2019年2月24日更新

映画『ROMA/ローマ』はNetflixの歴史を変えてしまう?史上初尽くしのキュアロン傑作を解説

ROMA/ローマ

映画『ROMA/ローマ』が全世界で注目を集めています。その圧倒的な映像美と、胸を打つストーリーが映画ファンを熱狂させています。この記事ではそんな『ROMA/ローマ』の魅力を解説すると同時に、Netflixを中心とする映画産業の再編の可能性についても突っ込んで調べてみました!!(日本では2019年2月現在動画配信サービスNetflixのみでしか鑑賞はできません。)

Netflixオリジナル映画『ROMA / ローマ』がすご過ぎる

2018年12月14日、とうとう日本でも動画配信サービスNetflix(ネットフリックス)で映画『ローマ』が鑑賞できるようになりました。全編モノクロ、決して派手ではない展開、監督の自伝的映画、そしてなにより劇場公開されていない段階ですでに全世界の映画ファンを熱狂の渦に巻き込んでいたなど、とにかく2018年は本作の話題で持ちきりでしたね。この記事ではローマについて詳しく解説します。 絶対に最初に書いておきたかったのは、『ローマ』は優しく易しい映画なので、誰でも観られるよ!ということ。映画ファンを唸らせる、というだけで身構える人もたくさんいるかと思いますが、そんな必要全くなし!とにかく今すぐ観ろ!Netflixに入ってない!?バカヤロウ!

アカデミー賞を席巻した『ROMA/ローマ』は史上初尽くし

ROMA/ローマ

この映画は公開前から映画界で議論を呼んでいました。それは「劇場公開をしない映画は、映画と呼べるのか」問題です。 カンヌ国際映画祭ではフランス国内で劇場公開をしていないことを理由に、映画『ローマ』は選出から外れてしまいました。しかしベネチア映画祭では最高賞である金獅子賞を受賞。さらに映画界最高の栄誉とも言えるアカデミー賞でも作品賞含む最多10部門にノミネートされました。もし作品賞を受賞したら外国語映画としては初、もちろん動画配信サービスの映画でも初となります。 アカデミー会員は保守的であるとされ、動画配信サービスなど認めないとも声も上がりそうなものですが、それを押しのけてのノミネートです。如何にこの作品が素晴らしいかが分かります。さらにこの『ローマ』が映画のあり方における一つの大きな方向性となることも間違いありません。 進化する映画のまさに最先端を今、味わえるのです。ほら!もう観たくなったでしょ!Netflix未加入!?バカモン!! (アカデミー賞の受賞結果については後述します。)

傑作『ROMA / ローマ』のあらすじ

『ROMA/ローマ』の舞台はメキシコ。比較的裕福な家庭で家政婦として働くクレオは、忙しいながらも充実した毎日を送っていた。 クレオは一緒に働く女の彼氏の従兄弟を紹介してもらい、恋仲になる。だがある時その男に妊娠を告げたところ逃げられてしまう。クレオの妊娠を暖かく迎える一家の母ソフィだったが、父である医者アントニオは長期の出張に出かけると言い、妻と子供、それからクレオたちを置いて家を出てしまった。さらにクレオの妊娠も結局死産となってしまう。 ソフィはそれでもたくましく立ち上がり、車でクレオと子供たちを連れて海岸へ遊びに行く。そこで事件が発生。子どもが沖へと流されてしまうのだ。それをクレオが危機一髪で救出。クレオに感謝する家族。クレオは既に家族そのものだった……。

え?これがすごいの?すごいんです!何にも難しくなさそうでしょ?はいもう観られる。今すぐ観よう。Netflix未加入?わかった今から僕のIDとパスワードを(嘘です)

女性の解放、そして自立

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大きな歴史のうねりの中で、血の繋がりもなく、身分も異なる二人(クレオとソフィー)はお互い男性のエゴイズムによって捨てられてしまう。深く傷ついた二人は寄り添い、そして精神的な自立へ。父がいれば必ずかけつけていた水難事故に、真っ先に立ち向かったのはクレオだったのです。そこには性愛を遥かに超越した家族愛が存在していました。

