“ナートゥ”をご存知か!?『RRR』超高速ダンスがアカデミー賞で上演決定!
ストーリーもさることながら『RRR』(2022)を観て主人公のビームとラーマが踊るナートゥダンスにハマる人が続出中!ついにはアカデミー賞で生パフォーマンスが決定するほど旋風を巻き起こしています。 この記事ではダンスまでの流れ、制作秘話から世界的な評価まで「ナートゥダンス」を徹底的に解説します!
『RRR』“ナートゥ”をご存知か?
「ナートゥダンス」は小気味よいリズムと誰でも歌えるサビの「ナートゥ」連呼。そしてなんと言っても「息のあった高速ダンス」が話題を呼びました。 「ナートゥダンス」の勢いはとどまることを知らず、レディー・ガガやテイラー・スウィフトを抑えてゴールデングローブ賞主題歌賞受賞。さらにアカデミー賞楽曲賞の最有力候補と言われています。
世界中の人の心を掴んだ理由
- 超キレキレな脅威のシンクロダンス
- ストーリーからの自然な流れ
- ユーモラスな表情
インド人俳優でもトップクラスのダンス技術を持つNTRjr.とラーム・チャランが息のあったダンスを披露するシーンは圧巻の一言……。相当ストイックな現場で撮影されたようです。 そしてダンスを邪魔しようとするイギリス人や、ダンスに魅せられる女性たちの演技もユーモラスに楽しめます。最終的には全員で「ナートゥダンス」バトルが繰り広げられるという5分間をあっという間に思わせる展開も魅力です。
「ナートゥ・ナートゥ」までの流れ
「ナートゥ」までの流れ
インド総督スコットに奪われた妹の奪還を目指すビームは、スコットの姪・ジェニーから公邸のパーティに招待されます。しかしパーティではイギリス人のジェイクから「インド人はダンスを踊れないだろう」とからかわれました。 そこでビームを助けるべく、ラーマが一言「ナートゥをご存知か」と演奏を始めます。イギリス人を見返すかのように、音に合わせて2人はパワフルに踊り始めました。
「ナートゥ」の歌詞の中身
始まりの歌詞はナートゥダンスの猛々しさをさまざまな表現で羅列します。 「土煙を上げて猛進する雄牛」「母神に捧げる渾身の踊り」「サンダル履きの大立ち回り」「木陰でダンスする若い衆」「唐辛子入りの雑穀パン」 そしてサビ部分では 「ナートゥ、それは英雄の歌」「それは故郷のダンス」 と続きます。「ナートゥ」の語源的な意味は「インド古来の、地域の」という意味があり、ジェイクにタンゴやサンバを知らないと揶揄された強烈な返しを見舞ったのです。さらに 「ナートゥ、刺激強めのインドの歌」「切れ味鋭い野生のダンス」 とサビが続きます。実は「ナートゥ」には「強い、荒々しい」と言った意味も持っておりダブルミーニングで歌詞が作られたのかもしれません。 ジェイクの邪魔が入るも女性陣が後押しし、観客も巻き込んだダンスバトルへと発展します。ついにジェイクも脱落し、ラーマとビームは1対1へ。最後はラーマが倒れビームが勝利しました。
「ナートゥ」の後
2人はダンスで強い絆が出来上がっていました。ダンスバトルの後、ビームは疲れて歩けなくなり、ビームが彼を背負ってパーティを後にします。 その後パーティで見事ジェニーを落としたビームは総督府に招待されました。 元々の目的であった妹マリに出会える可能性が出てきたビームは総督府ヘ向かいます。そして捕らえられていたマリと再会を果たし、必ず助けると約束し一度総督府を離れました。
「ナチョ・ナチョ」と聞こえるのはなぜ?
インドは多民族国家であるため複数の言語バージョンが存在します。本作でもヒンディー語版は「ナチョ・ナチョ」、タミル語版は「ナートゥ・クーチュ」、カンナダ語版は「ハーリ・ナートゥ」と分かれているのです。 日本ではテルグ語版だったため「ナートゥ」ですが、世界的にはヒンディー語話者が多く、英語字幕はヒンディー語の「ナチョ」で配信されています。
「ナートゥ・ナートゥ」制作裏話
撮影地は戦争直前のウクライナ
あの美しい公邸の撮影はロシア侵攻のわずか5ヶ月前にウクライナの首都キーウにあるマリア宮殿で撮影されています。 当時コロナの影響でイギリス人俳優はインドに、インド人俳優はイギリスに向かうことが困難だったためウクライナで撮影が行われました。 平和な世の中になったら、聖地巡礼にも訪れたいですね。
まるで拷問?14日間の過酷すぎる撮影
ダンスシーンの練習を6日間で1日12時間やり、撮影は14日間行ったそうでNTR Jr.は来日した際「まるで拷問でした」と語りました。 「ナートゥ・ナートゥ」という言葉を聞いただけで足が痛むと冗談を交えて話しています。
ラージャマウリ監督の強いこだわり
明るく楽しく踊ってみたくなるダンスに
監督は植民地支配の時代を描くとあってあえて軽快な音楽にしたと秘話を明かしています。ただ物語と乖離したダンスシーンを入れ込むのではなく違和感なく物語に挿入するため苦労したそう。 そして「どんな二人組でも"踊ってみようかな"と思えるようなステップ」を意識した結果、誰もが真似したくなる「ナートゥダンス」が完成しました。
ダンスシーンを減らしたのは?
