2023年3月29日更新

【ネタバレ】『シン・仮面ライダー』あらすじ解説&考察!ラスボス第0号の元ネタに込められた意味は?

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庵野秀明による「シン」シリーズの最新作『シン・仮面ライダー』がついに公開されました!庵野監督過去作同様に、オリジナルへの敬愛が詰まった作品として話題沸騰中です。 この記事ではそんな映画『シン・仮面ライダー』のあらすじをラストまで徹底的にネタバレ考察していきます。細かいオマージュの元ネタも解説しているので最後までチェックしてください! ※この記事には本映画や関連作品のネタバレが含まれます。未鑑賞の場合は注意してください。

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『シン・仮面ライダー』あらすじ

SHOCKERによってバッタオーグに改造されてしまった本郷猛は、緑川弘博士と緑川ルリ子とともに組織を裏切って抜け出します。最初はプラーナによって得た力で人を殺してしまったことに戸惑う本郷でしたが、あるとき緑川弘が殺され、死に際にルリ子を託されました。 本郷は覚悟を決め、「仮面ライダー」を名乗りながらルリ子と協力してSHOCKERと戦うことに。自分と同じように深い絶望を経験し「オーグメンテーション(強化手術)」を施されたオーグ達と戦っていきます。 中盤以降はルリ子の兄、緑川イチローと戦うことに。自分の跡を継いだ第2バッタオーグも現れ、戦いはますます激化していくのでした。

『シン・仮面ライダー』結末までネタバレ

【起】仮面ライダー第1号の誕生

バイク(サイクロン号)でトラックから逃げる本郷猛緑川ルリ子。崖に転落しクモオーグの手下にルリ子が捕まりかけたその時、仮面ライダー(バッタオーグ)に変身した本郷が参上し、手下を圧倒しました。 本郷はプラーナの力で、敵の命を殺めてしまった感覚に苦しみます。この恐ろしい力を与えたのは、ルリ子の父、緑川博士でした。彼が本郷を人体実験の被験者に選んだのです。 その後緑川親子はショッカー殲滅を計画し、本郷とともに組織を脱出します。それを追ってきていたのがクモオーグでした。 そのとき突然屋根からクモオーグが奇襲を仕掛け、博士を殺害。クモオーグは小さなクモを忍ばせ、3人を追跡していたのでした。 博士を殺されルリ子も連れ去られそうになった本郷は、嫌悪する力を再びまとって、仮面ライダーとして逃げるクモオーグと対峙。最後はライダーキックで倒しました。

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【承】SHOCKERとルリ子の正体

本郷を改造しルリ子を追う組織・SHOCKERとは、人類を幸福に導く組織を名乗っています。かつてSHOCKERを創設した日本のある大富豪は、AIのアイ、ジェイ、ケイを生み出しました。 しかし彼は「人類を幸福に導く命令」を残して自殺。アイは命令を遂行するために「最大多数の最大幸福」よりも「絶望からの救済」を遂行しようとしています。 この思想を危険視した政府の男・立花と情報機関の男・滝が、ルリ子と本郷の力を借りようと話を持ちかけてきます。こうして4人はアンチショッカー同盟を結びました。 次なる標的はコウモリオーグ。バットビールスに感染したフリをしたルリ子と後から駆けつけた1号の見事なコンビ技でコウモリオーグも撃破しました。 続いてサソリオーグを政府軍が撃退。次にハチオーグをルリ子が説得しようとします。 しかし説得には失敗して、退避中、ルリ子は自分が人工子宮から生まれた人型電算機であることを本郷に明かしました。

【転】仮面ライダー第2号が登場

ハチオーグとの再戦では、まず仮面ライダーが空から急襲し、ハチオーグの洗脳サーバーを破壊します。しかしハチオーグに情をかけた2人は彼女を殺せず、加勢に来た滝がサソリオーグの毒を盛った銃で撃ち殺しました。 その日の夜ルリ子は、SHOCKERの上級構成員である兄イチローがチョウオーグへ変身したことを感じます。イチローは全人類のプラーナを、肉体のない「ハビタット世界」へ転送することを目論んでいました。 2人はすぐにイチローのもとへ向かいますが、本人とは戦えず、代わりに第2バッタオーグが送られます。苦戦を強いられる本郷でしたが、ルリ子が一文字の洗脳解除に成功しピンチは脱したかと思われました。 しかしそのとき、ルリ子の背後から刃物が刺さります。背景に擬態したカマキリ・カメレオン(K.K)オーグの攻撃によって、ルリ子は帰らぬ人となってしまいました。

