2018年10月26日更新

【北村一輝・濱田岳W主演】ドラマ「疫病神」シリーズの魅力を語る!

©2016 スカパー!

渾身のアクションに痛快な台詞回しが炸裂。男も女も惚れる、北村一輝と濱田岳の「疫病神コンビ」に迫ります。

連続ドラマ『破門』(2015)『螻蛄』(2016)

イケイケヤクザ桑原(北村一輝)×二枚舌の建設コンサルタント二宮

破門(疫病神シリーズ)
©2015 スカパー!/KADOKAWA

このたびの特集は、現在NetflixやAmazonで配信中の連続ドラマ『破門』と『螻蛄』、通称「疫病神シリーズ」です。 第151回直木賞を獲得した黒川博行のハードボイルド小説『破門』のほか、シリーズ初巻の『疫病神』、第4巻の『螻蛄』を原作とするこのドラマは、制作局がBSスカパー!ということもあり、地上波にはつきものの表現上の制約を回避。 ドラマ『TRICK』、『ATARU』、「99.9 -刑事専門弁護士-」シリーズなどを手がけた木村ひさし監督の指揮のもと、迫真のアクションシーンを存分に盛り込み、大阪のアンダーグラウンドで策動する大胆不敵な男たちの生き様を余すことなく映像化しました。 これまでに映画『テルマエ・ロマエ』やドラマ『猫侍』等、様々な作品で唯一無二の存在感を放ち続けてきた俳優の北村一輝が、自身の代表作のひとつに「疫病神」シリーズを挙げるなど、その完成度の高さはお墨付き。もはやこのドラマを見逃す手はありません。 そこでこの記事では、原作の小説およびドラマシリーズをこよなく愛する筆者が『破門』と『螻蛄』の魅力を隈無くお伝えいたします。本作品を未視聴の方はもちろん、すでに小説やドラマで疫病神ワールドに夢中という方も、ぜひご一読ください。

あらすじ

『破門』1話から5話/小説『疫病神』相当分

主人公の二宮啓之(濱田岳)は、大阪の西心斎橋にオンボロ事務所を構える建設コンサルタント。裏社会の大物だった父親のコネを活かし、建設現場をめぐる組絡みのトラブル解決、所謂「サバキ」と呼ばれる事前交渉の仲介業で細々と食いつなぐ日々を送っていました。 やがて二宮は、産廃処分場建設にまつわる交渉を引き受けますが、事業の背後に潜む億単位の莫大な利権をめぐり、大手ゼネコンや複数の組が入り乱れる危険な奪い合いが勃発。そこに大阪一の頭の切れと腕っ節の強さを誇るヤクザの桑原保彦(北村一輝)が苛烈な割り込みをかけてきて......。 産廃処分場が吐き出す大金と、桑原が撒き散らす最凶のスリルに魅入られた二宮は、儲けの分配を約束に桑原と結託。処分場の建設同意書と申請書類を手に入れるべく、一か八かの賭けに出ます。

『破門』6話から8話/小説『破門』相当分

破門(疫病神シリーズ)
©2015 スカパー!/KADOKAWA

ある日のこと、血相を変えた桑原が二宮の事務所を急襲。なんでも桑原が所属する二蝶会で若頭を務める嶋田和夫(鶴見辰吾)が、映画の出資金を持ち逃げされるという事件が発生したといいます。 二宮の父親が二蝶会の幹部だったという縁で、昔から二宮を甥っ子のように可愛がってきた嶋田。話を持ち込んだ映画プロデューサーの小清水隆夫(木下ほうか)が二宮の旧友であることに信を置き、3000万の出資契約を結んでしまったのです。しかも、赤貧の二宮の顔を立てるため、嶋田は二宮名義で100万の出資を肩代わりしていました。 失踪した小清水の行方を追うふたりはやがて、映画製作詐欺の背後で糸を引いていた滝沢組という格上の組織と揉めてしまいます。そして、下の者は上の者に逆らえないという組織の掟を無視して跳ね返った桑原に、裏社会の制裁「破門」が迫ります......!

