巨匠・深作欣二のおすすめ映画8選【『仁義なき戦い』他】

2018年6月6日更新

『仁義なき戦い』や『バトル・ロワイアル』など数々の名作・問題作を送り出した深作欣二。映画界に確かな足あとを残した巨匠・深作欣二の経歴やおすすめの作品をご紹介します!

世界の映画人に影響を与えたアクション・ヤクザ映画の巨匠・深作欣二

ヤクザ映画の金字塔となった「仁義なき戦い」シリーズで広く知られる深作欣二。それ以外にも晩年の『バトル・ロワイアル』はじめ多数の話題作やヒット作を連発し、日本映画界に確かな足あとを残した巨匠の一人です。 千葉真一を世界的アクションスターへと押し上げ、またクエンティン・タランティーノやジョン・ウーら今をときめく映画監督に多大な影響を与えたこともよく知られています。 末期ガンで闘病中も新作の製作を発表し、映画監督として壮絶な生き様をみせました。ここではそんな深作欣二の経歴を簡単にまとめたあと、おすすめの代表作8作品を選んでご紹介したいと思います。

深作欣二のプロフィール

深作欣二は1930年7月3日、茨城県緑岡村(現在の水戸市)に生まれました。日本大学芸術学部を卒業後、1953年に東映に入社してキャリアをスタートさせます。 1961年に『風来坊探偵 赤い谷の惨劇』で監督デビューを果たすと、同作に初主演した千葉真一とのコンビで次々とヒット作を連発しました。1973年に始まった「仁義なき戦い」シリーズは異例の大ヒットを記録し、その後はさまざまなジャンルの話題作を多数手掛けて巨匠の地位を不動のものとしています。 映画作品のみならず、テレビでも『キイハンター』や『傷だらけの天使』『Gメン'75』など伝説のドラマの演出を手掛けるなど、際立った独特の世界を確立しました。 2003年1月12日、前立腺ガンにより72歳で他界します。闘病を続けながら製作を発表し、息子である深作健太が監督を代行することになった作品『バトル・ロワイアルII 鎮魂歌』が遺作となりました。

1.大ヒットシリーズ化したヤクザ映画の金字塔!【1973-1974年】

戦後の広島で実際に勃発したヤクザ抗争に迫った飯干晃一のノンフィクションノベルが原作であり、1973年から74年の間に全5部作で公開されるや異例の大ヒットを記録したのが「仁義なき戦い」シリーズです。 シリーズ通しての主人公に菅原文太を迎え、熾烈なヤクザ抗争における裏切りや義理人情、暴力に生きざるを得ない若者たちの激しい生き様を描きます。それまでの任侠映画とは一線を画する実録スタイルが大きな衝撃をもたらしました。 深作欣二は本5部作のほか、新シリーズ3部作を手掛けるなど、文字通り代表作となりました。2009年にはキネマ旬報により、日本映画史上のオールタイム・ベストテン第5位に選ばれています。

2.渡哲也を主演に迎えた実録ヤクザ映画、知る人ぞ知る傑作【1975年】

藤田五郎の同名小説を原作に、実在した伝説のヤクザ・石川力夫の狂気と破滅的人生をすさまじいまでのリアリティで描いた実録ヤクザ映画の傑作です。日活アクションスターだった渡哲也の東映での初主演作としても知られています。 終戦直後の混乱期にあった新宿で、熾烈な縄張り争いの末に頭角を現し、やがてヤクザ社会のルールすら逸脱して破滅へと突き進んでいく男の人生を描きます。 陰惨極まる暴力シーンにくわえ、麻薬に溺れていく姿など「仁義なき戦い」シリーズとは異なる生々しさで、後年になるに従い紛うことなき傑作との評価が確立した作品です。鬼気迫る狂気で演じた渡哲也に対し、悲劇のヒロインを多岐川裕美が演じました。

3.菅原文太が今度は刑事に!実録ヤクザ映画の異色作【1975年】

「仁義なき戦い」シリーズの大ヒット以後、東映が次々と量産した実録ヤクザ映画の中でも警察側に焦点を置き、県警とヤクザの癒着を描くという異色の内容で評価の高い作品です。シリーズで確たるヤクザ像を打ち立てた菅原文太が本作では警察側に回り、主人公の悪徳刑事を演じています。 広島抗争を背景に、暴力団である大原組と裏で癒着する倉島警察署刑事課の久能徳松。ところが一人のエリート刑事が着任したことで、久能と大原組の若衆頭・広谷の間で結ばれていた密約にヒビが入り始めます。 広谷を松方弘樹、派遣されてきたエリート警部補の海田を梅宮辰夫が演じました。深作欣二監督のもと、脚本の笠原和夫など「仁義なき戦い」シリーズのスタッフがそのまま結集しています。

