2018年11月16日更新

映画『スタンド・バイ・ミー』の知られざる事実 名作誕生裏話やキャストのその後を追った

スティーブン・キングの短編をロブ・ライナーが映画化した『スタンド・バイ・ミー』(1986)は、青春映画の傑作として世界中で親しまれている作品です。今回は『スタンド・バイ・ミー』の知られざる事実を紹介します。

世界中で愛され続ける名作映画『スタンド・バイ・ミー』

少年たちの死体探しの冒険、その誕生秘話に迫る

「4人の少年たちが死体を探す旅に出る」というストーリーを通して、少年時代の友情と冒険、そして別れを描いた傑作映画『スタンド・バイ・ミー』。 1986年にアメリカで公開されて以来、本作は世界中の人々に愛されています。 例えば映画の舞台となったアメリカ・オレゴン州ブラウンズビルには、ロケーション場所が記載された地図があり、ロケ場所を巡るウォーキングツアーや、劇中のエピソードになぞらえたパイ食いコンテストが開催されているそうです。 この記事では、不朽の名作として名高い映画『スタンド・バイ・ミー』のあらすじを振り返りながら、その制作秘話やトリビアについて紹介していきたいと思います。 名作の名作たる所以を垣間みよう。

映画『スタンド・バイ・ミー』はどのようにして生まれたのか?

原作者・スティーブン・キングの実体験が物語のルーツ

『スタンド・バイ・ミー』は、スティーブン・キングの中篇作品集『恐怖の四季』の中に収録されている「THE BODY(邦題『死体』)」を映画化した作品です。 本作の主人公・ゴードン・ラチャンスのモデルはキング自身であり、キングは本作を「自伝的作品」と称したこともあります。

主人公ゴードン・ラチャンスとスティーヴン・キングの共通点

スティーブン・キング (ゼータ)
©Dennis Van Tine/Future Image/WENN.com

「ゴーディ」ことゴードン・ラチャンスとスティーヴン・キングの間には、多くの共通点があります。 大人になったゴーディの職業は小説家で、これは当然、キングと共通しています。そして、キングもゴーディ同様、子供のころから物語を作る才能があったそうです。 また、本作の大きなポイントとなっている「兄の死」という要素も、子供の頃のキングが兄と死別した実体験が反映されています。 キングとゴーディの異なる点としては、父親の存在があげられます。キングの父は、彼が子供の頃に失踪していますが、ゴーディの両親は存命しています(ただし、ゴーディに対して冷たく接します)。

『スタンド・バイ・ミー』に影響を与えた?キングが4歳の頃の事件とは

『スタンド・バイ・ミー』に影響を与えたもう一つのエピソードとして、スティーヴン・キングが4才の頃に経験したある事件が挙げられます。 それは、当時彼と一緒に遊んでいた友人が、貨物列車に轢かれて死亡したというものです。 「列車」と「死体」。 『スタンド・バイ・ミー』を象徴するようなこの2つの要素は、彼が4才の頃に体験した衝撃的な出来事が影響を与えているのかもしれません。

ロブ・ライナーが監督に起用された経緯とは?

ロブ・ライナー
©︎Nikki Nelson/ WENN

元々、本作は『ナインハーフ』や『フラッシュダンス』などで知られるエイドリアン・ラインが監督を務める予定でした。 しかし、エイドリアン・ラインがバケーション中で撮影スケジュールに遅れが出る恐れがあったため、のちに『恋人たちの予感』や『ミザリー』を手掛けることとなるロブ・ライナーがメガホンをとることになりました。

映画本編より悪ガキ?奔放すぎる子役たちの撮影中の逸話

映画と同じくリアルに「悪ガキ」だった子役たち

『スタンド・バイ・ミー』のメインキャストは、主人公・ゴーディ・ラチャンス(子供時代)役のウィル・ウィートン、ゴーディの親友・クリス・チェンバーズ役のリヴァー・フェニックス、大きな眼鏡をかけているテディ・ドチャンプ役のコリー・フェルドマン、太っちょのバーン・テシオ役のジェリー・オコンネルの4人。 劇中でもタバコを4人でふかしたり、決して優等生としては描かれていなかった彼らですが、実際の撮影中にも、いくつか「ワル」なエピソードを残しています。

リヴァー・フェニックスは撮影中に「大人」になり、楽屋では「ハイ」になっていた?