『螻蛄』全5話/小説『螻蛄』相当分

発端は、二蝶会に舞い込んできた2000万の未決済手形。回収に乗り出した桑原は、手形の振出人である伝法宗就教寺の住職・木場博道(佐藤誓)のもとに向かい、手形のカタに伝法宗の宝物の巻物を取り上げますが、これがのちにレプリカと判明。 オリジナルの巻物の値打ちが1億であることを突き止めた桑原は、今度こそ本物を手に入れるべく、就教寺の檀家でもある二宮に共謀を持ちかけます。かくしてふたりは、日本全国に6000の寺を持つ巨大組織・伝法宗を相手取り、大物美術コレクターや女画商、不良刑事がしのぎを削る巻物争奪戦に殴り込みをかけることに。 しかし、一枚の手形に端を発したこのせめぎ合いは、次第に伝法宗東京別院や名古屋別院、東京のヤクザまで引き込み、寺の独立が絡む壮大な内紛へと大化け。それでも命がけの駆け引きを繰り返す桑原と二宮に、ついに銃口が......。

「喧嘩の星の王子さま」桑原保彦/北村一輝

破門(疫病神シリーズ)
©2015 スカパー!/KADOKAWA

二宮と出会うまでは、組でも浮いた存在の一匹狼だったという桑原保彦。天性の喧嘩のセンスを武器に、多勢に無勢という状況も果敢に引っくり返してゆくその様は、原作の小説では「喧嘩の星の王子さま」と揶揄されています。本能の赴くままに行動しているように見えて、実は相手と状況を考慮した計算尽くで事を構えるという狡猾な一面も持ち、頭の回転の速さでも他の追随を許しません。 さて、ともすればただの粗暴なキャラクターになりかねない桑原ですが、そこはやはり商人の町・大阪を舞台とする作品。桑原はかなりの口達者でもあり、二宮相手に軽口を連発するというコミカルな側面をのぞかせます。なかでも大阪一の二枚舌を誇る二宮との分け前をめぐる舌戦は『破門』と『螻蛄』の両作品に共通するお約束のシーン。 なお、バイオレンスなアクションと軽妙な会話の合わせ技が魅力の「疫病神シリーズ」ですが、台詞の言い回しはドラマ仕様にアレンジされたアドリブが多く採用されているとのこと。それでも原作の桑原像から解脱しないのは、実力派俳優・北村一輝の流石の手腕に他なりません。

女を甘やかすだけが男じゃない

自己や他者に対し、決して湿っぽくも卑屈にもならない桑原。「逃げるから痛いんじゃい」と言い切り、常に顔を上げます。「疫病神シリーズ」は所謂アンチヒーローによる世直しドラマとは一線を画しますが、視聴後に訪れる独特の爽快感は、こうした桑原の男っぷりの良さに起因するのかもしれません。 「わたし、幸せになれるやろか」と呟くホステスに桑原が投げかけた言葉は、男女問わず一見の価値あり!

舌先三寸のコンサル 二宮啓之/濱田岳

螻蛄(疫病神シリーズ)
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借金まみれで事務所は立ち退き寸前、挙げ句の果てに母親からせしめた金を夜通し博打につぎ込んでは仕事中に船を漕ぐという毎日を過ごしていた二宮啓之。それまで博打で得ていたスリルを桑原という存在に見出したとき、二宮の本性が目を覚まします。 表面的には桑原が二宮を巻き込み、強引に連れ回しているようにも見える「疫病神」シリーズ。しかし実際のところは、ギリギリの興奮を追い求める二宮が、自ら好んで崖っぷちの賭けに身を投じている節があります。 好戦的な桑原とは異なり、一度は「逃げるが勝ち」と言い捨てたこともある二宮ですが「世の中で一番キツイのは退屈」と漏らす桑原に、心髄では共鳴しているのではないでしょうか。

