【ネタバレ考察】韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』がヒットした4つの理由【日本でリメイク】
【ネタバレ注意】『サニー 永遠の仲間たち』はなぜ大ヒットしたのか?
韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』は、2011年に公開されるやいなや韓国で700万人の観客動員数の大ヒットを記録。2012年に日本でも公開され、数々の著名人などからも高評価を得ました。そして、2018年8月31日に大根仁監督、豪華キャストにより日本で『SUNNY 強い気持ち・強い愛』としてリメイクされることに! そこで、日本リメイク版の公開を前に、あらすじやキャストを紹介、また何故『サニー 永遠の仲間たち』はヒットしたのか考察していきます。
【あらすじ】懐かしいあの頃と現在の間で
結婚して、家族とともに幸せな生活を送っているイム・ナミは、ある日母の入院している病院で偶然、25年前の高校時代の友人ハ・チュナと再会します。ナミとチュナは高校時代の仲良しグループ「サニー」の仲間でした。しかし、ナミはチュナが余命2ヶ月のがんであること、「サニー」の仲間たちと再会したがっていることを知ります。 ナミたちのグループ「サニー」のメンバー7人は、25年前のとある出来事で離れ離れになっていました。ナミは、余命幾ばくもないチュナのために「サニー」のメンバーを探しに行きます。そのうちに、輝いていた高校時代の想い出が蘇り......。
【軽くネタバレあり】華やかなキャストたち
イム・ナミ/ユ・ホジョン&シム・ウンギョン(写真中央)
高校時代のナミ(シム・ウンギョン)は、地方からソウルの高校に転校してきますが、その冴えない姿からクラスメイトに目をつけられることに。しかし、「サニー」のリーダー的存在であるチュナにグループに招かれ、メンバーとなります。 現在のナミ(ユ・ホジョン)は、良妻賢母として暮らしており、用事があってたまたま立ち寄った病院でチュナと再会。チュナの願いを叶えるために奔走します。 シム・ウンギョンは子役として、『ファン・ジニ』(2006年)や『太王四神記』(2007年)に出演していました。最近では『怪しい彼女』(2014年)などに出演。若手の有望株です。ユ・ホジョンはソウル文化大学映画学科で教授も勤めています。
ハ・チュナ/チン・ヒギョン&カン・ソラ(右から3番目)
高校時代のチュナ(カン・ソラ)は、「サニー」のリーダーで義理堅い性格。クラスメイトのサンミにいやがらせを受けていたナミを「サニー」に誘ったのがチュナでした。 現在のチュナ(チン・ヒギョン)は、肺がんで余命2ヶ月しかありません。そのため「サニー」の仲間たちに会いたいと言います。 カン・ソラはドラマ『ミセン―未生―』(2014年)などで活躍する女優。チン・ヒギョンはモデルもこなす女優です。
キム・チャンミ/コ・スヒ&キム・ミニョン(上は左端、下は左から2番目)
高校時代のチャンミ(キム・ミニョン)の家庭は裕福で、家も「サニー」の仲間たちの集まる場として使われていました。 現在のチャンミ(コ・スヒ)は、保険会社に勤めていますが業績がいいわけでもなく、夫が事業に失敗したために、暮らし向きはあまり良くないようです。 キム・ミニョンは多くのドラマに出演している女優。コ・スヒは包容力のある体型が特徴なので、ドラマや映画で一度は目撃したことはあるのではないでしょうか。
ファン・ジニ/ホン・ジニ&パク・チンジュ(上は左から2番目、下は左から3番目)
高校時代のジニ(パク・チンジュ)は、国文学者を父に持ち、幼い頃の夢が悪口辞典を編纂することだったというだけあって、よく悪口を言う少女でした。 現在のジニ(ホン・ジニ)は、教養ある奥様として生活しています。しかし、夫には浮気をされてしまい......。 パク・チンジュは本作で映画デビューをした女優です。ホン・ジニはドラマ『商道』(2001年)などで知られています。
ソ・クムオク/イ・ヨンギョン&ナム・ボラ(それぞれ右から2番目)
高校時代のクムオク(ナム・ボラ)は、歯科医の娘でした。朗らかな性格で「サニー」のムードメイカー的存在でした。 しかし、現在のクムオク(イ・ヨンギョン)は、再開発地区の小さなアパートで暮らしています。 ナム・ボラは『太陽を抱く月』(2012年)などで知られる女優です。イ・ヨンギョンは元歌手の女優です。
リュ・ポッキ/キム・ソンギョン&キム・ボミ(それぞれ右端)
高校時代のポッキ(キム・ボミ)はミスコリアに憧れる少女でした。しかし、夢をあきらめ、学校も中退します。 現在のポッキ(キム・ソンギョン)は、夢やぶれたのち、酒場で働いています。アルコール依存症で情緒不安定です。 キム・ボミは『九家の書』(2013年)などに出演している女優、キム・ソンギョンは『太王四神記』(2007年)などに出演している女優です。
チョン・スジ/ユン・ジョン&ミン・ヒョリン(下の左端のみ)