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【結末】ルリ子の意志を継承した2人

本郷が1人イチローのアジトへ向かうと大量発生型相変異バッタオーグが待ち構えていました。劣勢に陥っていると、一文字が駆けつけダブルライダーキックが炸裂。敵のバッタオーグを全滅させ、アジトへの道を切り開きます。 最終決戦、玉座を破壊されたイチローはついに変身後の姿を現しました。そして「仮面ライダー第0号」を名乗ります。 彼のヘルメットに狙いを定めた2人は死闘の末に一文字が頭突きでヘルメットを割り、ついにルリ子の意志を成し遂げます。しかし相打ちでプラーナを使い切った本郷も泡となり消えてしまったのでした。 あとを託された一文字は再び1人になってしまったと落胆しましたが、戦闘現場に残されていたヘルメットには本郷のプラーナが遺されていました。 政府の男たちに頼んでスーツとバイクとヘルメットを慎重した一文字。これからは本郷の意識とともに「2人で1人の仮面ライダー」としてショッカーとの戦い続けるでしょう。

【考察①】仮面ライダー第0号の元ネタ完全解説

仮面ライダー第0号の元ネタ
  • デザイン…シャドームーン(+オオゴマダラという虫)
  • 能力…イナズマン
  • 名前…平山亨の短編小説
  • 人格&小物…仮面ライダーV3

チョウオーグが変身した仮面ライダー第0号は、様々な特撮キャラクターが織り混ざって作り上げられたキャラクターでした。見た目のデザインはシャドームーンや少しスカルマンにも似ており、“サナギ”から羽化して蝶の力で戦うところはイナズマンと同じです。 「仮面ライダー第0号」という名前は『仮面ライダー 変身ヒーローの誕生』という本の中の「仮面ライダー・秘話」(著:平山亨)内の記述からとられていると思われます。この物語の中で仮面ライダー0号と呼ばれる初代の被験者は、改造に耐えきれず死亡していました。 ベルトとマント、そしてキャラクター設定は仮面ライダーV3と共通する部分があります。仮面ライダーV3に変身する風見志郎はもともと、両親と妹を理不尽に殺され復讐のために力を欲した主人公でした。

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仮面ライダーV3が第0号になった意味は?

仮面ライダーV3は「仮面ライダー」シリーズの人気を絶頂に引き上げ、いまだに最高視聴率を誇るライダーです。彼がラスボスとして「第0号」を名乗ることにはどんな意味が込められているのでしょうか。

①緑川イチローもV3のように救われたという希望

まず1つめ、仮面ライダーV3が1号と2号に救われたように、緑川イチローも最後は救われたということを描きたかったのではないでしょうか。 スピンオフ漫画まで描かれている今回のラスボス・緑川イチローには多くのファンが強く感情移入しているはずです。彼をただ残酷に消してしまうのではなくせめて救いのある最期だったと描くために、V3の設定を利用している可能性が考えられます。

②V3も悪に堕ちる可能性があったというIfの皮肉

一方で、もしV3が1号と2号に出会わなかったら……というifの物語を、今回裏主人公を通して描きたかった可能性もあります。チョウオーグだけでなく今回のSHOCKER上級構成員たちは皆もともと、深い絶望を経験した普通の人間でした。 シリーズ史上最高視聴率の記録をいまだに持っている仮面ライダーV3ですが、彼は1号と2号に出会えたからこそヒーローになれました。もし出会わなければ、復讐に取り憑かれたただの怪人に堕ちる可能性もあったはずです。 チョウオーグを「第0号」として1号と2号よりも先に力を手に入れ、堕ちていった存在として描く。そして誰もがヒーローとヴィランのどちらにもなりうるという人間の危うさを伝えたのが、庵野秀明なりの『シン・仮面ライダー』なのかもしれません。 どんな解釈が正しいのかはわかりませんが、考察を膨らまさせてくれるのがさすが庵野監督ですね。

