『マチネの終わりに』ネタバレありで魅力を解説 原作にはない映画独自の設定とは?
『マチネの終わりに』原作にはない映画独自の魅力とは?【ネタバレ注意】
福山雅治と石田ゆり子が共演する映画『マチネの終わりに』が、2019年秋に公開されることが明らかになりました。同作は、芥川賞作家・平野啓一郎による同名小説を、『昼顔』『容疑者Xの献身』などで知られる西谷弘監督が映画化しました。 この記事では、“切ない大人の恋”を描く同作のあらすじやキャスト、そして作品の魅力などを紹介していきます。 ※この記事には作品のネタバレが含まれますので、未鑑賞のかたはご注意ください!
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【原作&映画版あらすじ】6年間で3回しか会わない男女の恋とは?
本作は、主人公の天才クラシックギタリスト・蒔野聡史(まきの・さとし)と、婚約者がいるのにも関わらず、彼との叶わぬ恋に翻ろうされてしまうジャーナリスト・小峰洋子(こみね・ようこ)の物語。 原作で特徴的な点は、主人公の2人に様々な障害が降りかかり、6年間のうちにわずか3回しか会えないにも関わらず、“人生で誰よりも愛した存在”になるまでが描かれているという点です。 映画でも同様に、東京、パリ、ニューヨークを舞台に、3回しか会っていないながらも深い愛で結ばれるふたりを描きます。 その他にも、クラシックギターが物語の要になったり、様々な社会問題が降りかかったりと見どころ満載の作品となっています。
「マチネ」の意味は?
「マチネ」は、もともとフランス語で「午前中」を意味する言葉ですが、現在は演劇などの世界で「昼の公演」という意味で広く使われています。 『マチネの終わりに』は、昼公演が終わる午後3時から4時ごろと、人生の後半が始まる40代ごろとを重ね合わせてつけられた題名だそうです。
映画と原作はココが違う!ネタバレ解説
映画には登場していないキャラクター
原作のキャラクターのなかで、映画には登場していないキャラクターがいます。 それは、蒔野の友人である武知。彼もギタリストであり蒔野をツアーに誘います。小説では、その後の出来事が物語に影響を与えることになりますが、後述する年代設定の違いのためにカットされたものと思われます。
年代設定が違う
原作の小説『マチネの終わりに』は、2015年から2016年にかけて朝日新聞紙面およびWEB上で連載されました。
原作のラストは東日本大震災があった2011年となっていますが、映画では2018年になっています。それに合わせて“6年間”のはじまりも繰り下がりました。
洋子の設定が原作とは違う
映画では、洋子は映画監督イェルコ・ソリッチの“義理の娘”ということになっています。母・信子が洋子を産んだあと、ソリッチと再婚したという設定です。 しかし小説では、彼女とソリッチは血のつながった父子。これは洋子を演じる石田の容貌から設定が変更されたと考えられます。
また、原作で洋子は当時戦時下にあったイラクに特派員として行っています。彼女はそこで心に傷を負ってしまいました。 映画では、洋子はフランスの通信社に務めパリの支局で働いています。しかし、彼女の勤務する支局があるときテロの標的となってしまい、洋子はエレベーターに閉じ込められてしまいました。洋子はジャーナリストとしてとっさにその状況を撮影し、洋子はあの夜に蒔野と話したことを口にします。それがインターネットに流れたことで、蒔野は彼女が命の危機に陥ったことを知り、彼女への想いを強くしたのでした。 そして映画でもやはり、洋子は心に傷を負ってしまいます。
マネージャー三谷早苗の行動・覚悟が違う
蒔野のマネージャーである三谷早苗(みたに・さなえ)は、彼の音楽の才能に惚れ込み、全身全霊で彼を支える覚悟を決めています。
早苗は蒔野の不調の原因は洋子のせいではないかと考えていました。同時に、彼女もまた蒔野に恋心を寄せていたのです。彼女は原作でも映画でも、蒔野と洋子の仲を引き裂くことになります。そして後に蒔野と結婚。しかし、その後の行動は大きく違っています。 原作の早苗はその事実を洋子には告げず、ただ蒔野に近づいてほしくないと言います。そして洋子はふたりがすれ違った原因が彼女にあることを悟るのです。 しかし映画では、早苗はニューヨークで洋子に会い、ことの真相を明かします。同時に蒔野にもメールで過去を告白しました。この行動はかなり覚悟のいることだったのではないでしょうか。