裏切られるのも、ぼったくられるのも想定内の最凶コンビ

必要とあらば桑原は二宮を見捨て、二宮も桑原に経費をカサ増しして請求、笑顔でぼったくる。互いに「この疫病神が!」と嫌厭しては、互いの心に火をつけ合う。「疫病神」シリーズの醍醐味のひとつには、このドライでもあり、熱くもあるという桑原と二宮の特異な距離感が挙げられます。 ちなみに、二宮啓之を演じた濱田岳は、東京都の出身。本作では、大阪弁を用いてのハイテンポな掛け合いや、危険なワイヤーアクションに挑戦しました。

ケタ外れの生命力を発揮する、懲りない人びとの物語

螻蛄(疫病神シリーズ)
©2016 スカパー!

「人間ちゅうのはそう簡単に死ぬかい!」

幾度となく殴られ、二度も車に撥ねられても立ち上がる二宮。命の危機に瀕してもなお、ブレーキが効かない桑原。疫病神コンビには、桑原の台詞を体現する強烈なタフさがあります。また、映画プロデューサーの小清水や伝法宗の宗務長といったサイドプレイヤーの面々も、何度痛い目に遭おうが危険な綱渡りを止めようとしない圧巻のしぶとさを披露します。

「人は思ったより簡単に変わる」

二蝶会の若頭・嶋田は、そう桑原に言い聞かせます。確かに、ライフステージの変化で友人が遠のき、心寂しさを覚えるーーというような事態は誰しもが経験することで、嶋田の台詞が真理をついていることは疑いようもありません。 しかし、人の心が移ろいやすいは世の常だからこそ、何が起きようとも何処に行こうとも全く懲りない疫病神たちの頑強な姿に、痛快さと一種の羨望を感じずにはいられないのです。

「一寸先は闇」お金と欲望が蠢く疫病神の世界

螻蛄(疫病神シリーズ)
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お金が命に直結する現代社会では、極限状態に追い込まれれば追い込まれるほど、お金への執念は生きる欲望の裏返しとなって人間の行動に反映されることも無きにしもあらず。むろん、桑原と二宮のハイエナのごときバイタリティの根底にも、並々ならぬお金への執着心が存在します。ひいては、お金という存在が「疫病神」シリーズの核を形成していると言っても過言ではないでしょう。 『破門』および『螻蛄』では、物語が進行するに従い、登場人物たちの報酬額や借金額も刻々と変動します。そして、命が宿ったかのごとく蠢動を続けるお金の行方を追い、当人たちはなりふり構わず奮起するのです。ドラマの端々にまで漲る臨場感や人間臭さの源は、この“お金を流動的に描く”という切り口に秘められているのかもしれません。

大阪アンダーグラウンド

大阪の街をとことん格好良く撮る

螻蛄(疫病神シリーズ)
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「疫病神」シリーズの主な舞台は、大阪市中央区から浪速区にかけて広がる所謂ミナミと呼ばれるエリアと、それに隣接する天王寺・阿倍野区。道頓堀や難波、新世界、通天閣といった観光スポットがひしめく、大阪らしさが凝縮された一帯です。 ここを舞台にドラマや映画を撮ると、ステレオタイプな大阪のイメージが誇張された“コテコテが過ぎる”作品が生まれがちですが、ドラマ「疫病神」シリーズは、原作小説に漂う危険な香りを巧みに映像化。ほの暗い新世界市場を抜けて、雨上がりの通天閣をバックに主人公のふたりが登場する『破門』オープニングから終始一貫、骨太のかっこよさが光る映像で視聴者を魅了します。 なお『破門』後半では、リドリー・スコット監督の映画『ブラック・レイン』(1989)にも登場した十三(じゅうそう)の栄町商店街が、ちらりと画面に映ります。どことなくレトロなアーケードの電飾と相まって、哀愁を帯びた桑原の背中がひとしお心に残るカットです。

