映画『パルプ・フィクション』をネタバレ解説!タイトルの意味・ブリーフケースの中身を考察【あらすじ】
映画『パルプ・フィクション』あらすじネタバレ解説
『パルプ・フィクション』は短編の物語が集まり1つの作品を作り上げています。しかし登場人物が重なる物語がありながらも時系列はバラバラで最後まで鑑賞しないと作中での時系列を把握することが難しいです。 この見出しは短編の題名そしてその短編の主人公となるキャラクターたちを作中での登場順に紹介していきます。
「プロローグ」〜パンプキンとハニー・バニー〜
とあるダイナーで、強盗カップルのパンプキンとハニー・バニーが“足を洗う”話をしていました。しかし実はパンプキンにはダイナー強盗をする企みが。2人はいきなり店内の客たちに銃を突きつけます。
「プロローグ」〜ヴィンセントとジュールス〜
くだらない話をしながら車を走らせていたギャングの殺し屋ヴィンセントとジュールス。ボスのマーセルス・ウォレスを裏切った青年グループの部屋を訪ね、ボスのブリーフケースを取り戻し、彼らに制裁を加えます。 無事帰還した2人は、ある男と話しているボスを目にします。それはボクサーのブッチで、マーセルスは八百長の密談をしていたのでした。
「VINCENT VEGA & MARSELLUS WALLACE'S WIFE」〜ヴィンセントとミア〜
マーセルスから、自分がいない間退屈しないようにと、彼の愛妻ミアの世話を頼まれたヴィンセント。ミアの家に行く前に売人からヘロインを買い、晩はミアが予約したレストランに連れて行き、食事をしたりダンスを楽しみました。 ところが帰宅してすぐ、ヴィンセントがトイレに行っている間に、ミアがヴィンセントのヘロインをコカインと間違えて鼻から吸引し、オーバードーズを起こしてしまいます。慌てたヴィンセントはヘロインの売人を頼り、間一髪で心臓にアドレナリンを打ち込んで蘇生させました。
「THE GOLD WATCH」〜ブッチとマーセルス〜
※画像右側の女性はブッチの恋人ファビアン ブッチが少年時代を回想し、曽祖父から代々受け継がれ来た「金時計」を大切にしていることが示唆されます。ブッチはマーセルスを裏切って、対戦相手を殴り殺して逃走。タクシーで恋人ファビアンのいるモーテルへ向かいます。 しかしファビアンが金時計を置き忘れてきたことに気付いたブッチはアパートへ。そこには待ち伏せていたヴィンセントがいましたが、ちょうどトイレの中。ブッチは置いてあるショットガンを構えて、出てきたヴィンセントを迎え撃ちました。
※画像はギャングのボス、マーセルス その帰り道、偶然にも信号でマーセルスと遭遇し、思わず轢いてしまうブッチ。マーセルスに追われるブッチは質屋へ逃げ込みますが、そこは店主と警官ゼッドが捕まえた男をレイプする隠れ家でした。2人は捕まり、マーセルスはゼッドにレイプされます。 その間、自分だけ逃げようとしたブッチでしたが、思い直して日本刀を手にし、マーセルスを救出。この恩と引き換えに裏切りをチャラにしてもらい、無事にファビアンの元へ帰りました。
「THE BONNIE SITUATION」〜ヴィンセントとジュールス再び〜
青年グループからブリーフケースを取り戻し、生き残りの青年を車に乗せていたところ、ヴィンセントが誤ってその青年を撃ち殺してしまいます。車内は血だらけで、焦ったジュールスは近くの友人ジミーの家に助けを求めて飛び込みました。 マーセルスがプロの「清掃屋」ミスター・ウルフを派遣し、事なきを得た2人。朝食を食べようと入ったダイナーで、ヴィンセントがトイレに入った途端、パンプキンとハニー・バニーによる強盗事件が発生します。
「エピローグ」〜パンプキンとジュールス〜
店内を制圧し、客たちから財布を巻き上げていくパンプキンはジュールスにも銃口を向け、ケースの中を見せろと脅します。やむなく中身を見せるジュールス。トイレから出たヴィンセントも応戦します。 しかし青年グループの家で弾が当たらずに生き延びた「奇跡」を体験したため、足を洗おうと考えていたジュールスは、穏便にパンプキンたちを店から追い出しました。
『パルプ・フィクション』のあらすじを時系列順に知る
映画の 登場順 | ①プロローグ ②VINCENT VEGA & MARSELLUS WALLACE'S WIFE ③THE GOLD WATCH ④THE BONNIE SITUATION ⑤エピローグ |
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映画内の 時系列 | ①THE BONNIE SITUATION ②プロローグ ③エピローグ ④VINCENT VEGA & MARSELLUS WALLACE'S WIFE ⑤THE GOLD WATCH |
