豊田利晃の全監督作品を徹底紹介!【デビュー作から最新作まで】
タップできる目次
- 繊細で美しい映像、こだわり溢れる音楽が魅力!豊田利晃監督
- 豊田利晃監督の経歴
- 豊田利晃、初監督作品!『ポルノスター』(1998年)
- 実在のボクサーの姿を追うドキュメンタリー『アンチェイン』(2001年)
- 不良少年たちの青春とは?『青い春』(2001年)
- 脱獄した9人に未来はあるのか?『ナイン・ソウルズ』(2003年)
- 病んだ心が描く理想の家庭とは『空中庭園』(2005年)
- ドラマー・中村達也主演!『蘇りの血』(2009年)
- 孤独な爆弾魔の狂気!『モンスターズクラブ』(2011年)
- 教祖が気づいた教団の秘密とは?『I'M FLASH!』(2012年)
- 不良少年たちの熱き戦い!『クローズEXPLODE』(2014年)
- 豊田利晃の脚本デビュー作!『王手』(1991年)
- 杉本哲太が神様に?『ビリケン』(1996年)
- 又吉直樹原作小説を実写映画化!『火花』(2017年)
- ASIAN KUNG-FU GENERATIONなど、人気バンドのMVも手がける
- 2016年には初の舞台『怪獣の教え』を手がける!
- 2018年には『泣き虫しょったんの奇跡』が公開!
繊細で美しい映像、こだわり溢れる音楽が魅力!豊田利晃監督
2017年には脚本を担当した『火花』が公開され、2018年には監督作品の公開も控えている豊田利晃。強いこだわりが感じられる繊細で美しい映像と、心に傷を抱える人の苦悩や葛藤を大胆に表現したストーリーには、つい引き込まれてしまいます。 脚本担当作品も含め、豊田利晃監督がこれまで手がけてきた全作を一気にご紹介。どの作品も豊田監督だけのカラーやこだわりが感じられ、鋭い感性が光っています。 また、監督作品の全てにおいて映画をさらに盛り上げてくれる、魅力的な音楽が使用されているのも特徴です。そんな豊田利晃監督がこれまで手がけてきた、脚本・監督作品を一挙ご紹介します。
豊田利晃監督の経歴
豊田利晃監督が初めて映画作品に携わったのは、坂本順治監督の『王手』の脚本です。その後も脚本をいくつか担当し、1998年に『ポルノスター』で初めてメガホンを取ります。2001年には松本大洋原作の漫画『青い春』を実写映画化、ヒットを記録しました。 順調に監督作品を発表し続けていましたが、2005年に覚せい剤取締法違反により逮捕、2年間の懲役となります。2009年に公開された、『蘇りの血』で監督として復帰を果たします。 2011年『モンスターズクラブ』、2012年『I'M FLASH!』と立て続けに監督作品を発表、2014年には大ヒット映画「クローズ」シリーズの続編『クローズEXPLODE』の監督を務め大きな注目と話題を集めました。
豊田利晃、初監督作品!『ポルノスター』(1998年)
豊田利晃監督のデビュー作となった、1998年公開の『ポルノスター』。お笑い芸人の千原ジュニア(当時・千原浩史)を主演に迎え、都会で暴力の日々に若い命をすり減らしていく青年の姿を描きます。 渋谷の街に突如現れた一人の若者(千原浩史)。彼は、路上で商売をしているヤクザ男たちに執拗にからみ始め、やがて所持していたナイフで男たちを殺害したのです。 若者は、ヤクザ組織の底辺でもがきながらクラブの経営者として生きる上條(鬼丸)に、やがては拾われることとなった若者。上條は、属する組織と対立する組の男を殺害するよう上部から命令されていましたが、若者にその役目を担わせようとするのでした。 今回が映画初主演となる千原ジュニアの存在感には注目。裏社会で戸惑いもがく主人公のイメージにぴったりとハマっています。
実在のボクサーの姿を追うドキュメンタリー『アンチェイン』(2001年)
