2023年5月13日更新

実写映画『美女と野獣』の評価は?ひどいと言われている理由を分析 エマ・ワトソン版とフランス版を比較

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実写『美女と野獣』がひどいと言われている理由は?

ストーリーやキャラに共感できない

エマ・ワトソン版は1991年のアニメ映画『美女と野獣』がもとになったリメイク作品です。物語の中で街で浮いた存在のベルが変人扱いされてそのままうやむやになっている点やベルの野獣に対する心情描写が少ない点など細部のプロットが雑だったとの意見があります。 しかし原作通り誰もが楽しめるように複雑な描写を避けた結果と見れますし、最低限のアレンジで原作を再現したからこそ原作ファンの高評価につながったともいえるのではないでしょうか。

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上映時間129分もあったのにベルの心情の変化がわかりにくい……。野獣の心境変化にはたくさん時間を割いているだけにもう少しベルの細かい心理描写が欲しかった。

吹き替えやキャストが微妙

吹き替えにはミュージカル映画を意識した配役がなされました。野獣役山崎育三郎の声が意図的に低く調整されており違和感を持った方もいたようです。 ただ芸能人の声優起用で失敗する作品もある中で、実力派を揃えており「安心して見られた」「吹き替えでみて良かった」という声も多くありました。 また主演のエマ・ワトソンに関しては原作の表情豊かなベルではないといった演技への批判が少数ありましたが、大半の観客からは「ベルが美しすぎる」と絶賛のコメントが寄せられています。

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吹替版の歌い方がJPOP寄りで少し残念。野獣の声にエフェクトをかけるなら他の声優でも良かったのでは?

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ディズニーのポリコレ意識が世界観に合わない

ほかのディズニー実写作品同様『美女と野獣』でもポリコレと思わせるような設定が登場しています。 それがガストンの側近ル・フウのゲイ設定。監督が「ガストンにいつかキスしたいと思っている」と発言し裏設定が判明しました。設定変更に対して「また過剰なポリコレ意識だ」という意見が出ています。 しかし本編では『強いぞ、ガストン』で耳を触ったり、腕を回したりといった描写にとどまっており大きく世界観を崩すような設定ではありませんでした。

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アニメ版ではイエスマンだったル・フウが実写版ではガストンを諌めるような描写があり、これも設定があったからかなー、と勘ぐってしまいました。

実写版『美女と野獣』の作品プロットを解説

これまでいくつも実写版『美女と野獣』は公開されてきましたが、広く知られているのが2014年に公開されたフランス版(レア・セドゥ版)『美女と野獣』、そして2017年公開のエマ・ワトソン版(ディズニー版)『美女と野獣』です。 ここからはエマ・ワトソン版とフランス版を比較しながら、それぞれの魅力や違いを深堀りしていきます!

エマ・ワトソン版

ディズニーアニメーションの完全映像化

2017年公開の『美女と野獣』は、『シカゴ』(脚本のみ担当)や『ドリームガールズ』などの大ヒットミュージカルの映画化をしたことで知られるビル・コンドンが監督を務めました。 ディズニーアニメーション不朽の名作であるアニメ映画を完全映像化し、その壮大で華麗な世界観と、『リトル・マーメイド』や『アラジン』でも知られる、巨匠アラン・メンケンによる鮮やかな音楽で多くのディズニーファンの心を掴みました。 特に音楽は、アニメ版でアカデミー賞・グラミー賞・ゴールデングローブ賞を総なめにしたミュージカルナンバーを、さらに華やかさや深みを感じさせる極上の仕上がりに作り上げており、圧巻でした。 ストーリーは1991年公開のアニメ映画と大筋は変わりませんが、野獣に変わる前の王子のシーンが描かれたり、家具に姿を変えられた使用人について深掘りされるなど、いくつかの変更点がありました。

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フランス版

とにかく原作を忠実に再現

『美女と野獣』は、元をたどれば1740年にフランスのヴィルヌーブ夫人により執筆された物語が最初だといわれています。 今まで絵本やアニメーション、映画、ミュージカルと様々な形で描かれてきた本作ですが、フランス版でクリストフ・ガンズ監督はそのどれにもほとんど描かれてこなかったエピソードを描くことに挑戦しました。

ベルのキャスティングと演出方法

エマ・ワトソン版

2017年版のベルは、エマ・ワトソン本人の人格が反映された設定でとにかく知的!