【ネタバレ注意】『マチネの終わりに』4つの見どころを紹介
見どころ①: 東京、パリ、ニューヨークの美しい街並み
本作では、情感豊かな3つの都市の町並みがストーリーを彩ります。ふたりが出会った東京、洋子の暮らすパリ、そして蒔野がコンサートを行うニューヨーク。それぞれ旅行で訪れるような観光地ではなく、人々が暮らしている日常の光景が魅力的に映し出されていました。 洋子がパリの街を歩く姿は、ジャーナリストという骨太な仕事をしている彼女が実はのびのびと、やわらかさを失わずに暮らしていることを現すように、自然体な魅力を放っています。また、ニューヨークのセントラルパークも、ランドマークであるベセスダの噴水も誇張することなくその美しさが表現されています。
見どころ②: 福山雅治が奏でるクラシックギターの調べ
福山雅治は、本作でクラシックギターに初挑戦しました。「ガリレオ」シリーズなどで福山雅治と何度かタッグを組んでいる菅野祐悟がメインテーマ「幸福の硬貨」などの作曲を手掛けています。 福山はほかにもブラームスやバッハの曲をクラシックギター用にアレンジした演奏を披露しています。「幸福の硬貨」は、洋子の養父で映画監督のイェルコ・ソリッチの同名映画のテーマ曲という設定。菅野は世界的ギタリストの弾く曲であるため、簡単な曲ではいけないし、かといって超絶技巧を駆使するような曲でもなく、作曲の際にはそのバランスを意識したと語っています。 福山は、決して簡単ではないこの曲を弾きこなし、その繊細で美しいメロディーをさらに引き立てています。
見どころ③: 映像による心情描写
福山演じる蒔野は、ギタリストととして自分の演奏に満足できず、苦悩し始めた時期に洋子と出会います。
しかし、その後も彼のスランプはつづきました。彼がステージの上でギターを弾きながら迷い、苦しんでいる様子が映像で見事に表現されています。暗闇のなかで音の出ないギターを弾く蒔野。彼の姿が次第に闇に飲み込まれたかと思うと、現実のステージの上では、何事もなかったかのように演奏をつづけているシーンになります。 人知れず苦しむ音楽家の苦悩を見事に表現した映像です。 ほかにも、言葉ではなく映像や演技で登場人物の感情がはっきりと伝わってくる演出が多くあります。
見どころ④: 実力派俳優たちの見事なアンサンブル
『マチネの終わりに』の登場人物は、ほとんどが人生も半ばに差し掛かった大人たちです。しかし、彼らもときに迷い、もがき、苦しみながら生きています。 主人公の蒔野と洋子以外の登場人物も、それぞれの人生をそれぞれの思いを持って、お互いに影響を与えながら生きています。1人で暮らす高齢の父を心配する娘の奏や、幼いころからお互いを知っている彼女と蒔野の関係。蒔野と彼の音楽を情熱的に支える早苗。そのリアルさが胸に迫る本作は、愛とは?人生とは?を観客に問いかけます。 これを実現している出演俳優陣のアンサンブルは見事としか言いようがありません。善悪ではなく、自分の想いに突き動かされて行動を起こす登場人物たちは、この世界に確かに生きていると感じられます。
映画『マチネの終わりに』に出演する豪華キャスト一覧
蒔野聡史(まきの・さとし)役/福山雅治
クラシックギタリスト・蒔野聡史は“天才”として知られる一方で、自身の演奏に満足出来ず苦悩しているという役どころ。蒔野は東京での公演後に出会ったジャーナリスト、小峰洋子に惹かれていきます。 蒔野を演じるのは福山雅治。彼は、2020年に公開される岩井俊二監督の映画『ラストレター』にも出演です。 福山は本作でクラシックギターに初挑戦。メインテーマである「幸福の硬貨」も自身で演奏しています。福山の演技だけでなく、演奏にも注目したいですね。
小峰洋子(こみね・ようこ)役/石田ゆり子
石田演じる小峰洋子は、フランスの通信社に所属するジャーナリスト。彼女は婚約者がいるにも関わらず蒔野に惹かれていきます。本作は海外が舞台となるため、石田は英語やフランス語でのセリフにも挑戦しました。 石田ゆり子は、2019年9月13日公開の三谷幸喜監督作品『記憶にございません!』にも出演しています。
リチャード新藤(りちゃーど・しんどう)役/伊勢谷友介
