2018年6月10日更新

『仁義なき戦い』『県警対組織暴力』、実録シリーズのおすすめ映画6選

1970年代、『仁義なき戦い』の大ヒットを皮切りに、東映が次々と送り出した実録シリーズ。シリーズの説明とともに、代表的なおすすめ映画を6作品ご紹介したいと思います。

日本映画史で異彩を放つ実録シリーズ

『仁義なき戦い』が異例の大ヒットを記録したのち、1970年代を中心に東映が次々と量産した実録シリーズ。中には興行的な成功にとどまらず、キネマ旬報の年間ランキング上位に選ばれた傑作や秀作も少なくありません。 1980年代以降は「実録」という名ではなく「社会派」といった言葉で形容されるのが主流になっていきましたが、それでもVシネマの世界などで根強いファンに支えられてきました。近年は70年代の実録シリーズに強い影響を受けた新しい実録路線の映画が生まれ始めています。 ここでは日本映画史で異彩を放つ昭和の実録シリーズから必見の代表的作品を5作、さらにその流れをくみ「平成の実録シリーズ」とも評される新しい作品を1作加えて合計6作品をご紹介したいと思います。

実録シリーズ誕生秘話

1960年代は高倉健や鶴田浩二、藤純子ら大スターが主人公を演じた任侠映画が一世を風靡していました。「人生劇場」や「昭和残侠伝」「緋牡丹博徒」など数々の大ヒットシリーズを生んでいます。 1972年に日本でも公開された『ゴッドファーザー』を観た東映の岡田茂社長が大きな刺激を受けます。そこで和製『ゴッドファーザー』を意識して企画したのが『仁義なき戦い』でした。 それまでの任侠映画が正義と悪の織り成す勧善懲悪なストーリーだったのに対し、『仁義なき戦い』は実際に起こった事件や実在の人物をモデルにしたノンフィクションがベースとなっており、また作品の雰囲気もまさにドキュメンタリーを意識した作りになっている点で「実録映画」と呼ばれるようになりました。 1973年、ついに公開された『仁義なき戦い』は異例の大ヒットを記録します。その後東映は実録シリーズとしてたくさんの作品を量産し、70年代を中心に人気を博すことになったのです。

1.全ては本作から始まった!邦画史に燦然と輝く実録ヤクザ映画の金字塔【1973年】

戦後に勃発した広島ヤクザ抗争の当事者・美能幸三の手記をもとにした飯干晃一のノンフィクションが巨匠・深作欣二の手で映画化されました。それまでの任侠映画とは一線を画す実録スタイルを初めて採用して興行的に大ヒットを記録したばかりか、後年、日本映画史上歴代5位の名作に選ばれたこともあります。 山守組に入った復員兵の広能は敵対する組長を暗殺して服役しますが、出所後には組内部でうずまく新たな権力争いに巻き込まれていきます。血で血を洗う熾烈な抗争の中で生きざるを得ない男たちの壮絶な生き様を鮮烈な映像で描きました。 5部作の人気シリーズと化したほか、新シリーズ3部作、その後も別の監督作品が3作品製作されるなど文字通り実録シリーズを代表する作品です。シリーズ通しての主人公を菅原文太が演じました。

2.カリスマ組長から俳優に転身した異才・安藤昇の主演作!【1973年】

終戦直後の混沌とした銀座を舞台に、自然発生的に生まれ、やがて日本最大の暴力団へと巨大化していく「私設銀座警察」の興亡を描きます。当時の若者たちからカリスマ的人気を博した安藤組組長から俳優へと転身した安藤昇が主演し、梅宮辰夫、渡瀬恒彦ら豪華キャストが共演しました。 昭和21年、欲望と暴力が蔓延する暗黒街と化した銀座で、特攻隊の生き残りや予科練出の男、博徒ら悪党が自然と集まって徒党を組み、次第に暴力団の様相を帯びていきます。 監督を佐藤純彌が務め、本作のほかにも同監督と安藤昇のコンビで「実録安藤組」シリーズが製作されて人気を博しました。

