年に公開された映画『SR サイタマノラッパー』が国内外の映画祭で評価され、単館系劇場の記録を塗り変えるなど話題を集めてきました。 その後も映画のみならずドラマやミュージックビデオなど活躍の場を広げています。2017年に映画『22年目の告白 私が殺人犯です』や映画『ビジランテ』が公開されると、その評価はさらに確かなものになりました。 そこで今回は、これまでに公開された入江悠監督の映画の中から、おすすめの作品をランキング形式で紹介します!
5位 『日々ロック』【2014年】
耳が壊れるほどの熱いロック魂と、ちょっぴり涙の青春ストーリー
日々ロックは、ロックばかな日々沼拓郎が結成したロックバンド、ザ・ロックンロールブラザーズとデジタル系トップアイドル・宇田川咲との出会いを描いた物語。ひたむきに音楽への情熱を持った若者たちの青春ドラマです。 週刊ヤングジャンプにて連載されていた榎屋克優の漫画『日々ロック』が原作。2014年TOKYO FM開局45周年記念作品として製作されました。 日々沼拓郎役には、映画『サクラダリセット』の野村周平。宇田川咲役は、映画『リバーズ・エッジ』の二階堂ふみが演じています。 劇中で演者たちが、映画のためのオリジナル楽曲を演奏します。中には入江監督が作詞を手掛けている曲もあるので、音楽に対してのこだわりが感じられますね。 ザ・ロックンロールブラザーズが、咲のために暴風雨にも関わらず演奏するシーンは最大の見どころで感動のシーンです。笑って泣けるエンターテインメント映画としてうまくまとまってましたが、主人公たちの活躍をもっと見たかったというところで第5位となりました。
4位『太陽』【2016年】
昼と夜に分かれてしまった人類の運命は?
映画『太陽』は、21世紀の初めにバイオテロによるウィルス拡散によって、世界の人口が激減した世界を描いた物語です。その世界の人類は、進化を遂げた優秀な人類・ノクスと旧人類のキュリオの2つに分類されています。 決して相容れることのない彼らの、生きる意義を視聴者に考えさせる映画です。原作は、劇団イキウメの劇作家で演出家の前川知大の同名舞台となります。 ノクスに憧れるキュリオの鉄彦役を映画『3月のライオン』の神木隆之介が、幼馴染の結役を映画『愛の渦』の門脇麦が演じています。 ウィルスというと、入江監督の映画『JAPONICA VIRUS ジャポニカ・ウイルス』も彷彿とさせますね。入江監督が戯曲と舞台に惚れ込んだ作品だけあって監督の熱を感じられる作品でした。 架空の世界の演出について賛否が別れている作品。ぜひ確かめてみてください。
3位『22年目の告白 私が殺人犯です』【2017年】
悲しい真実、そして衝撃のラスト
映画『22年目の告白 私が殺人犯です』は、1995年に起きた未解決事件のその後を描きます。その事件とは、同一犯による5件の連続殺人。担当刑事・牧村は犯人を追い詰めるも捕らえられず、その後事件は時効を迎えてしまいます。 そして22年が経ち、曾根崎という人物が自ら犯人であると名乗り出て告白本を出版。前代未聞の挑発に日本中が巻き込まれていく中、事件は意外な結末を迎えることになります。 また本作は、2012年の韓国映画『殺人の告白』を原作にもつクライムサスペンスでもあります。曽根崎役を「デスノート」シリーズの藤原竜也、牧村役を「海猿」シリーズの伊藤英明が演じ、ダブル主演作となっています。 かつて日本において施行され続けてきた時効制度が、2010年に撤廃されたことが本作における重要なキーポイントとなっています。時効が撤廃された現代との対比を描くための整合性や法律的な部分について学ぶのに、かなりの時間を費やしたことが大変だったそうです。 脚本の完成までに2年半かかり、決定稿が出来た時には37稿になっていたという徹底した脚本作り。だからこそ、興行収入24億という数字に結びついたのでしょう。堂々の第3位です。
2位「SR サイタマノラッパー」シリーズ【2008年~】
心に響く!HIPHOPな青春ストーリー!
