【ネタバレ考察】『ファインディング・ドリー』が大ヒットした5つの理由
【地上波初登場】『ファインディング・ドリー』がヒットしたワケとは?
全米でオープニングの興行収入が1万3000ドルを達成し、アニメ映画史上最高の記録を樹立した『ファインディング・ドリー』。2018年6月に公開(日本公開は2018年8月1日)された『インクレディブル・ファミリー』に越されてしまったものの、その記録はそれまで保持され続けていました。 そして今回金曜ロードショーでの地上波初放送を踏まえ、なぜこんなにもヒットしたのか、ストーリーや制作などの目線から考察していきます。ネタバレもしているので未視聴の方は注意してください!
あらすじ、吹き替え声優はこちらをチェック
1.ドリー自身のキャラクターの魅力度の高さ
子供時代のドリーが可愛すぎる
It runs in the family...or at least she thinks it does. #BabyDory #FindingDory pic.twitter.com/FtYkVBYYRR
— Finding Dory (@findingdory) October 4, 2016
何と言っても子供ドリーが可愛すぎる!というのが本作や予告を見た方の最初の印象なのではないでしょうか?スローン・ミュレーが声優を担当、吹き替え版は青山ららが演じており、どちらも舌ったらずな様子や歌を歌っている姿が視聴者の母性をくすぐります。 また、吹き替え版では「私何でもすぐ忘れちゃうの」と言っており、実際に両親とのかくれんぼで10秒数える間に何をしているか忘れてしまっています。また、ドリーたち家族の家のすぐそばには激流があり、そこへ行ってはいけないという両親の教えすら忘れてしまい、ドリーは激流に流され両親と離れ離れになってしまうというわけです。
ドリーの底抜けな明るさに救われる
そんな忘れん坊のドリーですが、自分の欠点について自ら笑いにする強さも併せ持っています。例えば、「ニモを探しに行ったことを昨日のように覚えてる」と言った直後に「まあ昨日のことは覚えていないけどね」と言ってニモの笑いを誘っています。 また、両親について思い出した時など、「無茶は得意よ」と言っている通り、まっすぐ突き進みます。その姿勢に対してマーリンや一緒に両親探しをするハンクは少し戸惑いつつも、思わず協力し、良い方向に向かっていくのです。
2.感動の中に散りばめられた「笑い」
人気芸能人が本人役として登場する驚きのギャグ
「ドリー」ではピクサー史上初となる、「芸能人が本人役として登場する」というギャグが練りこまれています。字幕版では『アバタ―』や「エイリアン」シリーズの女優・シガニー・ウィーヴァーが出演、日本語字幕版では歌手の八代亜紀が本人役として出演しました。 どちらも海洋生物研究所のアナウンス役で自ら名乗っており、それに対してドリーが吹き替え版の場合は「ああ、どうも、八代さん。助けてもらえない?」と返しています。つまり「ドリー」ではフィクションの世界に実在する人物が登場する、というメタ的な笑いが含まれているのです。
大人がクスッとできるシーン
エイ先生が子供たちを引き連れる遠足にドリーが助手としてついていくことになった際、ママとパパの話になり「おーあーあの授業?私がやるの?皆にはまだ早いと思うけど......2匹の魚が恋に落ちて......」と言いかけたドリー。それにエイ先生が思わず「歌を歌いたくなっちゃったなー!」と遮っているシーンは大人ならクスッとしてしまうのではないのでしょうか?
子供にもわかりやすいギャグ
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「オープンオーシャン」という言葉を、ドリーは「お風呂の父(とう)ちゃん」や「ロコモーション」と言い間違えをしてしまいます。それに対してハンクやデスティニー、ベイリーはすぐさま「オープンオーシャン!」とツッコミを入れるのです。 また、アビのベッキーというキャラクターがいるのですが、このキャラクターが面白いのです。例えば、マーリンをすごい勢いでつついたり、大好きなポップコーンを見つけると、それが入っていた紙コップまで食べてしまいます。 この子供にも受ける分かりやすいギャグが「ドリー」には沢山含まれています。
3.どのキャラクターにも決して手を抜いていない
『ファインディング・ドリー』では主人公のドリーやニモ、マーリンだけでなく新しく登場したハンクやデスティニー、ベイリーなどのキャラクターにも決して手を抜いていないのも人気の高さにつながっているのではないでしょうか? 皆それぞれどこか欠けていますが、仲間によってそれを克服していく様子が「ドリー」ではきちんと描かれているのです。
タコのハンク
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ハンクは7本足のタコで、ぶっきらぼうである反面、人間の子供に足をちぎられたことが原因で子供をひどく怖がっています。ドリーとともに触れ合い水槽に迷い込んだ際、子供に触られ思わず墨を吐いてしまったことがハンク自身恥ずかしいことでしたが、ドリーに「大丈夫、誰でもやることよ。恥ずかしくないよ」とフォローされ、救われるのです。 また、ハンクは最初「海にはいい思い出がない」とか「元気?うん元気!みたいな挨拶はごめんだ」と言っていました。ドリーとともに過ごし、様々なことに挑戦したことや半ば強引な説得によって、ドリーと海に帰ることにします。 つまり、子供への恐怖心や大勢との交流に対しての嫌悪感というネガティブな部分が彼女の明るさによって最終的には克服されるというストーリーがきちんと描かれているのです。
シロイルカのベイリー
Happy 4th of July from #FindingDory! #FourthofJuly pic.twitter.com/MAu6lxnuE0
