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映画『仁義なき戦い』5部作のストーリーを、初心者にもわかりやすく解説!

2017年7月6日更新

日本映画史に燦然と輝く『仁義なき戦い』。実話に基づき、20年に渡るヤクザたちの壮絶な抗争を描いた深作欣二監督によるオリジナル5部作について、初心者でもわかるようにストーリーやキャスト、見どころをまとめてみます。

邦画史に残るヤクザ映画の金字塔『仁義なき戦い』とは?

『仁義なき戦い』シリーズ

『仁義なき戦い』とは、もともと作家の飯干晃一が1972年に発表した実録小説。戦後の広島で勃発したヤクザの壮絶な抗争を描いたノンフィクションで、当事者である美能幸三の手記が基になっています。

監督・深作欣二、主演・菅原文太で映画化されたシリーズは、実在の人物の名前を変更した上で脚色が施されていますが、上記実録をそのまま題材にしています。1973年から1974年のわずか1年半あまりの間に公開されたシリーズ全5作は、日本中で大ヒットを記録。後年、キネマ旬報が「日本映画史上ベストテン」の歴代第5位に選出するなど高い評価を受けています。

深作オリジナル5部作の他、新シリーズとして3作品、別の監督が手掛けた3作品が存在していますが、ここではオリジナル5部作のストーリーと見どころを初心者にもわかりやすく、なるべく簡潔に解説してみます。

まず頭に入れたい!5部作全体のあらすじ・キャストについて

飯干『仁義なき戦い』

1作目から完結篇の5作目に至るまで、おおよそ20年間に渡る抗争が描かれますが、単純な時系列の一代記ではありません。シリーズ通しての主人公は、美能幸三をモデルにした、菅原文太演じる広能昌三ですが、作品の中には別の人物が主役になっているものや、同一人物を異なるキャストが演じているケースもあるので一部注意が必要です。

例えば主要人物では、大友組組長・大友勝利を2作目では千葉真一が、5作目では宍戸錠が演じています。また北大路欣也、松方弘樹、梅宮辰夫、渡瀬恒彦などは別の役名で登場したりもします。

しかし、5作品で一つの時代が描かれることに間違いはありません。戦後の混乱期の中から、勢力を増していく暴力団と若者たちの姿、やがて組同士の壮絶な抗争へと発展していき、政治的権力を求めるに至る新たな世代へと変貌していく20年の流れが、一人の男・広能昌三の生き様を軸に描かれていくのです。

不朽の名作と称えられる衝撃の第1作【1973年1月13日公開】

『仁義なき戦い』

終戦直後、闇市が蔓延する広島県呉市。一人の復員兵・広能昌三が友人のため犯した殺人による服役から出所後、山守組の一員になります。敵対する土居組組長を暗殺して再び服役。仮出所した広能を待っていたのは、山守組の内部抗争でした。

若頭の坂井一派と幹部の新開一派で、坂井派が勝利。ところがその力を恐れた山守組長は広能に坂井暗殺を命じます。身内の争いに嫌気がさした広能は組を去ることを決意しますが、とうとう暗殺されてしまった坂井の葬儀に戻ってきます。無念の銃を手に……。

第1作の見どころはここ!

菅原文太演じる若き広能昌三がいよいよ登場。金子信雄扮する組長の山守義雄、田中邦衛扮する幹部の槙原政吉、内田朝雄扮する呉を仕切る長老の大久保憲一など、シリーズを通して主要キャラクターとなる人物が紹介されます。

そして本作で注目すべきは、組のためを思って立ち上がり命を落とす山守組若頭・坂井鉄也。演じる松方弘樹の壮絶な演技とともに、若者たちの情熱と挫折、そして男の絆が胸を打つ不朽の名作です。

村岡組若衆の山中正治を主軸に据えたスピンオフ的位置づけの第2作【1973年4月28日公開】

『仁義なき戦い 広島死闘篇』

戦後のどさくさもよくやく収まりかけた昭和20年代後半。村岡組と大友連合会(大友組)が熾烈な縄張り争いをしているところに、元復員兵の山中正治が刑務所から出所してきます。村岡組組長の姪である靖子と男女関係になった山中は、村岡組に入り、最前線の先鋒として両者の壮絶な闘争に身を投じることになるのです。

一方、山守組と縁を切り、自身の広能組組長となっていた広能も、山中と刑務所で知り合いだったことから、否応なく抗争に巻き込まれていきます。

やがて村岡組組長の裏切りを知った山中は、復讐のため服役していた刑務所を脱獄。しかし、組長らの策略に乗せられたまま、非業の最期を迎えることになります。

第2作の見どころはここ!