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【考察②】一文字隼人が「新1号」になる意味

ダークライダーと相打ちで第1号が死に、意識だけが残って第2号とともに「2人で1人の仮面ライダー」となる。この展開は明らかに萬画版のラスト、1号が脳だけになる展開を意識して作られたものです。 「仮面ライダー第1+2号」を名乗る新しい一文字隼人の格好は、初代『仮面ライダー』の「新1号」のものと同じでした。鮮やかなエメラルドグリーンのマスクで、体の横には2本線が入っています。この変化の意味を、庵野秀明監督は2つの意味をつけることによって再解釈したのではないでしょうか。

新1号スーツの意味を考察
  1. 本郷を背負って戦い続ける一文字の覚悟
  2. 「辛」という字に一本足せば「幸」になる

1つ目は第1号の思いとともに第2号が戦っているという証拠です。「新1号」のスーツを一文字隼人が着る。この行為からは本郷猛の思いとともに一文字隼人が戦い続けるという覚悟を感じることができます。 2つ目は「辛いという字に一本足せば幸せになる」という劇中なんども登場したセリフです。もともと第2号の服の体の横のラインは1本でしたが、第1+2号ではもう1本線が足されています。 孤独を好んだ一文字隼人が、仲間を失って苦しみながらも最後にはようやく幸せになる。そんな「辛さ」と「幸せ」の表裏一体な関係がスーツによって描かれているようでした。

【考察③】エヴァから変わらないメッセージ

ショッカーが幸福の結社になった理由

『シン・仮面ライダー』ショッカーの意味

今回SHOCKER (ショッカー)は、「計算機的知識を組み込んだ改造による持続可能な幸福の組織」でした。 そのボスはAIの「アイ」。アイは最も深い絶望を感じている人々を救済することこそが人類の幸福につながると結論づけ、絶望に沈む人間に世界を変えさせてきます。 映画のラスボスだった緑川イチローは過去に母親を殺されたことで絶望し、暴力のない世界を築こうと考えました。そして肉体のない世界「ハビタット世界」へ全人類のプラーナ(魂)を送る計画を始めたのです。 ほかの上級構成員たちも、ハチオーグなら「全人類、自我なく服従する方が幸せ」、コウモリオーグなら「ヴィルースで人間を減らした方が幸せ」など、人間の存在を否定するような計画ばかりたてています。 ここには「エヴァンゲリオン」の「人類補完計画」と似た思想が垣間見えました。

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『シン・仮面ライダー』では2つの幸福が対立

映画『シン・仮面ライダー』は「最大多数の最大幸福」と「絶望からの救済」という2つの幸福追求の形がぶつかる構図になっていました。まず「最大多数の最大幸福」を守りたいのは政府。立花や滝が大事にしているであろう合理的に思える考え方です。 一方「絶望からの救済」こそ人類の幸福追求だと導き出したのはAI。社会からはみ出した人間に力を与え、彼らが望む社会の実現をケイとアイはサポートしようとしました。

結論は出ない方が良い?アイの向かう先は

「最大多数の最大幸福」の思想は、基本的に社会の強者の思想です。多数派にいることができれば望みが叶おう一方で、少数派になれば救われることはなく見捨てられていきます。 一方で「絶望からの救済」の思想はすでに幸せであるはずの強者より弱者に焦点をあて、彼らを救うことができます。少数派として社会からあぶれてしまった人たちを救済すべくオーグメントたちは計画を進めるのです。 しかし「絶望からの救済」思想は言い換えれば「最小少数の最小不幸」。これを極端に推し進めると、人間は滅びた方が良い、意志や肉体を捨てた方が良いという、反出生主義的な結論に辿り着きます。 この考え方は「人類補完計画」と同じ。庵野秀明は同じ思想を「エヴァンゲリオン」のときからずっと抱き続けているようです。 結局人間が皆救われる世界なんて作ることができないのかもしれません。AIのアイがこの事実に気づきケイが本格的に動き出したとき、人類は滅びるしかないのかもしれません。

