2024年3月18日更新

【ネタバレ考察】映画『ある男』結末までの疑問を解決! 最後のセリフの意味とは?あらすじは実話なのか?

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『ある男』
©2022「ある男」製作委員会

妻夫木聡や安藤サクラ、窪田正孝という日本を代表する俳優たちが結集した映画『ある男』。本作は、芥川賞作家・平野啓一郎の同名小説を原作に、人間存在の根源を問いかけるヒューマンミステリーです。 この記事では映画のあらすじやテーマについてネタバレありで考察していきます。戸籍を変えたいと思うほど辛かった3人の人生を考えていきます。

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映画『ある男』のあらすじ

公開年 2022年
上映時間 121分
監督 石川慶
キャスト 妻夫木聡 , 安藤サクラ , 窪田正孝

弁護士の城戸章良(妻夫木聡)は以前弁護を担当した谷口里枝(安藤サクラ)から、亡くなった夫「谷口大祐」の身元調査をしてほしいという奇妙な依頼を受けます。 里枝は元夫と離婚後、息子を故郷に連れ帰り、大祐(窪田正孝)と出会いそのまま再婚。子宝にも恵まれ、家族4人で幸せな生活を送っていました。しかし大祐が仕事中の不慮の事故に巻き込まれ、突然死してしまいます。 悲しみに暮れる中、里枝のもとに疎遠になっていた大祐の兄、恭一(眞島秀和)が法要のために訪問。遺影に映る人物が大祐とは別人だという衝撃の事実告げました。 里枝が愛した人は何者だったのか、どうして別人になりすまさなければならなかったのか。調査をすすめるうちに、城戸は過去を変えて生きてきた「ある男」の境遇に、しだいに複雑な思いを抱いていくのでした。

【ネタバレ】『ある男』の人生を相関図でわかりやすく解説

『ある男』ネタバレ相関図
© ciatr

里枝の夫「X」はもともとは「原誠」という人物でしたが、2度他人と戸籍を交換していました。そうすることで本来の出自を隠し、他の人間として生き直すことを選んだのです。 以下では、生まれてきた家系に苦しみ他人と人生を取り替えた4人の男について解説していきます。

【Xの人生】原誠→曽根崎義彦→谷口大祐

『ある男』
©2022「ある男」製作委員会

城戸の執念の調査で、「X」の正体は「原誠」という男だと判明し、物語は結末に向かいます。原の実父の小林謙吉は凄惨な殺人事件を起こし、死刑宣告受けた犯罪者。原は母方の性を名乗りますが、どこに逃げても父親の秘密が露見し、殺人者の息子のレッテルを貼られる過酷な人生を送っていたのです。 そこで原は過去を捨てるため、曽根崎義彦と戸籍を交換します。しばらくは曽根崎として生活していましたが、曽根崎がヤクザの息子だったためヤクザに追われるようになり、谷口大祐と2度目の戸籍交換をします。そうして彼は自分の出自をほぼ完全に抹消しました。そして「大祐」として里枝に出会い、幸せな人生を手に入れたのです。 1度だけでなく2度戸籍を交換したことで、彼の本当の出自を知ることは難しくなりました。 彼の死後、真実を知った里枝は悩んだ末、息子の悠人にも「大祐」の正体を伝えることに。すべてを知った悠斗はそれでも父が好きだと話し、彼の人生を想って涙を流しました。 「大祐」と過ごした3年9か月の日々は、彼が誰であろうと里枝たちにとってかけがえのない日々であったことを改めて噛み締め、物語はラストを迎えます。

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【解説①】最後のセリフの意味は?ラストシーンを解説

『ある男』 妻夫木聡
©2022「ある男」製作委員会

事件を解決した城戸は、あるバーで見知らぬ男に身の上話をします。しかし彼が語ったのは、自分の過去ではなく、谷口大祐と「谷口大祐」として生きていた原誠の過去でした。 弁護士という社会的地位が高い職業に就いているにも関わらず、在日コリアンへの差別に苦しんできた城戸。保守的な妻の家族だけでなく妻にまでも見下され(浮気され)、過去をすべて捨ててしまいたいと考えているのかもしれません。彼が実際に戸籍交換をしたかははっきり描かれていませんが、その願望はありそうです。 映画のラストシーンでは、バーで話していた相手に名前を聞かれ、城戸が名乗ろうとするところでエンドロールを迎えます。彼はいったい何と名乗ったのでしょうか。

