2018年12月7日更新

『DESTINY 鎌倉ものがたり』が良作であると同時に惜しいと言われる3つの理由

『DESTINY 鎌倉ものがたり』 ©2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会

映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の山崎貴監督の最新作『DESTINY 鎌倉ものがたり』が2017年に公開されました。高い評価を得つつも、納得できなかったとの評価もチラホラ。そこで、改めて本作を紹介しつつ、その理由を探っていきます。

日本映画の俊英・山崎貴監督最新作『DESTINY 鎌倉ものがたり』

2005年『ALWAYS 三丁目の夕日』で第29回日本アカデミー賞にて計12部門で最優秀賞を受賞。その後『永遠の0』が2014年の年間邦画興行収入NO.1にもなり、名実ともに日本映画を代表する監督・山崎貴。2017年、彼の最新作『DESTINY 鎌倉ものがたり』が公開され、話題となりました。 鑑賞後の感想は高評価が多いものの、中には納得できなかった人たちも。そこで今回は、すでに映画を観た人も、これから観たいと思っている人にも作品を紹介し、どんな点が惜しいといわれているのか、またその理由を探っていきたいと思います。

まずは『DESTINY 鎌倉ものがたり』のあらすじを紹介

鎌倉に暮らすミステリー作家・一色正和に、若い妻が嫁いできました。彼女は、正和の担当編集者・本田のアシスタントだった亜紀子という名の女性です。 正和との暮らしに毎日驚かされてばかりの亜希子。というのも、鎌倉は人間と人間でないものとが共存している場所だからです。 それでも仲睦まじく暮らす二人でしたが、ある日、亜希子が不慮の事故で亡くなってしまいます。彼女を失って、その存在の大きさと彼女との何気ない暮らしの尊さに気付かされる正和。 愛する亜希子の命と大切な日常を取り戻すため、正和は一人、黄泉の国に旅立つのでした。果たして、夫婦の運命は……!? 主人公・正和役は、映画『北の桜守』やドラマ『リーガル・ハイ』に出演した堺雅人、彼の妻・亜紀子は映画『ヲタクに恋は難しい』やドラマ『過保護のカホコ』の高畑充希が演じます。その他、山崎監督作品『ALWAYS 三丁目の夕日』にも出演の堤真一や薬師丸ひろ子など、豪華なキャストが集結しています。

1.前半の物語が退屈?山崎監督の真意とは

『DESTINY 鎌倉ものがたり』
(C)2017「DESTINY鎌倉ものがたり」製作委員会

まず第1の「惜しい」点は前半部分で飽きてしまう鑑賞者が出てきてしまったこと。どういうことかと言うと、本作の否定的な感想の中で「前半部分が物足りなかった」という意見が多く見受けられるようです。それはなぜなのでしょうか? 山崎監督のインタビューでは、「前半で楽しい家庭を作っておけば、余計に後半にそれが失われた心の穴が大きくなると思いました。だから二人(堺雅人、高畑充希)には、ほのぼのした感じでコメディ調にやっていただきました。」と述べられています。 実際その通り、新婚旅行から帰ってくる二人が鎌倉の町を車で走るシーンから始まる本作。その後はほのぼのとした仲睦まじい夫婦の日常が描かれます。 しかしながら、この前半部分が退屈だと感じる人もいるのでしょう。確かに、物語の半分が他人の日常で占められていたら飽きてしまう人が出てくることもわかります。さらに、そのせいで後半の戦闘シーンも短くなり、観ている側としては唐突な印象を受けるのかもしれません。 後半の心の喪失感を描きたかったにしても、そこまで長く日常を描く必要はなかったと言えそうです。

2.亜紀子のキャラクターが気になる?

『DESTINY 鎌倉ものがたり』
(C)2017「DESTINY鎌倉ものがたり」製作委員会

第2の「惜しい」ポイントとしては、亜紀子のキャラクターに関して「可愛い」という意見が圧倒的な一方、「鼻につく」と感じる鑑賞者が出てきてしまったこと。 亜紀子は正和と年の離れた夫婦という設定で、本編中では23歳となっています。彼女は小学生に間違われるような幼い顔を持ち、正和に可愛らしく甘える一方、母性溢れる奥さんとしての面も持つ女性です。 「鼻につく」と言われている原因としては、亜紀子の「可愛らしい」面が度々見受けられることが考えられます。例えば、「やめてくださいよ〜」と言いながら正和の肩をポカポカと叩くシーンや、妖怪を怖がっている時の仕草や態度など。男性から見たら「可愛いらしい面も兼ね備えた理想の奥さん」という印象を受けるのかもしれませんが、同性からはあまり好かれないタイプであることは言えそうです。 否定的な意見が出るということは、高畑が亜紀子を上手く演じられていると言い換えられると思いますが、「同性ウケ」を考えるならもう少し抑えても良かったかもしれません。

3.物語が回収しきれていない?

『DESTINY 鎌倉ものがたり』
(C)2017「DESTINY鎌倉ものがたり」製作委員会

第3の「惜しい」点としては、その登場人物たちのエピソードが取り上げられつつも、彼らの結末に関して明確な描き方はされていない点が挙げられます。ここから、「話が回収しきれていない」と感じる人も。 その理由としては、登場人物が多い割には伏線を張り巡らせすぎた、ということが考えられます。というのも、本作には何組もの夫婦が出てきます。正和の担当編集者・本田夫婦、病気の夫が心配で幽霊になってしまった瀬戸優子夫婦、そして正和が幼い頃に他界してしまった彼の両親……。 彼らにそれぞれ伏線を与えているものの、完全には回収しきれていないことによって、上記の評価を受けることとなってしまったのではないでしょうか。やはり、登場人物皆にストーリーを展開するなら、前述したほのぼのシーンをもう少し削り、完結すべきだったと言えます。

しかしながら『DESTINY 鎌倉ものがたり』は良作であると言える理由

『DESTINY 鎌倉ものがたり』
(C)2017「DESTINY鎌倉ものがたり」製作委員会

「惜しい」と言われる点が3点あったにしても、全体的な評価は高い『DESTINY 鎌倉ものがたり』。その理由としては、山崎監督ならではのVFXの巧みさや、撮影セットの見事さ、そして豪華キャストが集結したことなどが挙げられます。 前半が長いと言われながらも、さまざまな夫婦の形を描きながら、主人公ふたりの想いの強さはきちんと描かれているところは良く練られていると言えるのではないでしょうか。 また、VFXを得意とする山崎監督だからこそ、実写とVFXの融合にこだわることで、他にない世界観も生み出しています。誰もが空想する「死んだ後の世界」=「黄泉の国」を見事なまでに表現し、観る者の感性を揺さぶるほど。 そして作品を盛り上げる宇多田ヒカルの主題歌『あなた』も魅力のひとつ。これが高評価の一因ともなっています。 今回は、良作だと絶賛されながらも「惜しい」と言われる3つの点とその理由を挙げましたが、『DESTINY 鎌倉ものがたり』にはそれ以上の魅力が詰まっていると言えそうです。