B級から高級グルメまで!熱々の料理をペロリ

ナポリタンの魔力

螻蛄(疫病神シリーズ)
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原作の小説では洋服から車、食の好みに至るまで徹底した高級志向の人物として描かれている桑原保彦。対する二宮啓之は相当な大食漢と表現されており、桑原と二宮は、謂わばグルメ×グルトンのコンビでもあります。 ドラマでは関東煮(おでん)、お好み焼き、激辛ラーメン、天ぷら、焼肉、中華、ステーキ、伊勢海老の鉄板焼きなど、視聴者の空腹感を大いに刺激するメニューが目白押し。しかも、これらの料理はすべて、出来立て熱々の状態でキャストに提供されるというこだわりよう。 さらにはドラマオリジナル要素として“桑原が大のナポリタン好き”という設定が追加されており、新世界に実在の喫茶店「Sun」で撮影されたシーンでは、ナポリタンに絡む形で原作小説の著者・黒川博行がカメオ出演を果たしました。 多種多様な料理のなかでもダントツの登場回数を誇るナポリタンですが、もはや桑原がナポリタンを頼むたびに修羅場が訪れているような気がしてならない二宮。ナポリタンが何かを引き寄せている......?果たして真相はいかに。

ドラマの製作陣に届いてほしい、この思い

シリーズ最新刊『泥濘』

螻蛄(疫病神シリーズ)
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原作者の黒川博行は、1997年に出版した『疫病神』を皮切りに『国境』『暗礁』『螻蛄』『破門』『喧嘩』と立て続けに続編を執筆しています。そして本年2018年の6月には、待望の新刊『泥濘』が発売されました。 初出版から20年以上が経過した今もなお、堅調な発展を続ける原作の小説シリーズ。未だ映像化されていない作品の数々が、いずれこのドラマの続編として再び「北村一輝・濱田岳のW主演」で製作される日が来ることを熱望せずにはいられません。 ドラマの終盤では、桑原がいないと心に穴が開くという二宮のモノローグが流れます。「いつかふさがる日は来るんやろか」そう思慕しているのは、きっと二宮だけではないはず。視聴者の私たちも、いずれ疫病神コンビに再会できることを祈りつつ、この特集を締めたいと思います。

シリーズのファンは、映画版も要チェック!

映画『超高速!参勤交代』の佐々木蔵之介と関ジャニ∞横山裕のW主演で送る映画『破門 ふたりのヤクビョーガミ』。こちらは小説『破門』に特化した内容の作品です。 実は原作の小説では、マカオや香港にまで足を延ばしていた疫病神コンビ。映画版ではマカオのカジノを再現した豪華な演出を用いて、原作小説の舞台設定を忠実にスクリーンに反映しています。また、英語教師を父に持ち、洋楽に詳しいという桑原の意外な一面を表現するべく、主演の佐々木蔵之介がカラオケで歌声を披露しています。シリーズのファンは、こちらも見逃せませんね。

ドラマシリーズ作品情報

破門(疫病神シリーズ)
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『破門(疫病神シリーズ)』 原作:黒川博行 『破門』角川書店/『疫病神』角川文庫・新潮文庫 出演:北村一輝、濱田岳、山下リオ、牧田哲也、赤井英和、永澤俊矢、木下ほうか、鶴見辰吾 ほか 演出:木村ひさし、森淳一、藤澤浩和 脚本:酒井雅秋

螻蛄(疫病神シリーズ)
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『螻蛄(疫病神シリーズ)』 原作:黒川博行 『螻蛄』新潮文庫・角川文庫 出演:北村一輝、濱田岳、山下リオ、牧田哲也、佐野和真、朝海ひかる、橋本さとし、鶴見辰吾 ほか 演出:木村ひさし 脚本:酒井雅秋 Blu-ray&DVD発売中 ©2015 スカパー!/KADOKAWA ©2016 スカパー!