2020年2月5日更新

「猿の惑星」シリーズはどの順番で観るのがベスト?時系列を整理しながら解説

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猿の惑星
©2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

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映画化された『猿の惑星』は3シリーズ

元々はピエール・ブール作の傑作SF小説が原作

フランスの小説家、ピエール・ブールのSF小説を映画化した「猿の惑星」シリーズ。 第1作目は1968年に製作された同名作品であり、その後同シリーズでは5作、ティム・バートン監督によるリ・イマジネーション版『PLANET OF THE APES/猿の惑星』、そして新シリーズ3作品と、複数の映画シリーズ化が存在しています。 そこで今回は「猿の惑星」シリーズ公開順を整理し、おすすめの観る順番を紹介しましょう。これで名作SFシリーズをさらに楽しめること間違いありません。

いろんな『猿の惑星』があるが、物語設定は“ほぼ”原作小説を踏襲している

『猿の惑星』は、猿と人間の戦いの中で、同種間でもくり広げられるの争いや裏切り、そして社会が崩壊していく様子を描いた物語。 斬新なストーリー展開と世界観の設定が話題を呼び、これまでになかった人間社会の風刺作品として人気を博しました。1968年には映画版第1作目が公開され、その後シリーズ化されています。 有色人種差別や奴隷制度への痛烈な批判、冷戦や核戦争などへの問題提起が込められている本シリーズ。また、「人間の知性や能力は固定されて備わっているものではなく、その本質は他の動物とおなじである」という、身勝手な人間たちへの鋭いメッセージを携えた作品ともいわれています。

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「猿の惑星」シリーズ公開順を整理&観るべき順番とは?

「猿の惑星」は、1968年から1973年にかけて5作が製作されたオリジナルシリーズと、2001年に公開されたティム・バートン監督作品『PLANET OF THE APES/猿の惑星』、そして2011年から2017年にかけて公開されたリブート版三部作があります。 全9作におよぶ「猿の惑星」シリーズは、時系列が公開順とは異なり、リブート版三部作はオリジナルシリーズ第1作目の前日譚となっているのが特徴です。 そのため、基本的にリブート版からオリジナル版に遡ると時系列順に物語が進んでいく構造になっています。その順番で鑑賞すると、登場キャラクターたちの背景や世界観の構築をより楽しむことができるでしょう。

「猿の惑星」シリーズは時系列+バートン版の順に観るのがおすすめ

「猿の惑星」シリーズの時系列は以下のようになっています。2001年のティム・バートン版だけは、ほかのシリーズとの関連がほとんどないので、時間に余裕のある人は観賞してみてください。 ■『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』(2011年) ■『猿の惑星:新世紀(ライジング)』(2014年) ■『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』(2017年) □『猿の惑星』(1968年) □『続・猿の惑星』(1970年) □『新・猿の惑星』(1971年) □『猿の惑星・征服』(1972年) □『最後の猿の惑星』(1973年) ◆『PLANET OF THE APES/猿の惑星』(2001年)

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2011年から始まったリブート版はトリロジー(三部作)

「猿の惑星」のリブート版は、プロデューサーで脚本家のリック・ジャッファとアマンダ・シルヴァー夫妻が企画したものです。 2005年より企画は始動していたものの、脚本の執筆やスタッフの招集などに約5年の歳月を費やしたため、1作目の『猿の惑星:創世記』は2011年に公開されました。 人間として育てられた猿のニュースや、遺伝子研究の進歩から着想を得た本シリーズは、オリジナル版の前日譚という位置づけになっています。進化したチンパンジーと人間の家庭を描くことで、そこから見えてくる生物本来の姿や猿と人間の共通点、そして生き物としての多様性を問いかけています。 進み過ぎた科学によって生まれる弊害など、人間が自ら破滅に向かっていく様子を皮肉る一面もあり、文明社会への疑問を投げかける社会派映画でもある本シリーズ。 また、本物の猿の動きと見紛うほどの、アンディ・サーキスのモーションキャプチャを使った演技にも注目です。

『猿の惑星:創世記』(2011年)

