2021年1月2日更新

『ホムンクルス』を結末までネタバレ解説!「自分探し」がテーマの衝撃作

ホムンクルス

『ホムンクルス』は人間の深層心理をテーマにした漫画作品です。その内容から「衝撃の問題作」と評されることの多い本作ですが、2021年に実写映画化されることが決定しました。今回は、漫画『ホムンクルス』の魅力やその内容をネタバレありで解説していきます。

目次

漫画『ホムンクルス』は人間の深層心理を描く衝撃作【ネタバレ注意】

2003年より週刊ビッグコミックスピッツにて連載されていた漫画『ホムンクルス』。途中で1年ほど休載を挟んでいますが、2011年の12月号をもって完結しました。 8年もの連載を経て完結した『ホムンクルス』はその独特な世界観で今もなお多くのファンを魅了し、現在2021年12月28日までに累計発行部数が400万部を突破しています。 読者には、ストーリーの内容が非常に衝撃的でトラウマものであると言われており「衝撃の問題作」として名高い作品です。 ※この記事は2020年12月現在までのネタバレを含みますので、読み進める際は注意してください。またciatr以外の外部サイトでこの記事を開くと、画像や表などが表示されないことがあります。

トラウマ漫画?『ホムンクルス』のあらすじ

物語は日本の新宿西口の一角から始まります。高級ホテルが立ち並ぶ一角とホームレスが集まる公園の間で車上生活を行っていた主人公・名越進。 彼はかつてエリートサラリーマンだったのですが、現在はホームレスとしてその日暮らしの生活をしていました。 他のホームレスたちにも馴染むことができずに日々を過ごしていた彼の前に、ある日1人の男が声をかけます。 その男の名前は伊藤学。医学生である彼は名取に高額な報酬と引き換えに人体実験の話を持ちかけます。人体実験は「トレパネーション」と言い、頭蓋骨に穴を開けることで第六感を芽生えさせるもの。 手術を受けた名越はそれ以降他人の深層心理が具現化されて見えるようになって……。

『ホムンクルス』の作者は山本英夫

『ホムンクルス』の作者は漫画家・山本英夫です。 1988年のちばてつや賞ヤング部門期待賞に入賞した後、島耕作シリーズの弘兼憲史やくじらいいく子のアシスタントを経て、1989年に週刊ヤングサンデーでデビューしています。 代表作には『ホムンクルス』の他に『のぞき屋』や『殺し屋1』などがあり、『殺し屋1』は2001年に浅野忠信主演で映画化しました。 『のぞき屋』執筆時には実際に探偵学校に潜入、『ホムンクルス』執筆時にはホームレス生活をしたり睡眠療法を学ぶなどリアリティーを追求した情熱的な姿勢が山本英夫の特徴です。 その作風は社会問題や人間の闇の部分など、深い部分に切り込んだものが多く、中には有害図書に指定された刺激的な作品もあります。

【ネタバレ①】トレパネーション手術を受けた名越……彼に見えたものとは

トレパネーションは頭蓋骨に穴を開ける手術で、8000年前から存在する日本最古の外科手術であると言われています。 頭蓋骨に穴を開けることで脳圧が下がり脳の機能が上昇すると言われていますが、実際の効果のほどは定かではありません。 名越は最初、医学生・伊藤学による怪しいトレパネーションの提案を断ろうとしていました。しかし、手術を受けることで手に入る70万円の報酬をチラつかされ、生活が苦しかった彼はトレパネーション手術を受けることに。 トレパンーションの手術自体は無事終わりましたが、彼の身体には特にこれといった変化は現れませんでした。しかし数日後、名越はある異変に襲われることに。

ホムンクルスが見えるようになった名越は「自分とは何者か」を考え始める

何事も無く終わったかのように思えたトレパネーション手術ですが、ある日名越は歩いている人間の1部が異形のものに見えてしまうようになったのです。 普通の人間も見える一方、人間ではないものも見えてしまうことに恐怖を覚えた彼はすぐに伊藤に相談します。 何が起きているのか分からない彼に対し、平然と異形の正体を「ホムンクルス」と呼ぶ伊藤。「ホムンクルス」は人間のコンプレックスやトラウマが可視化されたものだというのです。 以降、彼は様々な「ホムンクルス」と出会い、人々のコンプレックスやトラウマを解決していきます。そんな中、名越は「自分のコンプレックスとは」「自分とは何者か」を考え始めるようになるのでした。