高校時代のスジ(ミン・ヒョリン)は口数も笑顔も少ない「サニー」いちの美人でしたが、どこか影のある少女でした。現在のスジ(ユン・ジョン)は、劇中の最後に少しだけ出演し、生前のチュナには会えませんでした。 ミン・ヒョリンは、BIGBANGのSOLのソロ楽曲のミュージックビデオに出演したことが縁で、2018年には彼と結婚しました。 ユン・ジョンは本作に特別出演した女優です。彼女は主にCMモデルとして活躍しています。監督のカン・ヒョンチョル氏が、映画の最後のワンカットを飾るには華やかな彼女が必要だとキャスティングしたそうです。
イ・サンミ/チョン・ウヒ
サンミはナミが転校してくる前は、「サニー」のメンバーと仲が良かったのですが、シンナーを吸っているということを「サニー」のメンバーに知られ、絶交状態に。さらに、彼女は「サニー」のメンバーの仲を引き裂いてしまうことに......。 チョン・ウヒは映画に主に出演しており、代表作は『ハン・ゴンジュ 17歳の涙』(2014年)などがあります。
【ネタバレ考察】何故『サニー 永遠の仲間たち』は700万人に受け入れられたのか
1.懐かしい昔の音楽が使われている
『サニー 永遠の仲間たち』の劇中には、シンディ・ローパーの「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」などの80年代の洋楽や、韓国歌謡がふんだんに使われています。このことが映画がヒットした要因のひとつではないでしょうか。 日本でもいつの頃からか、ドラマの劇中に懐かしの曲が使われていたりします(朝の連続テレビ小説『てるてる家族』での昭和40年代の楽曲や『半分、青い。』での80〜90年代の楽曲など)。これらの楽曲が、該当の世代の方々には懐かしく、その世代を知らない方々には新鮮にうつったのではないでしょうか。そういう現象が、韓国国内でも起こったのではないかと考えられます。
2.登場人物が誰にでも当てはまりうる境遇である
韓国ドラマや映画といえば、突然の交通事故での記憶喪失やドロドロの恋愛関係などあまり日常では遭遇しないような設定が盛り込まれていて、あまり自分たちの身には関係ないのではという印象があります。 しかし本作を観た観客たちが、作品に出てくる登場人物たちの境遇を「これは私の身の上を描いている」と共感したために、たくさんの人からの共感を得たのではないでしょうか。 例えば、大人になってからのナミやジニは割と安定した生活を送りと、ポッキは夢破れた者として描かれています。チャンミやクムオクも、決して充実した人生を送っているようには見えません。 韓国では、日本以上に勝ち組・負け組がはっきりしていて、良い大学に進学できないと一流企業には勤められないとも言います。 だからこそ、監督は多様な境遇の登場人物を描くことで観客の心に訴えたのだと考えられます。
3.重たいテーマを重たく見せない工夫
本作では現在のシーンではチュナの病気、ポッキの酒浸り、チャンミやクムオクの暮らし向きなど、決して明るくない面を描いています。さらに、彼女たちが過ごしてきた学生時代(80年代)の韓国には、まだまだ規制などがありました(オリンピックを控えて、音楽や外国映画の規制は緩和されていたようですが......)。 そんな重たい環境や時代背景をそのまま表現してしまうと、観客もうんざりするはずです。そのため、登場人物たちの喜怒哀楽をはっきりさせて、感情移入させる配慮がなされているように見受けられます。 さらに、80年代後半を描くにあたり、音楽にのせて登場人物が踊るシーンなども、当時の空気を重く見せないようにする工夫だったのではないのでしょうか。
4.ヒットの一方で結末に対しては賛否両論も......
物語の最後、死期が近づいた未婚のチュナは「サニー」のメンバーのうち暮らし向きが芳しくないメンバーに、自分の財産を分け与えてメンバー皆が幸せに暮らしていけるように配慮をします。 ただ、「この部分だけが急に非現実的に描かれているのではないか?」という意見や「全体的に良かった」という真反対の意見が韓国のネットユーザーから見受けられました。 しかし、この賛否両論の口コミがどんどん広がり、結果としてヒットにつながったのではないでしょうか。
日本リメイク版『SUNNY 強い気持ち・強い愛』は2018年8月31日公開
『サニー 永遠の仲間たち』の日本リメイク版『SUNNY 強い気持ち・強い愛』は、映画『モテキ』(2010年)などで知られる大根仁監督がメガホンを取りました。時代設定は現代と90年代後半です。 90年代後半にヒットした、安室奈美恵や小沢健二らの楽曲が劇中に使われ、大根監督らしい笑いや涙をふんだんに盛り込んだ痛快エンターテイメントになるとのこと。
主人公・奈美役は広瀬すずと篠原涼子
気になるキャストですが、韓国版のナミにあたる奈美役には広瀬すず(高校時代)と篠原涼子(現在)がそれぞれ演じます。出演は他に、ともさかりえ、小池栄子、渡辺直美、板谷由夏らです。
青春時代を思い出す機会に
今回は『サニー 永遠の仲間たち』が大ヒットした理由を考察しましたが、本作の魅力は何と言っても「親友たちとの思い出、仲間とのつながりの強さが引き寄せた再会」ではないでしょうか。 本作を鑑賞する前あるいは後に、同窓会を開いてみるのはどうでしょう。きっと登場人物たちと自分たちのことを照らし合わせたくなるはずです。