スパイク・リーがセルフリメイク!生まれ変わった『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』の魅力に迫る【Netflixオリジナル】
名作『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』をスパイク・リーがセルフリメイク!
1986年に公開されたスパイク・リー監督の事実上の商業映画デビュー作が『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』です。才気やセンスあふれる演出と新鮮な作家性が高く評価されたばかりか、低予算ながら700万ドル以上の興行成績もあげ、一躍世界的名声を確立しました。 それから30年。映画史に残る同名作がスパイク・リー自身の手によりセルフリメイクされ、Netflixオリジナルシリーズとして配信されて話題をよんでいます。 2017年に配信されたシーズン1は各話30分の全10話から構成され、スパイク・リーらしいハイセンスな演出・映像はそのままに、現代的な再構築が大きな見どころとなっています。 ここではそんなドラマシリーズ『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』の生まれ変わった魅力について、あらすじからフレッシュな新キャスト紹介、さらに見どころまでを詳しく解説したいと思います!
『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』のあらすじは?
主人公は、ニューヨーク州ブルックリンにある閑静な住宅街フォート・グリーンに暮らす若き黒人女性ノーラ。自宅をアトリエにするアーティストの卵であり、束縛を嫌う自立した女性です。 そんなノーラのボーイフレンドが、紳士的で優しい既婚エリートビジネスマンのジェイミー、見た目も言動もストリートキッズそのもののマーズ、超ナルシストの元モデルであるグリアの3人。それぞれ全くタイプの違う3人の男たちを翻弄し、自由奔放に生きるノーラの日常が綴られます。 映画版と本ドラマシリーズの基本的設定は変わりません。ただし、90分弱の映画に対してドラマは10話から構成されているため、ノーラはもちろん、男たちや周囲の友人にまつわるさまざまなエピソードが新たに盛り込まれた物語になっています。
ブラック・ムービーを牽引する名匠スパイク・リーについて
スパイク・リーが映画『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』を製作したときはまだ弱冠29歳の青年でした。 1957年3月20日ジョージア州アトランタ生まれ。幼い頃、家族とともに本作の舞台であるブルックリンに移り、後には自身の映画製作会社も同地に置いています。つまり、本作は彼にとって幼い頃から慣れ親しんだ、愛してやまない街の物語だと言うこともできるでしょう。 デビューしてからは、『ドゥ・ザ・ライト・シング』や『マルコムX』など次々と名作を発表し、ブラック・ムービーを代表する名匠として活躍するほか、コロンビア大学など名門校の教授として教鞭をとっています。 また自身の作品にときおり出演する俳優の顔も持ち、映画『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』でマーズを演じているのはスパーク・リー自身です。
新ヒロインを演じるのは期待の新鋭ディワンダ・ワイズ!
映画版ではトレーシー・カミラ・ジョーンズが扮していたヒロインのノーラ・ダーリングを演じるのは、期待の新鋭ディワンダ・ワイズです。美しい容姿に洗練されたファッションを着こなし、現代的でみずみずしい魅力を発散しています。 ディワンダ・ワイズはメリーランド州ジェサップに生まれ、マーティン・スコセッシら多数の映画人を輩出したニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・アートに学びました。 卒業後は、『運命の銃弾』などテレビドラマやインディペンデント系映画に複数出演してきたほか、脚本家やプロデューサーとしての顔も持つ才媛ぶりです。2016年には脚本を手掛けたショートフィルム『Where You Go』がカンヌ国際映画祭で上映されました。 ディワンダ・ワイズが主要キャラクターを演じる最新作は、ニューヨークを舞台にしたラブコメ『Someone Great(原題)』です。2019年にNetflixから配信予定であることが発表されています。 プライベートでは2009年に俳優のアラーノ・ミラーと結婚し、カリフォルニア州パサデナ在住です。
3人のボーイフレンドを演じる個性的な俳優たち
ノーラを取り囲む3人のボーイフレンドを演じる俳優たちも、今後が期待されるフレッシュな顔が揃いました。 ダンディなジェイミーを演じるのは、ジャマイカ生まれカナダ育ちのリリク・ベント。代表作は「ソウ」シリーズにおけるダニエル・リッグ刑事役です。 容姿端麗なグリアを演じるのは、実際にモデルの顔も持つクレオ・アンソニー。俳優としては人気ドラマシリーズ『トランスペアレント』や映画『ダイバージェント』などに出演経験があり、本作が初の主要キャスト抜擢です。 若く茶目っ気のあるマーズを演じるのはアンソニー・ラモス。実際、1991年生まれのまだ20代ながら舞台・映画・テレビと幅広い活躍ぶりをみせています。新しい作品では、2019年公開予定のハリウッド版「ゴジラ」シリーズ最新作『ゴジラ:キング・オブ・ザ・モンスターズ(原題)』にクレジットされています。
『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』映画とドラマの相違点・共通点は?
