2018年12月18日更新

傑作SF「猿の惑星」シリーズを解説 映画版全9作品の流れを整理しよう

『猿の惑星』

ピエール・ブールの小説を原作として映画化され、今もなお人気を博している「猿の惑星」シリーズ。多岐に渡るシリーズが展開されているメガコンテンツ「猿の惑星」の情報を、本記事を通して完全把握していきます。

映画化された『猿の惑星』は3種類!

元々はピエール・ブール作の傑作SF小説が原作

フランスの小説家、ピエール・ブールのSF小説を映画化した「猿の惑星」シリーズ。 第1作目は1968年に製作された同名作品であり、その後同シリーズでは5作、ティム・バートン監督によるリ・イマジネーション版『PLANET OF THE APES/猿の惑星』、そして新シリーズ3作品……と、複数のシリーズ化が実現してきました。 そこで今回は、「猿の惑星」の各シリーズの情報を改めて整理したい人に向けて、映像化された「猿の惑星」について解説していきます。

いろんな『猿の惑星』があるが、物語設定は“ほぼ”原作小説を踏襲している

『猿の惑星』は、猿と人間の争いをベースに、その中で繰り広げられる同種間での闘いや裏切り、社会が崩壊していく様子を描いた物語。 斬新なストーリー展開と世界観の設定が話題を呼び、これまでになかった人間社会の風刺作品として人気を博し、1968年には映画版第1作目が公開され、その後も多岐に渡るシリーズ化が展開されてきました。 有色人種への差別や奴隷制度への痛烈な批判、冷戦や核戦争などの社会現象への問題提起が込められており、また、「人間の知性や能力は固定されて備わっているものではなく、その本質は他の動物とおなじである」という、身勝手な人間たちへの鋭いメッセージを携えた作品ともいわれています。

2010年から始まった最新シリーズはトリロジー(三部構成)

「猿の惑星」最新シリーズは、プロデューサー・脚本家のリック・ジャッファとアマンダ・シルヴァー夫妻によって企画されたリブート版。 2005年より企画は始動していたものの、脚本の執筆やスタッフの招集などに約5年の歳月を費やしたため、リブート版第1作目の『猿の惑星:創世記』の制作は2010年に始まりました。ちなみに日本公開は2011年です。 人間として育てられた猿のニュースや遺伝子研究の進歩から着想を受けて作られた本シリーズ。遺伝的に進化したチンパンジーと人間の家庭を描くことで、そこから見えてくる生物本来の姿や猿と人間の共通点および生き物としての多様性を問いかけています。 また、進み過ぎた科学によって生まれる弊害など、人間が自らで滅びに向かっていく様子を皮肉る一面もあり、文明社会の虚無感へ疑問を投げかける社会派映画でもあります。

『猿の惑星:創世記』(2011年)-それは一匹の子猿から始まった。

製薬会社に勤める神経学者のウィルは、アルツハイマー遺伝子治療薬を開発。それを実験用の雌のチンパンジーに投与するものの、密かに身ごもっていた子猿を守るために凶暴化したため、射殺されてしまいます。 このできごとをきっかけにウィルの研究は中止を余儀なくされる中、ウィルは遺子である雄のチンパンジーにシーザーと名付け育てることを決意。 しかしある日、アルツハイマー型認知症を患うウィルの父親・チャールズが隣人トラブルを起こしてしまい、それを見ていたシーザーがチャールズを守るために隣人を攻撃。 その結果、シーザーは霊長類保護施設に送られてしまいます。 送られた施設で経営者親子によって度重なる虐待を受けたシーザーは、絶望の末に人間への憎悪を強めていきます。そして、人間からの虐待経験がある他のゴリラやオランウータンたちと手を組み、人間への反逆計画を始動することに……。

本作では、人間のウィルが開発した薬の実験体となったチンパンジーが、予期せぬ形で凶暴化し射殺されてしまう他、ウィルは個人の身勝手な感情から人体実験までも行います。 この展開から、人間の醜さと滑稽さが描かれており、文明社会の弊害と崩壊がテーマとなっていることがわかります。 また本作は、視覚効果協会からも授賞されるなど、特殊メイクやCG表現に関して観客および批評家たちから高い評価を得ました。

