2019年1月22日更新

若き名女優ブリー・ラーソンの『キャプテン・マーベル』への軌跡

ブリー・ラーソン
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『ルーム』で一躍脚光を浴び『キャプテン・マーベル』主演への抜擢によって再び世界の注目を集めている女優ブリー・ラーソン。本稿では、そんな若き名女優ブリー・ラーソンの軌跡を追いかけてゆきます。

MCU初の女性ヒーロー「キャプテン・マーベル」を演じるブリー・ラーソン

キャプテン・マーベル
©︎MARVEL STUDIOS

ヒーロー映画の第一線をひた走るマーベル・スタジオが展開しているMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)で初めての女性ヒーローが主役の映画『キャプテン・マーベル』。本作の主演を務めるのが女優ブリー・ラーソンです。 『キャプテン・マーベル』主演への抜擢によって再び世界の注目を集めている女優ですが、アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞の主演女優賞をダブルで受賞した『ルーム』によって彼女の存在を知った映画好きの方も多いことでしょう。 本稿では、そんな若き名女優ブリー・ラーソンが「キャプテン・マーベル」を演じることになるまでに歩んだキャリアを追いかけていきます。

女優ブリー・ラーソンの生い立ち〜デビューまで

早熟で、並外れた感性をもっていた幼少期

ブリー・ラーソン
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ブリー・ラーソンは1989年10月1日、カリフォルニア州サクラメントで生まれました。父と母、そして妹との4人家族でした。幼少期の彼女はとてもシャイな女の子で、ほとんど学校に通うことはなく、ホームスクーリングを受けて育ったといいます。しかしこの経験は彼女にとっては「創造力に富んだ観念的な体験をたくさんもたらしてくれた」ものだったようで、The Guardian誌によるインタビューで彼女はこんな思い出を語っています。 「6歳の頃、母にこう言ったんです。『ママ、私にとっての"ダルマ"が何かわかったよ。私は女優になるべきなの』母は私がTVのセリフを言ってるだけだと思ったみたいでしたね」 ダルマとはサンスクリット語で法や真理を意味し、仏教においてとても重要な言葉のこと。とても一般的な6歳の女の子の発言とは思えないだけに、彼女の母もさぞ驚いたことでしょう。 この後、彼女は史上最年少でサンフランシスコのアメリカン・コンサーバトリー・シアターで演技の勉強を始めることになります。 両親の離婚を機にロサンゼルスへと移ったあとも、彼女は一般的な女の子像に染まることはなく、実に早熟で並外れた感性の持ち主のまま育っていきました。8歳の頃のお気に入りの映画が『風と共に去りぬ』(1939)などだったことからも、その感性の特殊さがよくわかりますね。 しかしあまりにも独特だったことで、友達はほとんどいなかったのも事実でした。先のインタビューで彼女はこんなことも語っています。 「友達はいなかったですね。私は変な映画を愛していましたし、ボーリング用の靴を履いたりしていて、その歳からすでに社会のルールに縛られずに考えたかったんです。シャワーをしながら晩御飯を食べるなんてこともやりました。なんでやらないの?って疑問に思ったから。やってみた結果、食事を楽しめないから何の意味もないって実感したんですけどね」 「とにかく私は変なことをどんどんやりたがる娘でした。でも悪いことに興味をもったりは一切しなかったから、親は自由にさせてくれました」

TV番組への出演を重ねた後、『レーシング・エンジェルズ』で映画デビュー

女優としての初めての露出は、コメディー番組『The Tonight Show with Jay Leno (原題)』でした。その後は出演番組のキャンセルなどに見舞われたりはあったものの、『Raising Dad (原題)』では主要キャストのひとりとなります。 残念ながら『Raising Dad (原題)』も22話の放送後に打ち切りになってしまいますが、ディズニーチャンネルのオリジナルムービー『レーシング・エンジェルズ』(2003)で映画デビューを飾ったのでした。 本作は男社会のレーシング界で、偏見に負けず戦っていくコートニーとエリカの姉妹を描いた、実話をもとにしたファミリー・ドラマ。ブリー・ラーソンはコートニーを演じています。 『レーシング・エンジェルズ』は厳密にはTV映画にあたりますが、ここから彼女は少しずつ商業映画に出演を重ねていきます。