「ハリー・ポッター」シリーズのハーマイオニー役で世界を魅了したエマ・ワトソンは、聡明で強い意志を持った、美しい女性へと成長しました。 女優業で忙しい中でも、国連の組織である〈UN Woman〉では親善大使を務め、今では世界中の女性の憧れの的であり、カリスマ的存在です。 2017年に公開された『美女と野獣』のベルはそんなエマ・ワトソンそのもの。彼女は、おとぎ話の住人でいることをやめ、現実を受け止めてたくましく生きる女性を演じ、現代を生きる女性たちにエールを贈りました。 町の英雄であり、町一番のモテ男であるガストンからの求婚を何度もこっぴどく振るシーンや、野獣の城内で本に囲まれる生活を楽しんで送るシーンは印象的です。

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フランス版

レア・セドゥ演じるベルは、少女と大人の女が共存する存在

フランス・パリ出身のレア・セドゥは、『美しいひと』と『美しき棘』で2度セザール賞の有望新人女優賞にノミネートされた経験があります。 そして『アデル、ブルーは熱い色』では、カンヌ国際映画祭の最高賞に位置し、基本的に監督に贈られる賞であるパルム・ドールを、女優として受賞するという史上初の快挙を成し遂げました。 『美女と野獣』では、夕食を囲みながら野獣を早口で問い詰めたり、城内に隠れる犬達をこっそり見ようと絨毯の裏に隠れたりするなど、幼い子供のような表情がところどころで見られます。 しかし、野獣とダンスをするシーンや氷河の上で野獣に追い詰められたシーンでは、対照的な色っぽい大人の表情を見せていました。レア・セドゥは、少女のように可愛らしい一面と、色っぽい大人な女性の一面の両方をあわせ持つ、まさに魔性の女という肩書きがぴったりなベルを演じています。

野獣はどう描かれた?

エマ・ワトソン版

野獣は超繊細で賢明な男(演:ダン・スティーヴンス)

エマ・ワトソン版でダン・スティーヴンスが演じる野獣は、超がつくほど繊細! ベルが読み聞かせをしながら一緒に散歩をするシーンでは「今までと景色が違って見える」と優しくベルに呟いたり、ベルに馬のなで方を教えてもらったりと、優しく繊細なシーンが多く描かれています。 また、ベルの幼少期のパリへタイムスリップした際には、ベルの父親を盗っ人呼ばわりしたことを謝るなど、出会った頃の姿からは想像できないほど素直な一面も! 書斎でベルに対してジョークを言ったり、本に囲まれながら幸せそうにベルと過ごすシーンからは、知性を感じることができます。

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フランス版

野獣は獰猛で愛に貪欲な王子(演:ヴァンサン・カッセル)

野獣が森の神に呪いをかけられる前の王子だった頃は、狩りに出かけて家を留守にすることも多く、狙った獲物は雌鹿であれ女性であれ何としても自分のものにしたがるような男性でした。 野獣の姿となってしまってからは野生の動物が主食となり、彼は中身までも完全に野獣になってしまったのではないかと苦悩します。野獣がベルに食事をする姿を見せないのは、自分が殺したばかりの動物に食いつく姿を見せたくないという思いからなのです。 また、野獣は夕食以外ほとんどベルと顔を合わせることがありませんが、出会ったその時から愛情ダダ漏れ。彼は何しろ、長い間女性に愛されることなく過ごしてきました。 切望していた女性が目の前に現れたため、過ごす時間など関係なく恋愛対象として見てしまうのでしょう。ベルの愛情を手に入れたいがために彼女の言うことは何でも聞きます。