『猿の惑星:新世紀』(2014年)-人間と猿の運命はいかに。

人間に頼らず生活する能力を獲得し、エイプ(猿)としてシーザーが仲間たちと人間への復讐劇を実行した前作から10年後の世界。 開発当初は画期的な特効薬と思われていたものが殺人ウィルスであることが判明し、その結果、感染者を次々と増やしていき、ついには地球規模の感染に発展。それゆえに人口は減っていき、さらにお互いを殺し合うなど、人類の文明は完全に崩壊の一途をたどることに。 そんな脇でエイプたちは、シーザーが定めた「エイプはエイプを殺さない」という信念のもと温和な生活を送り、英語を使ったコミュニケーションをエイプ間で成立させるなど、高度な文化レベルと平和を享受しています。彼らは争いを好まず、武装しエイプたちのコミュニティに侵入してきた人間とも互いに不可侵の状態を築き上げようとしていました。 そんなある日、エイプの縄張りに侵入してきた人間のマルコムから、人類存続の危機と人間たちはエイプの協力が不可欠であることを明かされます。 それを受けシーザーは、他のエイプたちの反対を押し切る形で人間たちへの協力を決意。反抗心を抱く他のエイプたちからの邪魔や、協定に対する人間の違反の発覚などのトラブルに見舞われながらも人間たちを助けることに成功します。 しかしシーザーに対するエイプたちの反発心はさらに強さを増していき、ついにはエイプ間のクーデター計画が発生。徐々にエイプたちの関係はほつれていき、それはやがてエイプと人間の戦争を招くことになり……。

高評価を収めた前作の直後に企画が立ち上がり、2014年に公開となった本作。崩壊に向かっていく人類の世界と発展を続ける猿たちの世界が対比的に描かれ、その中で生じていく同部族間の反発やクーデーターなど、自分で自分ををむしばんでいくという、生き物の愚かさや発展しすぎることで生まれる弊害についての風刺が、前作に引き続き込められています。 批評家の多くは、その巧妙で繊細な脚本と特殊効果の両立を高く評価。その結果、複数の映画賞を獲得しました。

『猿の惑星:聖戦記』(2017年)-戦いはついに終幕を迎える。

舞台となるのはエイプと人間の戦争が勃発してから2年後の世界。 地球の支配権をめぐる両者の争いはますます激化。さらにはシーザーに粛清されたエイプのコバの意志を引き継ぐ、シーザーへの復讐心に燃えるゴリラのレッドを筆頭とした、一部のエイプの集団による裏切りが発生するなど、エイプ間の争いも複雑化していました。 人間との争いを良く思わず、和平交渉を願うシーザーは、息子で群れの後継者であるブルーアイズや、チンパンジーのロケットなど、同じ志を持つ仲間たちとともに安全な新天地を探し求めます。 しかし、集落に入り込んだ人間の兵士たちにブルーアイズと妻のコーネリアを殺されてしまい、それをきっかけにシーザーは考えを改め、人間たちへの復讐を決意。 本作はリブート版三部作の完結編であり、猿同士の裏切りや人間の殺し合いなど、同族間の争いによりフォーカスを当てています。

シーザーの心情の変化や葛藤が前二作と比べてより色濃く描かれています。また、人間たちの問題にエイプたちが巻き込まれていく様子や、人間たちが自ら退化を深めていく姿などから、理性を失うことで引き起こされる悲劇や、人間社会が持つ愚かしい虚しさが表現されています。 批評家からは前作と同様に精密な脚本と特殊効果の精巧さに注目が集まり、完結編としてさらに道徳性を増したストーリー展開が話題となりました。また、映画批評サイトの「Rotten Tomatoes」では支持率93パーセントを記録するなど、高評価を獲得しました。

最新シリーズはオリジナルシリーズの第1作目(1968年版)に繋がっている

猿の惑星
©2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

「猿の惑星」シリーズは時系列が公開順とは異なり、リブート版三部作はオリジナルシリーズ第1作目の『猿の惑星』の物語が始まる前の世界を描いています。そのため、この最新シリーズは『猿の惑星』と繋がっており、リブート版からの鑑賞の場合でも時系列を追うことができる構造となっているのです。 最新シリーズを鑑賞してからオリジナルシリーズをたどっていくことで、登場キャラクターたちの背景や世界観の構築をより楽しむことができるかもしれません。

1968年にスタートしたオリジナルシリーズは5作

1968年公開の第1作目から始まり、全5作品に渡って描かれるオリジナルシリーズ。 原作者のピエール・ブールの作家仲間であるアラン・ベルンハイムが、新作映画の題材探しにパリに来ていたアメリカの映画プロデューサーのアーサー・P・ジェイコブスに『猿の惑星』を紹介し、そのストーリーを彼が気に入ったことで映画化が実現しました。 本シリーズには原作小説の要素に加えて、世界大戦後に出来上がった対立構造である冷戦の要素も盛り込まれており、核戦争が引き起こした人間の悲惨な末路と猿と人間によるふたつの種族の争いが密接に絡んだ状態で描かれています。

