2018年4月12日更新

【今尚愛される女流作家】天才脚本家・向田邦子の代表作10選

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『寺内貫太郎一家』3

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天才脚本家・向田邦子

数々のヒット作を生み出した天才と名高い女流作家・脚本家の向田邦子。70年代、80年代を代表する人気ドラマの多くが彼女の脚本でした。現在でもなおスペシャルドラマでリメイクされたり、舞台として上演されたりと人気が衰えることはありません。 向田邦子作品には独特の視点で家族や夫婦を描いたものが多く、一見ほのぼのとした家庭の中にもシリアスな人間の暗部がしっかりと描かれています。 今だからこそ見ておきたい、向田邦子作品の10選をご紹介します。

向田邦子の生涯

向田邦子は、現在でいう東京都世田谷区に生まれました。父の仕事の関係で幾度となく転居を繰り返していた少女時代。やがて専門学校に進学し、国文学を主に学びます。卒業後就職し、社長秘書として勤めた後は出版社に転職し、雑誌編集者として活躍します。 出版社を退社し、フリーライターとしての活動を始めた向田邦子は、ラジオドラマの脚本を担当します。1964年にはテレビドラマ『七人の孫』の脚本を務め、その後に数多くの人気作を生み出しました。作家としても活動していた向田邦子は1980年には直木賞を受賞しています。 1981年に遠東航空機の墜落事故により51才で亡くなりました。

1.二組の夫婦の大人の恋の物語『あ・うん』(1989年)

テレビドラマとしても放送されていた『あ・うん』は、1989年に劇場公開映画として蘇りました。かつては戦友であった二人の男とその妻を中心に大人の恋の物語が展開されていきます。 長年の親友である門倉と水田。共に結婚し、家庭を築いています。地方に転勤となっていた水田が戻ってくると、水田の娘も交えて家族ぐるみでの交流が始まりました。しかし、門倉は密かに水田の妻に心惹かれてしまいます。 不倫の恋を誰にも打ち明けることができず苦しむ門倉は、次第に水田への態度も変わっていきます。水田も内心門倉の想いに気づいているようで、二人の仲に不穏な空気が漂い始めます。そんな折、水田に海外転勤の話が持ち上がりました。 二組の夫婦の微妙な関係性を繊細に描いている『あ・うん』。向田邦子作品の持つ穏やかな美しさが際立っている映画です。

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2.四人姉妹の愛憎劇『阿修羅のごとく』(2003年)

大竹しのぶ、黒木瞳、深津絵里、深田恭子が四人姉妹を演じて話題となった映画『阿修羅のごとく』は2003年公開です。向田邦子原作の『阿修羅のごとく』が、筒井ともみの脚本で映画として蘇りました。 父に愛人がいることが発覚したことによって、目まぐるしく変化していく四人姉妹の心境と関係性を大胆に描いています。 竹沢家の四人姉妹はそれぞれに全く異なる性格で、互いに馬が合わず独立してからは疎遠になっていました。ある日三女の滝子(深津絵里)は、姉妹を集め父に愛人がいることを告げます。 父の意外な姿に驚く姉妹でしたが、彼女たちもまた、それぞれに穏やかでない問題と秘密を抱えていたのです。 家族や夫婦をモチーフにした作品が多い向田邦子ですが、この『阿修羅のごとく』では女性のさまざまな姿を描いています。妻であり母であり、そして時には恋に悩む女である四人姉妹を通して、女性という存在を見事に表現しています。

3.ある日突然一児の父に!『パパと呼ばないで』(1972年)

子役時代の杉田かおるが出演している『パパと呼ばないで』。急逝した姉の子・千春と同居生活を送ることになった主人公の安武右京を石立鉄男が演じていました。放送当時はもちろん、何度も再放送が繰り返されるほどの人気作品でもあります。 母が亡くなったことにより一人ぼっちになってしまった5歳の少女・千春。彼女は親戚から疎まれ、頼る人はいないかに思えました。が、母には弟がおり独身で気ままな生活をしているということがわかり、千春は彼の元に転がりこむのでした。 姉の子・千春との奇妙な同居生活により、主人公・安武右京の生活は一変します。少しクセのある近所の人たちに見守られながら、右京は子育てに奮闘していくのでした。

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4.銭湯を舞台にした大人気ドラマ!『時間ですよ』(1971年~)

銭湯を舞台にしたホーム・コメディドラマ、『時間ですよ』は長年に渡ってシリーズ放送された大人気番組です。銭湯の女将役を森光子が務め、毎回バラエティに富んだゲストが登場することも注目を集めていました。 向田邦子は、1971年から73年までの『時間ですよ』と1974年の『時間ですよ 昭和元年』の脚本を担当しています。 下町の銭湯「松の湯」では、個性豊かな家族やユニークな常連客たちが毎度珍騒動を繰り返しています。下町ならではの人情味あふれるエピソードに加え、ギャグやネタも満載のコミカルな作品でした。 向田邦子担当回では、ほのぼのとしたホームドラマの中にも独特の切り口が光るストーリー展開が楽しめます。

5.寺内家はいつも問題がいっぱい?『寺内勘太郎一家』(1974年~)