リヴァー・フェニックスは本作撮影中に童貞を捨てたといわれています。監督ロブ・ライナーは、リヴァー・フェニックスが意味ありげな笑みを浮かべて撮影現場に現れた日のことを覚えていると語っています。 また、コリー・フェルドマンは、彼が楽屋でマリファナを吸ってハイになっているところ目撃したとも証言しています(なお、コリーもマリファナを嗜んでいたそうです)。

コリーとリヴァーは特に問題児だった?

撮影当時、テディ役のコリー・フェルドマンとクリス役のリヴァー・フェニックスは未成年だったにもかかわらず、地元のナイトクラブへと夜な夜な繰り出し、ドンちゃん騒ぎしていたそうです。 彼らはそこでマリファナを吸ったり、飲酒していたといいます。 映画の中でもタバコを吸ったり、少年たちがやんちゃをする描写はありましたが、現実の彼らの方がもう少し過激な遊びをしていたようですね。

葛藤を抱える少年たちの物語を描くための苦労とは?

未成年でも吸えるタバコを作る

スタンド・バイ・ミー
© Columbia Pictures

『スタンド・バイ・ミー』の印象的な場面として、少年たちがタバコを吸う場面を思い浮かべる人も多いと思います。一見、本物にしか見えないこのタバコですが、実は劇中で彼らが吸っていたタバコはキャベツで作られたもの。 それぞれが様々な葛藤を抱える4人の少年たちを描くために、この他にもスタッフは以下のような多くの工夫を凝らしています。

ゴーディと鹿の場面はどのように作られたのか?

死体を探す旅の途中で、主人公・ゴーディが線路上で鹿に遭遇する場面があります。 スタッフは鹿をタイミングよく振り向かせるため、エアーホーンを鳴らしたり、フライパンや鍋を叩いて、鹿を振り向かせようとしていたそうです。

バーンは本当に犬にかまれていた!

太っちょのバーンを演じたジェリー・オコンネルは、実際に犬のチョッパーに噛みつかれていました。 映画をよく観ると、いくつかのシーンでバーンの唇が腫れているのが確認できます。

60日間ほぼ晴天…死体を見つける場面の曇天はどのように作られた?

スタンド・バイ・ミー
© Columbia Pictures

60日の撮影期間中ほぼ完璧な晴天に恵まれたことで、本作は曇天場面の撮影に苦労していたそうです。 少年たちが死体を見つけるシーンの撮影は、スタッフが広範囲のエリアにわたって布で覆って撮影に臨んでいました。

ロブ・ライナー監督の手腕と子役たちの迫真の演技の秘密

子供たちのリアルな表情を引き出すためのライナー監督の様々な工夫

スタンド・バイ・ミー
©︎COLUMBIA PICTURES

ロブ・ライナー監督は『スタンド・バイ・ミー』で子供たちの魅力的な表情を引き出すため、様々な演出を行なっています。 例えば死体を初めて目撃するシーンまで、子役たちも劇中のキャラクターと同様にその死体を一切目にすることはありませんでした。これは子役たちのリアルな表情と感情を引き出すための演出の一つです。 この他にも、バーンとゴーディが列車に追われる場面では安全に配慮して二人が実際に列車に轢かれる危険性がない撮影方法が選択された結果、ウィル・ウィートンとジェリー・オコンネルが緊張感を持てなくなってしまったため、ライナーは怒鳴って2人の怯えた表情を引き出そうとしました。

リヴァー・フェニックスのメンタルケアも

クリスがどれだけ自分が価値のない人間だと感じているか胸の内を吐露する場面を撮影した後、リヴァー・フェニックスは感情を抑えきれなくなっていました。 ライナー監督は、リヴァー・フェニックスを泣き止ませるためにしばらくハグをしていたそうです。

