映画『罪の声』のネタバレあらすじを徹底解説!相関図から事件を読み解く
映画『罪の声』の相関図・あらすじ
登場人物の相関図
あらすじ
新聞記者の阿久津英士(小栗旬)はあるとき、昭和・平成の未解決事件を追う特別企画班に選ばれます。彼が担当することになったのは、日本の歴史上初の劇場型犯罪「ギン萬事件」。 それは複数の食品メーカーを狙った連続脅迫事件で、未解決のまま時効を迎えていました。残された資料や証拠をもとに取材を重ねるなかで、彼は少しずつ犯人グループに近づいていきます。 一方、京都でテーラーを営む曽根俊也(星野源)は父の遺品の中にカセットテープを発見。再生してみたところ、聞こえてきたのは幼い頃の自分の声でした。 それは、35年前に発生した「ギン萬事件」で犯人グループが使用していたものと全く同じものだったのです。自分が知らず知らずのうちに犯罪に関わってしまっていたことにショックを受けた彼もまた、事件の真相を探るべく動き始めます。 やがて同じ事件を追う2人は出会い、事件の真相究明とは別の「ある目的」のために行動を起こすのでした。
未解決のまま時効を迎えた「ギン萬事件」3つの謎をネタバレ解説!
犯人グループ「くら魔てんぐ」の目的とは?
作中に登場する「ギン萬事件」とは製菓会社ギンガの社長誘拐事件を発端に、複数の食品メーカーを脅迫し毒入りの菓子をばらまいた事件です。 しかし犯人グループは誘拐事件では身代金を得られず、その後の脅迫事件でも金銭を要求したものの、どの受け渡し場所にも現れませんでした。そのことも、事件が未解決のまま時効を迎えた原因となったのです。 金銭を得られなかったのなら、犯人グループはなぜこんな大規模な事件を起こしたのでしょう。その目的は、いったい何だったのでしょうか。
実は犯行グループは、身代金とは違う方法で金銭を得ていました。それは、「仕手」と呼ばれる株価操作によるものです。彼らはギンガなど標的となる会社の株を少しずつ買い集め、株価がピークになったところで空売り。その後、毒物混入事件を起こして一気に株価が下がったところでまた株を買い戻しました。このピーク時と底値の差額が儲けになります。 ギンガが標的となったのは、計画を立案した曽根達雄の父がかつてギンガの社員だったためです。
3つの脅迫テープの子供の声は誰だった?
犯人グループから送られた3つの脅迫テープにはそれぞれ別の子供の声が使われていました。そのうち1つが、主人公である曽根俊也の声です。 では、残りの2人は誰なのでしょう。阿久津と曽根は彼らが現在どこにいるのか、どのような人生を歩んできたのかを探り始めます。
曽根以外の脅迫テープの声の主は、犯人グループのメンバーである生島秀樹の娘・望と息子の聡一郎でした。しかし生島は、金の取り分で青木ともめて殺されてしまいます。2人は母・千代子とともに関西を転々とする生活を送るも、生活に困窮し結局は青木の経営する建設会社で働くことに。 その後、姉の望はクラスメイトの手引きで家出しようとしますが、キツネ目の男に見つかり、殺されてしまいました。聡一郎は兄と慕っていた津村とともに、会社に放火して逃亡します。
犯人「キツネ目の男」の正体は?時効までどこにいた?