ではここで、前述のあらすじを時系列順に並べ直してみましょう。 初めに来るのがヴィンセントとジュールスが裏切者を抹殺するシーン。次にその2人がジミーの家で生き残りの青年を殺した始末に追われ、ダイナーでパンプキンたちと遭遇します。(THE BONNIE SITUATION) 強盗を阻止した2人がマーセルスの元に帰ると、ブッチが八百長の相談を受けていました。その日の晩、ヴィンセントはミアとの食事とダンスの後、オーバードーズの災難に見舞われます。(VINCENT VEGA & MARSELLUS WALLACE'S WIFE) ブッチが試合会場から逃走し、金時計を回収しにアパートへ。居合わせたヴィンセントを殺して、遭遇したマーセルスを助け、和解して最後はファビアンと去っていきました。(THE GOLD WATCH)
『パルプ・フィクション』のストーリー内容を考察
『パルプ・フィクション』の意味とは?
まず、タイトルの『パルプ・フィクション』とは一体どういう意味なのでしょうか?劇中には冒頭に、英語の「pulp」の意味が辞書から引用されています。 1. 柔らかく湿った形状のない物体 2. 質の悪い紙に印刷された煽情的な内容の出版物 「fiction」とは日本語にも外来語として入っている「フィクション」の意味で、創作された物語のことです。そもそも「パルプ・フィクション」とは三文小説のことで、劇中でヴィンセントがトイレで読んでいるのもそれ。 そういえば、トイレットペーパーもパルプからできていますね。ヴィンセントがトイレに行く度に災難が起こりますが、実はこの作品自体が「パルプ・フィクション」であるのかもしれません。
ブリーフケースの中身の謎
本作最大の謎の1つが、マーセルスのブリーフケースの中身。見た人の心を奪うほどのもので、何やら神々しい光を放っていました。ファンが立てた仮説の中に、マーセルスの魂が封印されているというのがあるのも納得。 彼の首にあった絆創膏は魂の抜かれた痕で、コンビネーションロックの暗証番号が「666」だったことで、この説が浮上したとか。しかし、絆創膏はマーセルスの傷を隠すためだと、タランティーノ監督が明かしています。 サミュエル・L・ジャクソンがタランティーノ監督にケースの中身を尋ねたところ、「お前が入っていてほしいと願うものさ」という答えが返ってきたそう。となると、中身を明かさなかったのも鑑賞者の想像に委ねるためで、各々が考える「神々しい物」であれば良いのかも?
ギャングを辞めたいジュールスのその後は?
ジュールスは劇中では、最後にダイナーでパンプキンを説得した後は登場していません。青年グループの家で命拾いした「奇跡」を体験したため、ダイナーで朝食を食べながら足を洗うことを考えていました。 時系列的には後になるヴィンセント殺害の現場にはジュールスの姿がなかったことから、おそらくダイナーの一件の後、彼は本当に足を洗ったのかもしれません。
ヴィンセントのトイレは危険のシグナルである
本作のセオリーとして、ヴィンセントがトイレに向かう度に災難が起きています。 まず、ミアの家で用を足して戻ると、そこには薬物の過剰摂取でミアが倒れています。ダイナーのトイレに向かった後にパンプキンとハニー・バニーが強盗を始め、さらにブッチの家でトイレに向かったことが原因となり、ヴィンセントはブッチにショットガンで吹き飛ばされてしまっていました。
ミアがヴィンセントに話しているのは『キル・ビル』のことである
ヴィンセントはミアとデート中、彼女から過去に女優として出演したテレビドラマのパイロット版についての話を聞きます。 そのキャラクターを要約すると、「ブロンドの女がリーダー」「日本人がカンフーの達人」「黒人の女はサボタージュのプロ」「フランス女は色仕掛け専門」「私(ミア)はナイフのプロ」とのこと。 これは、後にタランティーノ監督が製作した映画『キル・ビル』のキャラクターたちのことではないかといわれています。実際、この映画にはミアを演じたユマ・サーマンが主演し、彼女は映画の冒頭でナイフ戦を繰り広げています。
タランティーノ作品の世界線限定バーガーショップ
フランク・ウォーリー演じるブレットが食べていたハンバーガーは「Big Kahuna Burger」という実在しないハンバーガーチェーン店のもの。 このバーガーショップの商品が『パルプ・フィクション』の他にも、『レザボア・ドッグス』や『デス・プルーフ』などタランティーノ作品に度々登場しています。
タランティーノ作品との意外な繋がり
ヴィンセント・ベガは、『レザボア・ドッグス』のミスター・ブロンドことヴィック・ベガ(マイケル・マドセン)の弟。元々、タランティーノはベガ兄弟を主役とした映画を企画していたそうです。
タランティーノ監督を監督したのはだれ?
