天才・北野武が好きな映画10選を紹介!

お笑い芸人・俳優・映画監督とマルチな活躍を見せ、どの方面でも“天才”と称されている北野武。今回は、そんな天才・北野武が好きな映画を10本ご紹介します。
目次
- 天才・北野武のルーツを探る
- 1.恋の街パリで複雑に交錯し合う男女の恋愛を描いた映画『天井桟敷の人々』(1952年)
- 2.すべてはここから始まった!SF映画の金字塔映画『2001年宇宙の旅』(1968年)
- 3.抑圧された社会と個の若者の自由との関係を描いた映画『時計じかけのオレンジ』(1972年)
- 4.世界で最も有名な侍映画『七人の侍』(1954年)
- 5.シークレット・サービスの復讐劇をスタイリッシュに描いた映画『L.A.大捜査線/狼たちの街』(1986年)
- 6.セックスと暴力に塗れた男女の愛の逃避行!映画『ワイルド・アット・ハート』(1991年)
- 7.バイオレンス映画の巨匠サム・ペキンパーの代表作映画『ガルシアの首』(1975年)
- 8.闇で戦うダークヒーローの原点!映画『ダークマン』(1991年)
- 9.ヘビメタ×ロック×バイオレンス!映画『狂い咲きサンダーロード』(1980年)
- 10.どこにでもいる家族の姿を温かな目線で描き切った名作映画『鉄道員』(1956年)
天才・北野武のルーツを探る
映画『アウトレイジ』のような激しい暴力描写がある作品から映画『HANA-BI』『菊次郎の夏』のような情感豊かな作品まで、振り幅の広い作風が世界中から支持されている映画監督・北野武。
映画『アウトレイジ』『菊次郎の夏』で二度のカンヌ国際映画祭パルム・ドール賞にノミネート、ヴェネチア国際映画祭では1997年の映画『HANA-BI』で金獅子賞、2003年の映画『座頭市』にて銀獅子賞を受賞しています。
同時に、日本屈指の実力を誇るお笑い芸人・ビートたけしでもある北野。ニュース番組のコメンテーターとしてテレビに出演する際には、社会情勢を風刺的にコメントし、底の見えない博識ぶりを垣間見ることができます。
映画監督として北野は、ビートたけしの時のように茶化す言動はほとんどなく、日本映画界の現在・未来を憂いており、それを担う若者たちに熱く講義する一面を持ちます。
そんな北野作品のルーツはどこからきているのか?Wikipediaに紹介されている天才・北野武が好きな映画を10本ご紹介します。
1.恋の街パリで複雑に交錯し合う男女の恋愛を描いた映画『天井桟敷の人々』(1952年)


第二次世界大戦中のフランスで、当時としては巨額の16億円を投じて製作されたフランス史に残る名作映画『天井桟敷の人々』。
舞台は19世紀のフランス・パリ。パントマイム役者のバチスト(ジャン=ルイ・バロー)が盗みの濡れ衣を着せられていた美女ガランス(アルレッティ)を偶然助けたことをきっかけに二人は恋に落ちます。
しかし、ガランスの周囲にはバチストと同じようにガランスに恋をする俳優のルメートル(ピエール・ブラッスール)や作家のラスネール(マルセル・エラン)、モントレー伯爵(ルイ・サルー)などがいて、純情なバチストはなかなか近づけません。何とか両想いになったのも束の間、今度はガランスに殺人容疑がかけられてしまい・・・。
売れない美人芸者ガランスを巡る5年に渡る人間悲喜劇が豪華絢爛な舞台絵巻と共に綴られます。主演はジャン=ルイ・バロー、ヒロインのガランスを演じたのはアルレッティ。
第一部:犯罪通り、第二部:白い男の二部構成になっています。脚本を詩人ジャック・プレヴェールが手掛けているだけあり、「愛し合っている者同士にはパリも狭い」など美しい名台詞、衣装、世界観はため息が出るほど。
ナチス統治下のフランスでも「花と恋の都パリは潰れない」という不屈の精神を美しい世界観の中から感じることができる作品です。
2.すべてはここから始まった!SF映画の金字塔映画『2001年宇宙の旅』(1968年)


