【ネタバレ】映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の結末を相関図で考察・解説!水木の元ネタや原作との違いは?
映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』のあらすじ
今は廃村となっている哭倉村にやってきた鬼太郎(沢城みゆき)と目玉おやじ(野沢雅子)、ねこ娘(庄司宇芽香)。ここは目玉おやじがかつて「ある男」と出会い、彼とふたりで巨大な悪に立ち向かった場所でした。改めてこの地にやってきたことで、彼の脳裏に70年前の思い出がまざまざとよみがえります……。 昔々、哭倉村は龍賀一族という一族によって支配されており、外界とはほぼつながりを断っていました。そんなあるとき、とある野望を胸に秘めた男がやってきたことで物語は動き始めます。
映画「ゲゲゲの謎」の登場人物と声優を相関図で解説!
「ゲゲゲの謎」の声優一覧
鬼太郎の父(ゲゲ郎) | 関俊彦 |
---|---|
水木 | 木内秀信 |
龍賀沙代 | 種崎敦美 |
龍賀時貞 | 白鳥哲 |
長田 | 小林由未子 |
ある謎の少年 | 古川登志夫 |
鬼太郎 , 鬼太郎の母 | 沢城みゆき |
ねこ娘 | 庄司宇芽香 |
目玉おやじ | 野沢雅子 |
鬼太郎の父 (声優 関俊彦)
鬼太郎の父は幽霊族の生き残りで、白髪と牙が印象的な長身の男。生き別れた妻を探して各地を放浪しています。基本的に争いを好まず穏やかな性格です。本名は不明で、水木に「ゲゲ郎」というあだ名をつけられました。
水木 (声優 木内秀信)
水木は血液銀行で働くサラリーマンで復員兵。戦争の影響で、左目の傷や左耳の欠損など、身体中に傷を負っています。虎視眈々と重役の椅子を狙い、目的のためならなんでも利用しようとする野心家です。
龍賀沙代(声優 敦美)
龍賀沙代は、哭倉村を支配する龍賀一族の乙米と克典の娘です。見た目も美しく、心優しい性格をしており、哭倉村から出たことがないため、東京から来た水木に気があるようです。
【ネタバレ】映画「ゲゲゲの謎」結末までのあらすじ
【起】自身の野望のため哭倉村へ向かう水木
昭和31年、戦後日本の政財界を牛耳る「龍賀一族」の当主・時貞(白鳥哲)が死去します。 「血液銀行」で働くサラリーマン・水木(木内秀信)は、龍賀一族が経営する「龍賀製薬」の担当という立場上、弔問のため彼らが住む哭倉村へ向かうことに。ちなみに血液銀行とはその名の通り“血液を売買する”機関で、信じがたいことに戦後日本に実在していました。 水木にとって弔問はあくまでも建前で、その真の狙いは次期当主に顔を売ること。さらに上司から課せられた「とある密命」を遂行して、自身の出世を確実にすることでした。彼の野望の裏には、戦争に参加した際の壮絶な経験があります。 村についた水木は当主の孫・沙代(種﨑敦美)が困っているところを助けますが、その行動にすら打算が混ざっていました。しかし彼女やその従兄弟・時弥(小林由美子)は東京からやってきた水木に興味津々で、じきに心を開いて懐いてきます。
【承】水木と謎の男・ゲゲ郎の出会い
ところが次期当主は水木の期待した人物にならなかったうえ、その当主も翌日遺体となって見つかるという事件が発生。 そこで「怪しいよそ者」だといって白髪の男(鬼太郎の父:関俊彦)が連れてこられますが、なんと村の者たちはいきなり彼の首を切り落として殺そうとします。 すんでのところでそれを止めた水木は、成り行きでその男の監視を任される羽目に。名乗ろうとしない彼に勝手に「ゲゲ郎」という名前をつけ、あれこれ会話を試みますが、野心的な水木とどこかのほほんとしたゲゲ郎ではあまり反りが合わないようです……。
【転】龍賀製薬が作る妙薬「M」に隠された真実