向田邦子脚本作品の中で一番のヒットとなった『寺内貫太郎一家』。下町で石屋を営む寺内貫太郎は、絵にかいたような頑固おやじ。寺内家とその周囲の人たちも個性豊かな面々ばかりで毎回コミカルなエピソードが繰り広げられます。 後の樹木希林である悠木千帆(ゆうきちほ)が貫太郎の母役で出演しており、自室で沢田研二のポスターに向かって「ジュリー!!」と叫ぶシーンは毎度お約束となっていました。 主人公の寺内貫太郎(小林亜星)は、下町の石材店の三代目店主です。長女・長男に恵まれ同居の母も元気で幸せな生活を送っている寺内家ですが、家長の貫太郎のかんしゃくと頑固な性格が悩みの種。長男・周平(西城秀樹)とも事あるごとに衝突し、大ゲンカしています。

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6.ジュリーが光源氏に挑戦!『源氏物語』(1981年)

向田邦子が古典文学に挑戦したドラマ『源氏物語』は、シンガーの沢田研二が主演を務めました。「TOKIO」「勝手にしやがれ」などのヒット曲で知られる沢田研二は、妖艶な風貌と中世的なステージ衣装が話題の人物。稀代のプレイボーイである光源氏はまさにハマり役と言えるでしょう。 桐壺の更衣を母に持つ光源氏(沢田研二)は、幼い頃に彼女を失い悲しみに暮れていました。その後、新たな女御を迎え入れた帝(芦田伸介)でしたが、あろうことかその女性は、光源氏の母・桐壺に瓜二つだったのです。 実の母のように新しい女御・藤壺(八千草薫)を慕ううちに、抑えきれない恋心が沸き上がる光源氏。彼は道ならぬ恋に足を踏み入れていくのでした。

7.三世代それぞれに抱える葛藤『冬の運動会』(1977年、2005年)

向田邦子原作の『冬の運動会』は、これまで何度もドラマ化されてきました。1977年には向田邦子が脚本を担当しドラマ化され、2005年には田渕久美子脚本でリメイクされました。2005年版には岡田准一が主演を務め大きな反響を呼んでいます。 父や祖父とどのように関わっていけばよいのか思い悩む主人公の菊男。北沢家の男性は、皆菊男と同じ悩みを抱えていました。それぞれが葛藤を抱える中で、家族には秘密の事実を設ける男たち。やがてはその秘密が露呈し、その時彼らは……。 家族とは何なのか、家族の中での男性の役割とは何なのか。ほのぼのとしたホームドラマやコメディ作品で注目を集めた向田邦子からの真摯な問いかけに思わず胸が詰まってしまいそうな切ない作品です。

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8.後妻・朋子を悩ませるものとは?『家族熱』(1978年)

1978年に放送されたドラマ『家族熱』。後妻として黒沼家に入った朋子の複雑な心境を中心に、家族の在り方を問いかける衝撃作です。 家族とは何なのか、夫婦とは何なのか。年の離れた男の後妻として家庭に入った主人公の朋子(浅岡ルリ子)は血の繋がりのない連れ子たちを育て、夫の両親の面倒もかいがいしくみてきました。朋子の必死の努力はツレない態度の子どもたちや元妻の陰により、脆くも崩れ去ってゆくのでした。

9.四人姉妹ふたたび!『阿修羅のごとく パートⅡ』(1980年)

四人姉妹が主人公の『阿修羅のごとく』はドラマとしても放送されていました。1979年に放送開始、翌年の1980年に続編の『阿修羅のごとく パートⅡ』が放送されています。 愛人発覚騒動から一人暮らしとなっていた父でしたが、今度は寝たばこで騒動を起こしてしまいます。心配になった四人姉妹は相談の上、三女の滝子(いしだあゆみ)の恋人・勝又(宇崎竜童)が泊まり込むことに。やがて勝又と滝子は夫婦となりますが、竹沢家の姉妹たちは問題続きで……。

10.父と娘の恋人の奇妙な関係『蛇蝎のごとく』(1981年、2012年)

娘の交際相手の男を最初は疎んでいた父親が、徐々に親しみを持ちやがてはわかりあっていくという向田邦子ならではのホームドラマ『蛇蝎のごとく』。1981年に初回放送され、2012年には長尾啓司脚本でスペシャルドラマとしてリメイクされました。 会社の社長である主人公の古田修司は娘がいますが、交際している中年のイラストレーター・石沢のことが気に入りません。石沢には家庭があり、娘・塩子は不倫の恋をしていたからです。しかし古田にも密かに家庭の外に想いを寄せている女性がおり、やがて石沢と打ち解けるようになります。 夫であり父である家庭の中で見せる顔とは違う別の男の顔。古田と石沢はその男の顔で分かりあっていくという、何とも皮肉なホームコメディです。

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向田邦子の功績は賞として後世に語り続けられる

向田邦子の死後、数々の名ドラマを生み出してきた功績を称え、テレビドラマの脚本家に与えられる向田邦子賞が制定されました。この賞は毎年一つの作品に与えられており、2017年にはバカリズムが脚本を担当した『架空OL日記』が受賞しました。。 現在でもなお何度もリメイクされ、人気が衰えることがない向田邦子作品。作品だけでなく、賞として彼女の功績は語り続けられます。