「SR サイタマノラッパー」シリーズは入江監督の完全オリジナル脚本の作品です。2008年に第一弾映画『SR サイタマノラッパー』が公開されました。 レコードショップもライブハウスもない田舎に住む青年たちが、ラッパーとして成功しようと奮闘する姿を描いています。 本作は、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭でグランプリを受賞。その他各映画祭での受賞や池袋シネマ・ロサ、苫小牧シネマトーラスでの初日歴代動員1位や渋谷ユーロスペースにて満員立ち見を3日間記録するなど話題となりました。 シリーズを通しての主人公IKKU役には、入江監督作品『JAPONICA VIRUS ジャポニカ・ウイルス』にも起用された駒木根隆介が再び抜擢。ちなみにシリーズ第一弾には、元人気AV女優で、現在ではタレントや女優として活躍中のみひろも出演しています。 その後、カルトヒットを果たした本作は、映画のシリーズ化から2017年のテレビ東京系ドラマ『SRサイタマノラッパー〜マイクの細道〜』までサーガを展開。名実ともに入江監督の代表作ですね! やはり、このシリーズでの高い評価や観客の支持があったからこそ、今の入江監督があると言えるでしょう。監督の原点とでも言うべき作品ということで、第2位です。
1位『ビジランテ』【2017年】
壮絶な運命に囚われたアウトローたちの悲劇!
閉鎖的な地方都市で育った神崎一郎・二郎・三郎の3兄弟。30年間失踪したはずの長男・一郎が、父の死をきっかけに突然戻ってくる時、兄弟の運命は思いもよらない事態へと向かってしまうのでした。父の遺産の相続を巡って……。 本作は三兄弟を演技派俳優が熱演していることで話題となりました。一郎役を映画『アウトレイジ 最終章』の大森南朋、二郎役をラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」シリーズの鈴木浩介、三郎役を映画『火花』の桐谷健太がそれぞれ演じています。その他、二郎の妻役で元AKB48の篠田麻里子が、元アイドルにもかかわらず果敢に濡れ場を演じたことも記憶に新しいです。 入江監督の念願だったというオリジナル脚本は、運命から逃れられない男たちの悲しい物語を描いた作品となりました。若手ながら鬼才と呼ぶにふさわしい素晴らしい作品でした。 久々に入江監督のオリジナル作品となった『ビジランテ』。『SR サイタマノラッパー』から10年を迎え、ますます血気盛んな監督の、重量級の一作です。 これまで商業映画やテレビドラマなどを撮って経験を重ねた今、自分のルーツを見つめ直そうと15年前から着想のあった本作に取り組んだとのこと。脚本を足で書くことにこだわって、市議会などに自ら取材しながら脚本作りを進めました。 この10年の集大成と言うべき作品。2018年現在、入江悠監督作の中でも最高傑作と言える作品ではないでしょうか。
番外編『ギャングース』
最新作は裏社会で生きる少年たちの青春を描く
入江悠監督最新作は、肥谷圭介・鈴木大介の漫画『ギャングース』の実写映画化です。 幼い頃、親から虐待を受けていたサイケ・カズキ・タケオたちは、やむを得ない事情で罪を犯し少年院へ。社会から見放された最下層の3人組による青春クライムストーリーです。 サイケ役には映画『虹色デイズ』の高杉真宙、カズキ役には映画『火花』の加藤諒、タケオ役には映画『勝手にふるえてろ』の渡辺大知が務め、こちらも『ビジランテ』に続いてトリプル主演の作品となります。 原作者の一人・鈴木大介の入江への熱いラブコールが実り、監督に決定したとのこと。入江監督もそれを受け、綿密な取材と脚本執筆に4年の歳月をかけた渾身の一作です。 映画『ギャングース』の公開は、2018年秋予定。