映画「IT/イット」の全て 90年版と比較したら重大な違いに気づいてしまった【ネタバレあり】
タップできる目次
- リメイク版の映画「IT/イット」を90年版と比較してみた
- 『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』のあらすじ
- 90年版と2017年版のペニーワイズを比較:リメイク版のピエロは色気がある?
- リメイク版「IT/イット」のキャスト
- スティーブン・キングからも絶賛された監督アンディ・ムスキエティ
- 90年版と2017年版のキャラクターを比較:マイクとベンの役割が違う?
- 90年版と2017年版の評価を比較:リメイク版の「IT/イット」の方が良い?
- 90年版と2017年版の描写を比較:よりショッキングに?
- 知られざる?リメイク版「IT/イット」のトリビア
- 映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の続編公開が決定
リメイク版の映画「IT/イット」を90年版と比較してみた
あの恐ろしい殺人ピエロ、“ペニーワイズ”が帰ってきました。 1986年スティーブン・キングが発表した小説を基にトミー・リー・ウォーレスが1990年に映像化した『IT/イット』が2017年にリメイク。90年代に発表されたテレビ映画版のペニーワイズは、そのおぞましい姿で世界中の人たちをピエロ恐怖症へ陥れました。2017年版は、どのような違いがあるのでしょうか?
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『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』のあらすじ
舞台は1989年夏のメイン州デリー。主人公のビルは、弟のジョージーに紙で舟を作ってやります。大雨が降る中、一人舟を道路に浮かべながら遊ぶ彼でしたが、突如おびただしい血痕を道に残してこつ然と姿を消してしまいます。ジョージーが行方不明になってからというもの、町では不可解な連続子供失踪事件が発生します。 そんな中、未だに行方不明の弟を探す兄ビルと彼の友人達“ルーザーズ・クラブ”。しかし、次第に彼らは各々で恐ろしい体験をしはじめます。そこにはいつも、赤い風船を持ったピエロがいて……。
90年版と2017年版のペニーワイズを比較:リメイク版のピエロは色気がある?
1990年、アメリカABCが制作したテレビ映画『IT/イット』。『ハロウィンⅢ』や『トワイライトゾーン』の監督として知られるトミー・リー・ウォレスがメガホンをとった本作と2017年版の違いに迫ります。まずは、ペニーワイズに関して!
①俳優(ベテランから若手へ)
90年版のペニーワイズに扮したのは、カルト映画『ロッキー・ホラー・ショー』のフランクン・フルター博士を演じたことで知られている俳優ティム・カリー。あからさまに睨みつけるような恐ろしい形相をしており、体系もどちらかというとお腹が出ている“おじさん”ピエロでした。
対して2017年版のペニーワイズは、イケメン俳優のビル・スカルスガルドが演じています。モデルもしていた経歴をもつ彼は、ティム・カリーと比べて見た目もスタイリッシュ!怖いピエロなのに、そこはかとなく感じる色気があるのも彼の手腕でしょう。
②衣装、ヘアメイク
演じる人間が変わった以外にも、衣装やヘアメイクにも大きな違いがあります。90年版のペニーワイズは、赤・黄色・紫とかなりカラフルなカラーを使った、いわゆる大道芸人が着ていそうな衣装を身にまとっています。 ヘアスタイルは禿げ上がった後頭部にボサボサの赤毛。顔は全体的に白塗りを施し、髪と同じように赤い鼻と口、そして目元に施されたピエロ特有の涙メイクが印象的です。
対して2017年版のペニーワイズは衣装がグレーと白、赤を貴重としたヴィクトリア調でシックなものになっており、監督はこれについて「太古から存在する怪物というイメージを強くしたかった」とコメントしています。 ヘアメイクも、白塗り、赤い鼻と唇は同じですが髪の毛はオレンジ色に、そして涙メイクは口元から繋がってより強調されています。 また、表情の違いにも注目。90年版はあからさまに睨みつけたり、怖い顔をして口角が下がっていることも多かったのに対して、2017年版は基本的に口角があがっています。むしろ笑みが深くなっている分、不気味に感じたり? さらなる考察に入って行く前に、リメイク版『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』のキャストについて振り返っておきます。
リメイク版「IT/イット」のキャスト
恐ろしいピエロを演じるのはスウェーデン人俳優ビル・スカルスガルド
先ほど少し紹介しましたが、本作で邪悪な殺人ピエロ“ペニーワイズ”を演じるのはスウェーデン人俳優ビル・スカルスガルド。スウェーデン出身の芸能一家スカルスガルド家の三男です。 2010年公開のスウェーデン映画『シンプルシモン』でアスペルガー症候群の青年シモンを好演していました。「IT/イット」でブレイクしたのち、『Battlecreek(原題)』など日本未公開映画に複数出演。実は『ムーミン谷とウィンターワンダーランド』(2017)ではムーミンの声優を務めていました。ペニーワイズの声とムーミンの声が実は同じ人間が演じている……って少し狂気を感じますね。 2018年には『デッドプール2』に出演し、「IT/イット」続編にも続投が決定しています。
『ヴィンセントが教えてくれたこと』のジェイデン・リーベラーが少年ビル役
弟ジョージを殺害したピエロにリベンジを誓う少年グループのリーダー“ビル”を演じるのはアメリカ人子役ジェイデン・リーベラー。 2014年公開、ビル・マーレイ主演映画『ヴィンセントが教えてくれたこと』でいじめられっ子のオリヴァーを好演していました。
『ストレンジャー・シングス』で知られるフィン・ウルフハードも出演
Netflixの人気ドラマシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』マイク・ウィーラー役として知られるカナダ人子役フィン・ウルフハードが本作でビルの親友リッチー・トージアを演じます。 フィン・ウルフハードは2019年全米公開予定の映画4本に出演するなど、撮影で忙しい中バンド活動も行っています。ちなみに彼のバンドCalpurniaは来日予定がありましたが、キャンセルとなってしまいました。
今作で大注目!ベバリー役のソフィア・リリス
今作のヒロイン的ポジションのベバリー。学校では大人びていて、意地悪な女子から目をつけられいじめられても一人で戦う女の子です。後に「ルーザーズ・クラブ」の仲間入りを果たします。 そんなベバリーを演じるのは、大注目の新人女優ソフィア・リリス。インディー映画や短編映画に出演してきた彼女は、今作での好演により注目度が急上昇!映画を観た後、彼女の魅力にハマる人が続出してしまうはず!