ボクサー・アンチェイン梶の姿に迫るドキュメンタリー映画がこちら。劇中では、ソウルフラワーユニオンが手がけるテーマ曲が流れ、作品をさらに盛り上げています。 目の負傷により引退を余儀なくされ、それまで1度も勝つことができなかったボクサー・アンチェイン梶。現役時代に彼と交流があった仲間たちのインタビューを通して、アンチェイン梶の人生が浮き彫りになります。 4人の男たちの熱い絆と情熱が豊田監督の映像で紡ぎ出される今作で、ナレーションを担当するのは千原浩史です。バラエティ番組などでも大のボクシングファンを公言している千原だけに、熱い思いのこもったナレーションは必聴です。
不良少年たちの青春とは?『青い春』(2001年)
松本大洋の手がける漫画・『青い春』を原作とする長編映画。主演の松田龍平始め、人気若手俳優の学ラン姿も見どころのひとつ。自身がメガホンを取る作品では、その劇中音楽にもこだわってきた豊田監督ですが、今作では、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの曲が流れます。 荒れた男子校の朝日高校では、不良少年たちの間で奇妙なゲームが流行っていました。それは、屋上で行われるゲームで、柵の捕まり手を叩くというものでした。最も多くの回数手を叩けたものには、朝日高校のトップになれるのです。 見事そのゲームに勝利したのは、九條(松田龍平)という無口な少年でした。学校にもトップになることにも興味がないという九條ですが、彼には幼馴染の同級生・青木(新井浩文)がいました。 九條とケンカしたことをきっかけに、激しくライバル視し始める青木。彼は、九條にはできないことをやってやると誓い、例のゲームで九條の記録を抜くことを目指します。
脱獄した9人に未来はあるのか?『ナイン・ソウルズ』(2003年)
これまで、若者たちの無軌道な青春の日々を独特の感性で描いてきた豊田監督作品。今作『ナイン・ソウルズ』は、これまでの作品の集大成的存在であり、『ポルノスター』、『青い春』に続く青春3部作の完結編とされています。 今作では、刑務所が舞台。服役している男たちが登場人物です。父親を殺害した金子(松田龍平)、仲間を4人も殺した元暴走族の男・車(千原浩史)や、恋人の浮気相手を殺害した元AV男優の亀井(板尾創路)、爆弾魔の乾(鈴木卓爾)など強者ぞろいです。 やがて金子たち9人は、部屋に穴を見つけそこから脱走します。小学校のタイムカプセルに大金を隠したという男の話を信じ、彼らは小学校がある富士山麓を目指すのでした。 社会に馴染めず、罪を犯した物たちがもう一度未来を手に入れようとする姿がファンタジックで繊細な映像で描かれます。年齢も個性もバラバラな9人の奇妙な友情にも惹きつけられることでしょう。
病んだ心が描く理想の家庭とは『空中庭園』(2005年)
角田光代原作の小説を原作とする『空中庭園』は、2005年公開。幼少期のトラウマから理想の家族像にいいている主人公の絵里子と、彼女の理想の家庭を生きようとする家族たちの姿が描かれます。 主人公の絵里子(小泉今日子)は、京橋家を守る主婦。彼女は幼少期の寂しい経験から、家族というものに強く固執していました。彼女は結婚し、やがては理想通りの暖かで穏やかな家庭を築くことになります。 家族の間に隠し事があってはならない、という彼女自身が決めたルール。しかし、絵里子にも家族のそれぞれにも、誰にも知られたくない秘密を抱えていたのです。 心に深い闇を抱えている主人公の心情が、芸術的と言っても良い美しい映像で見事に表現されています。他の家族を題材に描いた作品にはない、豊田監督作品ならではの鋭い感性が光ります。
ドラマー・中村達也主演!『蘇りの血』(2009年)
説話である小栗判官のエピソードを取り入れた『蘇りの血』。元BLANKEY JET CITY(ブランキー・ジェット・シティ)のドラマー、中村達也を主演に迎えるなど、豊田監督作品ならではの異色のキャスティングが光ります。 ファンタジックなムードが漂う今作は、天才と名高いあんま師が主人公。彼は、病気に苦しむ大王に呼ばれますが、人に雇われることを嫌うため、大王の元を去ろうとします。怒った大王は、彼を殺害。しかし、天国にも地獄にも行くことができず、現世に帰ってきてしまいます。 彼にはやり残したことがあり、また完全に生き返るために蘇りの泉と呼ばれている不思議な力を持つ泉を目指すのでした。