『スリープオーバー』で商業映画初出演!主要キャストとなる

ブリー・ラーソンの商業映画初出演となったのは2004年のコメディ映画『スリープオーバー』でした。 イケてないヒロイン達が憧れの高校生活を送るため、人気者しか座れないランチ・スポットを巡ってライバルのグループと勝負する、というストーリーを描く作品。『スパイキッズ』のアレクサ・ヴェガが主演で、ブリー・ラーソンはライバルグループのメンバー・リズ役で出演しています。

15歳で高校卒業、16歳ではシンガー・ソングライターとしてもデビュー

『スリープオーバー』に出演していた2004年、15歳で彼女は高校を卒業し、翌2005年、16歳で彼女はシンガーソングライターとしてもデビュー。シングル『She said』などのミュージックビデオにも自分で出演しています。 ブリー・ラーソンはミュージシャンとしての活動にも非常に積極的でしたが、順調とはいかず、映画での活躍がメインとなっていきました。

ドラマ『United States Of Tara (原題)』を経て、映画への出演が少しずつ増えていく

TVドラマ『United States Of Tara (原題)』で主要キャストに

ブリー・ラーソンは『プライド・オブ・マディソン 栄光への挑戦』(2005)への出演や『童貞ペンギン』(2007)での声の出演など、規模としては比較的小さな映画に参加していきました。この間にはCDデビューに伴ってアメリカ国内でのコンサートツアーを行っています。 その後、2009年から2011年にかけて放送されたコメディドラマ『United States Of Tara (原題)』にメインキャストとして参加し、完結までの36話すべてに出演しました。ブリー・ラーソンが受賞することはありませんでしたが、本作は当時のエミー賞でも話題となっており、少なからず彼女の知名度をあげる一役を担ったことは間違いありません。

『ベン・スティラー 人生は最悪だ!』

「ナイト ミュージアム」シリーズや『LIFE!』で有名なベン・スティラー主演作『ベン・スティラー 人生は最悪だ!』(2010)。 本作は精神病院から退院したばかりの孤独な男ロジャーが、弟家族の留守を預かるために地元ロサンゼルスに戻ったことを機に、弟のアシスタントであるフローレンスと仲を深めていく……というストーリー。ブリー・ラーソンはメインキャストではありませんが、サラという役で出演しました。

『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』

2010年は『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』という映画にも出演。後に『ベイビー・ドライバー』(2017)で世界を湧かせることになるエドガー・ライトが監督を務め、今やキャプテン・アメリカ役でお馴染みのクリス・エヴァンスも出演している作品です。 本作は売れないバンドマンの主人公が一目惚れした女の子と付き合うために、彼女の7人の邪悪な元カレと闘わなかればならなくなるというコメディ色の強い作品。ブリー・ラーソンは主人公スコットの元カノであるエンヴィ・アダムズ役で出演しています。

『21ジャンプストリート』であの人気俳優と共演!

『マネーボール』(2011)で見事な演技を見せた俳優ジョナ・ヒルと、『マジック・マイク』(2012)で人気を博した俳優チャニング・テイタムのW主演のアクション・コメディ映画『21ジャンプストリート』(2012)。 本作は1987年にジョニー・デップが主演し出世作となったテレビシリーズを映画化したものです。高校に潜入捜査したおふざけ警官コンビが、少しずつ校内にはびこる凶悪犯罪の陰りに気づきはじめていくという物語。 ブリー・ラーソンは本作のヒロインとなるモリー役を演じています。痛快なコメディに仕上がった本作は大きな成功を収めました。

『ショート・ターム』で主演し、絶賛を浴びる

女優ブリー・ラーソンの大きな転機となったのが、デスティン・ダニエル・クレットン監督による2013年の映画『ショート・ターム』です。Skypeでのオーディションを経て主演の座を得た彼女は、問題を抱える10代の若者たちのためのグループホーム「ショート・ターム12」の若きケアマネージャーであるグレイス役を好演。 彼女の演技、そして監督の美しい演出には絶賛に次ぐ絶賛が浴びせられ、数多くの映画賞で軒並みノミネートと受賞を重ねています。これまではコメディ作品への出演が目立っていましたが、本作によって彼女の高い演技力が世界に示されたのでした。

『ルーム』でアカデミー賞の主演女優賞を獲得!