『猿の惑星』(1968年)-名作はここから始まった。

主人公のテイラーたちが乗った宇宙船が、とある惑星に着陸。未開の地を探索し始めたテイラーたちが目撃したのは、武装した猿たちの騎兵と猿に支配され奴隷のごとく扱われる人間たちの姿でした。 驚愕の光景に目を見張りながらも、テイラーたちは猿の攻撃からの逃走を図りますが、ひとりは射殺、もうひとりは捕獲され、そしてテイラーは重傷を負いそのまま意識を失ってしまいます。 動物病院で目を覚ましたテイラーは、チンパンジーの獣医のジーラ博士に言語を使えることを証明し、コミュニケーションをとることに成功。知能が低い他の人間たちとテイラーは違うと感じたジーラ博士は、猿はもともと人類であったという独自の研究結果に確信を抱き、猿の惑星で真理とされていることへの疑問を深めていきます。 しかしテイラーの存在は他の猿たちからは危険視され、テイラーに協力するジーラ博士たちも断罪される事態に。絶体絶命の中、果たしてテイラーは無事に猿の惑星から抜け出すことができるのか……。

1968年に公開された映画版「猿の惑星」シリーズの第1作目となる本作。原作小説とは異なる結末が用意されており、それにより人間の愚かさや人間社会の脆さが一層浮き彫りになる作品となっています。 また、唖然としてしまう本作のエンディングシーンはシリーズを象徴する名シーンとして話題となり、1960年代の映画の中で最も有名なシーンのひとつともいわれています。 本作は公開すると間もなく多くの批評家から高評価を獲得し、第41回アカデミー賞では特殊メイクを担当したジョン・チェンバースがアカデミー名誉賞を受賞するなど、大きな注目を集めました。

『続・猿の惑星』(1970年)-猿とミュータント化した人類との闘いを描く。

舞台は前作『猿の惑星』のエンディング直後の世界。禁断地帯を旅するテイラーとノバ、宇宙で行方不明となったテイラーを探すブレントの3人が、猿およびミュータント化した人類たちを相手に闘う姿が描かれています。

本作の大筋ともいえるのが、テイラーを始めとする人間たちと、ミュータント化した未来の人類の争いを巡る物語。ミュータント化した人類はコバルト爆弾を崇拝しており、その様子から核に依存する人間たちを風刺する傾向がより強まった作品であることがわかります。 また、登場人物が自害とも受け取れる行動を繰り広げるなど、「猿の惑星」シリーズで一貫したテーマとされている自滅の描写が特に強く表現された作品となっています。 前作が高評価を受ける一方で本作の評価は低いものとなりましたが、興行的には成功を収めたため、結果を受けて20世紀フォックスは第3弾の製作を進めることとなりました。

『新・猿の惑星』(1971年)-人種問題に切り込んだ好評作。

第1作目に登場したチンパンジーのジーラとコーネリアス夫妻を主人公に物語が展開されていくオリジナルシリーズ第3作目。 ミュータント化した人類との戦いの末に、地球は爆発を起こし消滅しましたが、猿の町に残されていたテイラーたちの宇宙船に乗り込むことでジーラとコーネリアス、もう一匹のチンパンジーのマイロは難を逃れていました。 しかし、爆発の衝撃で時空に歪みが生じたため、その反動で宇宙船は過去にタイムスリップし、1973年の地球に到着。テイラーたちが乗っていたはずの宇宙船からジーラたちが出現したことに驚いたアメリカ政府は、三匹をロサンゼルス動物園に輸送します。 そこで出会った動物学者のルイスとスティービーに、未来の地球が爆発で消滅してしまうことを告げる一行。その高い知性から国賓として扱われることとなりますが、人間の陰謀によりジーラたちはまた窮地に陥ってしまい……。

本作はオリジナルシリーズの続編の中では最も高い評価を得た作品であり、批評家の間でも好評を博しました。

『猿の惑星・征服』(1972年)-賛否両論の社会派作品。

本作で描かれるのは、前作(『新・猿の惑星』)からしばしの年月が経過した世界。謎のウィルスが蔓延したことで犬や猫が絶滅し、その代わりに猿が人間のペットとして飼われていました。 しかし猿は知能が高く、人間と同様の能力を持つことが判明。人間たちは猿を奴隷として扱うようになります。 本作の主人公となる、ジーラとコーネリアスの遺児であるマイロは、自分を育ててくれた人間のアーマンドと共に都市に訪れますが、そこで人間から虐待を受ける他の猿たちの姿を目撃。 ショックのあまり言葉を発してしまい、警察からマークされるようになってしまいます。 その後、生き延びるためにアーマンドと別れて他の奴隷猿に紛れたマイロは、優秀な猿としてオークションにかけられ、新しく付けられた「シーザー」という名前でブレック知事側近のマクドナルドのもとで働くことに。 そんな折、アーマンドがシーザーを匿っていた過去が明らかに。それがきっかけで警官ともみ合いになったアーマンドは、その弾みで死んでしまいます。 アーマンドの死を知ったシーザーは、人間たちへの復讐を決意するのでした。しかし、ブレック知事の疑いのまなざしがシーザーに向けられ……。