神や創造主を科学的なアプローチから描き、その後作られるすべてのSF映画に影響を与えていると言っても過言ではない、SF映画の金字塔映画『2001年宇宙の旅』。
「人類の夜明け」「木星視察」「木星 そして無限の宇宙の彼方へ」の三部構成になっており、スタンリー・キューブリック監督の人類の発展への希望とその先にあるコンピューター社会や人工知能などへの警鐘のメッセージが込められた作品です。
主演はキュア・デュリア。デュリアは1985年に制作された続編映画『2010年宇宙の旅』にも同じ役柄で出演しています。
CG技術が未発達な1968年に、この美しさ、無駄のなさはキューブリックの成せる技!もともとカメラマンだったキューブリックの、細部までこだわった映像技術は芸術の域に達しています。スリット・スキャンという技法で撮影したボーマン隊長がスター・ゲートを通過するシーンは、50年以上経った2017年の今観ても私たちに興奮と感動を呼び起こしました。
本作があまりによくできていたため、翌年1969年の「アポロ月面着陸」はキューブリックとNASAによる捏造映像だという都市伝説まであるほど。無駄な解説を一切省いた体感型ムービーなので、「Don’t think.Feel!」です。
3.抑圧された社会と個の若者の自由との関係を描いた映画『時計じかけのオレンジ』(1972年)


スタンリー・キューブリックによる不朽の名作映画『時計じかけのオレンジ』。
近未来のロンドンを舞台に、ベートーヴェンの「第九」好きな反逆児アレックス(マルコム・マクタヴェル)が主人公のバイオレンス映画です。逮捕された刑務所で人体実験をされ自らの意思で善悪を選択できなくなった、まるで中身が機械でできた人間=「時計じかけのオレンジ」のアレックス。
抑圧された社会の中で自由な暴力を謳歌している若者をどうやって扱えば良いのか?
人間一人一人の自由と全体主義国家はいつの時代も相いれないものだということを、キューブリック作品にしては解かりやすく描いています。ハリウッドでは公開年の主だった賞を総なめにするも、キューブリックが移住し晩年を過ごしたイギリスではキューブリックの死後1999年まで上映禁止となった超問題作です。
ちなみに北野の他にも影響を受けた著名人は多く、園子温監督も本作を観て映画監督を志したそうです。
4.世界で最も有名な侍映画『七人の侍』(1954年)


黒澤明がジョン・フォード監督の西部劇にインスパイアされ制作した映画『七人の侍』。主演は三船敏郎、志村喬。
ある山間の小さな村を舞台に、農民からすべてを奪い盗る野武士から穀物を守るため、寄せ集めの七人の侍たちが立ち上がります。農民と武士が手を取り合い、雨と泥と汗と血の中、雌雄を決する戦いに挑む日本映画史に残る迫力の戦国活劇!
本作の優れている点は、七人の武士たちの個性が豊かで戦い方からキャラクターまで完璧な布陣に配置されているという点。さらには時代劇にありがちな勧善懲悪の作品ではないといった点でしょう。野武士が農民から穀物を奪うのも生きるためですし、農民が落ち武者たちから武器を奪うのもまた生きるため。皆が生きることに必死だからこそ、彼らの姿に笑い涙し興奮しっぱなしの3時間45分です。
黒澤は本作で初めて複数のカメラで同時に撮影をするマルチ・カメラ方式を採用。1954年当時では考えられないほどの巨額の製作費と製作日数をかけたため、一時は東宝から制作中止を言い渡されてしまいますが、黒澤は途中までの映像を見せ、制作続行の許可を得て無事に完成させます。
ヴェネチア国際映画祭にて監督賞にあたる銀獅子賞を受賞。フランシス・フォード・コッポラ、ジョージ・ルーカス、スティーヴン・スピルバーグなど多くの映画人に影響を与え、1960年に映画『荒野の七人』、2016年に『マグニフィセント・セブン』としてハリウッドでリメイクされました。
5.シークレット・サービスの復讐劇をスタイリッシュに描いた映画『L.A.大捜査線/狼たちの街』(1986年)