『ROMA / ローマ』は監督アルフォンソ・キュアロンの自伝映画

この映画は本作の監督アルフォンソ・キュアロンの自伝映画です。自らの幼少期の体験を元に映画にしています。女性の解放と自立が叫ばれる昨今ですが、それは今の時代の女性が強いからではない。いつの時代にも、どの場所にも強くたくましい女性の姿があったのです。アルフォンソ・キュアロンは、自分の幼少時代に見た、家政婦と母の姿から解放と自立を感じ取ったのです。 さてそろそろNetflixに加入する気になったのでは……?え?仕事が忙しくて観ている暇ない!?そんな仕事からは解放されてください。

凄まじい奇跡のシーン!圧巻のクライマックス

ROMA/ローマ

ここまで読んでも観るつもりがないあなたへ。もういいです、最後だけでも観てください。Netflixなので加入していればつまみ食いみたいな鑑賞も可能です。 クライマックスは波にさらわれた子供を助けたクレオを家族が抱きかかえるシーン。5分ほどの長回しなのですが、なんと家族の後ろに落ちていく夕日がまるで後光のように差し込むのです。当然合成なんかじゃない。1日何度もない、おそらく一回きりのチャンスで撮られた信じられないほどに神々しい映像です。このシーンだけで白いご飯が何杯でもいけちゃいます。 僕はこのシーンを108回鑑賞して煩悩を捨てました。

高評価多し!『ローマ』のレビュアー褒めポイントはここら辺

ROMA/ローマ

様々なレビューサイトを巡回し、特に評価されているポイントをまとめました。

時代の転換点における家族の形

この映画の舞台となる1970年代のメキシコでは、劇中でも描かれている通り、様々な出来事がありました。地震(劇中ではその前触れ)や学生運動など、確実に国が変わろうとしています。それはそのまま現在の世界に置き換えることができる。時代に合わせて多様な家族の形を認めていくという姿勢は多くの人の心を刺激したようです。

日常に見る、荘厳な神話

日本とは違えど世界のどこかに溢れている日常を切り取ったような映画です。しかし映像は限りなく神秘的。この映画は神様が神の視点で撮りました、としても過言ではない。それは超絶技巧とも言えるアルフォンソ・キュアロンのカメラによるものなのですが、テクニックなど1ミリも分からずともなんとなくすごい。 圧倒的なビジュアルがあなたのiPadいっぱいに広がるのです。

男、サイテー!

多くの方のレビューに見られるのは「登場する男が気に入らない!最悪!」というコメント。マイノリティ(あるいは女性)の自立、というテーマに対して、意識的に男性のエゴに焦点が当てられています。 引き気味のクレオの前で、謎の武術を繰り広げる青年は、どう見ても馬鹿らしい。女性を承認欲求の踏み台にするなよ、ということです。

オープニングすごくない?

先ほど奇跡的なクライマックスシーンを紹介しましたが、対となるオープニングも素晴らしいとのコメントが散見されます。 スタッフ・キャストのクレジットの裏で床面のタイルが映され、遠くで波のような音がしたかと思えば泡立った水がタイルを覆い尽くす。次第に水は溜まっていき、反射した空に飛行行きが飛ぶ。そしてタイトルが「ROMA」!ドーン!すごすぎ!

主演・助演女優賞にノミネートのキャストは?

ROMA/ローマ

主演女優賞ノミネート:ヤリッツァ・アパリシオ

主人公である家政婦ソフィを演じたのはヤリッツァ・アパリシオです。メキシコ先住民族の生まれであるアパリシオには演技経験がありませんでした。つまり本作『ローマ』で初演技、初主演となったのです。しかもアルフォンソ・キュアロンの監督作を一切鑑賞することなく望んだのだとか。

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助演女優賞ノミネート:マリーナ・デ・タビラ

マリーナ・デ・タビラも日本では知名度の低い俳優です。メキシコ人の女優で、メキシコ本国での舞台や映画での活動を主にしています。日本で他作品を容易に鑑賞できるとするならば、『ローマ』と同じくNetflix作品であるドラマ『インゴベルナブレ』です。

