【ネタバレ】映画『エディントンへようこそ』最後まであらすじ解説&考察!ラストシーンやキャラが示すメッセージは?
A24×アリ・アスター×ホアキン・フェニックスの映画『エディントンへようこそ』が、2025年12月12日に日本公開されました。本作は、コロナ禍で加速した社会の分断や差別、AIの台頭といった現代的な問題をテーマに扱っている注目作です。 この記事では、『エディントンへようこそ』のあらすじ・ネタバレや豪華キャスト、海外での評価などを詳しく紹介します!さらには、本作を見る前に知っておくべき情報や最後のシーンの意味、そしてそれぞれのキャラが示すメッセージも徹底考察します。
タップできる目次
- 映画『エディントンへようこそ』概要&あらすじ
- 【前提】『エディントンへようこそ』を見る前に知っておくべきアメリカの情勢
- 【ネタバレ】映画『エディントンへようこそ』を結末まで解説
- 【テーマ】ラストシーンが伝えるメッセージとは?
- 【裏話】データセンターの名前はAIのエラーからきている?
- 【考察】ジョーやルイーズなどのキャラの物語上の役割は?
- 【舞台】エディントンという架空の町が表すもの
- 【評価】映画『エディントンへようこそ』感想は?見どころも解説
- 【キャスト】映画『エディントンへようこそ』俳優一覧
- 【監督】アリ・アスターが映画『エディントンへようこそ』を撮った背景を解説
- 映画『エディントンへようこそ』は2025年12月12日公開!
映画『エディントンへようこそ』概要&あらすじ
映画『エディントンへようこそ』概要!これは実話?
| 原題 | 『Eddington 』 |
|---|---|
| 監督 | アリ・アスター |
| キャスト | ホアキン・フェニックス , ペドロ・パスカル , エマ・ストーン , オースティン・バトラー , ルーク・グライムス , ディードル・オコンネル |
| 公開日 | 2025年12月12日(日本) |
ニューメキシコ州エディントンという架空の町で、市長選をめぐって激しい攻防がくり広げられる炎上スリラー『エディントンへようこそ』。2020年を舞台に、コロナや陰謀論など現実を反映した設定となっていますが、ストーリーは完全にフィクションです。 本作は主演にホアキン・フェニックスを迎え、脇を固めるのはペドロ・パスカルやエマ・ストーン、オースティン・バトラーと、アリ・アスター史上もっとも豪華なキャスティングとなっています。 2025年の第78回カンヌ国際映画祭にも正式出品され、注目を集めました。
【ネタバレなし】『エディントンへようこそ』あらすじ

2020年、コロナ禍で閉塞感に覆われたニューメキシコ州の田舎町エディントン。ロックダウンにより、息苦しい生活を強いられた住民の不満と不安は爆発寸前でした。 マスク論争をきっかけに、保安官ジョー(ホアキン・フェニックス)は野心家の現職市長テッド(ペドロ・パスカル)に対抗し、市長選へ出馬します。SNSの炎上が対立を煽り、フェイクニュースと憎悪が町を分断。一方で、ジョーの妻ルイーズ(エマ・ストーン)は過激な動画配信者(オースティン・バトラー)に感化され、陰謀論の世界にのめり込んでいきました。 小さな町の選挙戦は、住民たちの不満を巻き込みながら、やがて暴力と狂気の連鎖へと発展します。町全体が予測不能な破滅へと突き進む様を描く、現代社会を映した炎上スリラーです。
【前提】『エディントンへようこそ』を見る前に知っておくべきアメリカの情勢
2020年5月はパンデミックとBLMで混乱に陥った時期

『エディントンへようこそ』の舞台となっているのは、2020年の5月。当時は新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるい、多くの地域がロックダウン(封鎖)され、人々の移動が制限されていました。マスク着用やワクチンについても半信半疑の人々もおり、多くの人が不安と不満にさいなまれていた時期です。 またミネソタ州では、黒人男性のジョージ・フロイドが白人警察官に首を圧迫され死亡する事件が発生。事件を捉えた映像がSNSで拡散されて大きな社会問題となり、各地で「黒人の命は大切(Black Lives Matter/BLM)」を訴えるデモや抗議運動が展開されました。 コロナとBLM、2つの要因からアメリカ社会の緊張感が高まっていた時期なのです。
陰謀論社会化と政治的分断
この時期には、特に新型コロナウイルスのワクチンについて極端な陰謀論が蔓延し、社会の混乱を招きました。 ワクチンにマイクロチップが埋め込まれているという説や、政府や製薬会社は人々を殺すつもりだといった説、映画『アイ・アム・レジェンド』(2007年)を根拠とするものなど、極端な陰謀論が流布し、多くの人がそれらを信じてしまい、アメリカは陰謀論社会化してしまいます。 また陰謀論を信じる人とそうでない人、BLMを支持する人とそうでない人、そういった思想の違いから政治的分断が起こっていきました。
【ネタバレ】映画『エディントンへようこそ』を結末まで解説
マスクをつけない保安官ジョー・クロスが市長選へ出馬

