リーアム・ニーソン主演映画『スノー・ロワイヤル』の癖が凄すぎて限界
復讐×リーアム・ニーソンの映画『スノー・ロワイヤル』
2019年6月7日公開の映画『スノー・ロワイヤル』はリーアム・ニーソン主演の復讐劇です。大切な息子を殺された除雪作業員が麻薬組織に単独で立ち向かいます……。 と、説明すればリーアム・ニーソン好きの全人類は「あーハイハイ」とニヤニヤします。あの最高の『96時間』的な映画ね。実は除雪作業員と言いながら、元CIA捜査官なんでしょ?リーアム・ニーソンによる超高速のキレキレなアクションが拝めるんでしょう?と。 はい、残念でした!復讐×リーアム・ニーソンから想像できるあらゆる展開が見事に裏切られます。リーアム・ニーソンは本当に除雪作業員なだけです。実はCIAの捜査官……とかではありません。ちょっとマッチョなくらい。つまりリーアム・ニーソンという配役そのものが大きなミスリードと言えます。一筋縄ではいかない、癖の凄すぎる映画なのです。 この記事では映画『スノー・ロワイヤル』の魅力を余すところなくご紹介します。
映画『スノー・ロワイヤル』のあらすじ
舞台は雪の町アメリカ・キーホー。ネルズ・コックスマンは真面目な働きぶりが評価され、模範市民賞を受賞した。事件はその直後に起こる。愛する息子が麻薬組織によって殺されてしまうのだ。自業自得だ、と捜査に前向きでない警察を見るや、息子の復讐のため自ら麻薬組織に正義の鉄槌を下しに向かう。 ネルズによって次々と組織の人間が消されていく事態に、麻薬王バイキングが怒り狂う。しかしバイキングは報復の対象を勘違いし、その矛先をホワイトブルを首領とするネイティブ・アメリカンの麻薬組織へ向ける。ネルズがたった一人で始めた復讐の規模は徐々に拡大。地元の警察を交えて、復讐は最終決戦へ……。 あらすじを書けば書くほどリュック・ベッソンの映画みたいになってきました。しかしこのあらすじから得られる印象は、鑑賞後に180度変わっています。
笑っていいの…?そう、この映画はコメディ要素満載
あらすじからも分かるように、本作は血で血を洗う復讐劇。当然ながら登場人物たちの顔は基本的にシリアスです。リーアム・ニーソンもいつもの険しい顔をしています。しかし本作は随所にコメディの要素が見て取れます。辛いカレーにチョコレートを2片……程度の隠し味ではありません。同量です。カレーと同量のチョコレートが入っています。 印象的なワンシーンを紹介します。 リーアム・ニーソン演じるネルズが麻薬組織の人間をボコボコにし、車から引きずり出した頃にはネルズの行きは絶え絶え。肩で息をするネルズに、「疲れたのか?」と組織の人間に心配される始末。返答もできないネルズに、組織の人間は大笑い。つられてネルズも大笑い。ボロボロのおじさん二人が寝転がって大爆笑なのです。 このシーンにおける鮮やかな幕引きも含めて、明らかにコメディと言えます。笑えるシーンはこればかりではありません。『スノー・ロワイヤル』は時に不謹慎な笑いも混ざった、コメディ映画としての側面も持ち合わせています。
漫才的な笑いの図式
『スノー・ロワイヤル』の笑えるポイントをよく観察すると、あることに気づきました。多くのシーンが漫才のようなのです。個性的なキャラクターの二人が、カメラ(観客)の方を向いて掛け合いをしているシーンが散見されます。特に車に乗り込んだ二人組が、進行方向に体を向けて会話する場面は繰り返し描かれます。 二人組は様々な組み合わせで成立します。先に紹介した「殺すミルズと殺される組織の人間」という組み合わせもそうですし、「組織の手下二人組」や「警察官二人組」、そして「兄弟」や「親子」もコンビとしてユーモアに溢れた会話を展開させます。 さらにこの二人組の会話はシリアスな物語の展開に意味をもたらしていないことも多いのです。笑いを足すために挿入されているようにも見える。映画『スノー・ロワイヤル』は「タランティーノが『96時間』を撮ったらこうなる」と評されています。映画に無駄な会話を挿入することで知られているクエンティン・タランティーノ監督を連想する人が多いのは、漫才的な笑いの図式を取り入れたコミカルなシーンによるものだと思います。