【解説②】ある男と戸籍交換した人物たちのその後

本当の曽根崎義彦のその後

谷口が名乗っていた「曽根崎」という名前は、ヤクザの息子のものでした。映画ではこの人物は登場していませんが、戸籍についた“反社”のレッテルに苦しみ戸籍交換を望んだ男なのかもしれません。 原作ではこの男は知的障害を持つホームレス・田代正蔵という男と再び戸籍交換を行ない、「原誠」の名を譲って行方をくらましていました。

本当の谷口大祐のその後

伊香保の老舗旅館の次男として生まれ育った谷口祐介は、優秀な兄と比べて劣等感を抱いていました。兄の下で家業を手伝うことを嫌った彼は、当時、曽根崎義彦と名乗っていた原誠と戸籍を交換。曽根崎として生きていくため、知り合いのいない名古屋に移り住みます。 彼は本物の曽根崎はヤクザの息子だったことを知らず、一時ヤクザに追われていました。しかし後に同姓同名の別人と判断され、追われることはなくなります。 そしてある日かつての恋人・後藤美涼が作った「曽根崎」の名のアカウントを発見し、谷口は「なりすましはやめろ」とDMを送りました。そこからコンタクトを取り合って、美涼と名古屋で再会します。

映画では描かれなかった?原作での谷口大祐

映画では時間の関係上、谷口大祐の人生や背景の大半が省略されていました。原作では彼に対しても感情移入できるようになっていたので、彼の人生を簡単に紹介します。

谷口大祐の人生
  1. 老舗旅館の次男として生まれる保守的な親の価値観に苦しみながら育つ。
  2. 優秀な兄・恭一と比較され蔑まれる兄は人のことを見下すような嫌な人間だった。
  3. 病気の父のため臓器を提供することになる強制ではないが断れない雰囲気を家族につくられ、危険な手術を引き受けてしまう。
  4. 戸籍交換身の危険を感じ逃亡することに。交換相手は「曽根崎義彦」。
  5. ヤクザに追われる曽根崎はヤクザの息子だったためヤクザに追われることになる。
  6. 「ヤクザの息子」の肩書きを利用する嫌悪していた兄と同じように、力で人を見下し脅す人間になってしまった。

⑥からわかるように、第2(第3?)の人生を誠実に生きた原誠とは違って、谷口大祐はむしろ戸籍交換で身を落としています。 彼のことを愛していた元恋人が谷口と再会したとき、彼は肩書きで人を脅すような愚かな人間に変化していました。曽根崎というヤクザの名前を利用して、周囲の人間に威張り散らすようになっていたのです。 戸籍のロンダリングが谷口に落魄れる口実を与えたとも言えるかもしれません。名前や肩書きを捨てて逃げることだけが正解ではないと、より深く多角的に考えさせられる展開でした。

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【解説③】最初と最後に登場した絵画「複製禁止」

本作の冒頭とラストには、ルネ・マグリッドによる絵画「複製禁止」が登場します。鏡の中に自分の後ろ姿しか見ることができない男が描かれたこの作品は、『ある男』のテーマでもある「自分は何者か?」ということを確認できない人物を描いたものです。さらに劇中では、この絵を見ている城戸の後ろ姿も映されており、3つの後ろ姿が並ぶ不思議なカットもみられました。 城戸もまた、「自分は何者か?」という問いに答えられずにいるのです。谷口大祐こと「ある男X」の過去を追っていくうちに、彼自身も自分の過去を捨て去りたいという思いに駆られたのかもしれません。 「複製禁止」はタイトルとは裏腹に、鏡に顔(正体)の見えない男の後ろ姿だけが“鏡に映す”という行為によって「複製」されています。自分の出自や正体を隠し、戸籍を交換することで、それぞれの人生を「複製」していく『ある男』のストーリーにぴったりの絵画だと言えるでしょう。

【考察】「ある男」が描き出す人間の本質とは?

『ある男』
©2022「ある男」製作委員会

出自や過去に囚われない愛

これまでの人生をすべて捨てて、「谷口大祐」としてしあわせな家庭を築いた原誠。彼を深く愛していた妻の里枝は、夫が「谷口大祐」ではないと知って彼の正体を知ろうと城戸に身元調査を依頼しました。 夫が殺人犯の息子だったとわかったあと、里枝は自分の彼に対する愛は、彼の過去とは関係がないことを悟ります。愛した人に暗い過去があったとしても、その後に築いた関係や愛は損なわれないのです。 それは彼女の息子・悠人も同じです。悠人にとって「大祐」はどんな生まれでも大好きな父親で、「大祐」も悠人のことを血筋と関係なく深く愛していたのでした。