劇中のこどもたちとキャストのその後

ウィル・ウィートン/ゴーディ・ラチャンス役

ウィル・ウィトン
©︎WENN

後にゴーディ・ラチャンスは作家として大成し、妻と2人の子供にも恵まれます。一方で、仲間たちとの関わりは薄くなっていき、親友のクリスとも10年以上会うことがありませんでした。 そしてクリスの死を通して、彼は「12歳の頃の友人ができることは二度とないだろう」と感じ、旧友に想いを馳せるのです。 日本ではあまり知られていませんが、彼を演じたウィル・ウィートンは声優・俳優として、映画やドラマに定期的に出演します。私生活では結婚して、二人の継子と共に暮らしているそうです。 ちなみに、本作で大人のゴードンを演じたのはリチャード・ドレイファスでしたが、最初はデヴィッド・デュークスだったといわれています。デュークスは撮影に臨んでいたものの、声が合わないと判断されたためリチャード・ドレイファスがこの役を演じることになりました。

リヴァー・フェニックス/クリス・チェンバーズ役

リヴァー・フェニックス
© LFI/Photoshot

劣悪な家庭環境に育ちながら、猛勉強の末に弁護士になったクリス・チェンバーズ。しかし、ファーストフード店で客同士の揉め事の仲裁に入り、運悪く刺殺されてしまいます。 彼を演じたリヴァー・フェニックスもまた、先述の通り若くしてこの世を去ってしまいました。『マイ・プライベート・アイダホ』や『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』など、『スタンド・バイ・ミー』以降も様々な作品で活躍した彼の自死は、世界に大きな衝撃を与えました。 なお、彼の弟であるホアキン・フェニックスは、『ザ・マスター』や『her/世界でひとつの彼女』など様々な作品に出演し、兄の死後も精力的に活動を続けています。

コリー・フェルドマン/テディ・ドチャンプ役

コリー・フェルドマン
©︎Celebrity Monitor, PacificCoastN

テディは目と耳が悪かったために憧れの軍隊には入れず、刑務所暮らしをすることになります。そして、臨時雇いの仕事をしながら、キャッスルロックで暮らすことに。 テディを演じたコリー・フェルドマンは、『スタンド・バイ・ミー』出演後も子役として活躍を続けましたが、成長してからは大麻やコカイン中毒に苦しむようになります。 また、離婚を経験したり、ハリウッドにおける子役たちの小児性愛被害を暴露し、自身もその被害にあったことを告白するなど、テディと同じく劇的な人生を歩みました。 なお、その後はアニメ『Teenage Mutant Ninja Turtles』に声優として参加するなど、俳優・声優として少しずつキャリアを立て直しています。

ジェリー・オコンネル/バーン・テシオ役

ジェリー・オコンネル
© Zuma/Avalon.red

物語ではバーンは高校卒業後、5人の父となり、製鉄所で働くようになります。 バーンを演じたジェリー・オコンネルは、『ピラニア3D』をはじめとする多数の映画やドラマに出演しました。 私生活では、実写映画「X-MEN」シリーズでミスティーク(レイブン・ダークホルム)を演じたレベッカ・ローミンと結婚し、2008年に双子の女の子を授かりました。

『スタンド・バイ・ミー』は一番人気のないタイトルだった?

最後に、本作の主題歌とタイトルの話を。当時、コロンビアピクチャーズは原作タイトル『死体』は、映画版のタイトルにはふさわしくないと考えていました。 そこでロブ・ライナーは、映画最後に流れる『スタンド・バイ・ミー』がタイトルにピッタリと判断します。しかし共同脚本家レイノルド・ギデオンによると、ライナーのアイデアは「一番人気のない選択肢」だったそうです。 また、あるプロデューサーはマイケル・ジャクソンに『スタンド・バイ・ミー』をカヴァーしてもらう計画を立てていました。しかし、監督のロブ・ライナーは時代背景を考慮してベン・E・キングのオリジナルバージョンを使うことを譲らず、なんと、マイケル・ジャクソンのバージョンをボツにしたのです! その後、ジョン・レノン、山下達郎など様々なアーティストにカバーされる『スタンド・バイ・ミー』ですが、やはり本作にはベン・E・キングのオリジナル版がベストだったと、映画を見る度に確信します。