2020年5月下旬のニューメキシコ州エディントン。州の方針によってマスク着用が義務づけられるなか、保安官のジョーをはじめ、その方針に反対する人も少なからずいました。 あるときジョーはマスク着用をめぐって、市長のテッドと言い争いになってしまいます。興奮したジョーは、怒りに任せてSNSで市長選への出馬を宣言。 テッドは町にテック企業のデータセンターを誘致しようとしていました。これにより雇用が生まれ、町は活性化すると言いますが、町議員のなかには懐疑的な人もいました。 そんななかジョーの妻ルイーズは、ネットで人気の陰謀論者ヴァーノン・ジェファーソンにハマっていました。
劣勢のジョーは妻・ルイーズの過去を利用

ジョーは保安官仲間とともに選挙対策を始めますが、全員政治に関しては素人同然。良いスローガンも思い浮かばず、悪戦苦闘します。彼はデータセンター誘致をめぐって市長と対立している市議会議員を味方につけようとします。 一方、若者たちの間ではミネソタ州で白人警官が黒人男性を死亡させた事件に端を発し、「Black Lives Matter(BLM)」の抗議運動が広まっていました。リーダー格のサラは、保安官で黒人のマイクに、なぜ当事者として声を上げないのかと詰め寄ります。 そんななかジョーは集会を開きますが、観客の入りはまばら。追い詰められた彼は、真偽は不明なものの、かつて妻のルイーズがテッドと関係があったことを持ち出し、彼を「性的捕食者」呼ばわりします。
殺人を繰り返すジョー

テッドの家で行われていたパーティに関して騒音の苦情あり、ジョーが現場くと、姿を消したルイーズがジョーの発言を否定する動画が大きなスクリーンで流されていました。 その夜ジョーはバーに侵入したホームレスのロッジを殺害します。その後、テッドがリビングでくつろいでいると何者かが背後から彼を撃ち殺しました。彼の息子エリックも同様に銃殺。ジョーはプエブロ(ネイティブアメリカンの集落)の向こうから、ライフルで彼らを撃ち抜いたのです。 その後、テッドの家に入り偽装工作をするジョー。翌日、プエブロの警察と管轄争いになるなか、ジョーはエリックの友人だったサラに罪を着せようとします。彼女のSNSへの過激な投稿をあげつらい、揺さぶりをかけました。 そんななか、若者たちの抗議運動は過激化していきます。
エディントンとジョーのラストは?
ジョーはテッドたちがを殺害したのは、アンティファというテロ組織だと発表します。その後ジョーはテッドの家から盗んだ時計をマイクの車に入れ、彼に容疑がかかるように差し向けました。 その後ジョーが保安官事務所に戻ると、裏のゴミ箱に火が放たれていました。留置所から連れ出されたマイクを追って荒野にやってきたジョーたちは彼を発見しますが、近づこうとしたところ爆弾で吹き飛ばされてしまいます。 銃販売店からマシンガンを持ち出し、道を練り歩くジョー。彼のマシンガンが弾切れになると、テロリストが走り寄り彼の脳天をナイフで刺します。そこへブライアンが現れ、テロリストを銃殺し、ジョーを救いました。 テッドの死により自動的に市長となったジョー。しかし彼は脳の損傷により言葉を発することも、体を動かすこともできません。ジョーの義母ドーンが市政の実権を握り、データセンターは予定通り建設されました。そしてある夜、2人はネットでジェファーソンの動画を発見。そこには妊娠したルイーズが映っていました。
【テーマ】ラストシーンが伝えるメッセージとは?

