2018年7月26日更新

韓国映画界を牽引するふたつの才能。監督ホン・サンス×女優キム・ミニ作品4選

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正しい日 間違えた日
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ワールドワイドに活躍する韓国映画界のふたりの精鋭

それから
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カンヌ国際映画祭やベルリン国際映画祭などの多数の映画祭で監督作が次々に評価され、世界中からの称賛を浴びているソウル出身の映画監督ホン・サンス。 日本でもヒットを飛ばした2016年の映画『お嬢さん』では怪しくも魅惑的なお嬢様役を務めたことで話題を呼び、そのセンセーショナルな美しさを放つルックスとアンニュイな雰囲気で人気を集めている女優キム・ミニ。 そんな韓国の映画界を代表する監督と評しても過言ではないホン・サンスと、彼の新ミューズであるキム・ミニがタッグを組んだ、いわば「最強コラボ映画」である4作品について、今回はあらすじや見どころなどの解説を交えながらご紹介していきます。

「韓国のウディ・アレン」などの異名を持つ名監督ホン・サンス

韓国映画界のみならず、各国際映画祭で高い評価を獲得し、国境を越えてその名を世界に広げている大活躍中の監督ホン・サンス。 1961年に韓国・ソウルで生まれ、韓国中央大学に映画制作を勉強し、その後アメリカへ渡り美術を専攻。アメリカ留学中に短編映画を制作した後、フランスへ拠点を移し映画研究に没頭。 その際に多くのフランス映画から受けた影響と感覚を以って、1996年に『豚が井戸に落ちた日』で長編作品デビュー。本作は評論家たちの間で大きな反響と絶賛を呼び、現在に至るまで偉大なる監督のひとりとしてその名を映画界に轟かせています。 また、「韓国のウディ・アレン」「韓国のゴダール」「エリック・ロメールの弟子」など、数多くの異名を持つことも特徴的です。

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変幻自在の空気感で人々を翻弄する女優キム・ミニ

夜の浜辺でひとり
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2016年の映画『お嬢さん』で世界的な名声と脚光を浴び、一躍国際派女優として映画界のメインストリームに躍り出た女優キム・ミニ。 モデルとしてキャリアを積んだのち、1999年にテレビドラマ『学校2』で女優業をスタート。その後2012年にピョン・ヨンジェ監督の映画『火車 HELPLESS』での演技が高く評価され、それをきっかけに『お嬢さん』などのヒット作への出演を重ねるなど、その存在を世間に知らしめています。 ホン・サンス監督とは映画『正しい日 間違えた日』で初めてタッグを組み、以来彼の作品のミューズとして主演を立て続けに務めています。

『正しい日 間違えた日』

映画監督のチュンスと、独特の魅力を持つ女性ヒジュン。偶然に出会ったふたりは人生について語り合い、酒を共に嗜むうち徐々に惹かれ合っていきますが……。 ホン・サンスとキム・ミニの初のタッグ作でもある本作。第68回ロカルノ国際映画祭ではグランプリである金豹賞と主演男優賞を獲得し、話題を集めました。 運命的な出逢いによって偶然知り合った映画監督の青年と絵描きの女性のラブストーリー。前半と後半で構成が分かれており、「あの時は正しく 今は間違い」と称された前半部分は、ロマンチックな出会いから恋のつらい苦しみを味わうふたりの姿を、「今は正しく あの時は間違いだった」と称された後半部分では、最悪の出会いから恋愛関係に発展していくふたりを描いています。 ちょっとした「タイミング」で全く異なった結末に着地してしまう人間関係の難しさを、1つのストーリーの中に2つの展開を用いることで表現した、ユニークで個性的な異色のラブストーリーとなっています。それぞれの登場人物の微妙な発言の有無や行動の違いによって運命が一転してしまう様子から、多くの人々の共感を呼びました。

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『夜の浜辺で一人』

ベルリン国際映画祭で主演女優賞を受賞した本作の主人公は、不倫スキャンダルをきっかけにドイツのハンブルクに渡った韓国人女優ヨンヒ。逃げるように飛び込んだ異国の地で、彼女が新たな人生を夢想しながら自分らしさの在り方や生き方と向き合っていくヒューマンストーリーです。 本作のキャッチコピーのひとつにもなっている「焦らない、闘わない、無理しない、恋したい」からもわかるように、自分自身という唯一無二の価値観に賛同し時の流れに身を委ねつつも、恋という大きな覚悟を伴う事柄に懸命に踏み出す力強い女性の姿を描いており、現代のヒロイン像の体現との呼び声の高い作品となっています。 ハンブルクとカンヌンというふたつの港都市で行き交う繊細な変化や、そこから漏れ出てくるとめどない不安感、自己と他者への問いかけの中で人生の光を少しずつ見出していく主人公を、キム・ミニは見事に演じ切りました。

『それから』

妻から浮気を疑われている出版社の社長のボンワンと、彼の会社に勤務することになった女性・アルムの会話劇をメインに物語が進行していく本作。アルムはボンワンの妻に浮気相手と間違われ、物語はアルムにとって思わぬ展開となっていきますが……。 淡々としたカメラワークと空気感の中で、男女関係のもつれから生じる皮肉やユーモアがスパイスとなって際立ち、観客をホン・サンス監督作品の独特の世界に誘います。 全編白黒の映像と自然且つ真に迫る俳優たちの演技、優雅で重厚感のある音楽の合流と対比が、ありふれた日常に潜むそれぞれの感情や未来のゆくえを連想させ、人生のやるせなさと一瞬間の清々しさを問いかけます。 出版社の社長であるボンワンを演じたのは、韓国の名バイプレーヤーとして活躍している実力派俳優クォン・ヘヒョ。2002年の大ヒットドラマ『冬のソナタ』への出演や、国際的にも注目を集めたヨン・サンホ監督の2013年の長編アニメーション作品『我は神なり』への声の出演など、話題作に続々と参加しており、またホン・サンス監督作品としては本作が4作目の出演となっています。

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『クレアのカメラ』

クレアのカメラ
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未来がうつるという不思議なカメラを持つフランス人女性と、働いていた映画会社からの解雇を突然告げられ、絶望に打ちひしがれる韓国人女性の出会いと交流の様子を軸に、カンヌ国際映画祭の裏側で繰り広げられる人間模様を描いた本作。キム・ミニとフランスの名女優としても名高いイザベル・ユペールの共演も大きな話題となりました。 実際に撮影はカンヌ国際映画祭開催中の数日間で行われたことも手伝って、臨場感とユーモアが効いたまさにシネママジックともいえるような作品となっています。絶妙な温度と速度で交錯する思惑と、ホン・サンス監督ならではのチャーミングで繊細な会話劇に夢中になること間違いなしです。

ふたつの光が紡ぐ次なる輝きはいかに

夜の浜辺でひとり
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監督ホン・サンスと、女優キム・ミニの最強タッグが繰り出す最高傑作4選を今回はご紹介してきました。2015年の初タッグからほぼ毎年コンスタントに作品を発表し続けており、日本でも多くのファンを獲得しています。 ホン・サンス監督が生み出す独特の会話劇で展開されるストーリーと、キム・ミニの繊細で時に力強い演技。このふたつの光が合わさった時、次はどんな輝きが放たれるのか。公私共にパートナー関係にあるふたりだからこそ醸し出される作品の質感や空気感の変化にも注目したいところです。まだまだ今後もこのふたりからは目が離せません。