ベン役のジェレミー・レイ・テイラー
ぽっちゃりな転校生を演じたジェレミー・レイ・テイラーは新人でありながら、映画出演の経験は豊富。さらにそれが、『42 〜世界を変えた男〜』、『アントマン』、『ジオストーム』といった知名度の高い作品ばかりだから驚きです! ただ、「42」以外の作品はノークレジット。映画を見返してジェレミーがどこにいるのか探してみたいですね。
スタン役を演じたワイアット・オレフはあの子役だった!?
ジェレミー以外にも、本作以前にスクリーンでその姿を目にしている可能性が高い子役がいます。ラビの息子で、臆病な少年スタンを演じたワイアット・オレフです。彼はマーベル・シネマティック・ユニバース作品『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』、そしてその続編で、クリス・プラット演じる主人公の幼少期役として出演していました。 彼は基本的に映画の出演より、テレビドラマ出演の経歴が多く『シェキラ!』や『ワンス・アポン・ア・タイム 』などの人気海外ドラマに多く出演してきました。
本作でスクリーンデビューを果たしたエディ役、ジャック・ディラン・グレイザー
ルーザーズ・クラブの中でおそらく一番背が低く、潔癖症の子供エディを演じたジャック・ディラン・グレイザー。彼は本作でスクリーンデビューを果たしたのですが、演技力は周りに引き取らないものでした。ペニーワイズ役のビル・スカルスカルドはバラエティ番組に出演した際、ジャックとの共演について以下のように語っていました。 「井戸小屋のシーンで、ペニーワイズがエディを襲うシーンがあるんだけど、本気で怖がらせているから自分は何をしているんだ、こんな子供にトラウマを与えているだけだって悪い気がしてきてね。でも、カットになった瞬間、怯えきっていたジャックが「今の演技、いいね!」って褒めてくれたんだ(笑)」 彼は本作での演技をきっかけに、DC映画『シャザム』に出演が決定!今後の活躍がかなり期待できます。
一番シリアスな役柄マイク演じたチョーズン・ジェイコブス
最後に紹介するのは、幼い頃に両親を家事で失い、いじめっ子にいじめられていた所をルーザーズ・クラブに救われたマイク役を演じるチョーズン・ジェイコブス。まだまだ俳優としてのキャリアはスタートしたばかりで、本作以外には人気ドラマ『Hawaii Five-0』に出演経歴があります。
スティーブン・キングからも絶賛された監督アンディ・ムスキエティ
本作でメガホンをとったのはアルゼンチン人監督のアンディ・ムスキエティ。2014年公開『パシフィック・リム』『パンズ・ラビリンス』などで知られるギレルモ・デルトロが製作総指揮を務めたホラー映画『MAMA』でメガホンをとり高い評価を獲得しました。 さらに、今作は原作者であるスティーブン・キングからも絶賛されています。今後のホラー界を盛り上げるのに不可欠な監督となっていくのではないでしょうか?
90年版と2017年版のキャラクターを比較:マイクとベンの役割が違う?
まず、上で紹介したキャラクターは90年版に比べて少し改変があります。大きな点ではまず、マイクとベンの役割が変わっていることです。もともとマイクがデリーの歴史やペニーワイズの謎を調査していた男の子で、作品全体の中でかなり重要な立ち位置にいました。 しかし、2017年版ではその役割をベンが担っており、マイクはどちらかというと端役になっています。
そして、べバリーのイメージも大きく変わっていました。90年版でも紅一点でビルやベンから思いを寄せられていた彼女でしたが、年相応な少女でした。2017年ではもっとセクシーで、色っぽくなっているのです。それだけでなく、もっと精神的に強いキャラクターになっており、ルーザーズ・クラブの中でおそらく一番勇敢な存在となっています。 また、いじめっ子のヘンリーやべバリーの父親の残忍さが2017年版はもっと過激になっていました。
90年版と2017年版の評価を比較:リメイク版の「IT/イット」の方が良い?