ラストシーンでは、ジョーが誘致を反対していたデータセンターが映ります。これは、妻に見栄を張りたい、情緒不安定で自分に目も向けてくれない妻を、少しでも振り向かせたい気持ちからジョーが争いに名乗りを上げた結果、資本とテクノロジーが圧倒的に勝利を収めたことを物語っています。 マスク着用をめぐる小競り合いや当事者不在のBLM活動など、本作に登場する人々の諍いは、どこか空虚で無意味なもののように見えます。 アリ・アスター監督は、このシーンで巨大テクノロジー企業と資本主義がすべてを支配し、人々は小さな争いに魅了されているアメリカの現状をこのシーンで描き出しているのです。
【裏話】データセンターの名前はAIのエラーからきている?
エディントンに誘致されたデータセンターの名前である「SolidGoldMagikarp」は、ネット上で「バグ」や「異常」を意味する言葉として知られています。 ChatGPTなどのAIにこの文字列を入力し、これをくり返すように指示すると、「SolidGoldMagikarp、SolidGoldMagikarp、……」とつづくかと思いきや、AIが混乱し、その言葉の背景にある意味や概念など、本筋を外れた長文を生成します。 エディントンという小さな田舎町にとって、巨大テクノロジー企業のデータセンターという存在は「バグ」なのかもしれません。
【考察】ジョーやルイーズなどのキャラの物語上の役割は?
ジョーのラストが呈する疑問
ジョーは当初、人々の自由を守り、田舎町にデータセンターを誘致することを反対する正義の象徴のように描かれていました。しかし彼の「正義」は、自分自身の感情や怒り、被害者意識に根ざした主観的な「正義」であり、最終的には殺人まで正当化してしまいました。 そんなジョーが最後には(形だけでも)権力、そして正しさの象徴である市長にまで登りつめたことは、社会の選択の恐ろしさを表しています。
テック企業を熱心に誘致する現市長・テッド
現市長であるテッドは、テック企業への誘致を熱心に市民に勧めています。彼が言うには、誘致することで雇用が生み出され市民の生活が潤い、人種的不均衡を正し、町は進歩するとのこと。これは保守的なジョーとは正反対の考え方で、2人は非常に対照的に描かれています。 またテッドは「町のための秩序」、「町のための政治」という名目で、ジョーの暴力をも利用していました。彼は自分が正しいように見せるように、ジョーの感情的な性格さえ理解して利用していたのです。
「ハーメルンの笛吹きのような人物」ヴァーノン

ジョーの妻ルイーズが心酔する陰謀論者であるヴァーノンは、人々の恐怖と不安を煽って巧みに彼らを操っていきます。その狂気とカリスマ性はまさに人々を惑わすカルト教団の教祖のようであり、「ハーメルンの笛吹き」のような人物です。 アスター監督はヴァーノンを演じるオースティン・バトラーに「インターネット上の“クレイジーな人々”を単に反映させるのではなく、より包括的で、漠然とした存在にしてほしい」と指示していたとか。 そのような指示から、ヴァーノンの得体のしれなさが生まれたのではないでしょうか。
陰謀論に魅了されるルイーズ

アリ・アスター監督は「ルイーズは簡単に騙される人間なんだ。彼女は若い頃に体験したことを受け止めきれてなくて、答えを求めてる。そしてヴァーノンが“答え”を持って現れる。どんな時も人々に“答え”を差し出す。それが煽動者のやり方だからだよ」と語っています。 ルイーズは自分でも処理しきれないトラウマを抱えており、それは母にも夫にも理解されないと思っています。実際彼女が言語化できないものは、母ドーンも夫ジョーも理解できません。 しかしヴァーノンは彼女に“答え”を与えてくれる存在でした。それが真実でなくても彼女が信じるのであれば、それが真実なのです。
【舞台】エディントンという架空の町が表すもの

