2018年6月16日更新

【なぜ韓国の映画会社が制作?】日本の蒸発事情を仏カップルが追うノンフィクションとは?

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『The Vanished: The Evaporated People of Japan in Stories and Photographs(原題)』

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日本の蒸発をテーマにした国際共同作品が制作決定

日本では年間約10万人もが姿を眩ましている……そんなショッキングな事実を写真と物語で語るノンフィクションが、映画化されることが発表されました。 原作を手がけたのはフランス人ジャーナリスト、それをアメリカ人映画監督が撮り、韓国の映画会社が制作するというなんともインターナショナルな話題作について、最新情報をまとめました。

原作はフランス人ジャーナリスト夫妻による写真集

映画の原作となるのはフランス人ジャーナリスト、レナ・モージェが、夫であるフォトグラファーのステファン・ラマエルとともに出版した写真集です。 2016年に出版された『The Vanished: The Evaporated People of Japan in Stories and Photographs(原題)』は、借金や失業など様々な理由により失踪した日本人の姿を、フランス人の視点追い、写真と物語に収めています。 もともと夫妻が日本における”蒸発”の文化に興味を持ったきっかけは、パリのバーである日本人夫妻の蒸発の話を小耳に挟んだからだそうです。それをきっかけに夫妻は日本に出向き、5年間にわたる取材を敢行し、蒸発そしてそれを支える裏社会ネットーワークの姿をまとめました。

メガホンを取るのは『キャロル』のフィリス・ナジー

映画化にあたり、脚本と監督を担当するのはフィリス・ナジー。ナジーはアメリカ出身で、脚本家そして劇作家として活動しています。 彼女の名前を一躍有名にしたのは2015年に公開された映画『キャロル』です。1950年代のニューヨークを舞台に、女性同士の激しい恋愛を描いた本作。カンヌ国際映画祭では3部門にノミネートされ、うち2部門を受賞しました。その他にも数々の映画賞でノミネートと受賞を果たし、非常に高く評価された作品です。 ナジーは『キャロル』では脚本を担当しています。原作者であるパトリシア・ハイスミスと親交があったナジーは、15年という長い制作期間の間真摯に作品に向き合い、素晴らしい映画を作り上げました。 本作はナジーの監督デビュー作となりますが、センセーショナルな現実だけでなく、その芯にある物語を描きだしてくれることでしょう。

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制作は韓国のCJエンタテイメント

CJエンタテイメントは、韓国の巨大企業CJグループ傘下の制作会社です。韓国発の作品に加えて、外国原作の買い付けにも積極的です。 彼らが生み出したヒット作といえば、2013年公開の『スノーピアサー』。韓国、アメリカ、フランスの3国共同制作で、監督は『殺人の追憶』や『グエムル-漢江の怪物-』で知られるポン・ジュノが務めました。国際的に評価が高かった『スノーピアサー』も、フランス発のグラフィックノベルを原作としています。 CJエンタテイメントにとって、2回目のフランス発原作となる今作。1作目を超えるヒットとなるのでしょうか。

撮影はもちろん日本で

CJエンタテイメントによると、原作本にある事実を忠実に再現するため、撮影は全て日本で行われる予定だということです。 原作にはかつて“山谷”と呼ばれた安宿が密集する地域が取り上げられています。現在ではその地名自体は使われなくなっていますが、台東区や荒川区にあるその地域で、撮影が行われる可能性は高いかもしれません。

事実とはちょっと違うけど…

原作の中では、日本で蒸発する人は毎年約10万人とされています。しかし、実際のところ2015年の警察庁の発表によると、行方不明になったのは8万2千人で、うち8万人は年内に見つかっているそうです。 このように、実際に日本で蒸発している人はそこまで多くはないのかもしれません。しかし、フランス人夫妻にとって、技術も進み社会的なネットワークも強固な日本において、人が一人いなくなってしまうという事実自体が衝撃的だったのでしょう。 本作は“蒸発”を追ったジャーナリズムというより、現代日本で自分の存在を消してしまいたくなる人間の心境を描いたフィクションとして楽しむ方がいいかもしれません。