それは、一匹の子猿から始まった。

製薬会社に勤める神経学者のウィルは、アルツハイマー遺伝子治療薬を開発。それを実験用の雌のチンパンジーに投与するものの、彼女は密かに身ごもっていた子猿を守るために凶暴化し、射殺されてしまいます。 このことで研究の中止を余儀なくされたウィルは、遺子である雄のチンパンジーをシーザーと名付け育てることを決意。シーザーは実験体だった母の遺伝子を受け継いでいたため、成長するにつれ高い知性を見せるようになりました。 しかしある日、アルツハイマー型認知症を患うウィルの父チャールズが隣人トラブルを起こしてしまいます。それを見ていたシーザーがチャールズを守るために隣人を攻撃。結果、シーザーは霊長類保護施設に送られてしまいました。 送られた施設で経営者親子によって度重なる虐待を受け、人間への憎悪を強めていくシーザー。そして、同じく人間から虐待されていたほかのゴリラやオランウータンたちと手を組み、人間への反乱をおこすことを決意します。

一方ウィルは、自分の父で新薬の人体実験をしたことと、その結果を社長に報告。研究は再開され、改良された新薬を投与されたボノボのコバは、劇的な知能の向上を見せました。この結果を見た社長はさらなる臨床実験で新薬を大量生産します。 ウィルは会社をやめてシーザーを迎えに行こうとしますが、シーザーは彼を拒絶。その後密かに施設を抜け出し、製薬会社から新薬を盗んで仲間たちに投与させます。知能が向上した猿たちは、シーザーに率いられて施設を脱走。 製薬会社からの追っ手や警官隊も振り切って、かつてウィルと訪れた公園にたどり着いたシーザーの前にウィルが現れます。「うちに帰ろう」という彼の説得を拒否し、シーザーは仲間たちとともに森の奥に消えていきました。 その後、猿にとっては知能を向上させる新薬が、人間にとっては殺人ウィルスであることが発覚します。それはのちに「猿インフルエンザ」と呼ばれる感染症となり、多くの人々が死亡。人類は絶滅への一歩を踏み出したのでした。

本作では人間の醜さと滑稽さが描かれており、文明社会の弊害と崩壊がテーマとなっています。また、特殊メイクやモーションキャプチャを使ったCG表現でリアルな猿たちを作り上げ、高い評価を獲得しました。

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『猿の惑星:新世紀』(2014年)

人間と猿の運命はいかに

人間に頼らず生活する能力を獲得したシーザーが、仲間たちと人類への復讐劇を実行してから10年後。 アルツハイマーと特効薬と思われた薬が、通称・猿インフルエンザと呼ばれるウィルスとなり、世界中でパンデミックが発生します。人類が破滅への一途をたどるなか、エイプ(猿)たちはシーザーが定めた「エイプはエイプを殺さない」という信念のもと、高度に進化した平和な生活を送っていました。 そんなある日、彼らの縄張りに侵入してきたマルコムという人間が、人類滅亡の危機を乗り切るために彼らの生活領域にある水力発電所で作業をする必要があると許可を求めてきます。 シーザーは、他のエイプたちの反対を押し切って人間たちへの協力を決意しました。しかし納得できないコバたちは、シーザーへのクーデターを企てます。

マルコムたちの作業は完了し、人間のコロニーに電力を供給することに成功しました。そんななか、コバは人間から盗んだライフルでシーザーを狙撃。エイプたちの集落に火を放ち、それらを人間のテロ攻撃だとでっち上げます。 シーザーの代理としてリーダーとなったコバは、シーザーの息子ブルーアイズをはじめとする雄猿たちを率いて、人間の集落に戦争を仕掛けます。人間はあっという間に制圧され、その多くが捕虜に。そして、猿による人間の支配が始まりました。 一方、マルコムたちに助けられたシーザーが手術のために運ばれたのは、かつてウィルと暮らした家でした。いまは廃墟と化したその場所で、ウィルとの思い出に浸りながら彼は重要な決断を下します。 偶然マルコムに遭遇したシーザーの息子ブルーアイズは、父が生きていることを知りコバのグループを抜けることに。シーザーの支持に従って、捕虜となっている人間や仲間を解放していきます。 コバたちが占拠したビルにたどり着いたシーザーたち。群れの主導権を取り戻すため、コバに直接対決を挑んだシーザーは、苦戦しながらもなんとか勝利します。「エイプはエイプを殺さない」と命乞いをするコバに、シーザーは「コバはもはやエイプではない」と言い放ち、粛清しました。 猿同士の争いに勝利したシーザーでしたが、彼らのもとには人間の軍隊が迫っており、全面戦争はもはや不可避であることを覚悟します。

前作のヒットを受けて製作されたシリーズ2作目。滅亡に向かっていく人類と、発展していく猿たちの世界が対比的に描かれた本作。同時に、同部族間での反発やクーデーターなど、自分で自分をむしばんでいく生き物の愚かさや、文明が発展しすぎることで生まれる弊害について、前作に引きつづき鋭い風刺が込められています。

