【ネタバレ考察】映画『海賊とよばれた男』現代にも通ずる「狂気を進む」という生き方

2018年9月28日更新

百田尚樹原作のベストセラー小説を、岡田准一をはじめとする豪華キャストで映画化した『海賊とよばれた男』。停滞感漂う戦後の日本で偉業を成し遂げた男たちの姿を描いた本作に込められた、果てしない人生讃歌と仕事への猛烈な熱意について今回は考察していきたい。

岡田准一主演『海賊とよばれた男』

百田尚樹原作のベストセラー小説を、岡田准一をはじめとする豪華キャストで映画化した『海賊とよばれた男』。誰もが力を失くし、絶望の淵に立たされる一方で、ひたすら前を向き人生を謳歌し続けた男たちの戦いの日々が問いかける、現代に生きる我々の生き方について今回は考察していく。

豪華キャスト紹介やあらすじはこちら

「仕事を作る」という生き方

「仕事がなければ作ればいい。」これは思うように商売が進まず、立ち込める暗雲に不安と弱音を抱く鐵造に対し、鐵造の独立を経済的にも精神的にも支えた木田章太郎が発した台詞の一部である。本作で最も印象的で、まさに国岡商店および国岡鐵造の人生を象徴するものであると言える。 やがて鐵造はその言葉通り、比較的自由に商売ができる海上で漁船向けに軽油を販売をはじめるという、従来の営業方法とは全く異なる術で勝負に挑み、閉ざされた道を切り開くかのごとく商機を自らつかみ取っていく。小さな船の上で店員たちを脇に控えながら、油を売りさばくべく海の上を渡る鐵造の姿は「海賊」と称されていた。

鐵造が行ってきた仕事法は、現代を生きる私たちと決して無縁のものではない。むしろ、ある部分においては近しいものすら感じることができると筆者は考える。 働き方の多様化が深まり、あらゆる形の仕事が増えつつある昨今。学生による起業やフリーランサーの活躍などが日本でもたびたび話題となり、新しい事業や働き方の改革が進む一方で、セオリー通りの枠から抜け出せず仕事との関係に悩むという声も多く見受けられる。 そんな我々に、鐵造の生き方は声を高らかに問いかける。自分らしいスタイルの、自分らしい仕事を作り出す。それこそが21世紀の今日を生きる現代人が踏み出すべきアイデアであり、その道を鐵造はすでにあの時代に確立していたのである。

成功と繁栄に伴う「狂気」

石油代理店として大きな成功をおさめた国岡商店のその裏に、社員を家族のごとく愛するという熱い社風や、個性豊かで能力の幅が広い社員構成があったことは紛れもない事実であるが、最も強い存在だったのは鐵造のその「狂気じみた魂」であったと筆者は考える。 ライバル企業からの嫌がらせやメジャーによる圧力、戦争の悲しみや戦後不況のあおりなど、国岡商店はいくつもの困難に見舞われ、そこから鐵造は何度も這い上がってきた。その姿は「希望や一筋の光」などの生易しい形容ではもはや言い表すことができない。彼の身体を取り巻いていたのはあらゆるものを超越した感情、商売繁盛への「狂気」に満ちた執着なのだ。 何かを始める時や目標達成に向かう時、人間の心には多少の不安感が生じる。それが後ろめたさや自信喪失に繋がり、計画を志半ばで終わらせてしまう者もいる。 それらすべてを乗り越えた先にあるのは、何にも屈しない「狂気」だ。一種の狂乱状態に陥った人間ほど屈強で、生気溢れるものはなく、いくつもの障害が立ちふさがろうとも鐵造が夢を諦めずにいられたのは、そんな「狂気」に憑りつかれていたからなのだろう。 成功と繁栄を支えるものとして、挙げられるものは多くある。金や人脈などの目に見えるものから、運や度胸などといった種類のものまでさまざまだ。しかし、それ以上に大いなる力を発揮するのは、自分の道を信じ切り突き進むことだけに特化した思考、つまり「狂気」だ。これこそが最大の武器であり、鐵造の精神および行動を支え続けたのだ。

本作が訴える挑戦の尊さ

夢のために走り続け、苦難の中を生き抜いた男の人生を描いた映画『海賊とよばれた男』。セオリー通りの枠から抜け出し、自分らしさの探求と挑戦を諦めないことの尊さを、本作は改めて訴えかける。時代は異なれどもこの尊さは決して変わらぬものであり、現代を生きる我々の心に熱い思いを刻んでいくのだ。