『ショート・ターム』で注目を集めたブリー・ラーソンはその後も、『(500)日のサマー』(2009)のジョセフ・ゴードン=レヴィットが監督・脚本・主演を務めた映画『ドン・ジョン』(2013)や、『テッド』(2012)のマーク・ウォールバーグが主演した『ザ・ギャンブラー 熱い賭け』(2014)といった映画にも出演。 そうした経験を経て、彼女の最大の代表作『ルーム』(2015)で主演を務めることになります。本作は突然の監禁から7年の時が経ち、全てを賭けた脱出を決意した母と5歳の息子の物語。 ふたりの脱出だけを感動的に描くのではなく、その後に待ち受ける人間社会の無慈悲な側面をも描いてみせて多くの人の胸を打ち、大ヒットを記録しました。 本作で彼女は再びその高い演技力を爆発させ、アカデミー賞とゴールデングローブ賞の主演女優を受賞。彼女の名は瞬く間に世界に知れ渡ることとなりました。

ワンシチュエーション映画『フリー・ファイヤー』でも主演

2016年には映画『フリー・ファイヤー』に紅一点で主演。『ルーム』とは打って変わって、本作は武器の売買交渉が決裂し、倉庫の中で繰り広げられる口論と銃撃戦だけがひたすら展開される、というワンシチュエーション映画です。 『フリー・ファイヤー』は映画界の巨匠、マーティン・スコセッシ監督が製作総指揮を務めたことでも話題となりましたが、キャスト陣の豪華さでも注目を集めました。 『第9地区』(2009)やリメイク版『オールド・ボーイ』(2013)などで知られるシャールト・コプリー、『君の名前で僕を呼んで』(2017)などのアーミー・ハマー、「ダークナイト」シリーズのキリアン・マーフィーなど、知名度の高い俳優が多く出演しています。

ハリウッド超大作『キングコング 髑髏島の巨神』でもメインキャストに名を連ねる

『キングコング:髑髏島の巨神』トム・ヒドルストン、ブリー・ラーソン
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『ルーム』以降は注目度の高い映画に次々と出演を重ねていくブリー・ラーソンは、2017年公開のハリウッド超大作『キングコング 髑髏島の巨神』にも、トム・ヒドルストンやサミュエル・L・ジャクソン、ジョン・グッドマン、ジョン・C・ライリーらとともにメインキャストとして名を連ねました。 本作では彼女は勇敢な戦場カメラマン、メイソン・ウィーバーの役を演じています。半年にも渡る撮影はこれまでにない過酷なものだったようで、撮影前にはかなりのトレーニングを積んだといいます。 彼女自身がインタビューで語ったところによれば、「スプリントとウェイトトレーニングをひたすら繰り返すトレーニングと、ピラティスを毎日1時間ずつ行うトレーニング」を数ヶ月間毎日行ったのだとか。 彼女にとって初めての挑戦となった本作の役柄はピタリとはまり、映画も大ヒット。ブリー・ラーソンにとっての新たな代表作が誕生しました。

『キャプテン・マーベル』ではMCU初の女性ヒーローに!