『猿の惑星:聖戦記』(2017年)

戦いはついに終幕を迎える

舞台となるのはエイプと人間の戦争が勃発してから2年後の世界。地球の支配権をめぐる両者の争いはますます激化し、さらにはシーザーに粛清されたエイプのコバの意志を引き継ぎ、シーザーへの復讐心に燃えるゴリラのレッドを筆頭とした、一部のエイプの集団による裏切りが発生するなど、エイプ間の争いも複雑化していました。 人間との争いを良く思わず、和平交渉を願うシーザーは、息子で群れの後継者であるブルーアイズや、チンパンジーのロケットなど、同じ志を持つ仲間たちとともに安全な新天地への移住を計画していました。 しかし、集落に入り込んだ人間の兵士たちにブルーアイズと妻のコーネリアを殺されてしまい、シーザーは人間たちへの復讐を決意します。家族を殺した大佐を追う彼を守るため、古くからの仲間である3頭が旅をともにすることに。

途中で山小屋に立ち寄った彼らは、話すことのできない少女と出会います。ひとりぼっちの彼女に同情した仲間の提案で、彼らは少女を連れて行くことに。 旅をつづけ、大佐のキャンプを見つけた一行は、そこにかつて仲間だった白ゴリラ・ウィンターを見つけます。身の危険を感じ人間側に寝返った彼から、シーザーは大佐の居場所を聞き出しますが、誤って殺してしまいました。「エイプはエイプを殺さない」という自ら定めた掟を破ってしまった彼は、かつてやはり自らの手で葬ったコバの悪夢に悩まされるようになりました。 その後、途中で出会ったエイプの案内もあり大佐たちの基地にたどり着いた一行でしたが、見回りの兵士に見つかり、仲間がひとり殺されてしまいます。これに深いショックを受けた少女は初めて感情をあらわにして泣き、シーザーは復讐心に燃え単独で要塞に乗り込みます。 要塞には、新天地に向けて旅立ったはずのシーザーの二番目の息子コーネリアスをはじめとする仲間たちが大勢捕らわれていました。彼らは劣悪な環境で強制労働をさせられていたのです。大佐に捕らえられたシーザーは、彼の部隊が軍本体と対立していることを見抜きます。 パンデミックから数年後、猿インフルエンザはさらに変異を遂げ、感染した者は退化していく症状が出るようになっていました。大佐はそんな状態の人間は必要ないと、自分の妻や子供も含めた感染者を殲滅していたのです。彼は「病気は治る」と考える軍本部と対立し、独自の部隊を組織したのでした。 シーザーの仲間たちは地下にトンネルを見つけて脱出。そこへ軍隊が到着し、戦闘が始まります。大佐に報復しようとするシーザーでしたが、彼が見たのは弱って声をなくしている大佐の姿でした。シーザーから銃を受け取った彼は、自ら命を絶ちます。 攻め入った軍隊から仲間たちを守るため、手榴弾でガスタンクを破壊したシーザー。その後、雪崩が起き人間は全滅。木に登ることができる猿だけが生き残りました。 仲間とともに新天地にたどり着いたシーザーは、そこで息を引き取ります。

本作はリブート版三部作の完結編であり、エイプ同士の裏切りや人間の殺し合いなど、同族間の争いによりフォーカスを当てています。 人間社会が持つ虚しさや愚かさが描かれた本作では、シーザーの葛藤も色濃く表現されています。完結編としてさらに道徳性を増したストーリーや、作品の大きな魅力である緻密な脚本、精巧な視覚効果でシリーズのフィナーレを飾りました。

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リブート版はオリジナルシリーズの第1作目(1968年版)に繋がっている

猿の惑星
©2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

リブート版では、オリジナルシリーズの前日譚が描かれました。『猿の惑星:聖戦記』のラストから20〜30年後が、1968年に公開されたシリーズ1作目『猿の惑星』の舞台となっています。 高い知能を得た猿と人間の、そして猿同士、人間同士の対立を描いた本作と同様に、オリジナルシリーズも現実世界の社会問題に目を向ける作品となっています。