復讐と笑い。映画が達成した絶妙のバランス
復讐は「復讐する者とされる者」という二組の対立関係によって成り立ちます。マクロな視点では「バイキング率いる移民の麻薬組織とホワイトブル率いるネイティブ・アメリカンの麻薬組織」のような民族間の対立であり、ミクロな視点では家族間の対立も存在する。映画『スノー・ロワイヤル』はこれらの対立関係一笑に付し、非常に冷静な眼差しを向けています。そのために笑いがエッセンスとして込められているのです。 信じられないくらいのチョコレートが入っているにも関わらずカレーとしての味わいは一層増している、そのような信じられないバランスがこの映画では達成されています。
『スノー・ロワイヤル』キャストの癖が凄め
主演のリーアム・ニーソンは良い意味で「いつもの感じ」
映画『スノー・ロワイヤル』で主人公ネルズを演じるのはリーアム・ニーソン。『シンドラーのリスト』(1993)や『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999)などで着実にキャリアを重ね、『96時間』(2008)で大ブレイク。「最強のパパ」として活躍をアクションへと拡大した人気俳優です。 映画『スノー・ロワイヤル』はコメディな要素が含まれているとは言え、リーアム・ニーソン演じるネルズがそのような表情を見せるようなことはありません。あくまでいつものリーアム・ニーソン。リーアム・ニーソン本人も演出も、『96時間』以降のリーアム・ニーソン像を堅持しているように感じます。これまで数々の復讐を達成してきたリーアム・ニーソンがバカバカしい復讐劇に巻き込まれるので面白い。リーアム・ニーソン好きであればあるほど楽しめると思います。
脇を固めるキャストにも注目
主人公ネルズの妻を演じるのはローラ・ダーン。2度もアカデミー賞にノミネートされた演技派女優です。『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の出演は記憶に新しいのではないでしょうか? さらに麻薬王バイキングを演じるのはトム・ベイトマン。『オリエント急行殺人事件』(2017)で抜群の存在感を発揮した若手注目株です。 ネイティブ・アメリカンの麻薬組織ボスを演じるトム・ジャクソン、どこか復讐劇を喜んでいるようにも見える巡査を演じるエミー・ロッサム、バイキングの元妻を演じるジュリア・ジョーンズなど注目俳優も多数出演しています。
実はリメイク?オリジナル版との比較
映画『スノー・ロワイヤル』はリメイク映画です。オリジナルとなるのは『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』。監督は『スノー・ロワイヤル』と同じくハンス・ペテル・モランドが担当しています。オリジナル版の主演はステラン・スカルスガルド。映画『マイティー・ソー』で物理学者を演じた俳優です。 『スノー・ロワイヤル』とオリジナル版は非常に似ています。舞台や設定は一部変更されていますが、展開はほぼ一緒。しかし両方観た人にしかわからない仕掛けも設けられています。ぜひどちらもご鑑賞ください。 ところで『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』の主人公の名前はニルス・ディックマン。対して『スノー・ロワイヤル』の主人公の名前はネルソン・コックスマン。ディックとコック。やれやれです。よくわからない方はインターネットで調べてみましょう。
癖凄映画『スノー・ロワイヤル』でリーアムを拝もう!
映画『スノー・ロワイヤル』リーアム・ニーソンの復讐映画、を期待して劇場へ向かった方が面食らうのではないかと思われるほど癖が凄すぎる映画です。ただしそのストーリーラインは超一級。絶妙なバランスでシリアスとコメディが両立しています。 映画『スノー・ロワイヤル』は2019年6月7日公開です。ぜひ劇場でご覧ください。