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人の本質を見ない差別

差別はその人の本質とは関係のないレッテルを貼るところからはじまります。原誠は「殺人犯の息子」というレッテルを貼られ、彼自身を見る前に彼を決めつけ、色眼鏡で見る人々に苦しめられてきました。 人が人を差別したり嫌悪するのは、勝手に決めたイメージのせいではないでしょうか。しかしそのことに気づかず、他人をまた勝手に先入観で判断し切り捨ててしまうのです。

「自分はこういう人」と縛られなくていい

原誠は他人からの偏見だけでなく、自分でも体内に流れる血筋を嫌悪し、遠慮して、夢を諦めました。何も悪いことをしていないのに、生まれのせいで自分を卑下していたのです。 本作の監督を務めた石川慶は、「『自分はこういう人間だ』と自分自身を決めつけていることも、自分を息苦しくしているのかもしれない。」、「決めつけや思い込み、“かくあるべき”というものを脱いでみてもいいんじゃないか。」とインタビューで答えていました。 自分を誰かに決めつけられたり、自分自身で決めつけてしまうことで苦しんだり進めなくなっている人の枷を外すような、そんな思いが映画には込められているのではないでしょうか。

映画『ある男』が描く差別について

映画『ある男』では、人の本質を見ずにレッテルだけで嫌悪されてきた、あるいは自分で苦しんできた男たちがたくさん描かれました。 以下では映画で登場した「差別」の中から2つ、①加害者家族 と ②在日朝鮮人 について取り上げて解説していきます。この2つ以外にも映画では、離婚歴、世襲、死刑囚(への先入観)、反社会的勢力、結婚(と不倫)、職業差別なども描かれていました。

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①加害者家族

原誠は、父親が殺人事件を起こしたことで、どこに行っても「殺人犯の息子」という烙印から逃れられずにいました。 世界でも凶悪犯罪が少ない日本では、その加害者家族に向けられる世間の非難は、ほかの国と比べてかなり厳しいものだとか。加害者家族は仕事を辞職に追い込まれたり、学校を退学させられたり、転居せざるをえなくなったりすることも少なくないのです。 また家族の「連帯責任」があるという考えが根強いのも、日本独特のもの。 本作の原誠の場合も彼に責任がないことは明らかなのに、彼が“普通の”生活を贈るためには、過去を捨て去る戸籍交換という手段を取らざるをえませんでした。

②在日朝鮮人

『ある男』妻夫木聡
©2022「ある男」製作委員会

主人公の城戸は、在日朝鮮人3世です。日本国籍を持ち、日本で生まれ育ち、弁護士という立派な職業に就いた彼でも、そのアイデンティティは揺れ動いています。映画では、彼に対してはっきりとした差別やひどいヘイトスピーチに出くわすシーンはありませんが、“在日だから”という周囲のうっすらとした無意識の悪意を感じています。 「谷口大祐」の身元調査で真実にたどり着いた彼は、過去を捨て去ろうとしていた「原誠」に共感するところもあったのでしょう。自分の意志とは関係なく背負わされた歴史と決別したいという思いが、ラストシーンにつながっていきます。

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映画『ある男』は実話なのか?原作との違いとは

原作は平野啓一郎の小説

『ある男』の原作は、平野啓一郎による同名小説です。平野は1999年に『日蝕』で芥川賞を受賞。その後も数々のヒット作を生み出し、2015年に発表した『マチネの終わりに』は、2019年に福山雅治主演で映画化されました。

原作と映画の違い

①実話に見える!?

原作小説の『ある男』は、「私」がバーで城戸の話を聞くシーンから始まります。そして「私」は、彼の話をもとに小説を書いたと記述されているのです。 一見原作者である平野が本当に弁護士から話を聞いて書かれた物語のように思えてしまう構成ですが、小説も映画も中身はフィクション。リアリティを出すための作り込まれた仕掛けでした。

②戸籍交換がもう1人

原作小説と映画の違いの1つは、戸籍交換にもう1人の人物が絡んでくることです。原誠と戸籍交換した曽根崎義彦は、さらに田代正蔵という人物と戸籍交換し、行方をくらませます。一方の田代は、「原誠」として万引きで逮捕されました。 また原作では、城戸はもっとはっきりと在日コリアンへのヘイトスピーチを目の当たりにします。そして見て見ぬふりをすることに罪悪感を覚えるなど、差別への葛藤が描かれています。

