2020年7月17日更新

【ネタバレ注意】映画『劇場』を原作と比較解説 実写版ならではの仕掛けとは?

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『劇場』山﨑賢人、松岡茉優
©2020「劇場」製作委員会

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『劇場』が映画化!メインキャストに山﨑賢人・松岡茉優を迎え未熟な男女の恋愛を描く

又吉直樹の小説『劇場』の映画版が2020年7月17日に公開されました。 主演に山﨑賢人、ヒロインには松岡茉優と、若手注目株の2人が初タッグ!さらに、監督を務めるのは『世界の中心で、愛をさけぶ』などで知られるラブストーリーの名手・行定勲です。 『劇場』は、人間としてはダメなところの多い主人公たちが繰り広げる、男女の恋愛を描いた作品。 今回は、そんな本作のあらすじやキャスト、ネタバレ解説からトリビアまで紹介します。

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『劇場』のあらすじは? 未成熟な男女の一生忘れられない恋

ここでは、原作『劇場』のあらすじを紹介します。 主人公の永田(山﨑賢人)は高校からの友人と立ち上げた劇団「おろか」で脚本家兼演出家を担っていました。しかし、前衛的な作風は上演ごとに酷評され、永田はバイトをしながらギリギリで生活していました。 そんなある日、永田は街で見かけた沙希(松岡茉優)に「靴が同じ」だと声をかけます。突然の出来事に沙希は戸惑いますが、様子がおかしい永田が放っておけなく一緒に喫茶店に入ることに。話をすると沙希は、女優になる夢を抱き上京し、服飾の大学に通っている学生でした。 お金のない永田は沙希の部屋に転がり込み、2人は一緒に住み始めます。沙希は自分の夢を重ねるように永田を応援し続け、永田は自分を理解してくれ支えてくれる沙希を大切に思いつつも、理想と現実と間を埋めるようにますます演劇に没頭していくのですが……。 劇作家を目指す主人公永田と、彼に恋をし必死に支えようとする沙希の、生涯忘れることができない7年間の恋を描いた作品です。

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『劇場』の魅力解説!映画ならではの仕掛けとは【ネタバレ注意】

映画版ならではの魅力

映画版ならではの最大の魅力は、やはり俳優陣の演技です。山﨑賢人は、永田が表現者としてもがきつづける姿を見事に演じています。永田の内面が浮き彫りになるようなその演技は、観る者にはときにいらだちを感じさせますが、そのぶんリアリティがあるのではないでしょうか。 松岡茉優も、沙希という女性の変化を演じきっています。明るく快活な性格で、永田のわがままも受け入れてくれる彼女。こちらは逆に内面まで深くは掘り下げられないぶん、底知れない包容力をかんじさせます。 また、小劇場系の演劇に親しみのある人にとって楽しいのは、本作への有名演劇人のカメオ出演。

ケラリーノ・サンドロヴィッチや吹越満、白石和彌、笠井信輔、萩尾瞳が本人役で登場しています。

原作とは違うラストシーンの仕掛け

ストーリーとしては原作と映画に大きな違いはありませんが、映画版のラストシーンにはサプライズが用意されています。

地元の青森で就職し、東京のアパートを引き払うことを決意した沙希。永田も荷造りを手伝っていると、彼女が出演した舞台の台本が出てきます。懐かしさから一緒にセリフを読み合っていると、永田は台本には書かれていないことを口にし、沙希に謝罪。それを聞いた彼女は泣き出してしまい、永田は懸命に彼女をなだめようとします。 ここまでは原作と同じです。 しかし映画版ではその後、沙希の部屋の壁が倒れ、そこが舞台の上に。別れから数年後、永田は沙希との思い出を芝居にして上演したのでした。そして、それを客席から観ていた沙希は涙を流します。

原作のあらすじを結末まで紹介、2人の恋の行方は――

『劇場』山﨑賢人、松岡茉優
©2020「劇場」製作委員会

ここからは原作のその後のネタバレを紹介します。永田と沙希はどうなってしまうのでしょうか。

沙希は専門学校を卒業し、昼間は洋服屋、夜は居酒屋で働くようになります。一方で少しばかりの収入があっても自分のものばかり買い、生活費を収めない永田。それでも沙希が彼を責めることはありませんでした。 そんな沙希を見かねて、元「おろか」劇団員の青山はヒモ同然の永田を諭します。永田は安アパートを借りて執筆活動を行うようになりますが、毎夜酔っては沙希の部屋を訪れ、彼女に寄り添って寝る日々。 次第に束縛めいた言動を取り始める永田は、青山や野原とも沙希のことで衝突します。 そして働きづめだった沙希は体調を崩し、青森の実家で療養することに。思い出を残しておくために、アパートは永田が家賃を払ってそのままにするのでした。 やがて沙希が地元で就職することが決まり、アパートを引き払うために東京を訪れました。思い出の部屋で2人は、永田が脚本を書き、沙希が出演した舞台、『その日』の台本を互いに演じます。 次第に台本にないセリフを言い始め、沙希に謝罪する永田。沙希はそんな永田に対して「会えてよかった」とお礼を言います。 永田は「演劇できることは現実でもできる」と言って、2人には訪れることのない楽しい日々を語り出し、それを聞いた沙希は泣き出しました。 泣いてしまった沙希に向かって、永田は演劇で使った猿のお面を付けておどけてみせます。何度もしつこく繰り返していると、観念したかのように、沙希は泣きながら笑うのでした。