4.豪華オールスターが勢揃い!深作欣二初の時代劇大作【1978年】

主演に萬屋錦之介を迎えたほか、千葉真一、松方弘樹、三船敏郎、山田五十鈴などオールスターキャストを配し、東映が12年ぶりに製作した時代劇大作です。歴史的事実とフィクションを大胆に織り交ぜた荒唐無稽のストーリーが話題をよび、大ヒットを記録しました。 徳川幕府の二代将軍・秀忠の長男と次男の間で巻き起こった次期将軍をめぐる跡目争いを描きます。秀忠はじめ大勢が次男の忠長を推すなか、長男の家光派だった松平伊豆守は柳生但馬守宗矩に内密をもちかけます。 深作欣二にとって初の時代劇となり、本作の成功によってヤクザ映画一筋のイメージから大きく脱皮するきっかけになりました。

5. 原作はつかこうへいの直木賞受賞作!笑いあり涙ありの傑作人情喜劇【1982年】

映画が「キネマ」だった時代の撮影所を舞台にした人情模様を描いたつかこうへいの直木賞受賞戯曲が原作であり、つか自身が脚色を手掛けました。松竹と角川春樹事務所の共同製作となり、さらに撮影は東映の京都撮影所で行われるという異例の企画も話題になり、各映画賞を独占しました。 スター俳優の銀ちゃんから妊娠した恋人である小夏の世話を頼まれた大部屋役者のヤス。小夏と生まれてくる赤ちゃんのために体を張って仕事をするヤスでしたが……。3人の奇妙な三角関係、友情と愛を活気あふれる撮影所を舞台に描きます。 銀ちゃんを風間杜夫、小夏を松坂慶子、ヤスを平田満が魅力的に演じました。クライマックスの階段落ちは涙なくして観ることができない名シーンとなり、深作欣二の新境地として興行的にも大ヒットを記録しました。

6. 壇一雄の遺作にして自伝的ベストセラー小説の映画化【1986年】

家族を捨て、自由奔放に生きた無頼派の作家・壇一雄の遺作にして自伝的同名小説の映画化です。檀一雄の異父弟である高岩淡が企画し、実娘の檀ふみが自身の祖母役で特別出演したことも話題をよびました。 一雄には2人の妻との間に5人の子供がいましたが、次男が病から重い障害を患ったことで後妻のヨリ子が宗教にのめり込むことに……。一方の一雄も新劇女優と恋に落ち、やがて家を出て同棲を始めてしまいます。 主人公を緒形拳、後妻をいしだあゆみ、愛人を原田美枝子が演じました。泥臭く濃密に生きる男女の生き様を、深作欣二が大胆かつ骨太なタッチで描いています。

7.歴史的人物が多数登場!大正ロマン渦巻く人間模様を描いた文芸大作【1988年】

ロマンあふれる大正時代を舞台に、歌人の与謝野晶子を中心に個性的な人物たちが愛・芸術・信念に生きる姿を豪華キャストで描いた群像劇です。 全てを捨てて恩師・与謝野寛のもとに嫁いだ与謝野晶子。11人の子育てとうつ病を患う夫の世話をしながら女流歌人として頭角を現しますが、やがて作家の有島武郎と出会い、恋に落ちてしまいます。 与謝野晶子を吉永小百合、与謝野寛を緒形拳、有島武郎を松田優作が演じたほか、舞台女優の松井須磨子を松坂慶子、活動家の大杉栄を風間杜夫など当時の名士たちを豪華な顔ぶれが演じました。深作欣二監督のもと、衣装やインテリアなど見事に再現された大正時代の雰囲気も見どころです。

8.社会問題化した超過激バイオレンス・アクション!【2000年】

あまりに過激な内容から賛否両論巻き起こしていた高見広春の同名小説を、深作欣二がダイナミックに映像化し、社会問題と化す衝撃作となったバイオレンス・アクションです。藤原竜也が主演し、ビートたけしが教師役で登場しました。 大不況で混乱に陥った近未来を舞台に、新たに制定された「BR法(新世紀教育改革法)」に従い選ばれた中学3年生の1クラスが無人島に集められ、互いに殺し合いをさせられるというサバイバルゲームが繰り広げられることになります。 作品は国会で取り上げられるなど社会問題と化して大ヒットし、キネマ旬報の年間第5位に選ばれるなど批評家筋からも高い評価を得ました。 翌年にはR15指定のため観ることができなかった中学生も鑑賞できる『バトル・ロワイアル【特別篇】』、2003年には続編『バトル・ロワイアルII 鎮魂歌』が深作欣二の遺作として公開されました。

唯一無二の映画監督として壮絶に生きた深作欣二

「仁義なき戦い」シリーズなどアクション・ヤクザ映画の傑作を次々と送り出した前半期から、重厚な人間ドラマや時代劇、文芸大作など幅広いジャンルでヒット作を連発した後半期まで、深作欣二の活躍ぶりはまさに巨匠にふさわしいものでした。 前立腺ガン脊椎転移の公表と同時に『バトル・ロワイアルII 鎮魂歌』の製作を発表し、なんとかクランクインに辿り着いてわずかながらも撮影を敢行するという、映画監督として壮絶な最期をみせつけました。 深作欣二が遺した数々の名作だけでなく、そんな生き様が世界の多くの映画人から尊敬されていることは間違いありません。