『エスター』は実話だった！？実際にあったリアルエスター事件とは “少女”ナタリアの現在は？

養子として迎えたエスターの衝撃的な過去に戦慄するサイコホラー『エスター』(2009)。その前日譚を描く続編『エスター ファースト・キル 』が2023年3月31日に公開されます。 その『エスター』と内容が酷似している「ナタリア事件」があったことは知っていますか？この記事ではリアルエスターと呼ばれた「ナタリア事件」を、映画と照らし合わせながら解説していきます。 ※映画の重大なネタバレを含みます。注意してください。

映画では養子として迎えた「エスター」が実年齢33歳のサイコキラーだったと判明します。「ナタリア事件」は映画公開後に起こったため映画の元ネタではありませんが、内容はほとんど同じでした。 2010年、当時6歳のナタリアを引き取ったバーネット夫妻。不可思議な点が多く、診断すると実年齢が6歳ではなかったのです。さらに彼女は凶暴になっていき……。

小人症のナタリアを引き取った夫妻は彼女の行動や体の変化に違和感を覚え始めました。6歳で生理が来ており、体毛の多さに気づきます。さらにおもちゃに興味を示さず、母国語ではない英語が堪能だったのです。 エスターも入れ歯がバレないよう歯医者を拒否したり、拘束具の跡を隠すためリボンを巻いており、どちらも実年齢らしからぬ違和感が綻びとなっていきます。

不審に思った夫妻は病院で医学的な年齢測定を行います。そしてナタリアの実年齢は少なくも14歳は上であることが判明しました。 エスターの場合は精神分析医に上手く取り込み年齢詐称がバレず、むしろ養子の母を悪者にしましたが現実ではそうはいきません。 しかしバーネット夫妻は一緒に暮らすことを選択します。この選択がさらなる悲劇を生むのです。

測定結果が出てからナタリアは、“リアルエスター”へと豹変しました。 ナタリアは周囲の子供に暴力を加えていきます。さらに母親のコーヒーに漂白剤を混入。エスターもいじめてきた友達を遊具から突き落としたり母親に危害を加えたりと、行動が似ています。 さらに風呂場に自らの血で「殺す」の文字や家族を殺して庭に捨てるといった発言。さらには誕生日パーティで電気フェンスへ母を押しつけるなど一家を恐怖に陥れていきます。

2012年6月、裁判所でナタリアは1989年9月4日生まれの22歳の女性であると認定されます。彼女は合法的に精神科病棟に入院できるようになったのです。 ナタリアは複数の医療スタッフに、兄妹たち3人も殺すつもりだったと証言したそうです。エスターのように実際に家族の殺害計画を立てていたと考えるとゾッとしますね……。

この判決で養育義務が外れたバーネット夫妻は、ナタリアを置いてカナダに移住しました。しかし夫妻は、ナタリアと連絡を取り続けます。社会保障の手続きやアパートの借り入れなどサポートを継続して行い、大学入学も勧めていました。 エスターが父親を殺したような惨劇は起こらず、穏便に事件は解決したかと思われましたが……。

2013年のある日を境にナタリアから連絡が途絶えます。心配した母親クリスティンがアパートに行ってみると衣服や自転車はそのままにもぬけの殻になっていたのです。そして行方不明のまま、数年が経過していきました。

2019年に「ナタリア事件」は急展開を迎えます。なんとバーネット夫妻が育児放棄の疑いで逮捕されたのです。事の発端は2014年、ナタリア自身が警察に育児放棄を訴えたことから捜査が始まりました。 事情聴取では夫のマイケル・バーネットが「ナタリアが子供だと思っていた」と報道され、事態は急変していきます。さながらエスターを信用してしまった夫とエスターから子供を守る妻の構図に。 しかし証言は一部を切り取られたものと弁護士を通じ発表し、保釈金を払い釈放されました。夫は不起訴処分に、妻は2023年3月現在も闘争中です。

ナタリアはなんと2016年にマンズ夫妻という新たな家庭に迎えられています。マンズ夫妻は彼女を養子とするために年齢に関する裁判を起こしました。しかし結局年齢は覆らず、養子ではないものの共に生活を送っているとされています。 一方、養子縁組をしていたバーネット夫妻は2015年に離婚。ナタリアは2019年、テレビ番組に出演し育児放棄だったことを改めて主張しています。

養子になった子供が本当は大人でサイコパスだったというまさに『エスター』な事件が実際に起こってしまった「ナタリア事件」。偶然にも2023年にナタリアは1作目のエスターと同じ33歳になっています。 続編『エスター・ファーストキル』(2023)からナタリアが何か触発されなければよいのですが……。