水木が受けた「密命」は龍賀製薬が開発する妙薬「M」の調査でしたが、その鍵となりそうなのは村の禁域とされている島。ゲゲ郎の妻の気配もそこから感じられるらしく、水木とゲゲ郎はお互いの目的のため手を組むことになります。 やがて墓場で酒盛りをしながらの打ち明け話などを経て、ふたりのあいだには利害関係以上のものが芽生えるように。 しかしここに来て、ゲゲ郎は村の人間に襲われ捕われてしまいます。実は龍賀一族はゲゲ郎の同胞である「幽霊族」を捕まえ、彼らから搾取した血を原材料としてMを作っていたのです。その「工場」が例の島にあり、ゲゲ郎の妻もそこにいるといいます。 真相を知ってショックを受ける水木。幽霊族を道具のように扱い、それをなんとも思っていない一族の人間に、かつて自分たちを使い捨てにした上官の姿が重なります。 同時に、そんな一族に取り入ろうとしていた自分にも情けなさを感じるのでした。
【結】物語はあまりにもつらすぎるラストへ……
その後次々と明らかになっていく龍賀一族の最悪な内情。その犠牲になり続けながらいつか村を出る日を夢見ていた沙代も、壮絶な最期を遂げることになってしまいました。 水木は絶望を味わいながらも、助け出したゲゲ郎とともに島の最深部へ到達します。 そこにあったのは幽霊族の血を吸ってどぎつい色彩を放つ「血桜」。そして孫である時弥の身体を奪ってこの世に顕現した、死んだはずの時貞の姿でした。 激闘のすえ、ボロボロになりながらも敵を倒した水木とゲゲ郎ですが、龍賀一族の悪行が生み出した怨念はそう簡単には消えてくれません。ゲゲ郎はついに見つけ出した妻、そしてその胎内に宿っていた子どもを水木に託し、自分がひとりですべてを引き受けることを決めるのでした。 やがて水木はひとり山道で倒れているところを消防隊に助けられますが、怨霊に襲われた影響で記憶を失ってしまいます。 何も思い出せないのに、彼の中には「誰かと一緒にいた」ことと、そこはかとない哀しさだけが残っていました。
【解説】エンディングで流れた“水木のその後”の意味は?
記憶を失った水木がその後どうなったかは、エンドクレジットとポストクレジットで描かれました。 彼は後に荒れ果てた家屋でゲゲ郎とその妻と再会を果たしますが、当然記憶がないため恐怖します。怨念のせいでミイラと化したゲゲ郎が彼に駆け寄っても、ただただ怯えて逃げ出してしまいました。 それでも何か引っかかったのか、後日ようすを見に行った彼はふたりが亡くなっているのを発見。かろうじて運べる状態だった妻の遺体を埋葬すると、なんとそこから赤ん坊、つまり鬼太郎が生まれてくるのでした……。
実はこの内容は『墓場鬼太郎』の第1話をオマージュしたもの。しかし元ネタの水木が「化物の子」である鬼太郎を突き飛ばし、左目に怪我をさせてしまった一方で、「ゲ謎」ではちがう展開を迎えることになります。 「ゲ謎」での水木は、一度は鬼太郎を恐れ墓石に叩きつけて殺してしまおうとしました。しかしそのときほんの一瞬、忘れたはずのゲゲ郎の姿が脳裏にちらつき、振りかぶった手をおろします。彼がその後とった行動は、鬼太郎を自身の胸に抱きしめることでした。 全体としては救いのない展開を迎えた本作ですが、水木が鬼太郎を突き放すのでなく受け入れたこと、そしてその鬼太郎が成長して人間を助けるようになったことに、一筋の光が感じられます。彼を踏みとどまらせたのがゲゲ郎との断片的な思い出だというのもまたニクいですね……。
【解説】一族の殺人事件の真犯人は?
物語終盤、一族で起きた一連の殺人事件の犯人が沙代だったと明かされます。 当主・時貞は一族の血をより濃くして霊力を強めていくために、自身の孫である沙代に子を産ませようと性的虐待を与えていたのでした。このような近親での交配が龍賀家では長い間常習化していたようです。 時貞への恨みや一族から逃れられない苦しみを抱えた沙代は、いつしか妖怪「狂骨」をその身に宿らせてしまいました。 沙代は次期当主に就いた時麿からも暴行を受けそうになり、狂骨を操り時麿を殺害。続けて丙江や庚子も手にかけます。 自由を求め龍賀家から抜け出すことを切望する沙代。そんな彼女のもとに現れたのが東京から来た水木でした。自分を村から連れ出してくれと水木に頼む沙代ですが、思い叶わず……。 彼女のあまりに悲惨な最期には、アニメ映画らしからぬ残酷さを感じますね。沙代が東京でクリームソーダを喫する未来、見てみたかった……。
【考察】水木という男が尊すぎる…元ネタはある?