映画『フレンチ・コネクション』で有名なウイリアム・フリードキンの隠れた名作映画『L.A.大捜査線/狼たちの街』。
シークレット・サービスのリチャード・チャンス(ウィリアム・L・ピーターセン)は長年コンビを組んでいた相棒ジミー(マイケル・グリーン)を、偽札偽装集団のボスであるエリック・マスターズ(ウィレム・デフォー)に殺されてしまいます。復讐を誓ったチャンスは新たな相棒ジョン・ヴィコヴィッチ(ジョン・パンコウ)と共に、エリックを追い始めますが、それはFBIをも巻き込んだ大追走劇となり・・・。
主演はウィリアム・L・ピーターセンです。犯人逮捕のためなら強盗や脅迫も辞さないチャンス。
「正義」だったはずが犯人への憎悪から「悪」となり、チャンスの執念から感じ取れるのは狂気そのもの。高速道路での激しいカーチェイスあり、アクションあり、クライマックスの驚きの銃撃戦ありで、ラスト1秒まで目が離せないスタイリッシュなクライム・アクションです。
北野が初監督した映画『その男、凶暴につき』の撮影前に、スタッフたちに「本作を参考にしてほしい」と見せたという逸話があります。
6.セックスと暴力に塗れた男女の愛の逃避行!映画『ワイルド・アット・ハート』(1991年)


熱狂的なファンからカルト的な人気を誇る監督デヴィッド・リンチが愛を描いた映画『ワイルド・アット・ハート』。主演は公開当時26歳だったニコラス・ケイジ。
物語は、恋人ルーラ(ローラ・ダーン)の母親マリエッタ(ダイアン・ラッド)から恨みを買い、差し向けられた殺し屋を血気盛んな若者セイラー(ニコラス・ケイジ)が殴り殺してしまい、投獄されるところから始まります。出所したセイラーとルーラは二人の愛を妨げるすべてのものから逃げるため、カリフォルニアに向けて愛の逃避行。
道中、二人は愛を持て余すかのようにセックスと暴力に明け暮れます。しかし、そんな二人を追撃するマリエッタ、自堕落な自分はルーラに相応しくないのではないか?と悩むセイラー。
二人のもとに「オズの魔法使い」の「良い魔女」「悪い魔女」が現れ、道を示します。「愛や夢を諦めずに突き進め」というリンチ流・愛のメッセージが込められたファンタジック・ロードムービー。
本作は第43回カンヌ国際映画祭パルム・ドール賞を受賞。ショッキングな映像と音楽で駆け抜け、ニコラス・ケイジが歌う『Love Me Tender』で締めくくるラストは、とてもロマンティックで見事としか言いようがありません。
7.バイオレンス映画の巨匠サム・ペキンパーの代表作映画『ガルシアの首』(1975年)

原題の直訳は「アルフレッド・ガルシアの首を持ってこい」という映画『ガルシアの首』。主演はオーウェン・オーツです。
メキシコの大地主の愛娘をたぶらかしたガルシアの首に賞金がかけられ、腕に覚えありの賞金稼ぎたちが血みどろの争いを繰り広げる、いたってシンプルな作品です。しがないピアノ弾きのベニーは愛人とともに貧乏生活から抜け出すために、すでに死んでしまったガルシアの首を求めて二人で旅をすることに。
実はこのベニーは元軍人で、愛人を殺され、ガルシアの首も奪われてからの反撃が強い強い!西部劇を思わせるガンアクションのスローモーションで映し出す格好良さ!
ベニーの泥と汗と血が染みついた男臭い体と、すべてを失った怒りや悲しみといったドロドロした感情を内面から炙り出すオーツの演技が素晴らしいです。
特筆すべきは、本作には善人が誰一人としていないということ。これは北野監督の映画『アウトレイジ』と同じなので、悪人や負け犬の生き様を余すところなく描き切る傑作バイオレンスです。
8.闇で戦うダークヒーローの原点!映画『ダークマン』(1991年)