「くら魔てんぐ」と名乗る犯人グループに迫る手がかりは、そのメンバーと思われる1人の人物でした。目撃情報をもとに作成された似顔絵は「キツネ目の男」と呼ばれ、テレビや新聞をはじめとするマスコミによって拡散されます。 しかし犯人は捕まらず、事件は未解決のまま時効に。
「キツネ目の男」は、犯人グループのなかで「ハヤシ」と呼ばれていましたが、本名は不明。 グループのなかでは下っ端で、素性が明かされておらず、その後どうなったのかもわかっていません。
本作は「ミステリー×ヒューマンドラマ」の味わい深い作品
原作者の塩田も語っているとおり、本作のテーマには、事件の真相を暴くと同時にそこに巻き込まれてしまった子どもたちの人生を探るという重要な側面があります。 映画ではそのポイントを丁寧に描いているため、ミステリーとしてだけでなく、ヒューマンドラマとして味わい深い作品となっているのです。 当初は事件の調査に消極的だった阿久津は、「事件の真相を暴く」以外の目的を見つけたことで記者としての情熱に目覚めていきます。 一方脅迫テープに声を使われた子どもの1人である曽根俊也は、自分の過去を知りたいという思いと、現在の平凡ながらしあわせな生活を壊してしまうのではという恐怖の間で揺れながら、事件の真相を追い始めました。 そんななか阿久津に出会った彼は、事件の真犯人、本当の罪人を引きずり出すことについて、新たな意義を見出します。 2人が最後に下す決断は「正義とはなにか」、「罪とはなにか」に迫っており、感動のヒューマンドラマに仕上がっています。
映画『罪の声』の感想・レビュー
だんだんと真相がわかっていくのが刑事物が好きな私にとってはとても良きだった!それだけじゃなくて、加害者であり、被害者でもある人達の人生についても深く描かれていてぐっときた。
グリコ・森永事件から着想を得たというこのストーリー、ここまで話を膨らませますか?原作者すごすぎる!中盤からラストまでグイグイと引き込まれます。特にそうちゃんの人生には胸が締めつけられます。
モデルになった実際の事件をほぼ忠実に描いている本作ですが、未解決事件のため、謎解き部分は完全にフィクションです。しかし、身代金取引に見せかけた株価操作による金儲けという犯人グループの目論見は、意外性がありながらもリアリティもあります。 また、事件の真相だけでなく、そこから1歩踏み込んだ被害者の救済について描かれているのも見どころです。
原作は大ヒットしたミステリー小説!実話や元ネタがあるって本当?
原作となっている塩田武士の『罪の声』は、2016年に刊行され、その年の「週刊文春」ミステリーベスト10で第1位を獲得、第7回山田風太郎賞を受賞するなど高い評価を得た作品です。 2017年には『永遠の0』、『海賊とよばれた男』のコミカライズを担当した須本壮一によって全3巻の漫画版が発売されています。 本作は日本中を震撼させた昭和の未解決事件をモチーフに、フィクションでありながら綿密な取材と着想が織り交ぜられ、リアリティ溢れる事件の真相と犯人が話題に。 2022年12月現在、累計発行部数80万部を超える大ヒット作となっています。 原作小説を執筆した経緯について、塩田は「一説には3人の子どもが関わったとされるが、私は最年少の未就学児と同世代で、しかも同じ関西に育った可能性が極めて高い。どこかですれ違っているかもしれない……。そう思った瞬間、全身に鳥肌が立ち、どうしてもこの子どもたちの物語を書きたくなった。」とコメントしました。
元ネタとなった事件について
本作で描かれる「ギン萬事件」の元ネタになっているのは、1984年に発生した「グリコ・森永事件」です。「ギン萬事件」と同様に、誘拐や身代金要求にはじまり、複数の食品会社の商品に毒物を混入したという脅迫状が届き、日本中が混乱に陥りました。しかし警察やマスコミを挑発した犯人グループは、その後、忽然と姿を消しています。 元ネタとなった事件も未解決のまま時効を迎えているため、本作の真相解明部分はすべてフィクションです。しかし、作中での事件の発生日時や犯人による脅迫状・挑戦状、事件報道などは、「グリコ・森永事件」を忠実に再現しています。
原作と映画の違いは?
