2018年12月28日更新

大人が楽しむための『ボス・ベイビー』解説 ハートフルコメディに隠された秘密

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ボス・ベイビー
(C) 2017 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved.

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大人のための、映画『ボス・ベイビー』の楽しみ方

ユニバーサルスタジオとドリームワークス・アニメーションが初めてタッグを組んで製作された『ボス・ベイビー』は、子供から大人まで楽しめるハートフルコメディとして2017年に公開されて以来、世界中で人気を博しました。 子供が声を上げて笑えるような可愛らしいシーンが印象的な本作ですが、実はそこら中にパロディや仕掛けが散らばっていて、大人でも楽しめる要素が沢山盛り込まれています! この記事では、大人世代に向けた『ボス・ベイビー』の楽しみ方を解説、提案していきます!

『ボス・ベイビー』のあらすじ

ボス・ベイビー
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まずは軽くあらすじを振り返りましょう! 大好きなパパとママと暮らす7歳の男の子ティムの家に、突然黒スーツに腕時計、アタッシュケースを持ったいかにも怪しい赤ちゃんが、ティムの弟としてやって来ます。赤ちゃんがやって来てからパパとママは赤ちゃんにつきっきりで、ティムには構ってくれません。 ティムが赤ちゃんの弱みを握ろうと素性を探ってみると、その正体は「ボス・ベイビー」という名で中身がおっさんの訳あり赤ちゃんでした! 彼には、人間における赤ちゃんの人気を子犬から奪還するというミッションがあったのです。ミッションが成功したら家を出ていくことを条件に、ティムはボス・ベイビーに手を貸すことになります。 最初はいがみ合っていた二人が、次第にお互いの尊さに気付き、本当の兄弟になっていくまでのハートフルコメディストーリーです。

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大人が忘れかけている「愛」に気付かされる

「愛」を知らないティムとボス・ベイビー

本作では、愛は愛でもロマンチックな愛ではなく、普遍的な愛とは何なのかが描かれています。 それでは映画内で描かれている「愛」をネタバレを含みながら考察していきます! パパとママがボス・ベイビーにかかりっきりになっているのを見て、ティムはパパとママから一身に受けていた愛が自分から消え、ボス・ベイビーへ移ってしまったと勘違いしてしまいます。ティムは愛が有限なものであると考えているからです。 一方、ボス・ベイビーは工場で生まれたその直後からベイビー株式会社の経営陣に加わったため、両親から愛情を注がれるという経験がないことはもちろん、愛自体を知らないのです。

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二人の子供から学ぶ「愛」

ティムとボス・ベイビーの二人は、様々な障害を共に乗り越える中でお互いを思いやる気持ち(=愛)や、愛は与えたり分かち合ったりすることで無限に広がっていくものであることを知っていきます。 大人になると、人々はお金や資源などの有限なものを必然的に知り、そしてそれらに縛られるようになっていきます。また、日々に疲弊しきっている大人は、与えられることを求める、自分本位な愛に走っていきます。 『ボス・ベイビー』は二人の子供が主人公ですが、映画で描かれているメッセージの内容は大人に対する啓発であり、学びの多い映画だと感じました。

大人に刺さる描写の数々

絵本チックな描写

ボス・ベイビー
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『ピーターパン』や『ピノキオ』から影響を受けたと思われるティムの空想シーンでは、他のシーンとは異なるビビッドなイラストと大胆な動きが、懐かしさを覚えるカートゥーン・アニメのようで印象的でした。 はっきりと明瞭に、絵本のように描写されていることによって、7歳の少年の頭の中をより鮮明に、大人も想像することができます。

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兄姉ならティムに共感間違いなし!

ティムの“パパとママから愛されなくなったのではないか”という心配は勘違いでしたが、ティムのように下に弟や妹ができて寂しい思いを経験した人は少なくないのではないでしょうか? 幼心に下の兄弟に嫉妬をし、パパとママに構ってもらおうと必死になったり、下の兄弟をいじめてしまったり……姉や兄になったら誰しもが感じる嫉妬心を『ボス・ベイビー』ではユーモラスに描かれています。 自身が長女や長男の人はもちろん、子供がいる人にとってはかなり身近に感じることのできるエピソードのはず!