— Finding Dory (@findingdory) July 4, 2016
ベイリーは頭をぶつけたことで、シロイルカの能力である「エコロケーション(反響定位)」を使うことができないと思い込んでいます。エコロケーションとは超音波を発することによって物体との距離や動きを把握することができる能力を指します。 しかし、ドリーがパイプの中で迷ってしまった時、ドリーが助けを求めた時にはじめは無理だと言っていたベイリーは「自分を信じて」とデスティニーに叱責され、挑戦したことでエコロケーションを使うことができるようになりました。それに対して「人生バラ色!」と自信を取り戻すことができたのです。
ジンベイザメのデスティニー
Happy #InternationalWhaleSharkDay from our favorite ????. #FindingDory pic.twitter.com/ufFi8LQNID
— Finding Dory (@findingdory) August 30, 2016
デスティニーは目が悪く、魚なのに泳ぐのが下手でよく壁にぶつかってしまいます。隣の水槽のベイリーに手伝ってもらい練習するのですが、なかなか上達せず。 しかし、ニモが再び助けを求めた際、デスティニーとベイリーは海に飛び込もうとするのですが「できない」とためらいます。そこでベイリーは「僕は世界最高のメガネを持っているから君の目になる」「海には壁がないんだ」と励ますことで勇気を出し、海に飛び込むのです。 そうしてハンク、デスティニー、ベイリーは海の仲間となりました。
4.魚の物語に見せかけた人間の物語を描いている
本作の監督・脚本を手がけた、アンドリュー・スタントンは物語について、「あるゴールに向かって、人間とは何かというこに対しての理解を深める真理を概念的に確かめるもの」と語っています。つまり、その物語の主人公が魚やおもちゃであろうと、結局は人間の話をしているのです。 では、どこにそれが見られるのでしょうか?それを考察していきたいと思います。
幼い子を持つ親への共感
前作の『ファインディング・ニモ』ではドリーはただ忘れっぽいだけだという印象でしたが、ドリーの幼少期が描かれたことで、ドリーは「短期記憶障害」を持っていることが判明しました。実際字幕版で、ドリーは言い間違えていますが「I suffer from short-term memory loss.(私、短期記憶障害を患っているの)」と言っています。 それに対してドリーの両親は「激流の歌」を作ってドリーが激流に行かないようにしたり(結局忘れていしまいますが)、自己紹介で「何でもすぐに忘れちゃうの」と言えるようにしたりとドリーが今後生きていきやすいように教育しています。 また、幼いドリーのためにお父さんは「パパ」ではなく「友達」としてドリーに接したりと、子供を持つ親なら共感できるような点が多々あるのではないでしょうか。
物語が視聴者にもたらす驚き
アンドリュー・スタントンはまた、「すぐれた物語が驚きをもたらすことで『他の人がしてくれたように、他の人にもなさい』と悪魔の塔の呼びかけで、眠っていた指令が突然動き出すのです」と語っています。つまり、『ファインディング・ドリー』でも視聴者が思わず何かしたくなるような驚きが含まれているのです。 例えば、ドリーのお父さんは「難しいことにぶつかったらいつでも他に道がある」とドリーに教えています。ドリーは独り言が他の魚より多く、その独り言からいろいろなことを思い出したり、思いつくのですが、それは潜在的に親の教えからきているものなのではないのでしょうか。 ドリーが思いつくのは「ベビーカーに乗ってオープンオーシャンに行く」など無謀なアイデアばかりですが、マーリンは無茶な思いつきをするドリーに対して、「僕がニモを見つけられたのはドリーのアイデアのおかげだ」と感謝します。つまり、ここでは視聴者がドリーのように、無茶なアイデアでも行動することの重要さに気づくのです。
5.続編ならでは!『ファインディング・ニモ』の伏線回収、キャラクターが再登場
なぜドリーは字が読めるのか
前作でダイバーのゴーグルに書いてある字をマーリンは読めませんでしたが、ドリーが読めたことについて特にその時は触れられていませんでした。しかし、本作でドリーが海洋生物研究所という人間の世界に住んでいたことが明らかになったことで文字が読めたり、人間の言葉がわかる理由が判明したのです。 また、「エコロケーションとは何か」ということや「タコには心臓が3つある」という水族館のパネルに書いてある豆知識をドリーが知っていたということが、ドリーがかつて水族館にいたということを証明するものとなっていました。
前作のキャラクターが再登場
『ファインディング・ニモ』に登場した矯正器具をつけた女の子を覚えていますか?そう、誕生日に魚をプレゼントさせてはその日のうちに死なせてしまう「ダーラ」のことです。実はダーラは「ドリー」にも出演していました。海洋生物研究所でドリーが入れられた水槽の後ろに見える写真に彼女が写っているのです。 また、前作のエンディングで水槽から脱出したタンク・ギャング達が実は再登場。エンドロールが終わり、アシカのコンビのそばを袋のまま移動してきた彼らでしたが、海洋生物研究所の職員によって連れて行かれ(助けられ)てしまうのです。果たして彼らは治され、海に返されるのでしょうか......?
『ファインディング・ドリー』のラストは......?
海に戻ってきたマーリンがドリーの横に行くと、彼女は両親とのあるやりとりを思い出していました。それは、貝殻をたどって家に帰ってきたドリーに対して両親が投げかけた「あなたはね、やろうと思えばなんだってできるのよ」という言葉でした。 そして、「本当に見事な景色だね」というマーリンに対し、「ずっと忘れない」と返すドリー。ここで物語は終わりを迎えます。 今回の地上波放送を見た後にでも前作『ファインディング・ニモ』を見返すのも良いかもしれませんね!