孤独な爆弾魔の狂気!『モンスターズクラブ』(2011年)
雪山から爆発物を企業に送り続ける青年の姿を描いた『モンスターズ・クラブ』。2012年に公開された豊田監督4作目の長編映画です。主人公の孤独な男・垣内良一を演じるのは瑛太。日本社会に不満を持ち、国を破壊しようとする爆弾魔を熱演しています。 雪山で狩りをしながら一人暮らしている垣内良太(瑛太)は、現代の社会システムに対し大きな不満を抱えていました。システムに管理され支配されていると考える良一は、そのシステムごと国を破壊するため、企業や国の機関に爆発物を送り続けています。 自ら作った爆弾を雪山から送り続ける毎日を過ごす彼には、やがて奇妙な幻影が見えるようになりました。死んだはずの弟・ケンタ(KenKen)や兄・ユキ(窪塚洋介)が彼の前に現れるようにもなったのです。
教祖が気づいた教団の秘密とは?『I'M FLASH!』(2012年)
藤原達也が新興宗教の教祖である主人公を演じ、注目を集めた『I'M FLASH!』は2012年公開です。 吉野ルイ(藤原達也)新興宗教団体の3代目の教祖です。ある日、ルイは交通事故を起こしてしまい、一人の女性を意識不明の重体にさせてしまいます。ルイは母(大楠道代)からボディーガードをあてがわれ、事件のほとぼりが冷めるまで島へと避難させられることになりました。 教団の幹部でもある母は、事件をもみ消そうと考えていました。しかし、ルイは責任を感じ教団を辞めることを決意していたのです。ルイからその意思を告げられた時、母は恐ろしい計画を練り始め……。 宗教の怖さや自分の教団の秘密に気づいてしまう教祖の姿が描かれ、宗教や信じる心について考えさせられる作品。豊田監督作品に初主演となる藤原達也の緊迫感溢れる演技も見ものです。
不良少年たちの熱き戦い!『クローズEXPLODE』(2014年)
大人気のヒット作「クローズ」シリーズの続編であり3作目に当たる『クローズEXPLODE』を豊田監督が手がけています。2014年に公開された今作では、『クローズZEROⅡ』の三ヶ月後から話がスタート。新たに三年生となった鈴蘭の生徒たちのトップを目指す争いは激化していきます。 素行が悪く喧嘩ばかりの日々を送っていた鏑木(東出昌大)は、商業高校を退学になり、鈴蘭に転入してきました。転入早々、A組を仕切っている小岐須(勝治涼)に目を付けられた鏑木。小岐須は、鏑木の噂を聞き、自分たちのグループに入れたいと考えたのです。 鈴蘭の頂点には興味がない鏑木は小岐須の誘いを断りますが、学校一の勢力を誇るグループの強羅(柳楽優弥)たちとやり合い、鈴蘭喧嘩偏差値ランキングの5位に入ってしまいます。 鏑木の他にも加賀美(早乙女太一)や山下(ELLY)など悪名高い転入生がおり、鈴蘭のトップ争いは他校おも巻き込んだ抗争へと発展していくのでした。 「クローズ」シリーズファンはもちろん、今作から初めて見る人にも楽しめる作品です。若手人気俳優たちの熱い演技にも注目です。
豊田利晃の脚本デビュー作!『王手』(1991年)
豊田利晃が初めて手がけた脚本がこちら。坂本順治監督作品の映画『王手』です。新世界を舞台に描かれる今作は、赤井英和が主演を務めています。賭け将棋で生計を立てている、真剣師の飛田を演じました。 新世界で真剣師として活動している飛田(赤井英和)には、プロの将棋士を目指す親友・香山(加藤雅也)がいます。2人は長い付き合いであり、香山に将棋の魅力を教えたのも飛田でした。が、必死でプロを目指す香山は、賭け将棋を行っている飛田との付き合いを考えるようになります。 しかし2人の腐れ縁が途絶えることはなく、飛田と香山互いに強敵と対戦し続け、将棋の腕を磨いていきます。想いを寄せる女性に必ず名人になると誓っている香山。果たして彼は宣言どおり名人になることは叶うのでしょうか。
杉本哲太が神様に?『ビリケン』(1996年)