アルフォンソ・キュアロン監督がNetflixを選んだわけ

アルフォンソ・キュアロン
©Van Tine Dennis/ABACA/Newscom/Zeta Image

アルフォンソ・キュアロンはメキシコ出身の映画監督。近年の映画界における”メキシコブーム”を牽引する映画人の一人です。近年は宇宙映画『ゼロ・グラヴィティ』を監督したり、実は『ハリー・ポッター アズカバンの囚人』の監督も務めていたりします。 そんなアルフォンソ・キュアロンは『ローマ』が劇場公開されることを想定して監督しています。オーディオ・ビジュアル的に極めて野心的であるとのこと。しかし『ローマ』はNetflixの配給で公開されました。このことについてアルフォンソ・キュアロンは以下のような趣旨の発言をしています。 「可能な限り世界中の多くの人に映画届くことを考えると、Netflixによる配給が最も説得力があった」 『ローマ』が日本で一般の劇場で公開されたとして、大ヒットが見込めるでしょうか?街ゆく女子高生が「ラストの夕日、あげみざわw」と会話する様子が想像できるでしょうか?答えはNOです。 一部の映画好きにしか愛されない映画になってしまったはず。しかしアルフォンソ・キュアロンは多くの人にこの映画を届けたかったのです。 普段この手の映画のアンテナを持っていない人が、見放題だからと再生を始める。アルフォンソ・キュアロンが前述の女子高生を想定していることはないでしょうが、例えば映画館のない地域に住む女性がこの映画に出会い、明日への力強い一歩を踏み出すことを願った……、なんて想像ができます。

動画配信サービスの台頭

アカデミー フリー画像

動画配信サービスによる映画界の席巻は今年に始まったことではありません。2018年アカデミー賞ではAmazon配給による『マンチェスター・バイ・ザ・シー』が脚本賞を受賞、さらに主演のケイシー・アフレックにも主演男優賞をもたらしました。対して、Netflixも『ホワイト・ヘルメット シリアの民間防衛隊』を短編ドキュメンタリー賞へ送り込んでいます。

さらにディズニーやAppleによる動画配信サービスも2019年のローンチを発表しており、ますます映画界の賞レースを賑わせることとなるでしょう。

『ローマ』から垣間見えるNetflixの思惑について考えてみる

『ローマ』は非英語言語による映画であり、アート映画であり、白黒映画であり、しかも有名な俳優は全く出てこない。この映画をNetflixは莫大な額の宣伝費で広告を展開しています。全米で人気のアメフトリーグ、NFLの試合中継にもCMが放送されていました。 2010年代、Netflixなど動画配信サービスの台頭によって、新作映画を楽しむ環境は映画館だけではなくなりました。最新の映画が自宅で手軽に観られるのならば、映画館の利点は大画面と音響になります。それを重視しない人であれば、動画配信サービスで十分。 これによって映画館は独占的な収益サイクルを崩されてしまいました。Netflixはアカデミー賞作品賞という映画界最高の栄誉を手にして、この戦いを制し、映画ファンの行動を決定的に転換させようという思惑が垣間見えました。 『ローマ』を近所の映画館で観られないことは、映画ファンにとって大きな痛手です。この問題で最も変化を求められているのは映画館なのかもしれません。

2019年アカデミー賞で3部門受賞

そんなアカデミー賞レースですが、2019年2月25日に結果が出ました。 『ローマ』は

・監督賞(アルフォンソ・キュアロン)
・撮影賞(アルフォンソ・キュアロン)
・外国語映画賞

の3部門での受賞。注目された作品賞は『グリーンブック』に与えられました。 この結果を受け、Netflixの今後の動向にまた注目が集まりそうですね。

映画『ROMA/ローマ』を観よう

劇場公開が積極的に展開されないのが惜しいほどの素晴らしい傑作です。しかしNetflixだからこそより多くの人に届く映画になるのかもしれません。自宅でゆっくりと、あるいは通勤通学中の電車の中で、『ROMA/ローマ』を鑑賞して映画の美しさに酔いしれてはいかがでしょうか?