映画『劇場』のトリビアを紹介【監督がキャラクターに命名!】

原作にはなかった登場人物の下の名前

永田をはじめ多くの登場人物は、原作では下の名前が明かされていません。しかし、特に永田と小峰については、演出家として公演ポスターなどに名前を載せる必要があったため、映画版で独自に名前がつけられました。 永田の下の名前は「X(エックス)」。「わからない」という意味で監督の行定勲が命名し、原作者である又吉直樹も「☓(バツ)みたいでいいですね」と承諾したそうです。 また、小峰の名前は「大」と書いて「マサル」ですが、周囲からは「大(ダイ)ちゃん」と呼ばれています。彼が主宰する劇団「まだ死んでないよ」の名前は、「ダイ=DIE(死)」から取られた設定になっているのです。

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山﨑賢人と松岡茉優、それぞれの役づくり

永田を演じるにあたって、カメラの回っていないところでも役に没頭していたという山﨑賢人。自身のヒゲを伸ばし、撮影中は笑うことも少なく、地面に座ったりと、永田らしい行動を心がけていたようです。 一方の松岡茉優は、脚本を徹底的に読み込み、自分なりの沙希を細かく創り上げてから撮影に臨んでいたとか。沙希の前髪を触るクセは行定監督に「彼女(松岡)自身のクセかと思った」と言わせるほど自然です。また、あるシーンの撮影では「明らかに控え室で泣いてきたような、腫れ上がった目をしていて、一瞬、別人かと思った」とも語っています。

セットへのこだわり【精巧すぎる!設定が細かすぎる!】

本作のロケ地は、原作の舞台となっている下北沢にこだわって撮影が行われました。しかし、一部のシーンはスタジオに組まれたセットで撮影されています。 沙希の部屋のセットは、物語の設定や展開に合わせて細かな調整がされています。ロケで撮影したアパートの外観から部屋の中の様子を計算し、なんと窓の外に見える電柱も再現しました。 インテリアは、上京して懸命に生きる彼女を表現するために、おしゃれすぎないように考えられたとか。また、永田と一緒に暮らしはじめ彼の荷物が増えていく様子や、2人の関係が変わっていくにしたがって部屋の雰囲気も変わるなど、こだわりが感じられます。 一方、「一番安全な場所」であるソファの位置は変わっていないなど、沙希の想いを表現する工夫もしたそうです。 また驚くことに、永田たちが公演をする小劇場の内部はほとんどセットなのだとか。劇中に登場するOFF・OFFシアター、小劇場楽園、駅前劇場では、毎日公演があるため撮影で借りることは困難でした。 そこですべての劇場を採寸して、スタジオにセットを組むことに。このセットは、傾斜から配電盤まで本物そっくりに作られ、撮影現場を訪れた演劇関係者からも驚きの声があがったそうです。

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山﨑賢人が主人公の永田を演じる

表現者として夢を追う主人公・永田を演じるのは、山﨑賢人です。山崎は、1994年9月7日生まれの俳優。中学3年の時にスカウトされたことがキッカケで、モデルとしての活動を開始。2010年ドラマ『熱海の捜査官』で俳優デビューしました。 彼は、人気漫画作品の実写化作品に多く出演することで知られています。2014年映画『L・DK』や2017年公開の映画『一週間フレンズ。』、2017年映画『斉木楠雄のΨ難』などでは主演を果たしており、まるで漫画から飛び出してきたキャラクターかのように端正な顔立ちが人気の理由の一つです。 2019年映画『キングダム』では、泥臭く猛々しい主人公を見事に演じ切り、近年はルックスだけでなく演技力も評価されています。 山﨑は今回の映画化に関して「人としてダメな部分ばかりでも、表現者としてとても共感できる弱さを見せる永田をすごく魅力的だと感じた。撮影では、今しか出せない自分のものを全部出せているのではないかと感じている。」とコメント。 場面写真ではヒゲを生やした姿が見られ、山﨑にとって、これまでにはなかった役柄になりそうですね。めきめきと実力を付けつつある彼が、どのように“ダメな”主人公を演じるのか、期待です。