サム・ライミ監督の映画『スパイダーマン』の原点とも言える映画『ダークマン』。
巻き込まれ事故で全身大やけどを負い、顔を失った科学者ペイトン(リーアム・ニーソン)。恋人ジュリー(フランシス・マクドーマンド)にも怖がられ、事故の手術の副作用で怒りや絶望といったネガティブな感情のコントロールができなくなり、研究を推し進めていた人工皮膚を使い、自分をこのような姿にした敵に復讐をしていくダーティー・ヒーローものです。
主演はリーアム・ニーソン。サム・ライミの映画『死霊のはらわた』のような残虐シーンや後に作られるサム・ライミ版『スパイダーマン』を彷彿とさせるシーンがあり、サム・ライミの原点とも言える作品。
映画『ダークナイト』のバットマンのようでもあり、映画『デッドプール』のウェイド・ウィルソンのような悲しき笑いもあり、壮絶な設定や物語をアメコミタッチで描いています。
9.ヘビメタ×ロック×バイオレンス!映画『狂い咲きサンダーロード』(1980年)


アナーキーな石井岳龍監督が、退廃的なのに超カッコイイ男たちを描いた映画『狂い咲きサンダーロード』。
近未来のどこかにある日本の街「サンダーロード」を舞台に、平和協定を結んだ暴走族連合エルボー連合とそれに反発して暴走族魂を貫こうとする魔墓呂死特攻隊との死闘を描いたバイオレンス・アクション。鬼才・石井岳龍が大学の卒業制作として作った自主映画にも関わらず、有名俳優が出演し、東映配給で全国公開されるという異例の期待作でした。
興行収入的にも成功を収め、主演を務めた山田辰夫が第4回日本アカデミー賞新人賞を受賞するなど、多くの賞を受賞。本作の主人公である特攻隊長・仁(山田辰夫)の男気と笑顔にシビれる男性が続出しました。
10.どこにでもいる家族の姿を温かな目線で描き切った名作映画『鉄道員』(1956年)

古き良きイタリアの家族映画『鉄道員』。第二次世界大戦後のイタリアを舞台に、どこにでもいる家族の姿を初老の鉄道員アンドレア(ピエトロ・ジェルミ)を通して描いた温かく叙情的な作品。
第9回カンヌ国際映画祭国際カトリック映画事務局賞を受賞。ピエトロ・ジェルミが監督と主演を務めています。
母、父、子どもたちから見た「家族」を見事に描き切っており、その時々の自分の立場に応じて誰かしらに感情移入できます。夫は職場でのいざこざや疲れを一切見せずに家族のために黙々と生真面目に働き、妻はそんな夫のすべてを理解し、そっと支えます。これこそ世界共通の理想の夫婦の姿。
もう一人の主役であるエドアルド・ネボラ演じる末っ子サンドロが家族の絆を守ろうと奔走する姿にも胸を打たれます。純粋に目をキラキラさせて父親を本当に格好良いと思っているサンドロは、めちゃくちゃ可愛らしいです。
どこにでもある普通の家族の普通の問題だからこそ、心に響きますし、カルロ・ルスティケッリの情緒に訴えかけるようなメロディーが物語をさらに盛り上げています。人生で幾つもある分岐点に差し掛かった時に観たい温かな作品。
北野武が最も尊敬する監督と言っているスタンリー・キューブリックの作品から、往年の名作映画、インデペンデント映画まで幅広くご紹介しました。
どの作品も解釈が深く、人間臭いドラマばかりで、北野が“人間の生き様”を、映画を撮る時の共通テーマにしていることがわかります。バイオレンス系の映画に関しては、そのまま北野作品に反映されているものもあるので、比べて観るとより楽しめることでしょう。