3.究極の実録スタイルがセンセーションを巻き起こす!【1975年】

戦後に名を馳せた実在のヤクザ・石川力夫の壮絶な生き様を描いた藤田五郎の同名ノンフィクションノベルが原作であり、渡哲也が東映初主演で主人公を、多岐川裕美がヒロインを演じました。 終戦直後、テキ屋による闇市が縄張り争いを繰り広げていた新宿を舞台に、際立った狂暴性で頭角を現し、やがて組の掟も破って堕ちていく男の破滅を描きます。 凄惨な暴力はもちろん、麻薬に溺れて中毒に苦しむ姿など、究極のなまなましい描写が衝撃を巻き起こしました。「仁義なき戦い」シリーズと同じく深作欣二が監督を務め、際立ったリアリティで実録映画の中でも極北に位置する作品として非常に高い評価を得ています。

4.ヤクザと癒着した悪徳刑事の生き様と闇を描く!【1975年】

監督・深作欣二、脚本・笠原和夫、主演・菅原文太という「仁義なき戦い」シリーズの黄金トリオが放つ実録シリーズの異色作です。本作では警察側に焦点を当て、ヤクザと癒着することで甘い汁を吸う悪徳刑事の生き様と泥沼の闇に切り込みます。 倉島警察署刑事課に属する久能は、大原組の若衆頭である広谷と裏で手を結ぶ悪徳刑事。そこへ正義感に燃える海田警部補が着任したことで、それまでのぬるま湯と腐敗構造にメスが入ります。 実録シリーズの中でも警察側にスポットを当てた異色さで人気の高い作品です。広谷を松方弘樹、海田を梅宮辰夫が演じ、緊迫の対決とともに宿命的ともいえる生き様が大きな見どころとなっています。

5.壮大なスケールで描く重厚な実録人間ドラマ3部作【1977年】

山口組の3代目組長・田岡一雄をモデルに、全国制覇しようと目論む首領(ドン)の黒い野望と密約うずまく人間模様を描いた飯干晃一の小説が原作です。監督・中島貞夫、脚本・高田宏治のコンビで大ヒットを記録し、野望篇・完結篇へと続く3部作の人気シリーズとなりました。 1作目は田岡をモデルにした中島組の佐倉組長と右腕である若頭の関係を軸に、2作目で東西二大勢力の抗争、3作目では政財界の大物やフィクサーを巻き込んで台頭していく様を描きます。 佐倉組長を佐分利信が演じたほか、三船敏郎や菅原文太、鶴田浩二、松方弘樹ら脇に至るまで配された豪華なオールスターキャストも話題をよびました。実録路線に沿うものであると同時に、従来の任侠映画にも通じるドラマチックな物語性も他の実録シリーズとは趣を異にしています。

6.昭和実録シリーズへのオマージュが満載の新しい平成作品!【2018年】

『仁義なき戦い』があったから生まれたと語る柚月裕子の同名警察小説を、『凶悪』の白石和彌監督が見事に映像化しました。『実録 私設銀座警察』や『県警対組織暴力』など過去作に対するオマージュを随所に散りばめつつ、平成の新しい実録シリーズとして復活させた力作です。 舞台は昭和63年の暴力団対策法施行直前にあった架空の広島・呉原市です。地元の尾谷組と新勢力の加古村組が熾烈な縄張り争いを繰り広げる中、暴力団との黒い繋がりが噂されるマル暴刑事の大上と新米の日岡が、ある男の失踪事件を捜査したことで抗争が激化していきます。 ベテラン刑事の大上を役所広司、日岡を松坂桃李が演じたほか、江口洋介、真木よう子、竹野内豊ら豪華なキャストが脇に配されました。昭和実録シリーズのファンなら必見の作品です。

2018年、『孤狼の血』の公開で再び脚光を浴びる実録シリーズ

『仁義なき戦い』を彷彿とさせる警察小説を映画化した『孤狼の血』がきっかけとなり、再び昭和の実録シリーズにも注目が集まっています。 一般に実話を基にした物語と受け止められていますが、実際の内容は必ずしも事実に沿ったものではなく、かなりの部分で創作が入り混じっています。つまり、実録とは言いながら大衆にアピールするエンターテインメント性をしっかり意識したシリーズだったと言えるのかもしれません。 そんな視点でもう一度、70年代の実録映画や海外の作品、さらに『孤狼の血』や白石監督の過去作『凶悪』など新しく生まれた実録路線の作品まで、じっくり鑑賞してみてはいかがでしょうか。