意外と吹き替え版もおすすめ!吹き替えキャスト陣の満足度は高い

圧倒的な役の幅【ムロツヨシ】

ムロツヨシといえば、100本以上の映画やドラマで、コメディからシリアスまで多彩な役柄をこなすベテラン個性派俳優。本作でも“見た目は可愛い赤ちゃんなのに中身はおっさん”という特異なキャラクターを見事に演じ切りました。 ムロツヨシの芸人にも引けを取らないコメディ力は、今ではバラエティ番組や映画・ドラマで確固としたものとなり、三枚目俳優の代表とも言えるでしょう。本作でも様々なシーンで“ムロツヨシ節”が炸裂しており、多くの笑いを誘いました。 筆者にとって意外だったのは、初めての声優とは思えないムロツヨシの落ち着きと温かみのある声です。ボス・ベイビーの心の奥に抱える寂しさであったり情の深さであったりが垣間見えました。

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とにかく少年らしい!【芳根京子】

公開当時芳根京子は二十歳でしたが、映画本編の中に見るティムから発せられる言葉の一つ一つは、あどけない7歳の少年そのものでした。ティムの言葉はどれも無色透明で素直な印象を受けます。 芳根京子の演じるティムは普通の7歳の少年として非常に自然であり、リアリティにかけては抜群でした!

超人気声優の安定感【山寺宏一・宮野真守】

言わずと知れたベテラン実力派声優、山寺宏一が声優を務めたのは、ティムの両親が務める会社のCEOで悪役のフランシス・フランシス。そして大人になったティムとエルヴィス・プレスリーそっくりさんの声優を務めたのは、声優界でアイドル的人気を誇る、宮野真守です。 キャラにハマっているのはもちろんのこと、アニメーション映画としての質をこの二人の実力派声優によってぐっと上げられているようにも感じました。

音楽通、映画通ならもっと楽しめる

大量の映画オマージュが良い

ボス・ベイビーの秘密道具の一つであるおしゃぶりを使い、ティムとボス・ベイビーが体から意識のみ抜け出してベイビー株式会社へと降り立つシーンに見覚えはありませんか?地面や時空がゆがみ……そう、これはSF映画『マトリックス』のオマージュです。 『ボス・ベイビー』からかけ離れている内容の作品であるからこそ、赤ちゃんがキアヌ・リーブス演じるネオをオマージュしているのはギャップがあって、クスッとくるシーンになっています。

ボス・ベイビーとティムがお風呂上がりにひげ剃り用ローションを顔に塗り、ティムが絶叫するシーンは『ホーム・アローン』のオマージュです。 子供が大人の真似をして痛い目を見るという流れまで一緒の、可愛らしいシーンでした。

フランシス・フランシスの手先であるユージーンから逃れるため、ティムがボス・ベイビーを自転車のかごに乗せ、家から逃げるシーンでは、自転車に乗ったまま大ジャンプをし太陽を横切るビジュアルが……。 月を横切る自転車のビジュアルで有名な『E.T.』のオマージュであることは一目瞭然でしたね。

他にもオマージュは盛り沢山!ぜひ、上記の関連記事もご覧になってください!

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親世代にとっての伝説のスターも登場【ネタバレ注意】

実はレトロな描写も多い本作。アニメーションだけでなく音楽にも注目してみましょう! ラスベガスへと発つため一足先に空港に向かった両親をティムとボス・ベイビーが追いかけるシーンで、コメディ要素として登場するエルヴィス・プレスリーは、1950年代を中心に大活躍したロックンロールのスターです。 また、ティムが大好きな子守歌としてパパとママに歌ってもらう曲は、1960年代にポール・マッカートニーが作曲したビートルズの名曲「ブラックバード」が使用されています。ラストシーンまで使用される重要な曲です。 自分が子供の頃憧れていたスターは、意外と子供時代における大きな記憶であったりします。エルヴィスとビートルズの登場は、大人に子供の頃の記憶をフラッシュバックさせる効果があるのです。

『ボス・ベイビー』のメッセージは大人世代に向けられたもの?

懐かしい歌や映画作品はもちろん、子供がいる人であれば「我が子もこんな思いしているのかな」と思いを馳せてみたり、純粋に愛を見つめてみたりと、大人だからこその楽しみ方がある映画『ボス・ベイビー』。 子供の付き添いで見た人も、今度は視点を変えて鑑賞し直してみてはどうでしょうか? 映画の大ヒットにより、現在Netflixではスピンオフドラマが配信されています!以下の記事もチェックしてみて下さい。