1968年にスタートしたオリジナルシリーズは5作

『猿の惑星』(1968)
©20th Century-Fox/Photofest/zetaimage

1968年公開の第1作目から始まり、全5作品に渡って描かれるオリジナルシリーズ。 原作者のピエール・ブールの作家仲間であるアラン・ベルンハイムが、新作映画の題材探しにパリに来ていたアメリカの映画プロデューサーのアーサー・P・ジェイコブスに『猿の惑星』を紹介し、そのストーリーを彼が気に入ったことで映画化が実現しました。 本シリーズには原作小説の要素に加えて、世界大戦後に出来上がった対立構造である冷戦の要素も盛り込まれており、核戦争が引き起こした人間の悲惨な末路と猿と人間によるふたつの種族の争いが密接に絡んだ状態で描かれています。

『猿の惑星』(1968年)

名作はここから始まった

主人公のテイラーたちが乗った宇宙船が、とある惑星に着陸。未開の地を探索し始めたテイラーたちが目撃したのは、武装した猿たちの騎兵と猿に支配され奴隷のごとく扱われる人間たちの姿でした。 驚愕の光景に目を見張りながらも、テイラーたちは猿の攻撃からの逃走を図りますが、ひとりは射殺、もうひとりは捕獲され、そしてテイラーは重傷を負いそのまま意識を失ってしまいます。 動物病院で目を覚ましたテイラーは怪我の後遺症で言葉を発することができず、チンパンジーの獣医のジーラ博士に言語を使えることを必死に証明しようとします。彼は知能が低いほかの人間たちとは違うと感じたジーラ博士は、猿はもともと人類であったという独自の研究結果に確信を抱き、猿の惑星で真理とされていることへの疑問を深めていきます。 やがて言葉を発することができるようになったテイラーの存在は、他の猿たちからは危険視され、彼に協力するジーラ博士たちも裁判にかけられ断罪される事態に。

ジーラ夫婦の上司であるザイラス博士は、テイラーを猿の「聖典」では「禁断地帯」されている場所からやってきたミュータントだと考えていました。そして、そのとおりに自供しなければ、去勢と脳手術を施すと脅します。 6時間の猶予を与えられ牢に戻されたテイラーでしたが、ジーラの甥に助けられ脱出。自説の正しさと無罪を主張するため、自ら「禁断地帯」に足を踏み入れたジーラ夫妻のもとに向かいます。後を追ってきたザイラスを海岸の洞窟に連れ込んだ彼らは、「聖典」とは全く矛盾する出土品を発掘したことを告げます。 彼は自身も現在の猿の文明は、かつての人類文明の遺産であると考えていたことを白状しました。テイラーは釈放されたものの、部下に洞窟を爆破させ、ジーラとその夫は改めて裁判にかけると宣言しました。 そしてテイラーは、海岸で胸から下が地中に埋まった自由の女神像を発見。彼は、人類が文明と地球を自ら滅ぼしたことを悟り、その場に泣き崩れるのでした。

1968年に公開された映画版「猿の惑星」シリーズの第1作目となる本作。原作小説とは異なる結末が用意されており、それにより人間の愚かさや人間社会の脆さが一層浮き彫りになる作品となっています。 また、唖然としてしまう本作のエンディングシーンはシリーズを象徴する名シーンとして話題となり、1960年代の映画の中で最も有名なシーンのひとつともいわれています。 本作は公開すると間もなく多くの批評家から高評価を獲得し、第41回アカデミー賞では特殊メイクを担当したジョン・チェンバースがアカデミー名誉賞を受賞するなど、大きな注目を集めました。

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『続・猿の惑星』(1970年)

猿とミュータント化した人類との闘いを描く

舞台は前作『猿の惑星』のエンディング直後の世界。禁断地帯を旅するテイラーとノバは、突然大きな地割れと炎に襲われ、テイラーは岩の中に姿を消してしまいます。 一方、宇宙で行方不明となったテイラーを探すブレントは未来の地球に着陸。テイラーの認識票をつけているノバと出会い、案内を求めます。彼女はテイラーに言われていたとおりジーラに協力を求めるため、彼を猿の街に案内します。町では強硬派が食糧危機解決のため、「禁断地帯」の征服を宣言していました。