インド映画といえばダンスシーンがとにかく多いというイメージですが、その背景には巨大音楽企業がスポンサーとして入っていることやインド映画の成功にはダンスシーンが不可欠という先入観によるものとラージャマウリ監督は説明しています。 しかし監督が作る近年の映画はダンスシーンが少なく本作でも2回しか登場しません。転換点となったのがダンスシーンを減らした『マガディーラ』(2009)の成功だったと振り返りました。 また「ストーリーを伝えるうえで役割を果たさないような歌であれば、そもそも入れないでおこうという意識に変わった」と語り、今後の作品についても必要があれば何曲でも使うとした上で「必要がなければ1曲も入れません」と語っています。
作曲家・作詞家の苦労
作曲担当のM・M・キーラヴァーニは「ナートゥ・ナートゥ」について「数え切れませんが、10曲、15曲、あるいは20曲ほど作曲したと思います」と苦労を口にしました。 また作詞家のチャンドラボースは「歌詞の90%を半日で書き上げたものの、10%を書き上げるために1年7か月間を要した」と語っており、長い製作期間を経て傑作が生み出されたのです。
【「ナートゥ」踊ってみた】最も上手いのはだれ?
そもそも難しすぎて踊れない……
軽快な音楽に騙されがちですがダンスはそもそもが難しく、加えて早送りのような速さも求められる高難易度ダンス……。 難易度のせいか踊ってみた動画もあまり上がっていません。その中でも話題になっている、芸能人による完成度の高い「ナートゥダンス」を2つ紹介します。
①三浦大知
リハ終わりに全力でとにかく楽しそうに踊る人????????????????????????https://t.co/QywLDqfj74@RRRMovie @RRR_twinmovie#RRR#RRRMoive #NaatuNaatu #ナートゥダンス#勝手に応援大使#三浦大知 pic.twitter.com/X2kSti2cWx
— 三浦大知【公式アカウント】 (@DAICHIMIURAinfo) March 1, 2023
2023年3月6日時点で一番「ナートゥダンス」の完成度が高いと評判なのが三浦大知です。彼レベルのキレがあって、やっと映えるレベルのダンスということなのかもしれません……。
②山口コンボイ(『アルコ&ピースのメガホン二郎』)
『アルコ&ピースのメガホン二郎』の番組内で「ナートゥダンス」だけを1週間覚えてきた芸人・山口コンボイの迫真のダンスも話題に。 映画本編を見たことがないのに、女性陣やダンスに脱落する周りの演者達も1人で再現し、5分のフル尺を踊りきったある意味圧巻のダンスです。 ちなみに番組では独特な着眼点のナートゥダンスの魅力も紹介されていました。
- 一瞬見せる負け顔圧をかけてくるイギリス人に一瞬リズミカルに怯む顔がかわいい
- イギリス人の理解力馬鹿にしてたのに気づいたら一緒に踊り出しちゃう愛らしい敵
- 砂を使った演出最後にはなぜか丸い砂場に連れて行かれる2人……砂が迫力を増してみせる!
- サスペンダーの有効活用サスペンダーはこのためにあったのかと思うくらい見事な揃い方
ナートゥをご存知か?????https://t.co/yJf2lr6SxO pic.twitter.com/HAVCBC68QV
— ケビンス 山口コンボイ (@mstk_id) February 26, 2023
「ナートゥ・ナートゥ」の受賞歴
アカデミー賞 | 歌曲賞/ノミネート(未決定) , パフォーマンス披露 |
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ゴールデングローブ賞 | 主題歌賞/受賞 |
ロサンゼルス映画批評家協会賞 | 音楽賞/受賞 |
ボストン映画批評家協会賞 | 音楽賞/受賞 |
フィラデルフィア映画批評家協会賞 | 音楽賞/受賞 |
クリティクス・チョイス・アワード | 歌曲賞/受賞 |
カンザスシティ映画批評家協会賞 | 作曲賞/受賞 |
オンライン映画批評家協会賞 | 歌曲賞/受賞 |
ヒューストン映画批評家協会賞 | 歌曲賞/受賞 |
ハリウッド批評家協会クリエイティブ・アーツ賞 | 歌曲賞/受賞 |
アジア・フィルム・アワード | 歌曲賞/ノミネート(未決定) |
ハリウッド・ミュージック・イン・メディア・アワード | 外国語インディペンデント映画部門作曲賞/ノミネート |
ラスベガス映画批評家協会賞 | 歌曲賞/ノミネート |
オースティン映画批評家協会賞 | 作曲賞/ノミネート |
シカゴ映画批評家協会賞 | 作曲賞/ノミネート |
ドリアン賞 | 音楽賞/ノミネート |
ジョージア映画批評家協会賞 | 歌曲賞/次点 |
サテライト賞 | 主題歌賞/ノミネート |
『RRR』大ヒットの秘訣はナートゥダンスにあり!
インド映画の歴史を次々と塗り替える大傑作『RRR』(2022)。そのアイコンとなっているのが誰もが心躍る「ナートゥ・ダンス」なのです。 映画好きに「ナートゥをご存知か?」と言われてしまう前に、視聴することをおすすめします!