実は野獣化した理由も違う

エマ・ワトソン版

ミュージカル調で描かれる「真実の愛」がテーマ

エマ・ワトソン版『美女と野獣』は、1991年公開のアニメ版で使用された全てのミュージカル・ナンバーを起用し、世界観を崩すことなく忠実に実写化されました。 本作では野獣になった原因を、困っている老女を「美しくないから」という理由で見捨てた、わがままな王子に対する魔女の報復として描いています。 薔薇は野獣にとって、王子が野獣から人間へと永遠に戻れなくなってしまうまでのタイムリミットを表しており、ベルにとっては母親の思い出の象徴として描かれています。 フランス版では、ベルと野獣が直接顔を合わせることがほぼない中でラブストーリーが進んでいくのに対して、エマ・ワトソン版では、彼らが「真実の愛」で結ばれるまでの過程を細かく描いているのも大きな違いです。

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フランス版

「運命的な愛」は神話がルーツ

先にアニメ版やエマ・ワトソン版の『美女と野獣』を観てからフランス版を観た人は、何もかも違いすぎてびっくりしたのではないでしょうか? 本作で初めて触れられたベルの父や姉ふたりの性格、そして王子が呪いをかけられた理由については、もともとヴィルヌーヴ夫人の原作でも描かれていました。それらはギリシャ神話やローマ神話からヒントを得たもの。 愛を知るために人間界で生活をしている森の妖精を王子は愛し、彼女から「愛しているなら一緒にいてほしい、もう狩に夢中になって私をひとりぼっちにしないでほしい。」と言われその通り約束をします。 しかしその女性が人間ではなく雌鹿の姿でいるときに、交わした約束を破り雌鹿を矢で射て殺してしまいます。結果的にそれは森の妖精を殺したということであり、彼女の父である森の神は激怒し、王子が2度と愛される事がないよう醜い野獣の姿になる呪いを王子にかけるのです。 アニメ版やエマ・ワトソン版でみられるミュージカル要素は皆無で、ベルと野獣が仲を深めていく途中経過は描かれることがなく、神話ならではの「運命的な愛」が描かれています。

ビジュアルの違いも大きなポイント

エマ・ワトソン版

まるで城が生きているよう!

ベルと野獣のダンスシーンでは、ふたりだけの空間を数え切れないほどのシャンデリアとキャンドル、音楽がロマンティックに盛り上げます。 ベルのドレスは、ウエスト部分から裾にかけて柔らかく広がる、動きが綺麗に見える作りになっていて、アニメ版に匹敵する美しさを実現しています。

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フランス版

伝統的なフランスの美

フランス版『美女と野獣』の撮影が行われたのは、ドイツのポツダムにあるバーベルスベルク・スタジオ。サイレント映画時代から創業を開始したこのスタジオは、『メトロポリス』や『戦場のピアニスト』、『グランド・ブダペスト・ホテル』など、数々の名作が撮影されてきました。 城全体の様式はゴシックとルネサンスの間で、複雑な装飾やひねった柱、縄、アラベスクなどであふれており、そこに王子の野蛮なイメージを加えるためにスコットランドのロスリン・チャペル風の柱が建てられています。またベルの部屋だけは優美なルネサンス様式で作られているというのもポイントです! 野獣からベルに贈られるドレスは監督のこだわりで、シーンや映像に沿って決められていました。監督が日本風のデザインを特に好んだことから、折り紙からのインスピレーションを、袖やラインストーン、刺繍に取り入れています。

名作『美女と野獣』映像化の歴史

映画『美女と野獣』(1946年)

本作は1757年に発表されたおとぎ話のアンソロジーの中に収録されていた作品です。 野獣につかまり死刑になりそうになった父を助けるため、野獣と共に過ごすことになった美女・ベルが主人公。一緒に過ごす中で、ベルがだんだんと野獣に惹かれていきます。 この1946年公開の実写映画は、フランスの詩人であるジャン・コクトーが監督を務めました。当時の映画スターだったジョゼット・デイやジャン・マレーが出演しています。