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【解説①】小ネタ・オマージュまとめ

『シン・仮面ライダー』には、監督からファンへのラブレター(挑戦状?)かと思うほどコアなオマージュが散りばめられていました。 以下ではそんな小ネタを①『仮面ライダー』関連②石ノ森章太郎の他作品③庵野秀明の過去作品と分けて、元ネタとともに紹介・解説していきます。

①『仮面ライダー』オマージュ

ハチオーグの名前が「ヒロミ」

TVシリーズに登場した緑川ルリ子の親友の名前が「ひろみ」でした。萬画版では蝙蝠男に操られた末、立花によって殺されています。

ハチオーグの商店街の背景

「COL」や「影村めがね」、「砂田画廊」などTVシリーズ版に馴染みのある店名が多く登場しています。

本郷猛の左足の複雑骨折

初代の俳優・藤岡弘が複雑骨折したため2号ライダーが誕生することになった経緯を、映画ではストーリーの中で再現しています。

死んだら泡になる

初代TVシリーズでも、敵怪人は死んだら泡になっていました。

「立花」と「滝」という名前

竹野内豊が演じた政府の男の「立花」と言う名前の元ネタは立花藤兵衛。初代では本郷猛のレーシングトレーナーです。 斎藤工演じた「滝」こと滝和也は、仮面ライダーとともにショッカーと戦ったFBI捜査官でした。

「Amigo」と書いてある紙袋

政府の男たちがルリ子に手渡した着替えが入っている紙袋には「Amigo」の文字が。これは緑川ルリ子がバイトしていた、立花が経営するスナック「Amigo(アミーゴ)」が元ネタです。

アンチショッカー同盟

「アンチショッカー同盟」というのはTVシリーズ92話〜94話に登場した単語です。世界中にいるショッカーの被害者が作った第三組織で、悪とも善ともつかない利己的な描かれ方をしていました。 その同盟の名前を今回持ち出したのが政府の男たち。なんとも皮肉な展開でしたね。

710403は初回放送日

ショッカー創設者が生み出したFaustのコンピューター筐体に書いてある形式番号は710403。TVシリーズの初回放送日とリンクしていました。

暗すぎる戦闘シーン

原作TVシリーズにも暗すぎて何をやっているのかよくわからないシーンがたくさんありました。でもかっこよかった!

1クール目の怪人がとにかくたくさん勢揃い

クモ、コウモリ、サソリ、カマキリ、カメレオン、ハチ、名前だけ出たコブラ、すごい数ですがこれらは全てTVシリーズ『仮面ライダー』第1クール(1〜13話)の怪人です。 カマキリとカメレオンが合わさっていたり、コブラが名前だけ出ている点から考えると、もしかするて監督は1クール目の怪人を全員登場させようとしていたのかもしれません……。

サイクロン号の自動操縦

仮面ライダーのバイクは脳波コントロールで自動操縦が可能な設定。昔はバイクの裏に人が屈んで、カメラに映らないようにしながらバイクを動かすというかなりアナログな方法で撮影していたとか。

「風の音が聞こえる」

萬画『仮面ライダー』の有名なセリフ。冒頭からテンション上がりましたね!

第2号の顔に浮かぶ手術痕

萬画で2号は感情が高ぶると手術痕が浮かび上がる設定で、それを隠す為に仮面を付けていました。

13人の仮面ライダー

チョウオーグとの直接対決の前、現れた大量のバッタオーグは11人でした。本郷と一文字を合わせて13人。元ネタは萬画PART4の「13人の仮面ライダー」です。

クラッシャーからの吐血

村枝賢一の『仮面ライダーSPIRITS』が元ネタだと考えられます。

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②石ノ森章太郎の他作品オマージュ

ケイは『ロボット刑事』のK

ケイは『ロボット刑事』のKが元ネタだと考えられます。顔のデザインや赤ジャケットも元ネタとほぼ同じでした。ちなみに声優はシンケンレッドだった松坂桃李でしたね。

ジェイはキカイダー

ジェイは左右非対称な顔デザインから『キカイダー01』と『人造人間キカイダー』が元ネタだと考えられます。主人公の名前がイチローとジローで、イニシャルが「I」「J」の順番になっていました。

