2019年11月23日更新

『キングダム』汗明(かんめい)を徹底解説!蒙武との一騎打ちや史実の中での人物像は?

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キングダム 41巻

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大国・楚が誇る「至強」の将軍『キングダム』汗明(かんめい)を徹底解説!

汗明(かんめい)は秦国と敵対する楚国の武将です。楚国の大将軍であり、大柄な体格と圧倒的な武力から「楚の巨人」の異名を持ちます。 原作漫画では25巻からの「合従軍編」で楚軍の総大将として初登場。初陣から無敗という驚異の経歴の持ち主であり、「超越者」として「自分を強者だと勘違いしている敵」を戒めるために正面から叩き潰すことを自らの使命としています。 彼の最も印象深いシーンは29巻での秦の将軍・蒙武(もうぶ)との一騎打ちでしょう。2人の男が「至強」を決めるために真っ向勝負を繰り広げるという非常に熱い戦いです。 「中華最強」を自負する武将の中でも、一際印象に残る「至強」の称号を名乗るに相応しい真っ直ぐで豪快な存在が汗明なのです。

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楚軍の総大将・汗明の合従軍編での活躍!

合従軍における楚軍

「合従軍編」は、趙・魏・楚・燕・韓・斉の6ヶ国が秦を滅ぼすために同時侵攻を仕掛けてくるというストーリーであり、汗明は楚軍の総大将として登場します。 趙の「三大天」の一角・李牧(りぼく)の画策によって結成された合従軍ですが、その総大将に推挙されたのは楚の宰相・春申君(しゅんしんくん)でした。 合従軍の5ヶ国(斉は早々に離脱)は秦の全軍が集う函谷関へと侵攻し、合従軍でも最大規模の軍を率いる楚は函谷関の戦いの中核として、その圧倒的な軍事力で何度も秦を追い詰めます。

「楚の巨人」汗明

合従軍総大将となった春申君が絶大な信頼を寄せていた武将こそが楚軍の総大将・汗明です。 汗明は天性の巨体と圧倒的な戦いによって敵を正面から討ち取り続けた猛将であり、自らを中華最強の存在「至強」と定めています。 そんな彼の「自分を強者だと勘違いしている敵」を真っ向勝負で叩き潰す姿は広く伝わっており、他国からは「楚の巨人」という異名で呼ばれ怖れられています。 かつて秦の六大将軍・王齕(おうこつ)をも一撃で撃退したという汗明は「楚の巨人」が戦場にいるだけで敵国の兵士達は怖気づくとされる、合従軍側の開戦の合図を任せられるなど非常に存在感の強い人物です。

戦場に響き渡るドドンドドンドン!蒙武(もうぶ)との一騎打ちを解説

「至強」を決める力と力のぶつかり合い

汗明が本格的に秦と相対するのは函谷関の終盤に起きた蒙武(もうぶ)軍との戦いであり、圧倒的な戦力差で追い詰められた蒙武は決死の本陣突撃を行い、汗明と対峙することになります。 対峙した2人は戦の命運と自らの誇り、そして「中華最強」の座をかけて一騎打ちを行います。この時、「ドドンドドンドン」という太鼓の音で汗明を鼓舞する部下達の姿が強く印象に残った人も多いでしょう。 一騎打ちは汗明の圧倒的有利な状況から始まりますが、中盤からは両者一歩も譲らない純粋な個人の武力による男の戦いへと転じていきます。しかし、戦いの佳境で蒙武の息子である蒙恬(もうてん)が誤って割って入ってしまい、誇りある戦いを汚され激怒した汗明は彼を切り伏せます。 しかし目の前で息子を斬られた蒙武はより一層奮起。痛烈な一撃を汗明に喰らわせてボロボロになりながらも汗明を討ち取り、その勢いのまま合従軍の撃退に成功したのです。

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一騎打ちの裏で行われた、もう一つの戦い

汗明と蒙武の一騎打ちを邪魔した形になった蒙恬ですが、彼は決して2人の誇りを汚すつもりはなく、むしろ2人の戦いを守るために動いていました。 実は一騎打ちが行われている時、楚の将軍・媧燐(かりん)がその隙をついて蒙武軍の背後から迫っており、それを食い止めようとしたのが蒙恬だったのです。 媧燐は誇りを重視する楚の人間としては珍しく、勝利のためには手段を選ばない狡猾な性格をしており、春申君(しゅんしんくん)からも「性格に難あれど優秀」と評される女将軍です。 仮に彼女の暗躍が成功していれば2人の一騎打ちは最悪の形で決着していたと考えると、勘違いこそされましたが蒙恬は2人の誇りある戦いを守りきったのだと言えます。

史実における汗明

史実の汗明は一切戦ったことのない弁舌家!?

