「ハリー・ポッター」シリーズにおいて、ハリーとヴォルデモートの命運を分けた"死の秘宝"のひとつ、ニワトコの杖。呪われた歴史をもつこの杖は、ハリーたちが活躍する前の時代を描いている「ファンタスティック・ビースト」シリーズにおいても非常に重要なアイテムとなっています。 この記事では、常に死がつきまとっていたニワトコの杖の歴史と性質、そして作中における所有者の移り変わりを解説していきます! ※この記事では「ハリーポッター」シリーズについてネタバレありで解説しています。
ニワトコの杖とは何なのか?その性質
名前 | ニワトコの杖 |
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素材 | ニワトコの木にセストラルの尾の毛の芯 |
別名 | 死の杖 , 宿命の杖 |
ニワトコの杖はニワトコの木から作られ、長さ38センチの杖です。芯には「死を制した魔法使いしか制御できない」とされる扱いにくいセストラルの尾の毛を使用。つまり死を克服した者のみが扱える代物というわけですね。 また、ニワトコの杖の英名「Elder Wand」には、ニワトコという意味だけではなく、「年長の」という意味もあります。これは、「三人兄弟の物語」の長男が杖を最初に授かったことも暗示しています。
吟遊詩人ビードルの「三人兄弟の物語」で語られるニワトコの杖の伝説
そもそも死の秘宝とは何でしょう?ハリー・ポッター魔法ワールドにおけるおとぎ話によれば、吟遊詩人ビードルの「三人兄弟の物語」でその誕生秘話が語られています。 アンチオク、カドマス、イグノタスのペベレル三兄弟が旅の途中に遭遇した存在「死(Death)」を出し抜き、褒美として所望したのがそれぞれニワトコの杖、蘇りの石、透明マントの3つのアイテム。 長男アンチオクは戦好きだったため最強の杖を求め、それ故に死を呼び込んでしまいます。シリーズ7作目「死の秘宝」でもニワトコの杖は死を呼び、蘇りの石は死を避け、透明マントは死から身を隠すものとして登場しました。
ニワトコの杖を巡る呪われた歴史と歴代の所有者
強者を倒し酒に酔って杖の力を吹聴したアンチオクは、その晩何者かによって杖を奪われ殺されてしまいます。そこから、ニワトコの杖は次々と暴力的な方法で奪われて所有者を変え続け、いつしか「死の杖」と呼ばれるようになりました。 中世の間には、悪人エメリックと極悪人エグバートとの戦いによって敗者エメリックから勝者エグバードへ杖が渡りました。その1世紀後、闇の魔術書を執筆したゴデロットが所有し、その息子ヘレワードによって殺害されて所有権を奪われています。 18世紀には杖の力で恐怖支配を行ったデベリルとロクシアスとの間で奪い合いが起こります。ロクシアスを殺して所有者になったのが魔法使いアーカスかリビウスか、議論の余地があるとのこと。いずれにしろ、死の杖はいかんなくその力を発揮してきたようです。
ニワトコの杖の「所有者」と「主人」はどう違う?所有権の条件とは
近年においては杖職人グレゴロビッチが所有し、複製の研究をしていたようです。しかし死の秘宝を集める黒い魔法使いグリンデルバルドによって杖は奪われ、彼を台頭させる原因となります。 人間界と魔法界の支配を企んでいたグリンデルバルドと対決したダンブルドアは、勝利してニワトコの杖の主人かつ所有者となりました。これまでは杖の主人と所有者が一致していましたが、ヴォルデモートに狙われた頃からその不一致が起こり始めます。 ニワトコの杖は勝利した者に忠誠を誓い、主人と認める性質を持っています。つまりたとえ杖を所有しても、その時点で前主人に勝利した者を新主人としている場合、戦いもせず奪っただけでは真の杖の主人にはなれないのです。
『死の秘宝』での杖の主人/所有者の移り変わりはどうなっていたのか?
なぜマルフォイが杖の主人に?
ではヴォルデモートとハリーの最終対決時、ニワトコの杖の真の主人は誰だったのか?それは「謎のプリンス」でのダンブルドアとドラコ、そしてスネイプが対峙する場面に隠されています。 前もって死を覚悟していたダンブルドアは、スネイプにわざと自分を殺させることで、杖の力の消滅を目論んでいました。しかし計画に反してドラコから武装解除の呪文を受けて敗北。ここですでにドラコが杖の主人になっており、その後スネイプにとどめを刺されたのです。そして杖自体はダンブルドアの墓へ葬られます。
闘いの命運を分けたヴォルデモートの誤り
一方、死の秘宝を探すヴォルデモートはグリンデルバルドから杖の情報を聞き出そうとしますが、グリンデルバルドはこれを拒否。ヴォルデモートは、グリンデルバルドに勝ったダンブルドアこそが所有者だと察知し、その墓から奪うことに成功します。 ヴォルデモートは、奪った杖の力が発揮できない理由を「主人はダンブルドアを殺したスネイプ」と勘違いし、スネイプを殺害。そしてハリーとの最終決戦に臨みます。しかし実は、ハリーがその前にドラコから杖の忠誠を奪っていたことには気づいていませんでした。 所有者はヴォルデモート、主人はドラコ→ハリーというこの不一致が最終作「死の秘宝」を理解する上で最大のポイントになっていきます。
英断!ハリーの「最後の選択」
杖を折っていた映画版とダンブルドアの墓に戻した原作
ヴォルデモートが持つニワトコの杖の忠誠がハリーにあったため、所有者ヴォルデモートは主人ハリーに勝つことができず、逆に自らの死の呪文によって葬られてしまいます。 ヴォルデモートの死はハリーをニワトコの杖の真の主人/所有者としましたが、ハリーの最後の選択は実に潔いものでした。映画版では杖を折っていますが、原作では杖をダンブルドアの墓に戻し、自分が自然に死を迎えれば杖の力は消えると語っています。 グリンデルバルドやヴォルデモートのように闇の力に使うのでもなく、ダンブルドアのように善の力に使うのでもなく、ただ「元の場所に戻す」。過酷な経験をいくつも重ねてきたハリーだからこそできた、最強の杖の力を使わないという決断!
ニワトコの杖の行方が物語の行方を決める
こうして見るとニワトコの杖は、「その主人の行方が物語の運命を分けた」とも言えるほど重要なアイテムであることがわかりますね。ハリーとヴォルデモートの闘いは終わりを迎えましたが、『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』から描かれるダンブルドアとグリンデルバルドの闘いは、どのような物語となるのでしょうか。 J・K・ローリングによる"魔法ワールド"からまだまだ目が離せません!