イナズマン

チョウオーグは青い蝶がモチーフの怪人でした。青い蝶と言えば石ノ森作品なら『イナズマン』があります。ちなみに変身する人間の名前は「サブロウ」でした。

③庵野秀明のセルフオマージュ

過去実写作品からのサプライズゲストたち

言わずもがなですが、竹野内豊に斎藤工、長澤まさみ、市川実日子などなど過去作に出演していたゲストが盛りだくさんでした。

イチローはネオ皇帝

イチローが椅子に座っている姿が『ふしぎの国のナディア』のネオ皇帝にそっくりです。全体のストーリーもナディアに随所が似ていると話題を呼んでいます。

エヴァ風味

オーグたちの計画が皆人類補完計画っぽかったり、緑川ルリ子が綾波レイっぽかったりと、随所にエヴァが香る映画でしたね。

【解説②】わかりづらい固有名詞・用語辞典

プラーナ 生物の生命力や魂そのもの
オーグメント ほかの生物のプラーナを圧縮して取り込んだ改造人間
人工知能アイ SHOCKERの創始者が作り出したAI
ケイ アイに外の情報を伝える観察用機械
死神派 死神グループ イワンを中心とするSHOCKER内の派閥 ※イワン(死神博士)は映画未登場

①プラーナ・オーグメント

劇中なんども登場した「プラーナ」という単語。これはサンスクリット語で呼吸や息吹、風を意味する単語で、劇中では生き物の生命力や魂そのものを示しています。仮面ライダーもこれを圧縮したものを体内に取り込むことで超人的な力を手に入れました。 他の生物のプラーナを体内に取り込ませるためにはオーグメンテーションと言われる手術を施します。そうして出来上がるのが「オーグメント」という改造人間です。 オーグメンテーションにはいくつか種類があり、明らかになっている中でも以下の3通りがあります。 ①昆虫合成型オーグメンテーション ②人外融合型オーグメンテーション ③簡易的なオーグメンテーション(下級構成員用の手術) すべてのオーグメンテーションでSHOCKERは被験者をある程度洗脳することができ、中でも1つ目と2つ目の手術には精神が暴走する危険が伴います。 オーグメンテーションの種類によってオーグメントの見た目や能力も異なるので、スピンオフ漫画とともに考察してみてください。

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②人工知能アイ・ジェイ・ケイ

SHOCKERの創始者が作ったAIであるアイとジェイ、そしてジェイの進化系であるケイ。映画の最後まで大きな動きを見せることはありませんでした。 アイはその名の通りAI(人口知能)です。創設者が遺した「人類の幸福の追求」を絶対的な命令として動き続けていますが、その存在は外の世界とは隔絶されているので外の世界とコンタクトをとるのはジェイ、現在はケイ(外世界観測用自律型人工知能ケイ)の役目です。 アイとケイが具体的にどんな意図で行動しているのかはわかりません。ただ彼らは「最大多数の最大幸福」ではなく「絶望からの救済」を重要視しています。またスピンオフ漫画では、ケイが緑川イチローの理念に手を貸すことを約束している場面がありました。 これらから考察するに、アイとケイはSHOCKER上級構成員がそれぞれ構想する人類を絶望から救済する計画を見守り検証しているようです。 映画のラストまで彼らが直接動かなかったのは、 ‎ディープラーニングを重ねてより大きな計画をの準備をしている最中だからなのかもしれません。

③SHOCKERの「死神派」

カマキリ・カメレオン(K.K)オーグが発した「死神派」という単語。これはSHOCKER創始者亡きあと組織内で繰り広げられてきた、派閥争いのうちの1つの派閥の名前です。 死神派というのはイワン博士が率いる派閥の名前です。元ネタは怪人製作の天才と言われた「死神博士」ことイワン・タワノビッチという初代仮面ライダーの敵だと考えられます。 クモオーグやサソリオーグ、緑川イチローもこの派閥に属していました。もともとは緑川弘博士もでしたがどうやら仲間割れしたようです。 K.Kオーグがクモオーグのことを「クモ先輩」と慕っていたということは、彼もこの派閥の一員である可能性が高そう。他の上級構成員たちがそれぞれどんな派閥に属しているのかは2023年3月現在まだ漫画でも明らかになっていないので、今後の漫画の展開を見守りましょう。