ブレントは、ジーラとその夫コーネリアスとともに「禁断地帯」に向かう途中で猿の兵士に見つかり、地下へ逃げ込みます。そこは荒廃した地下鉄の駅であり、この惑星は未来の地球だと悟ったブレントは、驚きながらもさらに地下を進み、廃墟となったニューヨークで超能力を持つ人間と出会います。 彼らは人類文明を破壊した核爆弾の一種、コバルト爆弾を「神」と崇めるミュータント化した人類でした。猿の軍隊が近づいていることを知った彼らは、幻覚を見せて軍隊を威嚇しますが、その目論見は外れ、軍隊の侵攻をゆるしてしまいます。 ミュータントの超能力で、テイラーとブレントが殺し合いを強制されるなか、ノバがコバルト爆弾の使用を阻止しようとします。しかし猿の兵士が彼女を射殺。猿の軍隊との銃撃戦のなかブレントが倒れ、自らも重傷を負ったテイラーはコバルト爆弾を起動させ、地球は木っ端微塵に吹き飛びました。

登場人物が自害とも受け取れる行動を繰り広げるなど、「猿の惑星」シリーズで一貫したテーマとされている自滅の描写が特に強く表現された作品となっています。 前作が高評価を受ける一方で本作の評価は低いものとなりましたが、興行的には成功を収めたため、その結果を受けて20世紀フォックスは第3弾の製作を進めることとなりました。

『新・猿の惑星』(1971年)

人種問題に切り込んだ1作

第1作目に登場したチンパンジーのジーラとコーネリアス夫妻を主人公に物語が展開されていくオリジナルシリーズ第3作目。 ミュータント化した人類との戦いの末に、地球は爆発を起こし消滅しましたが、猿の町に残されていたテイラーたちの宇宙船に乗り込むことでジーラとコーネリアス、もう一匹のチンパンジーのマイロは難を逃れていました。 しかし、爆発の衝撃で時空に歪みが生じたため、その反動で宇宙船は過去にタイムスリップし、1973年の地球に到着。テイラーたちが乗っていたはずの宇宙船からジーラたちが出現したことに驚いたアメリカ政府は、三匹をロサンゼルス動物園に輸送します。 そこで出会った動物学者のルイスとスティービーに、未来の地球が爆発で消滅してしまうことを告げる一行。その高い知性から国賓として扱われることとなりますが、大統領の科学顧問ハスラインは彼らを疑っていました。

そんななか、博物館を訪れていたジーラが倒れ、妊娠していることが発覚。 ハスラインはジーラをワインで酔わせ、未来の地球が戦争で消滅することを聞き出します。彼は未来の地球の支配者になる「言葉を話す猿」が地球を滅ぼすことになるといい、その先祖となりうるジーラたち夫妻の排除または断種を大統領に進言します。 夫妻は再び査問委員会にかけられ、彼らの去勢と胎児を堕胎することが決定してしまいました。基地から逃亡した夫妻は、ルイスとスティービーに助けられ、匿ってくれたサーカス団で子供を生みます。ジーラは子供を「マイロ」と名付けました。 追っ手が迫るなか、身を隠すため廃船置き場に向かった夫妻でしたがハスラインに見つかり、ジーラとマイロが射殺されてしまいます。その直後、コーネリアスがハスラインを射殺しますが、駆けつけた警官隊により、彼も殺されてしまいました。 事件のあと、サーカス団は次の巡業地を目指して出発します。その檻の中には、ジーラがチンパンジーの赤ん坊とすり替えたマイロがいました。

これまでの作品と違い、猿たちが過去の地球へやってくるというシリーズの分岐点となった作品です。ジーラとコーネリアスを通して人種差別を風刺した本作は、オリジナルシリーズの続編4作の中で最も高い評価を得ています。

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『猿の惑星・征服』(1972年)

賛否両論の社会派作品

本作で描かれるのは、前作(『新・猿の惑星』)からしばしの年月が経過した世界。謎のウィルスが蔓延したことで犬や猫が絶滅し、その代わりに猿が人間のペットとして飼われていました。 しかし猿は知能が高く、人間と同様の能力を持つことが判明。人間たちは猿を奴隷として扱うようになります。 本作の主人公となる、ジーラとコーネリアスの遺児であるマイロは、自分を育ててくれた人間のアーマンドと共に都市に訪れますが、そこで人間から虐待を受ける他の猿たちの姿を目撃。 ショックのあまり言葉を発してしまい、警察からマークされるようになってしまいます。 その後、生き延びるためにアーマンドと別れて他の奴隷猿に紛れたマイロは、優秀な猿としてオークションにかけられ、新しく付けられた「シーザー」という名前でブレック知事側近のマクドナルドのもとで働くことに。 そんな折、アーマンドがシーザーを匿っていた過去が明らかに。それがきっかけで警官ともみ合いになり、アーマンドは窓から落ちて死んでしまいます。 アーマンドの死を知ったシーザーは人間たちへの復讐を決意し、テレパシーでほかの猿たちに武器の調達を指示します。