【ネタバレ②】右目を縫合した後、自分と向き合う名越。彼が抱えるコンプレックスとは

元々名越は一流銀行に勤めるエリートサラリーマンでした。しかし、仕事による過度なストレスや自分自身の存在に自信が持てなくなったことで段々と精神を病んでいきます。 自身の存在を確かめるために繰り返し整形をしたり自分の精子を飲んだり……その異常とも言える彼の行動には深い闇を感じます。 そんな嘘にまみれた日々に生きる意味を感じられなくなった彼は、生きる実感を得るために全てを捨ててホームレスになることを選んだのでした。 「ホムンクルス」が見えるようになり、人間の心の歪みである「ホムンクルス」と向き合うことで自分とようやく自分と向き合うようになった名越。 そんな折に連絡が入り、伊藤と名越が久しぶりに再開することになりました。しかし伊藤は突如「ホムンクルスの実験は終わりだ」と告げたのです。それに対し、彼はそれなら穴を塞いで欲しいと訴えました。

再び手術をしようとする伊藤でしたが、手術の直前に名越が伊藤のホムンクルスの姿を伝えると伊藤は動揺して手術ができなくなってしまいます。 彼は伊藤に「お互いにホムンクルスから逃げられない」ということを伝え、なんとホムンクルスが見えない右目を縫合してしまうのでした。 右目を縫合したことでホムンクルスの姿しか見えなくなった彼はホムンクルスの姿に見えている伊藤と対話を繰り返し、伊藤が心のうちに秘めているものや隠しているものを突き詰めていきます。 その後、名越は自分と対話をすることに。

縫合した右目の縫い目を切り、名越は自分を解放

右目を縫合しホムンクルスしか見えなくなったことで、嘘で塗り固められた名越をホムンクルスの存在が精神的に追い詰めてきます。追い詰められた名越はついに右目の縫い目を切り、自分を開放するのでした。 右目を開放したあと、名越は再び伊藤と会うことに。伊藤は入院している父親に会うために病院に向かいますが、彼はそこで伊藤と伊藤の父親の関係性を知ることになります。 お互いに嘘で塗り固めていることを知った伊藤と名越。彼は伊藤をディナーに誘い、対話を繰り返すことで伊藤と伊藤の父親の関係の真相に迫ります。 彼がグッピーの話を出すと動揺し、突然堰を切ったように話し始めた伊藤。後日伊藤は再び父親の病室を訪れると父親が過去の伊藤に対する過ちを告白し、2人のわだかまりはとけていくのでした。 一方、名越は自らと向き合う中で自身の課題を見つけていきます。

【ネタバレ③】ホムンクルスが見えなくなった名越は七瀬ななこと出会う

伊藤との対話を経て次第に自分を取り戻しつつあった名越ですが、ある日突然ホムンクルスが見えなくなってしまいます。 自分のコンプレックスをまだ解消できていないことから伊藤に再手術を頼み込む名越。伊藤はオペの危険性を考えて断りましが、彼はなんと伊藤の家に忍び込み手術のための道具を盗み出すのでした。 そして公園のトイレで電動ドリルを使い、自ら額に穴を開けます。死ぬことはなかったものの、出血多量と不衛生な場所で手術をしたことで身体の不調を感じ始めた名越。 そこに1人のある女が近づいてきました。彼女は名越が自身で再手術を行った後、ホムンクルスに見える唯一の人間で、顔が変わる女でした。

その場では彼の前から姿を消した彼女でしたが、その後再び名越と出会うことに。“ななみ”と名乗る彼女ですが、彼は彼女のことを元カノの“七瀬ななこ”ではないかと疑います。 しかし、“七瀬ななこ”はブサイクであったため名越の前に現れた女とは一致しないと考える名越。そんな彼に対し伊藤は、「彼女もまた整形を施している」と指摘します。 名越はななこを追いかけ、その後急速に深まっていく2人の仲。何度も繰り返し会う中で、彼はななこに対し「心が見えるようになる手段がある」と伝えます。 その手段とはトレパネーション手術のことだったのです。彼はついにななこにトレパネーション手術を施し、一緒になることができたのでした。

名越のななこに対する一連の行動の意味とは?