伊勢谷友介が演じるのは、日系アメリカ人のリチャード新藤。石田演じる洋子の婚約者で、アメリカで大企業の顧問を務める経済学者です。新藤は洋子と結婚し、一緒にアメリカで暮らそうといいますが、蒔野と出会ってしまった洋子はどんな選択肢をするのでしょうか。 伊勢谷は2019年2月22日公開の映画『翔んで埼玉』にも出演しており、GACKTとのキスシーンなど身体を張った演技が話題となりました。伊勢谷は英語に堪能なので、本作でその実力を発揮してくれることが期待されます。
三谷早苗(みたに・さなえ)役/桜井ユキ
桜井ユキ演じる三谷早苗は、蒔野を支えるマネージャーです。仕事としてだけでなく、蒔野の音楽と才能に惚れ込んでいる彼女。蒔野と彼の音楽に人並みはずれた情熱を傾けています。 早苗を演じる桜井ユキは、映画『リアル鬼ごっこ』(2015年)や『娼年』(2018年)、『スマホを落としただけなのに』(2018年)など、近年数多くの作品に出演。また、2019年の春ドラマ『東京独身男子』につづき、秋ドラマ『G線上のあなたと私』にも出演しています。
中村奏(なかむら・かなで)役/木南晴夏
中村奏は、蒔野の師匠である祖父江誠一の娘。10代で弟子入りした蒔野とは幼い頃から親交があり、親戚のような間柄です。結婚後も、1人で暮らす父のことをいつも気にかけています。 奏を演じるのは、木南晴夏。木南は人気コミックの映画化作品「20世紀少年」シリーズや、テレビドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズへの出演で知られています。また、女優業だけでなく映画『クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン~失われたひろし~』(2019年4月19日公開)にて、声優も務めました。
小峰信子(こみね・のぶこ)役/風吹ジュン
小峰信子は洋子の母で、世界的に有名な映画監督イェルコ・ソリッチの妻。長崎に住んでいます。彼女は、夫とは訳あって晩年を一緒に過ごせませんでしたが、彼を深く愛していました。 信子を演じるのは、風吹ジュン。風吹は2019年1月25日に公開された映画『そらのレストラン』にも出演しました。本作では、母として洋子の背中を優しく押してくれる役割をはたしています。
是永慶子(これなが・けいこ)役/板谷由夏
是永慶子はジュピターレコードという会社の社員で、蒔野を担当しています。洋子のアメリカ留学時代の友人である彼女が、洋子を蒔野のコンサートに連れて行き、ふたりを引き合わせました。 慶子を演じるのは、板谷由夏。板谷は、映画『運命じゃない人』(2005年)や『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(2018年)などへの出演で知られています。本作で洋子を演じるの石田ゆり子とは、プライベートでも親交があるらしく、友人役として息の合った演技を見せてくれるでしょう。
祖父江誠一(そふえ・せいいち)役/古谷一行
祖父江誠一はクラシックギター界の巨匠で、蒔野の師匠。彼は、10代の蒔野に才能を見出し、弟子として迎え入れました。現在の彼は、老化を感じつつも現役で音楽活動をつづけています。 祖父江を演じる古谷は、テレビドラマ「金田一耕助」シリーズや『失楽園』(1997年)、『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(2013年)、「相棒」シリーズなど、数多くの作品に出演。ベテラン俳優として幅広く活躍しています。
『昼顔』監督が描く『マチネの終わりに』は2019年11月1日から公開中
本作を手がける西谷監督は、ドラマ『美女か野獣』『ガリレオ』『ラヴソング』などで、これまで何度となく福山とタッグを組んできた人物。加えて、ドラマ『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』で不倫ドラマブームを巻き起こした先駆者的存在です。 既に高い評価を獲得している原作を豪華キャスト・スタッフで映画化され、大きな話題を呼んでいる本作。東京、パリ、ニューヨークの美しい街並みのなかで紡がれる、大人の男女の切ない恋にあなたも涙するでしょう。 映画『マチネの終わりに』は2019年11月1日から全国公開中です!