大活躍を見せていたブリー・ラーソンはついに、マーベルが展開してきたMCU作品にも進出!MCU初の女性タイトルヒーローであるキャプテン・マーベルの物語を描く2019年の単独作『キャプテン・マーベル』の主演に抜擢されました。 本作は『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の衝撃のその後を描く『アベンジャーズ/エンドゲーム 』にも非常に重要な意味を示す映画となるようで、世界中のマーベルファンからの注目が集まっている作品です。 『キャプテン・マーベル』は2019年の3月15日に全国公開予定。マーベルヒーローの中でも「最強」と名高いキャプテン・マーベルをブリー・ラーソンがどのように演じるのか?期待が高まります。

決め手はあの名優のアドバイス

サミュエル・L・ジャクソン
©︎Jody Cortes / WENN

『キングコング 髑髏島の巨神』で共演した名優、サミュエル・L・ジャクソン。MCU作品にもニック・フューリーとして登場している彼ですが、Vultureによるインタビューによれば、その共演を機にブリー・ラーソンとの親交を深めたといいます。さらに彼はそのインタビューでこのように語りました。 「彼女は引き受ける責任を真剣に受け止めていたよ。『ひとりの女優としてだけじゃなく、強い女性として世界の女性を代表しないといけないんです。このキャラクターはそれくらいMCUにとって重要なんですから』と。彼女はあの映画を特別で、心ある深い物語にしたかったんだ。だからぼくは『落ち着こう。彼らが君を選んだのには理由があるんだし、君は君なのだから、自分らしくやればいいんだ』と伝えたよ」 この一言が、「キャプテン・マーベル」を引き受ける彼女の決断を後押ししたことは言うまでもありません。

キャプテン・マーベルを演じたことで自分の強さに気付くことができた

ブリー・ラーソンは『キャプテン・マーベル』を演じるために、9ヶ月間に及ぶトレーニングを積んだそうで、Varietyの取材に対し、以下のようなコメントをしています。 「キャプテン・マーベルを演じるためにフィジカル面を鍛えていくうちに、自分についてたくさん知ることができたんです。かつての自分よりももっと強くなれたと今では感じますし、それは彼女のおかげだと思っています。そして願わくば、他の人たちにとってもそうであればいいな、と思いますね」

『アベンジャーズ/エンドゲーム』でも重要な役どころに

2019年4月26日に日米同時公開を控えながら、細かい情報が一切不明の状態でファンをヤキモキさせてきた「アベンジャーズ」シリーズ最新作『アベンジャーズ/エンドゲーム 』。 ブリー・ラーソンが演じるキャプテン・マーベルは本作の鍵を握る最重要キャラのひとりであるとされており、『キャプテン・マーベル』の撮影前に本作での登場シーンを撮影していたとのニュースも報じられました。 プロットなどは未だ多くが謎に包まれているため、「何がどうなるのか」はわかりませんが、ブリー・ラーソンの役回りがどのように影響するのか、注目ですね。

さらに『Just Mercy (原題)』でマイケル・B・ジョーダンと共演予定!

マイケル・B・ジョーダン
©︎Brian To/WENN.com

そして日本での公開日などの情報はまだ不明ですが、ブリー・ラーソンは『Just Mercy (原題)』にも出演予定です。 本作は『ショート・ターム』の監督だったデスティン・ダニエル・クレットンが監督を務め、『クリード チャンプを継ぐ男』(2015)や『ブラックパンサー』(2018)で有名な俳優マイケル・B・ジョーダンが主演。 弁護士ブライアン・スティーブンソンが執筆した同名ノンフィクション小説を原作とし、冤罪で死刑判決を受け、判決が覆り自由の身となるまでの6年間を死刑囚監獄で過ごした若き黒人男性ウォルター・マクミランの物語が描かれる作品です。 ブリー・ラーソンの役どころもまだわかっていませんが、『ショート・ターム』のタッグによる新たな名作の誕生が予想されます。

演技派ヒーロー女優、ブリー・ラーソンのさらなる活躍に期待!

並外れた感性で独特な幼少期を過ごし、瞬く間に演技派女優へと成長していったブリー・ラーソン。主演作が数多くあるとはまだ言えませんが、『ショート・ターム』や『ルーム』などを見ると、一本で強烈なインパクトを残してきたことがよくわかります。 『キャプテン・マーベル』以降、ますます忙しくなることは間違いなさそうですが、並外れた感性と演技力で、また新たな名作を誕生させてくれることも間違いないでしょう。 さらなる活躍に期待です。