史実における汗明ですが、漫画とは全く違う人物像です。漫画版の汗明はもはやオリジナルキャラクターと言ってよいでしょう。 史実の汗明は『戦国策』の「楚策」で登場する遊説家(ゆうぜいか)です。遊説家とは自らの政策を諸侯に提案する、戦いとは無縁の職業です。 汗明は楚の宰相・春申君(しゅんしんくん)に取り入るために弁舌を駆使して何度も謁見を申し入れます。その際に自らを「塩車(えんしゃ)を引く駿馬(しゅんめ)」と例え、才能を活かせずにくすぶっている自分の登用を迫った逸話が残されています。 この逸話から「才ある人間が世に出ないこと」を意味する故事成語「塩車の憾み(うらみ)」が産まれました。 このように史実の汗明は武将ではなく遊説家であり、これ以外の記録も残っていない戦いとは全く無縁の人物です。この人物像から「至強」汗明が考え出されたのだと思うと、作者の想像力の豊かさに感心させられます。

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汗明の圧倒的名言!

「そんな手をうったが為に滅亡するとは自業自得だな」

「そんな手をうったが為に滅亡するとは自業自得だな」というセリフは、25巻収録の第270話「函谷関集結」にて汗明が言ったものです。 合従軍は秦を滅亡させるために趙の「三大天」李牧(りぼく)が企てた一計ですが、その理由は他でもない李牧自身が秦に持ちかけた「秦趙同盟」にありました。 同盟を結んだ秦は魏の要所・山陽の攻略を行います。この「山陽攻略」こそ、当事者達ですら気付かなかった秦の中華統一を実現させる大きな一歩であり、その真意を唯一見抜いた李牧は6ヶ国による合従軍で秦を滅ぼすために動いたのです。 中華を詰ませる一手を人知れず打っていた秦ですが、その真意を読み取れた敵がいたために滅ぼされようとしていました。正に「出る杭は打たれる」、秦の置かれた状況を汗明は「自業自得」だと評したのです。 『キングダム』のゴールとも言える「秦による中華統一」が実現することを知っているのは未来に生きる私達だけであり、中国戦国時代の人々が当時の秦をどのような目で見ていたのかを象徴する言葉なのです。

「その武器に剣ではさすがに刃が欠けそうだ。十年ぶりだぞ、俺に大錘を持たせる者はな」

「その武器に剣ではさすがに刃が欠けそうだ。十年ぶりだぞ、俺に大錘を持たせる者はな」というセリフは、29巻収録の第311話「明かされる戦歴」にて汗明が言ったものです。 「超越者」たる汗明にとっては、己の眼前まで迫った蒙武(もうぶ)もまた「自分を強者だと勘違いしている敵」でしかなく、彼を文字通り叩き潰すため汗明は大錘を手にします。 極めて傲慢な考えですが、汗明にはそれを正当化できるほどの実績と誇りがあり、それ故に蒙武との一騎打ちの結末は「合従軍編」そのものの決着につながるものでした。 また、一騎打ちの終盤で汗明は大錘を蒙武に破壊されて剣に持ち替えており、蒙武は汗明の剣を実際に叩き折る錘の一撃を喰らわせて勝利を収めます。 元々は絶対的強者故の傲慢な一言として受け止められているセリフでしたが、一騎打ちの結末の伏線にもなっていた言葉だったのです。

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『キングダム』「楚の巨人」汗明をご紹介しました!

今回紹介してきたように、『キングダム』の汗明は史実とは全く異なる人物像のキャラクターとして描かれています。しかし、漫画の汗明は「合従軍編」の終盤における最大最強の敵として描かれており、大変魅力的な武将の一人です。 史実とは全くの別物といってもいいほどのキャラ設定がされた汗明ですが、彼の強烈な存在あってこそ蒙武との一騎打ちが大変熱い展開になったのは間違いありません。漫画ならではキャラクタライズが見事に嵌った一例でしょう。