③最後のバーのセリフ

もう1つはラストシーンのバーでの城戸のセリフです。原作では最初と最後にバーのシーンがあり、最初城戸が偽名を使っていて、最後に本名を名乗るという構成になっていました。 映画では最初の部分がなく、ラストで急に城戸が「谷口大祐」という名前の過去を語るという構成になっていました。原作未読の人にとっては突然すぎて驚いた人もいたようです。

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原作小説『ある男』の感想と考察

小説『ある男』は愛し直しの物語だと感じました。「一回、愛したら終わりじゃなくて、長い時間に何度でも愛し直す」作中で後藤美涼によって語られる、愛を定義した印象的なセリフです。 実際に作中でも谷口里枝は大祐に過去を偽られながらも、真実を知ることで、「旦那」として愛し直し、弁護士の城戸も妻の不貞を暴くことなく、息子との生活を守るために「家族」として愛し直すことを選びました。 実はこの「愛し直し」は物語の中だけの特別なものではなく、私たちの日常に寄り添ったものです。恋人としての愛、夫婦としての愛、そして家族としての愛。人それぞれ愛の形は変わりながらも、愛し直すことで、持続している繋がりなのです。 本作は旦那がまったくの別人であったというミステリーから始まる、「愛とは何か」を問いた、現実的なラブストーリーだと言えるでしょう。

映画『ある男』の感想まとめ

ある男
©2022「ある男」製作委員会
ある男』の総合評価
4.5 / 2人のレビュー
吹き出し アイコン

10代女性

普通に生活していたら思いもよらない真相に驚き!これまでの人生をすべて捨ててしまいたいと思うほどつらい人生。差別がどれだけ根深く人を苦しめ続けてきたのか改めて実感し、胸が痛くなった。窪田正孝が一人二役やってたのもめっちゃうまい。

吹き出し アイコン

30代男性

途中で謎解きが頓挫したように見えたけど、真相が明かされたときには納得するのと同時に「そこまでするのか」という気持ちにもなった。意外性のある展開で、ミステリーとして見応えバッチリ。人間ドラマとしても良作で、愛とはなにか、差別はどうして起こるのか、ということも考えさせられた。

映画『ある男』は複雑なストーリーをわかりやすくまとめた物語構成やメッセージ性の深さ、キャストの演技力の高さから概ね高評価を獲得しています。特に窪田正孝演じる「X」の抱えてきた人生の描き方や、最後の子役の演技やセリフの深さにも賞賛が集まっています。 一方でサスペンスとしては若干物足りないという声も。超一流の演者たちが集っていたこともあり、もう一歩インパクトのある展開を期待していたという人もいたようです。

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映画『ある男』の登場人物・キャスト一覧

『ある男』相関図(修正版)
© ciatr
城戸章良 役 妻夫木聡
谷口里枝 役 安藤サクラ
谷口大祐 役 窪田正孝
後藤美涼 役 清野菜名
谷口恭一 役 眞島秀和
中北 役 小籔千豊
- 仲野太賀
城戸香織 役 真木よう子
小見浦憲男 役 柄本明

城戸章良役/妻夫木聡

『ある男』妻夫木聡
©2022「ある男」製作委員会

城戸章良はかつて谷口里枝と元旦那との離婚調停を担当した弁護士。里枝の唯一頼れる人物として、谷口大祐になりすましていた、亡き夫「X」の身元調査を依頼されました。 弁護士として活躍する城戸は一見、順風満帆な人生を送っているように見えますが、妻の香織との関係は冷めきっており、離婚寸前。また、在日3世という自身の出自に悩みを抱えていました。 亡き夫「X」の調査を続けて行くことで見えてきた「ある男」の存在。別人として生きてきた男の境遇を知り、思わず自分と重ね合わせてしまう城戸はしだいに複雑な感情を抱くようになり――。 演じるのは映画『悪人』で第34回日本アカデミー賞、最優秀主演男優賞を受賞した妻夫木聡。監督を務める石川慶とは映画『愚行録』ドラマ「イノセント・デイズ」に続き、3度目のタッグ、今回は初の弁護士役に挑戦します。

谷口里枝役/安藤サクラ

『ある男』ヴェネチア国際映画祭 安藤サクラ
©2022「ある男」製作委員会

谷口里枝は二人の息子を持つ母親。次男の遼は2歳の時に脳腫瘍と診断され、亡くなってしまいます。遼の治療をめぐって元夫とは喧嘩が絶えず、遼の死後には城戸の尽力もあり、長男の親権を得て離婚が成立。故郷に戻りました。 その後、実家の文房具屋を切り盛りする中で出会った谷口大祐と恋に落ち再婚。しかし、大祐は仕事中の不慮の事故で命を落としてしまいます。不幸は続き、法要に訪れた大祐の兄、恭一から遺影の男は大祐とはまったくの別人だと告げられたのでした。 自分の愛した夫は誰だったのか、どうして別人になりすましたのか。真相を知るために里枝は城戸のもとを訪れます。 演じるのは映画『百円の恋』で第39回日本アカデミー賞、最優秀主演女優賞を受賞した安藤サクラ。安藤が本格的に映画に出演するのは『万引き家族』以来の4年ぶりです。