『王手』でもメガホンを取った坂本順治監督の新世界を舞台に描いた三部作の三作目がこちらの『ビリケン』です。豊田利晃は、坂本監督と共同で今作の脚本を担当しています。大阪らしいノリや軽快なテンポが楽しいコメディ作品で、ビリケン役を務める杉本哲太のコミカルな演技にも注目です。 大阪オリンピックの誘致の候補となっていた新世界では、通天閣の取り壊しが検討されていました。通天閣観光株式会社は、誘致にも取り壊しにも反対しており、新世界を活性化させようと躍起になっていました。 初代のビリケン像が発見され、それを社長(岸部一徳)が客寄せに繋がると考え展望台に置くことにしました。すると、像から神様・ビリケン(杉本哲太)が現れたのです。その日からビリケンは展望台にやってくる人たちの願いを叶えるため奔走します。
又吉直樹原作小説を実写映画化!『火花』(2017年)
又吉直樹原作の『火花』が2017年に映画化され、豊田利晃は監督を務めた板尾創路と共に脚本を担当しました。 これまでの豊田利晃監督作品に役者として何度も出演していた板尾創路がメガホンを取ることに注目です。また、原作の世界にどのように豊田色が追加されているのかも気になるところですね。 売れないお笑いコンビ、スパークスとして活動する徳永(菅田将暉)。ある日花火大会の営業先で、神谷(桐谷健太)という先輩芸人と知り合います。神谷の漫才に魅せられた徳永は弟子にして欲しいと頼み込み、神谷からは自分の自伝を書くことを条件に承諾されました。 やがて東京に活動の拠点を移した神谷は、徳永との関係をさらに深めていきます。先の見えない毎日に不安といらだちを抱えていた徳永にとって、神谷だけが心から慕い、頼りにできる人物だったのです。 笑いに青春の日々を掛けた2人の男性の10年間の歴史を描く『火花』。主演2人のテンポの良い関西弁と、熱く切ない演技はいちばんの見どころです。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONなど、人気バンドのMVも手がける
豊田利晃は、映画監督や脚本家としての活動だけでなく、多数のミュージシャンのMVも手がけています。アジカンの略称で親しまれるASIAN KUNG-FU GENERATIONでは、「君という花」、「サイレン」のMVが豊田監督作品です。 自身が手がける映画作品でも、随所にこだわりのある音楽を使用している豊田監督。彼が手がけるMVは、その曲の持つ魅力をわかりやすく表現し深めてくれています。
2016年には初の舞台『怪獣の教え』を手がける!
「怪獣の教え」東京公演、大盛況のうち幕を閉じました。多くのお客様にご観劇いただき、キャスト、ミュージシャン、スタッフ一同、心より感謝申し上げます。近い将来、さらなる進化を遂げた怪獣が都市を踏み潰しに現れることでしょう! ガオ〜〜〜 pic.twitter.com/zSGIonSpYz
— ライブシネマ「怪獣の教え THE FINAL」 (@kaijuno_oshie) September 26, 2016
これまで映像作品を中心に手がけてきた豊田利晃ですが、2016年には、自身初となる舞台『怪獣の教え』で脚本・演出・映像を担当しました。中村達也と結成したバンド・TWIN TAILが音楽を担当、音楽と映像、そして演劇のコラボレーションが楽しめる刺激的な舞台となりました。 舞台『怪獣の教え』は、主人公の天作に窪塚洋介、その従兄弟の大観に渋川清彦、世界中の島を渡り歩いているクッキーに太田莉菜が扮しました。
2018年には『泣き虫しょったんの奇跡』が公開!
2018年には、豊田利晃4年ぶりの監督作品となる『泣き虫しょったんの奇跡』が公開されます。主演を務めるのは松田龍平で、彼が豊田監督作品で主演をするのは16年ぶりとのこと。サラリーマンからプロ将棋士となった男の奇跡が描かれます。ぜひ劇場でしょったんが起こした奇跡を体験してみてくださいね。 ご紹介した豊田作品は、コミカルなストーリーから少年たちの群像劇を描いた作品まで。どの作品もバラエティに富んでいるのに、一目で豊田作品とわかるこだわりと美学が貫かれています。