脚本担当曰く、アフリカ系アメリカ人が置かれていた境遇を猿の立ち位置に反映させることで、本作はアフリカ系アメリカ人公民権運動やワッツ暴動の要素を取り入れることに成功しています。 製作費は前作よりも低い170万ドルしか用意されず、そのため粗さが目立つ仕上がりとなり、鑑賞後の賛否も大きく分かれることとなりました。しかし興行的には成功を収めたため、オリジナルシリーズの最終作である第5弾の製作が決定しました。

『最後の猿の惑星』(1973年)-シリーズはついに終幕へ。

前作でシーザーを筆頭に巻き起こされた人間との闘いは核戦争に発展し、その結果地球の支配権を人間たちから奪取することに成功した猿たち。人間を召使いとして扱うようになり、以前とは立場が逆転した状態で人間と猿は共存関係を築いていました。 ある日シーザーは、自分の補佐役を務めるマクドナルド(人間)から両親の情報が都市に残されていることを聞き、核戦争で壊滅した都市にマクドナルドと共に訪れます。その地下の記録保管庫で「猿が地球を滅ぼす」、という母親であるジーラからのメッセージを発見したシーザーは、強いショックを受けます。 そんな中、核戦争を生き延び地下に潜んでいたミュータントの人間たちによるシーザーたちへの攻撃が始まり、また猿たちの間でもシーザーへの反乱が計画されていて……。

人種間闘争と支配をテーマにした本作。オリジナルシリーズの完結編となる第5弾でしたが、製作費は全5作品の中で最も低く、脚本家の降板などのアクシデントもあり、極めて曖昧な形で物語は終息を迎えています。 興行収入が製作費を上回る一方で、評論家からは酷評の声が相次ぎ、全5作品の中で最低の作品との評価も目立ちました。しかしラストシーンの解釈について論争が巻き起こるなど、大きな反響と話題を生む形で本シリーズは完結を迎えました。

ティム・バートンによる『PLANET OF THE APES/猿の惑星』も存在する

上記2シリーズとは全く別の世界線です!

いよいよ最後の3つ目のシリーズです。こちらは2001年に、ティム・バートン監督による「リ・イマジネーション版」と称された別世界線作品『PLANET OF THE APES/猿の惑星』として製作・公開されました。 本作は、猿が人間を支配する世界という設定以外は、原作小説およびオリジナルシリーズとは全く異なるストーリーとなっています。そのためリメイク版という認識ではなく、再創造版という認識が正しいとされています。 物語の舞台は西暦2029年の近未来。米空軍・宇宙探索基地オベロン号は宇宙空間での調査活動を実行。そこには人間の他に、遺伝子操作による高い知能を持った猿人類が乗っていました。 そんな折、謎の磁気嵐が発見され、チンパンジーのペリクリーズが乗る探査ポッドが飲み込まれ、通信不可能となってしまいます。 それを追いかけた人間の宇宙飛行士のレオが乗ったポッドも同じように磁気嵐に飲み込まれてしまい、そのまま未知の惑星に到着します。するとそこには、原始的な人類が高知能を持った猿に支配される世界が広がっていました。 猿たちから逃げ惑いながら、どうにかして地球帰還を試みるレオでしたが、そこで衝撃的な事実を知ってしまい……。

オリジナルシリーズのリメイクではなく、リ・イマジネーション版としての製作を希望するティム・バートンが監督としてキャスティングされたうえで企画が進んだ本作品。特殊効果については高い評価を獲得したものの、原作とは全く異なるストーリー展開や結末が大きな批判を受けました。 そのため、低評価の作品がノミネートされる映画賞であるゴールデンラズベリー賞では、最低リメイク賞、最低助演男優賞、最低助演女優賞を受賞するなど、酷評が相次ぐ結果となりました……。

不朽の名作『猿の惑星』は不滅!!

映画版以外にもテレビシリーズやアニメ版もある……!

映画版の他にも、過去にはテレビシリーズやアニメーション版など、多種多様なジャンルのシリーズ化や映像化が実現された『猿の惑星』。 その独創的なストーリー設定と、随所に込められた人間社会への鋭い風刺表現が、世代を越えた共感を呼ぶ普遍的な物語であるとして、今日まで多くの人々に愛されてきました。 本記事ではそんな「猿の惑星」のシリーズの情報を整理してきました。未鑑賞の人は今回の記事を参考にすれば、各シリーズの違いや共通点を楽しむことができるはず。世界中で長年愛されてきた名作の世界を、この機会にぜひ堪能してみてはいかがでしょう!