「ボニーの一件」のあるシーンでタランティーノ監督がジミー役としてカメオ出演していましたが、この時カメラの後ろで監督をしていたのは『デスペラード』などで知られるロバート・ロドリゲスだったそうです。 ちなみに、タランティーノはジミー役とランス役のどちらかで悩んでいたものの、ランス役だとミアのオーバードーズシーンのディレクションが出来ないことを理由にジミーを選択したといわれています。
職業を変えてクロスオーバーしたキャラクターがいる
本作でタクシードライバーの「エスメルダ」を演じたアンジェラ・ジョーンズは、タランティーノの短編『Curdled』にも同じ役名で出演していました。 ちなみにその短編では、アンジェラの職業は犯罪現場の清掃員でした。
ツイストコンテストでトロフィー泥棒をしていた?
印象的なミアとヴィンセントのダンスコンテストシーン。劇中では誰が優勝したのかは描かれていませんが、次のシーンでミアがトロフィーを持っていました。ふたりはコンテストで優勝したのでしょうか。 ふたりがトロフィーを盗んだのでは?という説があります。ブッチが家へと向かう途中のシーンでラジオのような音声が流れており、トロフィーが盗まれたというニュースが聞こえると主張する人がいるのです。 また映画の世界観を生み出すために差し込まれたコマーシャル音声では?という説もあります。よく耳をすましてみると、確かに「$5 milk shakes(5ドルのミルクシェイク)」や「Jack Rabbit Slims」といった言葉が聞こえてくるような。 しかしこの音声は聞き取りが厳しいほどにわずかな音量であるため、真偽は確かではありません。
オマージュにあふれる『パルプフィクション』トリビア
トラヴォルタのダンスシーンはあの名作へのオマージュである
ヴィンセント役を務めたジョン・トラヴォルタは、1977年に映画『サタデー・ナイト・フィーバー』で大ブレイクしました。その時演じた役柄が、ディスコのダンスコンテストに挑戦する青年トニー役。 『パルプ・フィクション』の劇中でもレストランのダンスコンテストに参加していますが、これは彼の出世作となった『サタデー・ナイト・フィーバー』へのオマージュといえるでしょう。
ネオンボードで大統領をオマージュしている
ボクシングのビッグマッチが行われる劇場のネオンサインに「クーリッジvsウィルソン」と書かれていましたが、これはアメリカ大統領選を戦った「カルビン・クーリッジ」と「ウッドロー・ウィルソン」が由来です。 また、小さな文字で書かれた「フォスラーvsマルティネス」は、ビデオショップ店員だった頃のタランティーノの同僚ラッセル・フォスラーとジェリー・マルティネスへのオマージュになっています。
武器で名作映画をオマージュしている
質屋でブッチが手にした武器で、タランティーノは自分が愛する映画へオマージュを捧げています。 バットは『ウォーキング・ドール』、ハンマーは『13日の金曜日PART2』、日本刀は『子連れ狼』、チェーンソーは『悪魔のいけにえ』へのオマージュです。
ジュールスの聖書の引用はオマージュである
ジュールスは劇中で2回、聖書の「エゼキエル書25章17節」を暗唱していますが、実はこれは本当の聖書の一節ではありません。実際には、1976年の千葉真一主演映画『ボディーガード牙』の序文から引用したもの。 タランティーノ監督が千葉真一のファンであることは周知の事実ですが、こんなところにもオマージュを入れ込むとはさすが!