かつてありのままの名越を愛してくれていた唯一の女性である七瀬ななこ。 付き合っていた当時彼女は妊娠していましたが名越はそんな彼女を捨てて逃げ出します。彼は“ななみ”を元カノである「七瀬ななこ」と重ね合わせ、自分のことを見てほしいという狂気的なエゴを押し付けようとするのでした。 前述したように、彼はホムンクルスが見えないななこに対してトレパネーション手術を受けさせます。手術を受けたななこの顔を見て驚く名越。 なんと彼女の顔が自分の顔になっていたのです。自分の顔をしたななこと性行為をすることで、名越は自分の存在が実感できるようになったのです。

【結末ネタバレ】人間の顔が全て自分の顔に……「ここは天国か?地獄か?」

名越の顔になったななこと激しく抱き合い、ようやく身も心も1つになった名越。ななこはその後眠りに落ちてしまいますが、気づくと元のななこの顔に戻っています。 このことは、ななこのコンプレックスが解消したことを示しているのではないでしょうか。しかし、その後ほどなくしてななこは手術の後遺症で亡くなってしまうのでした。 ななこが亡くなってしまったことに気づかず、彼女を1人部屋に残し去った名越。外に出ると衝撃的な光景が広がっていました。 なんとそこにいる全ての人々の顔が彼の顔のホムンクルスになっていたのです。そんな衝撃的な光景を見て、彼は1人「ここは天国か?地獄か?」と言い残してこのシーンは終了します。

結末を徹底考察!顔が全て自分に見える理由とは?名越は幸せになれたのか

物語の主人公であり、ホムンクルスが見える名越もまた大きなコンプレックスを抱えている1人です。では、彼のコンプレックスはどのようなものなのでしょうか? 彼が抱えるコンプレックスは「生きている実感が持てないこと」。名越はかつてエリートサラリーマンとして働きながらも、たびたび自分が本当に存在しているのかどうか不安になるのでした。 それに加えて醜い容姿にもコンプレックスがあり、鏡を見る勇気もないためいつも下ばかりを向いていました。 そんなコンプレックスに苛まれた彼は顔を整形して過去を捨てることに。整形をすることで富も女も全て手に入れることが出来ましたが、女たちが自分と自分の財産のどちらを見ているのか分からなくなります。

整形をすれば周りの人間もきっと自分自身を見てくれ、そうすることで生きている実感が得られるのではないかと考えていた名越。しかし、彼は整形によって生きている実感など得ることはできませんでした。 それに加え仕事による過度なストレスで、自我を保つために自身の精子を飲むように。精子を飲むことでしか生きている実感を感じることができなくなってしまったのです。結局そのまま彼は冒頭のようにホームレスへと転落していきます。 ラストシーンにおいて、名越は何故全ての人間の顔が自分の顔に見えてしまってたのでしょうか?これは自己の存在感を求め過ぎたがゆえに、自分だけの閉ざされた世界に没入してしまったことを示しているのだと考えられます。 結局は最初からどこにも名越の居場所などなく、ホムンクルスの世界こそが彼の全てだったためにあの衝撃のラストがあるのだと想像できますね。

【ホムンクルス】「自分とは何者か」を考えさせられる衝撃のトラウマ漫画

今回は漫画『ホムンクルス』についてネタバレありで徹底的に説明しました。人間の深層心理を描く作品は沢山ありますが、中でも本作はトラウマに焦点をあてた作品。後味の悪いシーンも度々登場します。 しかし、他に類を見ない独特の面白さを持っている故に読む人をどんどん引き込んでいく魅力が多くあります。中でもラストシーンは非常に衝撃的なので、気になる方は是非読んでみて下さい。 本作は2021年に綾野剛主演で実写映画が放映されることが決定しています。非常に独特な世界観を持ち終始不気味な雰囲気がある『ホムンクルス』。実写化映画がどうなるのか、今から楽しみですね。