映画化について原作者の塩田は、映像化は容易ではないと考えている自分がいるのは確かだ、としながらも、主演2人のキャストを聞いたとき「自分のイメージを超える配役だと膝を打った」とコメント。 「映画化の依頼を受けてから、プロデューサー陣の本気を感じる機会が幾度もあった。その表れの一つが、硬軟自在に物語を紡ぎ出す野木亜紀子さんによる脚本だ」とも語り、原作から変更された点にも満足しているようです。 原作には曽根の協力者として、元京都府警の堀田という人物が登場していましたが、映画には彼は出てきていません。しかしほかの登場人物が曽根に断片的なヒントを与えていき、少しずつ真相に近づいていくのです。 また映画ならではのシーンが随所に追加され、阿久津と曽根の間には友情のようなものが生まれていきます。これらのシーンは彼らの人間性をさらに深く描き出していますので、原作をすでに読んだ人も新鮮な気持ちで楽しむことができるでしょう。
小栗旬×星野源が夢の共演!彼らが演じる役どころとは
新聞記者・阿久津英士役:小栗旬
本作の主人公で、昭和の未解決事件を取材することになった新聞記者・阿久津英士を演じるのは、映画「銀魂」シリーズなど多くの作品で活躍する小栗旬です。 小栗は「原作小説を読み終えたあと、開けてはいけないといわれている扉を開けてしまったような、興奮と不安を持ったことを覚えた」とコメント。 また「この作品を映画化するのか、これは覚悟のいることだなと思いましたが、制作チームにお会いし、皆さんの揺るぎない覚悟をうかがって、その覚悟の一員にさせてもらうことを決意しました」とその意気込みを語っています。 本作については「時代が変わろうとしている今、それでも忘れ去ってはいけない小さな小さな声がある。ご期待下さい」とアピールしました。
京都でテーラーを営む曽根俊也役:星野源
京都でテーラーを営んでいる曽根俊也。父の遺品からカセットテープを発見し、自分の幼い声が、35年前の未解決事件で使われた録音テープの子どもの声と同じものだと気づいてしまいます。 そんな難役に挑むのは、歌手・俳優として目覚ましい活躍を見せている星野源です。 「3年前、とある作品の撮影中にプロデューサーの那須田さんと雑談していた時。この作品のストーリーを聞き、その発想と恐ろしさに激しく鳥肌が立ったのを今でも覚えています」と語る星野。 尊敬する監督の土井や「逃げ恥」や「MIU404」から再度タッグを組むことになる脚本家の野木、そして小栗とはじめてじっくり共演できることを幸せに思っているそうです。 また「悲劇でありながらも、人間がこの社会で生きる上でとても大切なメッセージが込められたこの作品の中で、曽根俊也の悲しみと共に生き、演じていきたいと思います」とコメントしています。
そのほかにも豪華キャストが集結!事件との関連性は?
水島洋介役/松重豊
阿久津が務める大日新聞の元社会部記者の水島洋介は、「ギン萬事件」発生当時、担当として現場に張り付いていました。今回阿久津がこの事件を追うことになり、おせっかいなほど応援します。 水島を演じるのは「孤独のグルメ」シリーズなどで知られる松重豊です。
鳥居雅夫役/古舘寛治
大日新聞大阪本社・社会部事件担当デスクの鳥居雅夫。昭和の未解決事件特集を企画し、文化部の阿久津を今回の「ギン萬事件」の担当に指名しました。 鳥居を演じるのは、映画『南極料理人』(2009年)や『勝手にふるえてろ』(2017年)などへの出演で知られる古舘寛治。そのほか数多くの作品で個性的な役柄を演じています。
生島聡一郎役/宇野祥平
生島聡一郎は望美の弟で、事件発生当時は小学生でした。 聡一郎を演じる宇野祥平は、映画を中心に活躍する脇役俳優として知られ、数多くの作品に出演しています。映画『俳優・亀岡拓次』のモデルの1人であり、同作にも出演しました。
生島望役/原菜乃華
生島の娘である望は事件発生当時、中学生。映画字幕の翻訳家になることを夢見ていました。 望役を務める原菜乃華は、2009年から子役として芸能活動を開始。これまで映画『地獄でなぜ悪い』(2013年)や『3月のライオン』(2017年)などに出演しています。
生島秀樹役/阿部亮平
生島英樹は、元滋賀県警の警察官です。警察では暴力団関係の事件を担当していました。 生島を演じるのは阿部亮平。Vシネマをはじめドラマ、映画、CMと幅広く活躍し、「HiGH&LOW」シリーズなどに出演しています。
曽根光雄役/尾上寛之
光雄は曽根の父で、数年前に他界しました。本作で曽根は彼の遺品から、「ギン萬事件」に使われたらしきカセットテープを見つけます。 光雄を演じる尾上寛之は子役としてデビューし、近年では「ROOKIES」シリーズやドラマ『アンナチュラル』(2018年)などに出演しています。