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谷口大祐役/窪田正孝

『ある男』ヴェネチア国際映画祭 窪田正孝
©2022「ある男」製作委員会

谷口大祐は里枝の故郷に林業で生計を立てたいとやってきました。寡黙ながらも真面目な性格で、熱心な仕事ぶり。地元の文房具屋の娘、里枝と結婚したこともあり、すっかりその土地に馴染んでいました。 しかし、大祐はある日、仕事中の事故に巻き込まれ死亡。法要に訪れた兄、恭一の発言で大祐とはまったくの別人であることが判明します。里枝の亡き夫、「X」は名前を語っていただけでなく、戸籍はもちろん谷口大祐の人生で起こった、エピソードですら自分の過去として語っていました。 誰もが善良な青年だと信じていた「X」の正体はいったい誰なのか、本物の谷口大祐はどこに消えてしまったのか――。 演じるのは『劇場版ラジエーションハウス』で主演を務める窪田正孝。Xの中に潜む「悍ましいナニカ」を静の演技で体現しています。

後藤美涼役/清野菜名

『ある男』 清野菜名
©2022「ある男」製作委員会

後藤美涼は城戸が里枝の亡き夫「X」を調査するなかで、手がかりを知るキーマンとして出会った女性です。「X」についての情報を共有するだけでなく、しだいに美涼と城戸はお互いに異性として惹かれ合い――。 演じるのはドラマ『婚姻届に判を捺しただけですが』で主演を務めた清野菜名。映画出演に関して「日本映画を牽引する俳優陣の中に畏れ多くも入れていただき毎日が刺激的だった」とコメントしています。

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谷口恭一役/眞島秀和

谷口恭一は家族間のいざこざから、弟の大祐と長いあいだ疎遠になっていました。里枝から弟の死の一報を受け、法要のために谷口家を訪問。しかし、遺影を見た恭一は「これ、大祐じゃないです」と衝撃の事実を告げ、物語を大きく転換させます。 演じたのは映画・ドラマ問わず数多くの話題作に出演する名バイプレイヤーの眞島秀和。石川作品に出演するのは映画『愚行録』以来2度目です。

中北役/小藪千豊

中北は城戸の法律事務所の同僚です。城戸が身元調査の件について唯一相談している人物で、事件にのめり込んでいく城戸の様子を心配する、同僚想いの一面を持っています。 演じるのは吉本新喜劇の座長を務める小籔千豊。芸人としての活動はもちろん、ドラマ『陸王』をきっかけにドラマ・映画に多数出演するなどマルチに活躍しています。

谷口大祐役/中野太賀

本物の谷口大祐は名前を曽根崎義彦に変えて生活していました。老舗旅館の次男坊としてのしがらみ、実の父のドナーになることを強制されたことなどに嫌気がさし、新たな人生を歩んでいたのです。 演じるのは2022年の夏ドラマ『初恋の悪魔』で林遣都とW主演を飾る仲野太賀。石川作品に出演するのはオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』以来の2度目です。

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小見浦憲男役/柄本明

『ある男』柄本明
©2022「ある男」製作委員会

小見浦憲男戸籍交換の仲介役を担うブローカーで、現在は刑務所で服役中。真相を求める城戸に「身元のロンダリング。汚いお金と同じで、過去を洗浄したい人はいっぱいいるだろ」とだけ答え、煙に巻きます。 演じるのはキャリア50年を超えた現在も、映画・ドラマに引っ張りだこの柄本明。映画出演について「初めての石川組、妻夫木さんとの共演、楽しかったです」とコメントしています。

映画『ある男』をネタバレ解説!人の本質を問う社会派ミステリー

本記事では映画『ある男』のあらすじやキャストを紹介し、ネタバレ考察をしてきました。単純にミステリーとは括れない、愛することや人間のアイデンティティについて、誠実に追求した作品です。 「ある男」の人生はあなたの心を揺さぶり、人生を見つめ直すきっかけをくれるかもしれません。愛や差別について、考えるきっかけを与えてくれるでしょう。 原作からの変更も多いので、ぜひ小説と合わせて見返して考察しなおしてみてください!