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ドラマ『フェアリーテール・シアター』(1984年)

1982年から1987年まで、アメリカで放映されたオムニバスドラマシリーズです。それぞれおとぎ話をモチーフにしたエピソードが製作されています。 各エピソードにゲスト俳優が多く出演してるほか、フランシス・フォード・コッポラやロジェ・ヴァディムといった著名な監督が参加。また、まだ有名になる前のティム・バートンも監督として参加していました。 『美女と野獣』は第3シリーズの6話目のテーマとなっています。監督はロジェ・ヴァディム、主演は『ロッキー・ホラー・ショー』で知られるスーザン・サランドンです。

ドラマ『美女と野獣』(1987年)

1987年~1990年に、アメリカではテレビドラマ版が製作・放送されています。 おとぎ話をモチーフにしつつ、舞台をニューヨークに移した作品です。 ニューヨーク・マンハッタンを舞台に、静かに暮らしていた野獣のような見た目の男性・ヴィンセントと、弁護士のキャサリンが恋に落ちる様子を描いた恋愛ドラマです。 キャサリン役は映画「ターミネーター」シリーズで知られるリンダ・ハミルトンが、ヴィンセント役は『ヘルボーイ』のロン・パールマンが演じていました。

アニメ映画『美女と野獣』(1991年)

『美女と野獣』が多くの人に知られるきっかけとなった、ディズニー製作の長編アニメ映画。 アニメ映画としては、アカデミー賞作品賞にノミネートした史上初の映画で、作曲賞と歌曲賞も受賞しています。本作のあらすじは原作となっているおとぎ話とは異なり、フェミニズムの思想が反映されています。 おとぎ話では、ベルが苦難を乗り越えて成長する存在として描かれました。見た目ではなく中身の大切さに気づくのです。しかし、アニメ映画では野獣が成長する存在として描かれています。自らの野蛮さを見直し、近くにいる女性・ベルを尊重して、人を愛することを学んでいくのです。

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映画『美女&野獣』(2009年)

2009年に製作されたオーストラリア映画は原作をベースに、ストーリーをアクションファンタジーに変更しています。魔女と知らず恋をした女性に、野獣の姿に変えられてしまった王子。彼はベルという女性と出会い、彼女とともに魔女に立ち向かっていきます。 本作でベルを務めたのは、カナダ出身のモデル・女優で、シンクロの選手でもあったエステラ・ウォーレン。野獣はヴィクター・パラスコスが演じました。

映画『美女と野獣』(2014年)

2014年に公開されたのは、フランス・ドイツの合作で製作されたファンタジー映画。本作は、原作のおとぎ話では明かされなかった、「なぜ王子は野獣になってしまったのか」という、野獣の過去を掘り下げたストーリーです。 監督はクリストフ・ガンズ。ヒロインのベルは、フランス出身の実力派女優、レア・セドゥが演じました。

映画『美女と野獣』(2017年)

2017年に公開された、エマ・ワトソン主演のディズニー実写映画。本作は1991年に公開されたアニメ映画のストーリーに沿って実写化されました。 映画は大ヒットを記録し2017年に公開された映画の中で、日本国内では第1位を記録。全世界の興行収入ランキングでも、公開当時は10位にランクインするなど世界的に話題になりました。

実写映画『美女と野獣』はひどい?ルーツを知って理解を深めよう

エマ・ワトソン版『美女と野獣』が「ひどい」と言われている理由は主に「ストーリー」「吹き替え・キャスト」「ポリコレ」に対する意見でした。ただし反対意見は少数派で多くの観客が長年待ち続けた『美女と野獣』そして「ベル」の実写化を称賛しています。 『美女と野獣』のルーツを頭に入れてもう一度実写版を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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