『シン・ウルトラマン』ゾーフィはゾフィーと全く違う!2つの元ネタを徹底解説
庵野秀明による『シン・ウルトラマン』(2022年)では、初代『ウルトラマン』(1966年)へのリスペクトを込めた、オマージュやパロディが盛りだくさんで話題を呼んでいます。そのなかでも話題を読んでいるのがが「外星人ゾーフィ」です。 そこでこの記事では「外星人ゾーフィ」の秘密を徹底解説!ゾフィーやゼットンとどんな関係があるのか、元ネタは何なのか、誕生秘話を含めて紹介します。 ※本記事は『シン・ウルトラマン』及び『ウルトラマン』に関するネタバレを含みます。未鑑賞の場合は注意してください。
『シン・ウルトラマン』に現れた謎の外星人ゾーフィ
名称 | ゾーフィ (元ネタでは「宇宙人ゾーフィ」) |
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身長・体重 | 2m・50kg (巨大化しない) |
武器 | 天体制圧用最終兵器ゼットン |
出身・立場 | 光の国から来た、宇宙の秩序を守る裁定者 |
見た目の特徴 | ・目や口が左右非対称 ・色が金とダークネイビー |
声優 | 山寺宏一 |
『シン・ウルトラマン』終盤で登場したゾーフィは、我らがピンチヒッター・ゾフィーとそっくりの名を名乗っておきながら、地球を破壊しようとゼットンを放った衝撃の外星人。 見慣れない金と黒らしき色で左右非対称の顔をしており、不気味で怖い雰囲気を漂わせています。
登場シーン
ゾーフィは外星人メフィラスが地球を去った直後に地球の裁定者としてやって来ます。目的は地球を滅亡させることでした。 ゾーフィはウルトラマンに「禍特対の神永新二と融合したことで、マルチバースのすべての生命体に、人類が巨大化可能な生物兵器として利用できると知られてしまった。それ故に天体に危険を及ぼす、地球の廃棄処分が決定した」と語ります。 ウルトラマンの説得むなしく、ゾーフィは天体制圧用最終兵器ゼットンを地球上空に配備。ウルトラマンは地球滅亡を阻止するため、命を賭けてゼットンに立ち向かうのでした。
ゾーフィって一体何者?
- 外星人ゾーフィ=①ゾフィー+②ゼットン星人(+③成田亨「ネクスト」)
「ゾーフィ」はもともと誤記がきっかけで生まれた存在です。かつてある児童誌で、ゾフィーとゼットン星人を混同した情報が紹介されていました。 その紙面では「ゾーフィ」という名前とゾフィーらしきイラストの下で、「宇宙恐竜ゼットンを操って、大あばれする」、「2メートル、50キログラム」、「力はないが頭はよい」といった、ゼットン星人の情報が記述されていました。 古株ウルトラマンファンのみが知るこの元ネタを、庵野秀明が『シン・ウルトラマン』のストーリーに巧みに組み込んで誕生したのが、「外星人ゾーフィ」なのです。 ちなみに金と濃紺のカラーリングは、成田亨の「NEXT (ネクスト)」もしくは「ウルトラマン神変」というデザインが元になっていると言われています。
ゾフィーとの違い・共通点は?
かつてゾフィーは、ゼットンに敗れたウルトラマンを光の国へ連れ戻すためにやって来ました。はシルバーと赤、胸と肩にはスターマークとウルトラブレスターがあります。 一方ゾーフィは地球の裁定者として、光の星の掟を破ったウルトラマンを逮捕し、地球を滅ぼすためにやって来ました。体の色はゴールドと濃紺で、ウルトラブレスターもカラータイマーもありません。 しかしゾーフィは、ゾフィーの名言を再現してくれています。これはゾフィーファンにも嬉しいポイントだったのではないでしょうか。
- そんなに人間が好きになったのか元:そんなに地球人が好きになったのか
- 私は執行者として、天体制圧用最終兵器を伴ってきた元:私は命を2つ持ってきた
声優は山寺宏一
— 山寺宏一 (@yamachanoha) May 14, 2022
『シン・ウルトラマン』公開日の翌日、5月14日に山寺宏一の公式twitterで、ウルトラマンの代名詞であるスペシウム光線ポーズを取る写真が投稿されました。 じつは今回、外星人ゾーフィの声優を務めたのが山寺宏一。出演を匂わせたこのツイートは、鑑賞前のファンを筆頭に、さまざまな憶測を呼び、大きな話題となりました。
元となった2つのキャラクター
ここからは外星人ゾーフィの元ネタとなった、ゾフィーとゼットン星人をそれぞれ紹介していきます。
①ゾフィー
身長 | 45m |
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年齢 | 2万5千歳 |
飛行速度 | マッハ10 |
職業 | 宇宙警備隊(のちに隊長に) |
初登場回 | 『ウルトラマン』(1966年) 第39話「さらばウルトラマン」 |
ウルトラ兄弟の頼れる長男で、M78星雲・光の国に本部を持つ宇宙警備隊の隊長です。統率力と行動力に優れており、ウルトラ戦士のサポートやパトロールが主な任務。弟たちの危機には必ず駆けつけて、その窮地を救っています。
初登場回は「さらばウルトラマン」
初代『ウルトラマン』の第39話「さらばウルトラマン」で初登場。ゼットンに敗れたウルトラマンに命を与え、星の国へ連れ帰るために、赤い球体の姿で地球に飛来してきました。 しかしウルトラマンは自分の命を譲ってでも、ハヤタ隊員の命を救いたいと強い意志を示します。心を打たれたゾフィーは、ハヤタ隊員にも新たな命を分け与え、2人を分離させてから、ウルトラマンと共に星の国へ帰還しました。 この当時、ゾフィーに役職はなく一宇宙警備隊隊員。ウルトラマンを救出したことが、後に功績となり宇宙警備隊隊長に抜擢されました。
目印は「スターマーク」と「ウルトラブレスター」
ゾフィーの目印となるのが胸と肩にあるボタン状の突起。胸にある6対の突起は「スターマーク」といい、光の国へ多大な貢献をした者に与えられる名誉勲章です。対して肩の3対の突起は、「ウルトラブラスター」と呼び、宇宙警備隊隊長の地位を示しています。 また初代『ウルトラマン』のゾフィーはただ立って喋る役回りだったので、他のウルトラマンにある、視界を確保する「のぞき穴」がありません。デザイナーの成田亨はもともと、のぞき穴を想定していないので、ゾフィーの姿こそが、成田の求める理想のウルトラマンのデザインになっています。
能力
ゾフィーには攻撃技からサポート技まで多彩な能力があります。攻撃技では両手の先を合わせて光線を発射する「Z光線」や、超低温の冷凍ガスを噴射する「ウルトラフロスト」など。サポート技では仲間を瞬間移動させる「テレポーテーション」などがあります。 そのなかでも外せないのが必殺技の「M87光線」。単独で放つ光線技の中では、ウルトラ兄弟最強クラスの威力を誇ります。 この「M87光線」は『シン・ウルトラマン』の主題歌を担当した米津玄師の楽曲タイトル『M八七』とリンクしていると話題沸騰。映画本編にゾフィーが登場するのではないかと考察する人も出るなど、ファンを楽しませました。 ※ゾフィーのM87光線はもともとウルトラマンの故郷は、初期設定ではM78星雲ではなくM87星雲だったので、楽曲タイトルはこちらを起源とする説が有力です。
どうしてウルトラマンを助けたのか?
ゾフィーは初代ウルトラマンの亡き兄、ノアの友人。ノアから託されたベータカプセルをウルトラマンに渡すために地球に来たという裏設定が、昔のテレビマガジンの連載で紹介されていたとファンの間で言い伝えられています。 この説が正しいと仮定すると、ゾフィーは亡き友の弟を守るためにウルトラマンを蘇生させ、形見を託したと言えます。真実のほどはわかりませんが、信じたいと発言する人が多い胸熱な裏設定です。
②ゼットン星人
身長 | 2m |
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体重 | 60kg |
強さ | 頭が良く宇宙怪獣ゼットンを操る。 戦闘能力は低く人間の銃で殺される。 |
宇宙恐竜ゼットンを操るゼットン星人。頭脳明晰ですが戦闘能力は低く、劇中ではハヤタ隊員にマルス133で簡単に射殺されてしまいました。 これらのゼットン星人の特徴は外星人ゾーフィの元ネタである児童誌に掲載されている情報そのままです。「宇宙恐竜ゼットンをあやつって大あばれする。力はないが頭はよい。スーパーガンにはよわい」と紹介され、名前と見た目以外の特徴はゼットン星人の設定が掲載されていました。
登場シーン
人間に化けて基地に侵入
初代『ウルトラマン』の第39話「さらばウルトラマン」で、ゼットン星人は工作員として科特隊日本支部の基地内へ潜伏。岩本博士になりすまし、基地を銃で破壊するなど、破壊工作を仕掛けました。 この設定は『シン・ウルトラマン』の外星人メフィラスと共通しています。メフィラスも同様に人間態の姿で外星人第0号として日本に潜伏しており、裏で手を引いて禍威獣を目覚めさせるなど、破壊工作を行っていました。 自他共に認めるウルトラマンオタクの庵野秀明ならば、ゼットン星人を参考に外星人メフィラスのキャラクターを作り上げた可能性もあるかもしれません。
実は名称不明 正体はケムール人?
ゼットン星人とケムール人(上記画像)は一見したところ瓜二つです。違いは正面から見た眼の数。ゼットン星人は単眼なのに対して、ケムール人は眼がたがい違いについています。 またゼットン星人という名前は初代『ウルトラマン』の劇中では明かされず、非売品のパンフレットに後付けされる形で表記されるようになりました。 書籍『ウルトラマン ベストブック』では、ゼットン星人とケムール人はじつは同族なのではないのかと考察されたこともあります。
『シン・ウルトラマン』ゾーフィの元ネタはゾフィー+ゼットン星人
この記事では『シン・ウルトラマン』に登場した外星人ゾーフィを中心に、その元ネタとなったゾフィーやゼットン星人を紹介しました。作り手のオリジナルへの愛があふれる『シン・ウルトラマン』の中でも、外星人ゾーフィは庵野秀明のウルトラマン愛を詰め込んで作り上げた、至高のキャラクターです。 元ネタと比較しながら鑑賞すると、また新たな発見もあるかもしれません。ぜひこの機会に劇場でご覧ください!