映画は1シーンをのぞき、意図的に全編ざらついたタッチのモノクロになっていますが、新ドラマシリーズはカラーの鮮やかな色彩で撮影されており、際立った大きな違いとなっています。 言うまでもなく、最も大きな相違点は時代設定が異なる点です。例えば映画では貿易センタービルが登場!30年で大きく変貌した街の光景を見比べることができるのは、一つの見どころだと言っていいでしょう。時事ネタでも、映画では当時大統領候補だったジェシー・ジャクソンの名が出てくるのに対し、ドラマではバラク・オバマの名が会話に登場します。 しかし実は重要な部分において、驚くほどオリジナルに忠実に作られているのは、やはりセリフリメイクならではの醍醐味だと言えるでしょう。 まず、ノーラはじめ登場人物がカメラに向かって告白するモノローグが展開の柱になっている点、オープニングにブルックリンの街並みや人々のスケッチが挿入される点などは全く同じです。またノーラのベッドを飾るキャンドル、マーズの大きなネームネックレスなど、オリジナルファンなら嬉しい小ネタもあちらこちらに発見できます。
ドラマ『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』の全編に散りばめられた名曲の数々!
スパイク・リー作品にとって音楽は極めて重要な位置を占めていますが、本ドラマシリーズにおいては一つの大きな柱と言ってもいいほど際立っています。 さまざまなR&Bやソウルミュージックの名曲が物語の展開や登場人物の気持ちに沿う形で散りばめられ、ときにアルバム・ジャケット写真までが挿入されます。 また音楽のみならず、会話に登場する映画ネタも印象的です。例えば、ノーラはモノローグの中で黒澤明の『羅生門』を出し褒め称えますが、教壇に立つほど映画全般に造詣が深いスパイク・リーらしさが表れている点だとも言えるでしょう。
映画とは異なる結末!急逝したプリンスへのオマージュ?!
果たしてノーラはジェイミー、マーズ、グリアの中から誰を選ぶのか、自由奔放な三股の関係はどんな結末を迎えるのか……。 映画にはないさまざまなエピソードがサイドストーリー的に盛り込まれる以外、基本的に忠実に物語は進みますが、実は結末は映画とドラマシリーズで異なります。 おそらくその背景にあるものとして推測されるのは、本ドラマシリーズが製作される直前の2016年4月、スパイク・リーが敬愛していたプリンスが急逝したことです。 プリンスのヒット曲『ラズベリー・ベレー』は、オープニングクレジットに流れるほか、10話のラストエピソードにおいて物語のカギを握ります。そればかりか、グリアがいかにもプリンス風の洋服を着用して登場します。つまり、亡くなったプリンスへのオマージュ的な意味合いが結末に込められていると考えることができるかもしれません。 スパイク・リーはプリンス急逝直後、ブルックリンのストリートで追悼ダンスパーティーを主催しており、そのイベントと本作の新しい結末はどうやら無関係ではなさそうです。
『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』シーズン2製作発表!
シーズン1の好評を受け、2018年1月には早くもシーズン2の製作が公式発表されています。もしかして、結末の相違はシーズン2への布石でもあったのかもしれません。 まだ詳細は明らかではありませんが、スパイク・リー公式インスタグラムによると5月29日にクランクインし、6月にかけて撮影が行われた模様です。その頃、シーズン2に使用する音楽も一般に広く公募されており、やはり音楽が重要な位置を占めることも間違いなさそうです。 シーズン2は、2018年中にNetflixから配信予定であることが発表されていますが、2018年10月現在、詳細な日時などはまだ不明です。それまで、やはりNetflixから配信されている映画版と見比べたりするなど楽しみにして待ちましょう!