有名キャストたちの撮影トリビア
トラヴォルタは元薬物中毒者からアドバイスを受けていた
ジョン・トラヴォルタはヴィンセント・ベガの役作りのために、元ヘロイン中毒のタランティーノの友人にアドバイスを求めていました。 その友人はドラッグと似た症状を味わうには、熱い風呂の中でテキーラを浴びるほど飲むことだとトラボルタにアドバイスしたそうです。
タランティーノがユマ・サーマンを説得していた
ミア・ウォレス役がユマ・サーマンに決まるまで、ミシェル・ファイファー、メグ・ライアン、ダリル・ハンナ、ジョーン・キューザックなどの女優がミア候補に挙げられていたそうです。 また、当初は本作の出演に乗り気ではなかったユマ・サーマンのために、タランティーノは電話越しに脚本を読んで説得したといわれています。
サミュエル・ジャクソンはオーディションに落ちかけていた
ジュールス・ウィンフィールドはタランティーノがサミュエル・L・ジャクソンをイメージして生みだしたキャラクターだったのにもかかわらず、サミュエルはオーディションを受けることになったそうです。さらにオーディションのパフォーマンスが不評で、役を失う可能性さえありました。 再オーディションの結果、ようやくサミュエル・L・ジャクソンが正式にジュールス役を射止めることとなりました。
ブルース・ウィリスはブッチ役のファーストチョイスではなかった
元々、タランティーノは『クラッシュ』などで知られるマット・ディロンにボクサーのブッチ・クリッジ役のオファーを出していたそうです。 しかしマット・ディロンはすぐにOKを出さず、検討する時間を要求。その間にブルース・ウィリスが出演を熱望したため、結局ウィリスがブッチを演じることになったといわれています。
登場人物の役名が珍名“Coffee Shop”である
本作のクレジットには、ダイナーのマネージャーを演じたロバート・ルースの役名が「コーヒー・ショップ」と書かれていました。これは作中のあるやりとりが由来です。 強盗のパンプキン(ティム・ロス)がマネージャーの頭に銃を向けて“ヒーローになりたいのか?”と言い、怯えたマネージャーがこう返します。“いや、私はただのコーヒーショップだ。”
最高傑作の裏にはたくさんのアクシデント!
ギャングにタランティーノの愛車が盗まれていた
作中でヴィンセントが運転していた1964年製シボレー・マリブのオーナーはクエンティン・タランティーノですが、本作の撮影セットからこの車が盗まれるアクシデントに見舞われていたそうです。 それから19年後の2013年、車を盗んだギャングが逮捕されています。
予定した曲が使用できなかった
元々、タランティーノは質屋での拷問シーンでザ・ナックの「マイ・シャローナ」という曲を流す予定でした。 しかし、同じ1994年公開の映画『リアリティ・バイツ』に使用されていたため、曲の変更を余儀なくされたそうです。
権利問題でポスターを回収していた
本作のオリジナルポスターは訴訟問題を抱えてリコールされていました。ユマ・サーマンの周りにラッキーストライクのタバコや小説が散りばめられていたことが問題だったようです。 スタジオは全ての劇場にポスター返却を要求し、従わなかった場合は罰金を科すと警告していたそうです。現在このポスターの価値は500ドルから1000ドルにも及ぶといわれています。
タランティーノ作品お馴染みの車が登場
ブッチが運転していた白いホンダ・シビックは、1997年のタランティーノ作品『ジャッキー・ブラウン』でジャッキー・ブラウンが運転していた車と同じです。 この車は『キル・ビル Vol.2』(2004年)のストリップクラブの駐車場シーンでもカメオ出演していました。
衝撃シーンの意外な撮影手法
オーバードーズで倒れたミアの胸に直接アドレナリンを打ち込む有名なシーンがありますが、この場面はあるトリックを使って撮影していました。 まず、ミアの胸に注射針を刺した状態からスタートして、ジョン・トラボルタが針を抜き取る所を撮影します。その映像を編集段階で逆回転させることで、リスクを回避していたそうです。
映画『パルプ・フィクション』のネタバレ解説・考察で理解を深めよう
クエンティン・タランティーノ監督の傑作にして代表作ともいえる『パルプ・フィクション』。何十年経とうとも、その斬新な構成や散りばめられたオマージュや小ネタなど、いまだに新鮮に映ります。 時系列がバラバラな点を整理して、隠された小ネタや撮影秘話なども知ると、ますます本作の面白さがわかってくるかも。何度見ても新しい発見があるかもしれません!