水木ははじめ出世のためならなんでもする、ギラギラしたサラリーマンとして描かれていました。彼をそうさせたのは戦争での壮絶な経験、そして弱い者を平気で食い物にする人間を見続けてきた過去です。 戦争描写は水木しげるの漫画『総員玉砕せよ!』に詳しく、水木の背景もまた本作からとられていると考えられます。 また「水木」という名前の通り、すでに紹介した『墓場鬼太郎』の水木はもちろん、原作者である水木しげる自身も彼の原型となっているのは間違いないでしょう。 ちなみに映画を観て気になった人も多いかと思いますが、「水木」の発音は「み」にアクセントを置く(例:「水樹奈々」)のではなく、「水着」のようなイントネーションになっています。これは生前の水木しげる本人が呼ばれていたのと同じもので、親族の希望があって声優にもそのように指導がおこなわれました。
ゲゲ郎と出会い、変わる水木の心
そんなトラウマから野望に燃えるようになった男・水木ですが、根はやさしくまっすぐで、ゲゲ郎との出会いを通して少しずつ本当の自分を取り戻していきます。 龍賀一族の不正義を知ってからは、当主の時貞を「あんた、つまんねえな!」とバッサリ!あれほど憧れていた強者の座をやすやすと切り捨てる姿にはシビれます。 水木がゲゲ郎と出会い、他人を蹴落として手に入れる地位が“つまんねえ”ものだという結論にたどりつかなければ、彼が鬼太郎を抱きしめるラストにはたどり着かなかったことでしょう……。絶望に満ちた世界でふたりの出会いがちいさな希望を生んだという事実に、思わずぐっときてしまいます。
水木ロスの人へ、今すぐ「鬼太郎」6期を観よ!
テレビアニメ『ゲゲゲの鬼太郎 第6期』は2018年から放送が開始されたシリーズですが、わずかに水木の存在を示唆する描写がいくつかあります。 「ゲ謎」の世界線の水木と鬼太郎のその後として楽しむことができるシリーズとなっているので、「ゲ謎」の余韻に浸りたい人、要チェックです!
【解説】ゲゲ郎(目玉おやじ)の妻の名前は岩子?
「ゲ謎」ではゲゲ郎の妻であり鬼太郎の母である女性が登場しました。 ショートカットヘアーでつり目の美人というヴィジュアルで、人間嫌いのゲゲ郎とは対照的に、人間社会で働き生活をしていた様子。ゲゲ郎が哭倉村に来たのは、10年前に生き別れた妻の気配を感じ取ったからでした。 本作で彼女の名前が明かされることはありませんでしたが、SNS上では彼女を「岩子」と呼ぶ人がちらほら。実は原作「鬼太郎地獄編」では鬼太郎の母の名前が岩子だと明かされているのです。 さらに「地獄編」における岩子は幽霊族ではなく人間という設定で、ゲゲ郎が幽霊族であることを知らずに結婚したのでした。「ゲゲゲの謎」では幽霊族のキャラクターだったため、かなり根本の設定が異なりますね。 原作「鬼太郎地獄編」とそのアニメ化作品「鬼太郎3期」の第109話「母を求めて地獄旅」からの7話分のエピソードでは、岩子は「ゲゲゲの謎」とは違った最期を迎えます。これもまた切ないエピソードなので、ぜひチェックしてみてください。 というわけで映画「ゲ謎」に登場する鬼太郎の母は、正確に言えば岩子とはまた少し別のキャラクターと考えるのが良いでしょう。 そもそも「ゲ謎」で登場するゲゲ郎の妻に関する情報はあまり多くはありません。ゲゲ郎と生き別れた詳しい事情も、本編では特に明かされることはありませんでした。 どういった経緯で龍賀一族に囚われ血を搾取されることになったのかは気になるところです。いつか何かの形で明らかになる日が来るのでしょうか……。続編やスピンオフなどに期待したいですね。
【考察】「ゲゲゲの謎」とは結局なんだったのか
タイトルの中に「謎」という言葉が含まれている本作ですが、物語の根幹として描かれた「謎」はおもに3つあります。 まず1つ目は、目玉おやじがなぜ目玉の姿になったのか。原作では「溶ける病」がその原因でしたが、本作では狂骨の依代となったことで身体が爛れて本来の姿を失っていました。死後に自身の眼球に魂を宿らせて生き返ったのはどちらも同じです。 2つ目は鬼太郎が生まれた経緯。終盤で水木が騒動の中、自身に託されたゲゲ郎の妻を守り通さなければ、きっと鬼太郎は無事に生まれてこなかったでしょう。 要するに水木は鬼太郎の命の恩人であるわけですが、これはそのまま最も重要な3つ目の謎「鬼太郎はなぜ人間を助けるようになったのか」の答えになります。墓場でのあの感動的なラストの後、水木と鬼太郎がどんな交流をしてきたのかも詳しく知りたいですね……!