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松岡茉優がヒロイン沙希を演じる

街で出会った永田と恋仲に発展していくヒロイン・沙希を演じたのは松岡茉優。松岡は、1995年2月16日生まれの女優です。2008年にテレビ東京の人気番組「おはスタ」に出演し本格的な芸能界デビューを果たすと、2013年朝ドラ「あまちゃん」で一躍話題の人となりました。 さらに、東京国際映画祭で観客賞を受賞した2017年映画『勝手にふるえてろ』で主演を務めたり、カンヌ国際映画祭で最高賞を受賞した2018年映画『万引き家族』に出演したりと、話題作にも恵まれている実力派女優です。 松岡は今回の映画化に際して、「同い年の山﨑賢人君とは、直接一緒にお芝居するのは初めて。永田と沙希について、撮影中何度も 2 人で話し合いました。原作はとても繊細な本で、私たちの演じ方が変わってしまうと、話の到着すら変わってしまいそうで。しかし行定勲監督が、若い私たちを導いてくれました。」とコメントしています。 意外にも山﨑とは初タッグの松岡。ともに実力派としてスターへの道を駆け上る2人の共演は、どんな化学反応を起こしてくれるのでしょうか。

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King Gnuの井口理が出演 その他キャスト・登場人物を紹介

野原役/寛一郎

永田の中学からの友人で、一緒に上京した野原を演じるのは寛一郎。俳優・佐藤浩市の息子である寛一郎は、2018年に公開された映画『菊とギロチン』で様々な俳優賞を受賞しています。

青山役/伊藤沙莉

元「おろか」の劇団員の青山を伊藤沙莉が演じます。伊藤は子役のころから多数の作品に出演しており、2020年にはテレビアニメ『映像研には手を出すな!』の主人公・浅草みどり役にも挑戦しました。

小峰役/井口理

劇団「まだ死んでないよ」を主宰し、業界にも注目される小峰を演じるのは、バンド「King Gnu」のボーカル・キーボードとして知られる井口理。 井口は舞台俳優としても活動しており、短編映画『ヴィニルと鳥』に主演した経験もありますが、長編映画への出演は初となります。鬼才・井口理の演技に注目です。

田所役/浅香航大

2020年にはドラマ『今夜はコの字で』に中村ゆりとダブル主演した浅香航大が、「まだ死んでないよ」の団員で沙希のバイト仲間でもある田所を演じます。

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『火花』にも出演した三浦誠己らも

そのほか、永田の劇団「おろか」の団員・辻役で上川周作、同じく戸田役で大友律が出演しています。また、元お笑い芸人で映画『火花』にも出演した三浦誠己が演劇評論家を演じます。

監督は行定勲 『世界の中心で、愛をさけぶ』などヒット作多数

映画『劇場』で監督を務めるのは、行定勲(ゆきさだ いさお)。行定は、1968年8月3日生まれの映画監督で、代表的な作品に2004年映画『世界の中心で、愛をさけぶ』や2007年映画『クローズド・ノート』、2017年映画『ナラタージュ』などがあります。恋愛映画を多く手掛けている監督です。 行定は今回の映画化に関して「小説『劇場』は、あまりにも身に覚えがある場面ばかりで、胸をかきむしるような想いで読んだ。私は、又吉さんが書いた主人公がまとう空気をどうしても撮りたくなった。ザラザラとした、夜が明ける頃に感じる切なくて淋しい空気を」とコメント。独特の表現ながら、今回の映像化にかける熱意が伝わってきますね。 また、「山﨑賢人と松岡茉優という稀代の若く鋭い感性と共に、自戒を込めて、どうしようもない男と女の在り方を映画として映し出せたらと思います」ともコメント。3人で紡ぎだす「未熟な男女の恋愛ストーリー」に注目です。

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原作は又吉直樹、『火花』に続くヒットとなるか

原作を手掛けたのは又吉直樹。又吉は、1980年6月2日生まれのお笑いタレント・小説家です。お笑いコンビ・ピースのボケ担当としてテレビ番組に引っ張りだこの売れっ子になりましたが、2015年に小説『火花』で芥川龍之介賞を受賞し、作家としての活動も精力的に行っています。 又吉は今回の映画化に際して、「『劇場』という小説は、恋愛というものの構造がほとんど理解できていない人間(又吉)が書いた恋愛小説です。ただ、若くて未熟な二人がともに過ごしたどうしようもない時間を必死で書いているうちに、濃密な風景が幸運にも立ち上がったと感じています」と謙虚にコメント。 さらに「信頼している行定勲監督、そして山﨑賢人さん、松岡茉優さんをはじめ、魅力的な俳優陣によって映像になることを嬉しく思っています。絶対観に行きます」とも述べています。 又吉は、お笑い芸人たちの青春を描いた小説『火花』が2016年にドラマ化・2017年に映画化されており、ヒットを記録しました。『劇場』は「恋愛が理解できていないからこそ書いてみたかった」いうラブストーリー。どのように映像化されたのか、ぜひ確かめてみてください。

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映画『劇場』は2020年7月17日からユーロスペースなどで公開、Amazonプライムビデオでも配信中!

今回は、又吉直樹原作の映画『劇場』について、あらすじやキャスト、ネタバレ、トリビアなどを紹介しました。 若手最注目の2人と脇を固める実力派俳優たち、恋愛映画のベテラン監督、そして芥川賞作家の原作という、豪華な面々によって描かれるラブストーリーに注目が集まります。『劇場』は、2020年7月17日からユーロスペースほかで公開中。また、Amazonプライムビデオでも配信していますので、ぜひ鑑賞してみてください。