Netflix映画『西部戦線異状なし』結末までのネタバレあらすじと感想考察!ラストの悲劇はなぜもたらされたのか?
1930年に映画化されたドイツの同名小説を、改めて映像化したNetflix映画『西部戦線異状なし』(2022年)。 この記事では本作のネタバレを含むあらすじや考察などを徹底解説!英国アカデミー賞で7部門を受賞した、その魅力に迫っていきます。
Netflix映画『西部戦線異状なし』のあらすじ
第1次世界大戦まっただなかのヨーロッパ。若きドイツ兵のパウル(フェリックス・カメラー)は、軍に入隊した直後に激戦地の1つである西部戦線へ配属されます。国のために戦おうと決意した彼でしたが、その心は戦争が突きつける現実の前で次第に壊れていくのでした……。 仲間とともに「戦わざるを得なかった」兵たちの視点で、戦争の恐怖や絶望をリアルに描き切った迫真のヒューマンドラマです。
Netflix映画『西部戦線異状なし』の結末までのネタバレあらすじ
【起】戦争への憧れと現実
友人たちと共に兵になることを望むパウル(フェリックス・カメラー)は、反対する親に黙って署名を偽造し軍へ入隊します。そこで渡された軍服には別人の名前が入った名札が。彼は配布者へ申し出ますが、何かの間違いだと名札を剥がされそれに袖を通します。 意気揚々とトラックに乗るパウルたち。そこで彼らは西部戦線へ配属されたことを知るのです。そして着いた途端に、雨の降る塹壕から水をかき出す過酷な作業が開始。それが終わり落ち着いたのも束の間、夜には敵軍からの砲撃に襲われます。 崩れ去る避難壕。パウルは何とか生き残りましたが、死体のタグを回収するうちに友人が亡くなっていたことを知り絶望します。
【承】戦場でできたかけがえのない友人
西部戦線への配属から18か月後。パウルは別の場所へ配置転換されていました。そこは戦闘がほとんど行われず、日々仲間たちと話しているうちに終わっていくようなあまりにも平和な戦地。 時に近隣の民家からガチョウを盗み仲間たちと食事を楽しみ、時に未来のことを語りあう。そんな日々のなかで、パウルにも親友と呼べる存在ができます。西部戦線から一緒だった先輩兵のカット(アルブレヒト・シュッヘ)です。彼は字を読めず、妻からの手紙をパウルに代読してもらうほどの仲でした。 しかし、平和はそう長く続きません。彼らの部隊に来るはずだった兵たちが一向に到着しないのです。上官の命令で探しに行くパウルですが、そこで毒ガスにより死亡した多くの兵を発見します。それからしばらくもしないうちに、パウルたちへ戦場への出撃命令が下されました。
【転】絶望と、わずかな希望の光
再び戦場へ立つことになったパウルたち。爆音と銃声が響くなかを一心不乱に突き進みます。ですがフランス軍は戦車や火炎放射器を用いて戦い、戦場は阿鼻叫喚の地獄絵図に。多くの仲間を失いながらも、パウルは何とか生き残ります。 軍の拠点へ戻り、そこでカットと再会。お互いの生還を喜び合います。しかし生還した仲間も自らの将来を悲観し自殺するなど、状況はあまりにも過酷。パウルたちも明日への希望が持てぬまま、眠りにつくしかないのでした。 一方、ドイツの政治家エルツベルガー(ダニエル・ブリュール)たちは停戦のためフランスとの交渉を開始。一方的な条件に同意できないと言う軍部でしたが、これ以上犠牲を出さないためにとエルツベルガーは反論。なんとか軍部を説き伏せ、停戦への合意へこぎつけます。 停戦の旨を示す書面にドイツ側の署名が終わり、そこから6時間後には全ての戦いを停止することが決定したのです。
【結末】停戦したはずが……あまりにも虚しいラスト