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詳しく知りたいなら「真の安らぎはこの世になく」をチェック

プラーナ関連技術が実用化されていく背景やラスボスである緑川イチローの幼少期、そしてSHOCKERの派閥争いは、スピンオフ漫画『真の安らぎはこの世になく -シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE-』で描かれています。上記の説明でも理解しきれない場合は、こちらもチェックしてみてください!

あらすじ

研究者を父に持つ少年、緑川イチロー。彼は転校生をイジメるクラスメイトを助けた日からクラスでいじめを受けていました。 そんな彼を支えてくれていたのは母。しかしそんな母を無差別殺人事件の通り魔によって意殺され、イチローは深い絶望を経験します。母を助けられなかった罪悪感からか、父は研究に没頭していきました。 ある日父に連れられ、SHOCKERの施設に引っ越したイチロー。そこで外世界観測用自律型人工知能ケイやクモ、サソリと出会い、彼は争いに巻き込まれながらも、手術を受けて助かり、強くなっていきます。 イチローはやがて暴力のない世界の想像を目指すようになり、そんなイチローにケイは「あなた様の願いを実現するお手伝いをさせてください」と声をかけるのでした。

【解説③】過去の「シン」シリーズとのつながりは?

マルチバース上で繋がるのでは、と噂されていた「シン」シリーズ。本作でなんと『シン・ゴジラ』(2016)に登場した竹野内豊と『シン・ウルトラマン』(2022)に登場した斎藤工が登場。さらに政府、専門機関の男という意味深な呼ばれ方をしていました。 しかし最後の最後で竹野内豊は「立花」、斎藤工は「滝」と紹介されます。立花は原作で1号・2号を支える協力者「立花藤兵衛」、滝はFBIの特命捜査官「滝和也」がモデルになっていると思われます。 作品同士の直接的なつながりではなく、意味深なキャスティングは庵野秀明監督の遊び心だったと解釈する方が良さそうです。 また「シン・エヴァンゲリオン」および「エヴァンゲリオン」シリーズとの共通点も話題です。まず、緑川ルリ子が綾波レイにそっくりに見えたという声がたくさん上がっていました。 ほかにも、主人公・本郷の状況が碇シンジと似ていたり、カットの割り方や線路・海辺などのロケーションが「シン・エヴァンゲリオン」と重なったりと共通点が盛りだくさんなので、エヴァファンも存分に楽しめるでしょう。

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【感想・評価】賛否両論?がっかりとの声も

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これは原作シリーズのファンなら絶対みるべきです。TVシリーズは言わずもがな石ノ森章太郎氏の萬画版のストーリーへの敬愛も深く感じられ、ラストはエモくて感動的で泣きそうでした。かといって古臭い感じではなくサイクロン号のギミックや空中戦など技術の進化したシーンも盛りだくさん!エヴァっぽさを感じられる演出も多くて、特撮&庵野オタクにはたまらない濃い映画になっています!ありがとう庵野秀明!!!!

(50代男性)

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仮面ライダーを今まで全く見たことがなかったので、次々出てきてはあっさりと死んでいく敵たちに感情移入できず、独特の固有名詞連発にもついていけずに中盤飽きかけました。しかし今作の魅力はなんといっても浜辺美波。人ではない存在として生み出されたが故に、敵となった旧友や兄に情を抱いてしまう様子が切なくて愛らしかったです。ラスボス森山未來の動きと存在感もすさまじかった……。

(30代女性)

庵野秀明監督や石森プロ代表のコメント

脚本・監督を務める庵野秀明のコメント

企画展「特撮博物館」の館長に就任したこともある庵野秀明監督は、筋金入りの特撮ファン。会見でのコメントでも、小学生だった50年前に憧れて恩恵を受けた「仮面ライダー」という作品に、少しでも恩返しがしたいと語っていました。 そしてこの企画の目指すところは、「子供の頃から続いている大人の夢を叶える作品」であり、「大人になっても心に遺る子供の夢を描く作品」、さらに「オリジナル映像を知らなくても楽しめるエンターテインメント作品」だといいます。 実はこの企画が始まったのは遡ること6年前だそうで、2020年のコロナ禍によって制作スケジュールが変更されました。