【裏話】知ると作品をもっと楽しめる!舞台挨拶で明かされたエピソード
「ゲ謎」は世界線の分岐点だった…
「ゲゲゲの謎」は公開後その大ヒットを記念して、12月14日に監督・スタッフによる舞台挨拶が開催されました。 その中でさまざまな裏話が明かされましたが、特に印象的だったのは「冒頭で水木が席を立ち上がると6期の世界観になり、立ち上がらないと墓場鬼太郎の世界線になる」というもの。 村での経験、つまりゲゲ郎との出会いが彼を変え、ダークな墓場鬼太郎ではなく、鬼太郎が人助けをする6期の世界線へと連れて行ってくれたのだと思うと、なんだか感慨深いものがあります。
いくらでも掘り下げられそうな龍賀一族
本作で起きた事件の中心であり、存分にその闇を見せてくれた龍賀一族ですが、実はまだまだ裏に隠れた設定があるそうです。サイドストーリーや愛憎劇を作れるくらいとのことで、ファンからは制作を熱望する声も上がっています。 例として挙がっていたのは「長田少年と乙米」の物語でしたが、特に三姉妹はそれぞれにいくらでも掘れそうな魅力がありますし、時麿や孝三のドラマも気になるところ。それに沙代と時弥のやりとりももっと見てみたかったですよね……。
映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の感想・評価
とにかく水木がかっこいい。特別な力があるでもなく、すぐに倒れたりボロボロになったりするけど、それでも友のために動いた男。彼が地位や権力なんかよりもっと大切なものに気付けて、つまんない構造を拒絶することができて、ほんとうによかった。
とにかくつらい、やるせない物語。軽い気持ちで観に行ったら後悔すると思う……。でもだからこそ、水木の「鬼太郎を抱きしめる」という行動の尊さが際立つ。水木とゲゲ郎にはもっとちゃんとした形で再会してほしかったなあ……!
ゲゲ郎や水木へのキャラ萌え、バディものとしての胸熱具合はもちろんだが、戦後映画としてもかなり良作なのでは。戦後、高度経済成長に入る時期の「弱者からの搾取で成り立つ一部の富める者」という社会構造を痛烈に批判していたと思う。
友達から「ちょっと怖いよ」と聞いたのと、一応PG12(全年齢見られるけど小学生以下には指導が必要ってやつ)のでホラー苦手な私じゃ厳しいかな・・・と思ったけど勇気出して見に行ったらもうめっちゃ面白かった。確かに少し猟奇的な描写があるけど、ホラー怖い人でもそんなに警戒しなくて大丈夫だと思う。とにかくストーリーが見応えあるのと、水木&ゲゲ郎の関係がイイ。ゲゲゲの鬼太郎自体はちょっと見たことあるくらいの知識量だったけど全然楽しめた。最後のシーンが良すぎて映画館明るくなってもしばらく立てずに余韻に浸った。
間違いなく2023年を代表する1本!こんなことを書いておきながら、熱量の高い口コミを知るまでは、鑑賞候補には全く入っていませんでした。鬼太郎誕生までを描いたシンプルなストーリーながら、日本特有のゲゲゲな村社会を舞台にしたミステリー仕立てにすることで、飽きることなく興味を持続させてくれる。鬼太郎を知らずとも沼ってしまう入門編としておすすめ。激推しします!!
映画「ゲゲゲの謎」をネタバレ解説でおさらい
悲劇的な結末を迎えることになったものの、一筋の希望も描かれた「ゲ謎」。細部の描写に凝った作品でもあるので、「しんどいのに何回も観たくなる」「観るたび新しい発見がある」との声もあがっています。 もう観た人も実はまだ未チェックだという人も、ぜひこの機会に劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか。