雪が印象的なおすすめ映画8選 真っ白い雪を効果的に使った名作の数々
雪が画面に映える名作映画を紹介
時と場所、ジャンルも様々な作品に印象的に登場する雪の風景。それはある時はラブストーリーの情景を映し、ある時はサスペンスで血と雪のコントラストを生みます。 この記事では、名作アニメやサスペンス、ファンタジーや感動のドラマなど多様なジャンルから、雪が印象的な一般的な名作映画をciatr独自調べで客観的にピックアップ。古典から近年の作品まで新旧問わず、雪が生み出す名シーンとともに紹介します。 後半では、クライマックスに雪が効果的に使われている映画をciatr編集部が厳選してみました。
『love letter』(1995年)
岩井俊二監督の長編1作目!北海道を舞台にした手紙にまつわるラブストーリー
岩井俊二の1作目となる長編監督作で、中山美穂が二役を演じた手紙の誤送から始まるラブストーリーです。2020年には本作のアンサー映画として『ラストレター』も公開されました。 恋人の藤井樹を亡くした博子は、彼を忘れられないまま、樹が昔住んでいた住所にあてもなく手紙を出していました。その届くはずのない手紙は、樹と同姓同名の女性の元に届き、そこから二人の文通が始まります。 北海道の小樽と神戸を舞台とした手紙のやり取りが、雪景色とともに叙情的に展開されました。特に印象的なのは雪山のシーン。冒頭では博子が雪の丘に横たわり降りて行く様子を俯瞰で、後半では樹が遭難した雪山で彼に向けて「お元気ですか」と呼び続ける姿をとらえ、白く深い雪に彼女の心情を映し出しています。
『薄氷の殺人』(2015年)
現代中国社会を凍てつく街の殺人事件から批判的に描くクライム・サスペンス
第64回ベルリン国際映画祭で金熊賞と男優賞のW受賞に輝いた中国発クライム・サスペンス。『夜行列車』(2007)で知られるディアオ・イーナンが監督を務め、『ライジング・ドラゴン』(2012)のリャオ・ファンが主人公ジャンを演じました。 1999年の中国華北地方、男性のバラバラ死体が6都市15カ所の石炭工場で発見される事件が発生。捜査を担当した刑事のジャンは、容疑者射殺により未解決事件となったのを機に警察をやめ、警備員に転職していました。しかしその5年後、同じ手口の事件を警察が追っていることを知り、独自に捜査を開始します。 凍てつく中国北部の地方を舞台に、フィルム・ノワールの手法で現代の中国社会を批判的な視点で描いた本作。雪に囲まれた屋外スケートリンクで起こる事件は、映像の美しさとは裏腹に、踏みつけられた雪の塊が象徴するようにどす黒く汚い部分をさらけ出しています。
『東京ゴッドファーザーズ』(2003年)
捨て子の赤ちゃんが三人のホームレスにもたらすクリスマスの奇跡
『千年女優』(2001)の今敏監督による3作目の長編アニメ映画。アメリカの映画『三人の名付親』(1949)から着想を得て、今敏監督が原作・脚本を手がけた作品です。 元競輪選手を自称するギンちゃん、ドラァグクイーンのハナちゃん、家出少女のミユキは新宿の公園で生活するホームレス。クリスマスの晩にゴミ捨て場でクリスマスプレゼントを探していた三人は、そこで赤ちゃんを発見します。三人はその子に「清子」と名付け、親を探し始めることに。 それぞれの過去を抱えた三人が赤ちゃんを抱えて雪の降りしきる街を奔走し、次々明らかになる意外な事実に驚きつつも「清子」の本当の親を探し出します。大雪に見舞われた東京で、クリスマスの晩から大晦日までの7日間に「清子」が三人にもたらした奇跡をファンタジックに描きました。
『ファーゴ』(1996年)
コーエン兄弟監督作!雪深い町で起こる奇妙な殺人事件
コーエン兄弟によるクライム・サスペンスで、偽装誘拐を発端とした殺人事件をブラックユーモアを交えて描いた作品。アカデミー賞では作品賞を含む7部門にノミネートされ、事件を追うマージ・ガンダーソン署長を演じたフランシス・マクドーマンドが主演女優賞、コーエン兄弟が脚本賞を受賞しました。 多額の借金を抱え、妻を偽装誘拐して彼女の父親から身代金を騙し取る計画を立てた自動車ディーラーのジェリー。ところが誘拐の実行犯二人が警官と目撃者を射殺してしまい、計画は意外な展開を迎えます。 ミネソタ州のファーゴという町をタイトルにしていますが、実は主な舞台は同州でも雪深い町ブレーナード。ミネソタ州はカナダと五大湖に隣接したアメリカでも雪深い地域です。冒頭からラストまで一面雪景色が広がり、そこに流れた血が寒々しくも印象的なコントラストを生んでいます。
『アナと雪の女王』(2014年)
アンデルセンの「雪の女王」をモチーフに描く氷と雪のファンタジー
アンデルセン童話の「雪の女王」をモチーフにしたディズニー・アニメで、雪の王国を統べる姉妹が氷に閉ざされた世界を救う冒険をくり開げる物語。第86回アカデミー賞では長編アニメーション賞を受賞、主題歌「Let It Go」とともに世界的大ヒットとなった作品です。 氷と雪を操る魔法の力を持つエルサは、妹のアナを幼い頃その力で傷つけ、それ以来城の奥に引きこもっていました。しかし王と王妃である両親を海難事故で亡くし、エルサが女王となり国を治めることに。ところが戴冠式を前に力が暴走し、エルサは雪山に逃げ込んでしまいます。 雪山に自分の力で氷の城を築く様子を「Let It Go」に乗せて描いたシーンは、本作一番の見どころ。繊細な雪の結晶も美しく描かれています。大ヒットを受けて製作された続編では、エルサが持つ力の謎が明かされました。
『渇き。』(2014年)
中島哲也監督が描くバイオレンス・サスペンス!雪山に隠された秘密とは
『告白』の中島哲也監督によるバイオレンス・サスペンスで、深町秋生の小説「果てしなき渇き」の映画化作品。主人公の元刑事・藤島を役所広司、その娘・加奈子を本作で映画デビューを飾った小松菜奈が演じました。 妻の不倫相手に車ごと突っ込み、仕事も家庭も失った元刑事の藤島。荒れた生活を送る彼の元に、元妻から娘の加奈子が失踪したという知らせが舞い込みます。行方を追ううち、学校では優等生だった加奈子が実は裏社会とつながっていた事実が判明。娘の本当の姿を知り、藤島は次第に暴走し始めます。 この作品のどこに雪のシーンが?と思うほど、ラスト近くまで一ミリも雪は出てきません。雪の風景が登場するのは、中谷美紀演じる加奈子の中学時代の担任教師・東と藤島が掘り続ける雪山のラストシーン。この雪深い山に隠されたものは何か、驚愕の真実はぜひ鑑賞後に!
ciatr厳選!クライマックスの雪景色が印象的な映画
ここからは、ciatr編集部が厳選したおすすめ映画を紹介。クライマックスの雪景色が美しく印象的な『シザーハンズ』と『生きる』の2本を選びました。どちらも名匠の監督作で古典的な名作です。
『シザーハンズ』(1991年)
ティム・バートン×ジョニー・デップの名作ファンタジー!舞い散る雪片が美しく切ないラブストーリー
ティム・バートン監督とジョニー・デップが初めてタッグを組んだ90年代初期の名作ファンタジー。主人公エドワードをジョニー・デップ、彼と恋に落ちる少女キムをウィノナ・ライダーが演じました。 エドワードは丘の上の屋敷に住む発明家に作られた未完成の人造人間。両手がハサミのまま発明家は亡くなり、一人残されたエドワードを心配したセールスレディのペグが彼を町に連れ出します。ペグの家に住むようになったエドワードはペグの娘キムに恋心を抱くのですが……。 両手がハサミのため、恋しいキムを抱くこともできないエドワードの哀しい恋。雪片を舞い散らせながらハサミで氷像が雪片を創り出すエドワードと、その中で一緒に舞うキムの姿は、永遠の愛を描いた映画史に残る美しいシーンです。
『生きる』(1952年)
「生きる」とは?余命を悟った男が残りの人生を“生きた”物語
黒澤明監督が戦後7年目に撮ったヒューマンドラマで、人生を「生きる」とは何かを問う哲学的名作。市役所を舞台とした、効率と体面ばかり気にするいわゆる「お役所仕事」や官僚主義を批判した作品でもあります。 市役所の市民課長を務める渡辺は、30年間皆勤の模範的な役人。しかしある日、自分が胃がんで余命半年と知り、これまでの活気を失った人生は何だったのかと思い悩みます。職場に戻った渡辺は余命を「生きる」ことに使おうと、市民の陳情書をもとに公園建設に尽力し始めるのでした。 下水が溜まる荒れた土地に、子どもたちが安心して遊べる公園を作ること。それだけを目標に、残りの人生をかけて役所のあらゆるしがらみを超えて完遂した渡辺の静かなる気迫に胸打たれます。深夜の雪降り積もる完成した公園で、ブランコに乗って一人歌いながら人生の幕を閉じた渡辺は、幸せだったのではないでしょうか。
雪景色の奥深さが映画に深みを与える
『アナと雪の女王』のような全編に氷と雪の世界が展開するファンタジーから、重要なシーンに突如雪山が登場するサスペンス『渇き。』など、作品ごとにまったく違った印象を与える雪景色。この奥深さが作品に表現の深みを与えているのかもしれません。 テーマによって温かくも冷たくも見える雪の情景。凍えるような大地を舞台にしたクライム・サスペンスも、降りしきる雪が温かな感動を生むファンタジーも、同じ雪を効果的に使った素晴らしい映像表現です。これからはそんな背景を豊かにしている要素にも注目して、作品を鑑賞してみてはいかがでしょうか。