小野寺章(石森プロ 代表取締役社長)のコメント

原作者・石ノ森章太郎の次男で、「石森プロ」代表取締役社長・小野寺章は、「ライダーの歴史は革新の歴史」とコメントしています。父の石ノ森章太郎は「どんな仮面ライダーがあってもいい」と語っていたのだとか。 また一方で「真」や「Black」など、「仮面ライダーの原点の再生にも常に熱い目を向けていた」と語っています。このことから、『シン・仮面ライダー』は「最新でありながら同時にこの原点でもあるという作品」となるようです。

仮面ライダー50年の歴史を振り返ろう

『シン・仮面ライダー』は「仮面ライダー生誕50周年企画」の超大作として製作される記念作品。長年にわたり「仮面ライダー」を愛してきたファンにとっても、見逃せない作品となりそうです。 ここで昭和と平成のライダーの違いなども含め、これまでの「仮面ライダー」シリーズ50年の歴史を振り返ってみたいと思います。

そもそも仮面ライダーって?

第1作の『仮面ライダー』は、主人公の本郷猛/仮面ライダー1号を藤岡弘が務め、1971年4月3日から1973年2月10日の間に全98話が放送されました。 悪の秘密結社「ショッカー」によって改造手術を施された本郷猛が、脳を改造される直前に脱出し、ショッカーの世界征服の野望を止めるために「仮面ライダー1号」として戦う物語。 本郷と同じく改造手術を受けた一文字隼人(佐々木剛)も、仮面ライダー2号としてショッカー軍団との戦いに身を投じ、本郷の良き相棒となります。

昭和→平成→令和ライダーの変遷

昭和ライダー
(初代〜ブラックRX)
(仮面ライダーJまで含む場合も)
・仮面ライダーは改造された悲劇の人物
・無骨で猛々しい
・敵はショッカー
・敵怪人にも悲哀が漂う
平成ライダー
(クウガ〜ジオウ)
・作品ごとに独立した世界観を持っている
・敵もそれぞれ違う
・期待の新人イケメン俳優が起用される
・「なんでもあり」なエンターテイメント性
令和ライダー
(ゼロワン〜)
・独立した世界観を持っている
・1号を思わせるバッタをモチーフとした原点回帰デザイン

長きにわたる「仮面ライダー」シリーズでよく話題に上るのが、昭和ライダーと平成ライダーの違いと変遷。いわば親世代と子世代ほどの時代の流れがあるわけですね。 昭和ライダーはショッカーによって改造された改造人間であり、その悲劇を描いています。そしてショッカーという敵は一貫して同じで、敵怪人も改造された悲哀を持っているのが共通していました。 一方、平成ライダーはそれぞれが異なる世界観を持っている別々の作品といえます。敵もシリーズによって変わるようになり、仮面ライダーは悲哀を感じさせる改造人間でなく、溌剌とした若手イケメン俳優が演じるようになりました。 令和ライダーは該当作品が少なく、平成2期の延長線上といった印象。大きな特徴としては、時代の世相やトレンドを反映した世界観・設定が挙げられるでしょう。 毎作10人前後のライダーが人間ドラマを展開するほか、女性ライダーが最低1人登場する点などから、多様性やジェンダーへの強い意識がうかがえます。またスーツアクターも、ミスター平成仮面ライダーこと高岩成二から縄田雄哉に変わりました。

『シン・仮面ライダー』のストーリーは庵野節が凝縮された問題作!

庵野監督作品らしい原作へのリスペクトやオマージュ満載でありながらファン以外の観客も魅了するエンタメ性抜群の『シン・仮面ライダー』。本作は大物サプライズゲストが多数登場したことも話題となりました。 原作やスピンオフ漫画を見てから視聴することでさまざまな角度から楽しめる庵野ワールド全開の映画となっています!