曽根亜美役/市川実日子
曽根の妻である亜美。彼女は5歳になる娘・詩織の面倒を見ながら、事件を探る夫の行動を陰ながら支えます。 演じる市川実日子は、モデルとしてデビューしたあと女優に転身。数々の映画やドラマに出演し、2016年の『シン・ゴジラ』では第71回毎日映画コンクール助演女優賞を獲得しました。 その後も映画『三度目の殺人』(2017年)やドラマ『凪のお暇』(2019年)などに出演しています。
曽根達雄役/宇崎竜童
達雄は、父が過激派に誤って殺されたのをきっかけに左翼活動に傾倒し、親族と疎遠になった人物。曽根は伯父は死んだと聞かされており、彼についての記憶はほとんどありません。 光雄の兄で曽根の伯父である達雄演じたのは、歌手で俳優の宇崎竜童です。自らバンドやユニットで歌手活動を行うほか、山口百恵をはじめとする数多くの歌手に楽曲提供も行ってきました。 俳優としては映画『曽根崎心中』(1978年)や『破門 ふたりのヤクビョーガミ』(2017年)などに出演しています。
曽根真由美役/梶芽衣子
曽根の母・真由美を演じるのは、1970年代に映画「野良猫ロック」シリーズや「女囚さそり」シリーズなどで大人気を博した梶芽衣子。近年では、ドラマ『きのう何食べた?』などへの出演でも知られています。 真由美は病気のため入院中です。
監督は『いま、会いにゆきます。』『ビリギャル』などの土井裕泰
(画像左から星野源、野木亜紀子、土井裕泰、小栗旬) 注目を集める本作の監督を務めるのは、『いま、会いにゆきます。』(2004年)や『麒麟の翼〜劇場版・新参者〜』(2012年)などでその手腕を高く評価された土井裕泰です。 物語のモチーフになった事件は強く記憶に残っているという彼ですが、脅迫テープに子供の声が使われていたことは記憶になかったのだとか。 土井はそこに着目してフィクションとして完成させた原作にとても興味を持ったそうです。しかし「圧倒的な情報量の物語を1本の映画にするのは、困難な作業になるだろうな」と最初の印象を語りました。 実際の映画を観てみると、事件の背景や真相を理解するのに充分な情報があり、すんなりと理解することができます。また人物描写も深く掘り下げられ、物語に引き込まれる内容に。考えさせられ、泣けるミステリーに仕上がっています。
脚本は『逃げるは恥だが役に立つ』などの野木亜紀子
また脚本は『逃げるは恥だが役に立つ』(2016)や『アンナチュラル』(2018)など、近年ヒットを連発している野木亜紀子が担当。「原作ものを手掛ける際は、人様のお子様をお預かりする気持ちで取り組んでいます。」と彼女は語ります。 原作にあるエピソードをカットしたり、逆に新しいエピソードを加えたりしつつも、原作小説の芯はブレずに映像作品として構築させた野木は「今回は、若い人や海外の人など、この事件を知らない方々にも事件をわかってもらったうえで、主人公の2人はもちろん、俊也の家族、犠牲になった子どもたちの物語なども入れ込む必要がありました。」とコメント。 「要素があまりにも多いので、限られた尺のなかでどう描くのか、ぎりぎりまで悩みましたね。情報を並べるだけでは物語に入り込めないし、今までの作品にない苦労がありました」と明かしています。 監督である土井はその手腕について「手ごわい原作で苦労も多かったですが、野木さんが一緒に闘ってくれたことが僕たちにとっては大きな力になりました」とコメントしました。
主題歌はUru「振り子」に決定!何度も映画を観て作られた楽曲
本作の主題歌「振り子」を歌うのは、注目のシンガーUru。聴く人を包み込むような歌声と神秘的な存在感が魅力の彼女は、2020年のドラマ『テセウスの船』の主題歌「あなたがいることで」でも注目を集めました。 彼女は本作について、「お話を頂き映画を拝見した時に、この作品に沿うのはどんな楽曲なのかとても考えました」と語っています。物語を深く身体に染み込ませるため、何度も映画を観て少しずつ楽曲をかたちにしていったのだそう。 そのうえで、この曲には「今悪い方へ振っているその振り子は、次は必ず光の方角へ振る」という意味が込められているそうです。
映画『罪の声』は未解決事件の真相に迫る傑作!
ベストセラー小説を原作に、小栗旬と星野源という人気俳優が映画初共演を果たした『罪の声』。モチーフとなった実際の事件も日本中で有名なため、大きな注目を集めた作品です。 この記事では、本作のネタバレ解説を紹介しました。 原作小説は、事件の真相と犯人が「本当にそうだったのではないか」と思わせるようなリアリティにあふれ、ベストセラーに。 映画は主人公を演じた2人が語っているように、本作はただのミステリーではない、哀しくも切ない物語に仕上がっています。ぜひその深いメッセージを感じてみてください。