さて、気になるのは両作品の評価なのではないでしょうか?90年のものは、そもそもテレビ映画ということで作りの違いがあるので、時間が187分と非常に長いです。その点から、「冗長」と言われたり当時のVFXの技術的な問題などから、「あまり怖くない」という声もあがっています。 とはいえ、キングの小説の映像化ということもあって当時の人々をかなり怖がらせたことも事実で、年代が上の人は逆に90年版の方が怖いという意見もあります。その理由には、ペニーワイズを演じたティム・カリーの名演技もあるのではないのでしょうか。
対してリメイク版は、あのキングの『イット』の“リメイク”という時点でかなりプレッシャーがあったでしょう。しかし、それを感じさせない程まとまりもよく、上映時間が二時間超えだったにも関わらずひと時も飽きさせることがなかった、という肯定的な意見が非常に多いです。 何より、原作者であるスティーブン・キング自身が非常に気に入っているのです!彼は自分の本が原作の映像作品のできに非常に厳しいことで知られているため、これは傑作といっても過言ではないはず。 より詳しい海外評価に関する情報は以下の記事で紹介しています。
90年版と2017年版の描写を比較:よりショッキングに?
最後に、描写の変化について触れたいと思います。そもそも、90年のものは二部構成であり、一部は大人になったルーザーズ・クラブが、ある一方を受けて各々昔のデリーでの思い出(トラウマ)を振り返るものになっています。子供の頃を描いた一部の後に、大人になったメンバーがデリーに再び集結するのが二部です。 しかし、2017年版は完全に青春期と大人期を分けています。これがまず大きな違いでしょう。
そして、次に挙げられるのが残酷描写です。90年版では、ジョージーの腕が喰わる……!という描写はあったものの、実際はペニーワイズのクロースアップになっただけで実際に捕食するシーンはなく、ぼやかされていました。しかし、2017年版はそんな甘いものではありません。あんなに可愛らしいジョージーの腕を容赦無くぶっちぎる!開始五分ほどで繰り広げられるあのゴアシーンは、多くの観客が面食らったはず。 残酷なのはペニーワイズの殺人シーンに留まりません。いじめっ子のヘンリー・バウワーや、べバリーの父親といった“怖いキャラ”の残酷度が増し増しになっているのも特徴的なのです。
そして何より色々なものが現代化していると言えるでしょう。90年版ではフォトアルバムに登場したペニーワイズが、2017年版にはプロジェクターに投影したスライドショーから現れたり。家庭内暴力やエディの母親のような“過保護”な親の描写などは、完全に現代の「モンスターペアレンツ」として強調されています。 他にも井戸小屋についての描写も、90年より2017年の方が細かく描かれており、リメイク版だからできる情報の補完とも言えます。
知られざる?リメイク版「IT/イット」のトリビア
①日の目を見なかった幻の脚本があった!
2009年3月、ワーナーブラザーズとニューラインシネマがスティーブン・キングの小説『IT/イット』を再び映画化すると発表しました。 その3年後の2012年、『トゥルー・ディテクティブ』で知られるキャリー・フクナガが監督としてプロジェクトに参加。フクナガは原作を子供版と大人版の2つのパートに分け、2部作として今までにない画期的な超大作ホラー映画を目指していたと言われています。 しかし、典型的なホラー映画を求めていたニューラインシネマと画期的でよりダークな作品を構想していたキャリー・フクナガの間には大きな軋轢があり、フクナガ版『IT/イット』はついに実現には至りませんでした。 ちなみにフクナガ版のペニーワイズ役には『リトル・ランボーズ』や『なんちゃって家族』などで知られるウィル・ポールターがキャスティングされていたそうです。
②オスカー獲得俳優がペニーワイズを演じる可能性があった!?
ビル・スカルスガルドの他にも2016年公開『ブリッジ・オブ・スパイ』でアカデミー助演男優賞を受賞したマーク・ライランスや『アニマルキングダム』で知られるベン・メンデルソーンがペニーワイズ役候補に挙がっていたそうです。 また、オリジナル『IT/イット』でペニーワイズを演じたティム・カリーは健康問題を理由に出演を辞退したと言われています。
映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の続編公開が決定
90年版と2017年版の『IT/イット』の違いについて、本記事で触れてきました。しかし、まだ全てを比較しきるには早いです。何故なら、リメイク版はまだ完結していないのだからーー。 今回紹介した『IT/イット』の続編は2019年全米公開予定です。描かれるのは、大人になったルーザーズ・クラブのみんなが、再びペニーワイズを倒しにデリーの街に戻る物語。彼らはどのように変わったのか、大人編は90年版と比べてどうなのか、気になるところですね。