無鉄砲で不器用な主人公・山中正治を演じた北大路欣也の男の魅力がさく裂。敵対する大友組組長の大友勝利には千葉真一が扮し、若き二人の対立が本作の最大の見せ場になっています。当初、二人のキャスティングはそれぞれ逆だったそうです。

また、山岡の女となる靖子を演じたのが梶芽衣子。男たちの血みどろの物語が展開する中、切ない男女の悲恋が描かれるところに、本作独特の面白さがあります。

主役であるべき菅原文太が事実上の脇の存在に回ったことで、一時は降板騒ぎもあったようです。

広島から西日本を巻き込んだ混迷の群像劇へと進む第3作【1973年9月25日公開】

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時は進んで昭和35年。広島市を牛耳る最大組織となっていた村岡組で跡目争いが勃発。その本命である打越組の打越、その他の村岡組幹部たち、さらに呉市を仕切る山守組など、腹黒い策略と思惑が入り混じる抗争へと発展していきます。

自身の組を作り、いったんは離れていた広能も、強引な形で山守組の傘下に引き戻され、否応なく跡目争いに端を発した権力闘争に巻き込まれていきます。

やがて抗争は、西日本最大の組織である神戸の明石組をも巻き込み、多大な犠牲を伴う無慈悲な闘争へと進んでいくのです。

第3作の見どころはここ!

新たに登場する多彩なキャストたちが、壮絶な群像劇を彩ります。村岡組の幹部たちを演じる小林旭、成田三樹夫、山城新伍らの腹の探り合い、山口組をモデルにした神戸の明石組組長・明石辰男を演じる丹波哲郎の貫禄、その幹部である岩井信一を演じる梅宮辰夫など、さながらオールスターキャストの趣です。とりわけ、当時日活を代表するスターだった小林旭が出演したことで、また新しい魅力が加わりました。

そんな中、再び正真正銘の主役に舞い戻った菅原文太が、さすが圧倒的存在感で広能を演じます。広能組の若頭として川谷拓三と渡瀬恒彦も登場。

第2作目がスピンオフ的な位置づけだったため、本作が第1作目の実質的な続編とみる向きもあります。

熾烈を極めたヤクザ抗争の終焉を描く第4作【1974年1月15日公開】

『仁義なき戦い 頂上作戦』

昭和38年に入っても、西日本を巻き込んだ暴力団抗争は激化を極めていました。破門された広能組ら連合と山守組との間の抗争は、もはや二大広域暴力団である明石組と神和会の代理戦争と化していました。

そんな中、一般市民を巻き込む抗争についに警察権力が介入します。「頂上作戦」の名のもと、次々と組のトップや幹部を逮捕。本腰を入れた暴力団撲滅運動に乗り出すのです。

日本のやくざ史において「第二次広島抗争」とも呼ばれた一連の抗争がどのような形で終焉を見るのか、なまなましい幕引きが描かれます。

第4作の見どころはここ!

目覚ましい高度経済成長と、東京オリンピックを翌年に控えた昭和38年。戦後、闇市から次第に勢力を増していた暴力団というものに社会の厳しい目が向けられ始めたことが、本作の背景にあります。

警察の頂上作戦によりついに逮捕された菅原文太扮する広能と小林旭扮する武田が、裁判所の廊下で短い会話を交わすラストは、映画史に残る名シーンだと言われています。闘争が終わり、一つの時代が終焉を迎えたことを予感させ、さらに日本という国が大きく変わっていくことをも密かに暗示しているのです。

終焉から世代交代がもたらす新たな抗争を描く第5作【1974年6月29日公開】

『仁義なき戦い 完結編』

抗争終焉とともに、広島最大の組織となっていた山守組は、政治結社「天政会」を名乗っていました。理事長の松村は、会を強固なものにしようとあれこれ画策。

やがて昭和40年代に入ると、警察による頂上作戦で服役していた組長や幹部たちが少しずつ出所してくるようになります。すると新旧交代の流れの中で新たな抗争が勃発し、流血が再燃します。

昭和45年になってよくやく出所してきた広能。その様相、まだ若い名もなき暴力団員の死を目の当たりにし、ついに引退を決意するに至るのです。

第5作の見どころはここ!

第4作で事実上の終焉となっていたため、1作目からずっと脚本を担当してきた笠原和夫が続編を拒否して降板。新たに高田宏治が担当したことで、ややこれまでとは異なる色合いを帯びた作品となっています。

第2作目で山中正治を演じた北大路欣也が、天政会理事長の松村保役で再登場。また、1作目で坂井鉄也を演じた松方弘樹が、市岡組の市岡輝吉役で再登場するなど、5部作の集大成的キャスティングが話題になりました。再登板がかなわなかった千葉真一に代わって、宍戸錠が大友勝利を演じています。

ついにヤクザ引退を決意するに至る広能の苦悩や生き様を最後まで見届けましょう。