本作の舞台はニューメキシコ州の架空の町エディントンです。どこにでもあるような田舎町で、住民同士の関係も濃密。それでいて人種や政治的思想が入り乱れた、アメリカの縮図ともいえる場所となっています。 田舎町であるがゆえに、作中ではコロナやBLMについて、「遠くの場所で起こっていること」と考えるキャラクターもおり、社会情勢とは一見切り離されているように見えますが、実際は地続きのものであることが描かれています。 こうした舞台設定から、観客も「自分の周囲でも同じようなことが起こるのではないか」と思わされます。
【評価】映画『エディントンへようこそ』感想は?見どころも解説
本作は日本公開に先駆け、米国では2025年7月18日より劇場公開されています。 アメリカの大手レビューサイト「Rotten Tomatoes」では、批評家スコア70%、観客スコア65%(2025年9月時点)を記録。「野心的な作品」といった好意的な評価がある一方、「アリ・アスター監督作品としては少し退屈」などの厳しい意見もありました。 最大の見どころは、現代社会を真っ向から描いた風刺です。コロナ禍における社会の分断、SNSで拡散する陰謀論、AI問題やブラック・ライブズ・マター(BLM)運動といった、近年のアメリカが抱える社会問題をテーマに据えた、痛烈なブラックコメディに仕上がっています。
【キャスト】映画『エディントンへようこそ』俳優一覧
| ジョー・クロス保安官 | ホアキン・フェニックス |
|---|---|
| テッド・ガルシア市長 | ペドロ・パスカル |
| ルイーズ・クロス | エマ・ストーン |
| ヴァーノン・ジェファーソン | オースティン・バトラー |
| ガイ・トゥーリー | ルーク・グライムス |
| ドーン | ディードル・オコンネル |
| マイケル・クーク | マイケル・ウォード |
| サラ | アメリ・ホーファーレ |
| ロッジ | クリフトン・コリンズ・Jr. |
| バタフライ | ウィリアム・ベルー |
ジョー・クロス保安官役/ホアキン・フェニックス
映画『エディントンへようこそ』の主人公・保安官ジョーを務めたのは、『ジョーカー』(2019年)でおなじみのホアキン・フェニックス。 A24制作・アリ・アスター作品としては『ボーはおそれている』(2023年)以来の出演です。
テッド・ガルシア市長役/ペドロ・パスカル
エディントンにIT企業を誘致しようとする現役市長のテッド・ガルシアを演じるのは、ドラマ『THE LAST OF US』(2023年〜)や『ファンタスティック4:ファーストステップ』(2025年)ねど、近年注目作に多数出演しているペドロ・パスカルです。 アリ・アスターの監督作への出演は本作が初めてとなります。
ルイーズ役/エマ・ストーン
陰謀論にハマっていくジョーの妻ルイーズ。演じるのは、『ラ・ラ・ランド』(2016年)や『哀れなるものたち』(2023年)でアカデミー賞主演女優賞を受賞したエマ・ストーンです。 アリ・アスター監督作への出演は本作が初めてです。
【監督】アリ・アスターが映画『エディントンへようこそ』を撮った背景を解説
『ミッドサマー』も手がけるアリ・アスター
本作の監督を務めるのは、A24には欠かせない名監督、アリ・アスターです。 監督の名前を知らなくても『ミッドサマー』(2018)を筆頭に、『ヘレディタリー/継承』(2018)や『ボーはおそれている』(2023)の監督、『ドリーム・シナリオ』(2024)や『サスカッチ・サンセット』(2025)の制作と聞けば、その奇才ぶりが分かるのではないでしょうか。 アリ・アスターは、米国メディアのインタビューにて「『エディントンへようこそ』は、何かがおかしいと気づいている人たちについての映画です」と意味深なコメントを残しています。
アリ・アスターが『エディントンへようこそ』を撮った理由

アリ・アスター監督は本作について、「コロナが発生し、ジョージ・フロイドの恐ろしい殺害事件が起こった時、僕は『エディントンへようこそ』のアイデアを改めて考え直した。この状況を理解するために、現在、起きている出来事を利用することが正しいと思ったんだ」と語っています。 また自身の出身地であるニューメキシコは、人種や支持政党が入り乱れ、歴史的にも政治的にも複雑な土地であり、「今のアメリカを映すような映画にぴったりな土地」とも明かしました。 これまで主にホラー映画を手掛けてきた同監督ですが、本作は現実を正面から捉えた作品となっています。
映画『エディントンへようこそ』は2025年12月12日公開!

映画『エディントンへようこそ』は、2025年12月12日に日本公開です! アリ・アスター監督といえば「家族」をテーマにした作品をこれまで制作してきました。本作では、家族はもちろんコロナで分断された他者との関わりも描いています。 コロナ禍のエディントンは、アリ・アスターによってどのような狂気に晒されていくのでしょうか。ぜひ劇場でチェックしてくみてください。