停戦の決定が各戦場に通達され喜ぶ兵たち。パウルとカットも喜び、その祝いをしようと近隣の民家へ食材を盗みに行きます。1度は見つかるも逃げきった2人。しかしカットは追ってきたその家の子どもに銃で撃たれ、戦争終了を目前に死亡してしまいます。 絶望するパウル。しかしそこに彼らを束ねる指揮官からの招集がかかります。なんと彼は停戦の前にフランス軍を殲滅するため、これから突撃を開始すると言うのです。反対する兵はその場で射殺され、誰もが絶望するなか軍を進めます。 停戦15分前に戦場に到達したドイツ軍。雄たけびと共に停戦を喜ぶフランス軍の塹壕へ乗り込み、そこは再び地獄のような戦場と化します。相手兵を何人も殺していくパウル。しかし最後には背後から胸を刺され、死の淵へ立たされることに。 朦朧とするパウル。壕のなかに入る太陽の光を見上げたとき、停戦の時間が来たという声が聞こえてきます……。 生き残った兵たちが死亡兵のタグを回収して歩くなか、そこには安らかな顔で目を閉じるパウルの姿があるのでした。
Netflix映画『西部戦線異状なし』の感想・評価
銃声と爆音のなか突き進むしかない恐怖。自分がいつ死んでもおかしくないという絶望と焦燥感。もしも戦争に行くことになったら、自分もこうなるのだろうとリアルに感じられる作品です。戦争を知らない世代こそ、見る意義がある作品だと思います。
淡々と描かれる、戦争が日常になってしまった世界。絶望に慣れていたはずなのに、次々それを上回る絶望が襲い掛かるパウルの様子に心が締め付けられました。兵たちのひもじい食事やささやかな喜びなど、細かな描写にもリアリティが感じられる作品です。
【解説】どの時代にも評価される『西部戦線異状なし』
これまでにも数多くの「戦争映画」が世に生み出されてきました。なかには名作と呼ばれるものも多く、映画史に残る作品も数多く存在。実は1930年に映画化された『西部戦線異状なし』も、アカデミー賞作品賞を受賞するなど名作と呼び声高い作品です。 同様に2022年版のNetflixリメイク版『西部戦線異状なし』も世界中から高い評価を受けており、2023年のアカデミー賞にもノミネートされています。果たして『西部戦線異状なし』はどうしてこんなにも人々を魅了するのでしょうか。 それは「戦争のリアル」という人々が知るべき現実がまざまざと描かれているからだと思われます。戦争はよくないもの。戦争をしてはいけない。言葉では分かっていても、リアルさを持って語ることはなかなかできません。 しかしこの映画を見ることで、戦争が持つ恐怖や絶望の一端を垣間見ることができます。世界情勢が混迷する世のなかで、戦争を知らない人々に改めて戦争を伝える。その意味で、『西部戦線異状なし』は社会的に大きな意義を持つ作品と言えるでしょう。
【考察】ラストでなぜ停戦前に戦闘をしかけたのか?
本作のラストでは停戦が決定したにも関わらず、パウルの上官は突撃命令を出しています。そのまま戦わなかければ誰も死なずに済んだはずなのに、彼はどうしてこんな決断をしたのでしょうか。 そこには彼の持つプライドが大きく関わっています。パウルの上官は代々軍部で活躍する家系であり、彼が自身の父は戦争で活躍したと語る場面も存在。そんな彼には何もなしえないまま戦争を終わりにすることはできない、一矢報いて英雄になりたいという思いがあったのでしょう。 作中ではフランスとの停戦交渉などの場面でも、軍部が「そんな条件は飲めない!」とプライドを振りかざし交渉に応じないシーンもあります。 戦争とは兵たちが始めるものではなく、その上にいる、現場を知らない上層部が始めるもの。そして往々にして、そういった人々は兵の死よりも自身の誇りや保身をとる。ここには戦争への痛烈な批判と共に、腐敗した現代社会への風刺のような意味も込められているのかもしれません。
Netflix映画『西部戦線異状なし』をネタバレ解説・考察でおさらい
これから先も長きに亘り名作と呼ばれるであろうNetflix映画『西部戦線異状なし』。 アカデミー賞獲得も期待される本作を、この機会に是非鑑賞してみてはいかがでしょうか。