シーザーを「言葉を話す猿」だと疑ったブレックは彼を逮捕するよう命令しますが、マクドナルドに助けられ逃亡します。しかしその後、警察に捕まり拷問を受け、耐えきれず言葉を発してしまいました。 シーザーは電気ショックによる死刑に処されることになりますが、またもマクドナルドの機転で命を救われます。 仲間のもとに戻った彼は、人間への反乱を決行。ブレックは警官隊と機動隊を動員して鎮圧をはかりますが、数に圧倒されて敗北し、猿たちの捕虜となりました。 復讐を遂げようとするシーザーやほかの猿たちに対して、マクドナルドらはその無意味さを訴えます。そしてシーザーは復讐をやめ、地球が自分たちの支配する「猿の惑星」になったことを宣言するのでした。

脚本担当曰く、アフリカ系アメリカ人が置かれていた境遇を猿の立ち位置に反映させることで、本作はアフリカ系アメリカ人公民権運動やワッツ暴動の要素を取り入れることに成功しています。 製作費は前作よりも低い170万ドルしか用意されず、そのため粗さが目立つ仕上がりとなり、鑑賞後の賛否も大きく分かれることとなりました。しかし興行的には成功を収めたため、オリジナルシリーズの最終作である第5弾の製作が決定したのです。

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『最後の猿の惑星』(1973年)

シリーズはついに終幕へ

前作でシーザーを筆頭に巻き起こされた人間との闘いは核戦争に発展し、その結果地球の支配権を人間たちから奪取することに成功した猿たち。人間を召使いとして扱うようになり、以前とは立場が逆転した状態で人間と猿は共存関係を築いていました。 ある日シーザーは、自分の補佐役を務めるマクドナルド(人間)から両親の記録が都市に残されていることを聞き、核戦争で壊滅した都市を訪れます。その地下の記録保管庫で「猿が地球を滅ぼす」という母ジーラからのメッセージを発見したシーザーは、強いショックを受けます。 そんな中、核戦争を生き延び地下に潜んでいたミュータントの人間たちによるシーザーたちへの攻撃が始まり、また猿たちの間でもシーザーへの反乱が計画されていました。

その密議を偶然聞いていたシーザーの息子コーネリアスは、彼らから襲われてしまいます。瀕死の重傷を負った息子の看病に追われている間に、人間の軍隊が猿の村に迫ります。それに気づいた強硬派の猿たちは人間を拘束。武器を奪い、戒厳令を敷きました。 息子が息を引き取り、悲しみに沈むシーザーのもとに仲間の猿が現れ、強硬派独断専行を警告します。シーザーは彼らを止めようとしますが、そこに人間たちが現れ戦闘状態に。激しい攻撃に圧倒されるシーザーでしたが、隙を突いて反撃し、撃退に成功します。しかし、人間たちは撤退中に強硬派に奇襲され、全滅してしまいました。 人間を解放しようとするシーザーは、強硬派の代表を激しい口論をくり広げます。しかし、そのなかで彼がシーザーの息子を殺したことが発覚し、粛清されました。 人間たちを解放したシーザーは、マクドナルドの提案を受け入れ、猿と人間が平等に暮らす社会を実現することを宣言します。 シーザーが死んで600年が経った2670年、立法者が子猿たちと人間の子どもたちにシーザーの物語を読んで聞かせていました。そのとき、彼らの後ろにあったシーザーの像から涙が流れます、

人種間闘争と支配をテーマにした本作。オリジナルシリーズの完結編となる第5弾でしたが、製作費は全5作品の中で最も低く、脚本家の降板などのアクシデントもあり、極めて曖昧な形で物語は終幕を迎えています。 興行収入が製作費を上回る一方で、評論家からは酷評の声が相次ぎ、全5作品の中で最低の作品との評価も目立ちました。しかしラストシーンの解釈について論争が巻き起こるなど、大きな反響と話題を生んだのは確かです。

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ティム・バートンによる『PLANET OF THE APES/猿の惑星』も存在する

上記2シリーズとは全く別の世界線です

ティム・バートン監督による「リ・イマジネーション版」と称された別世界線作品『PLANET OF THE APES/猿の惑星』は、2001年に公開されました。 本作は、猿が人間を支配する世界という設定以外は、原作小説およびオリジナルシリーズとは全く異なるストーリーとなっています。 物語の舞台は西暦2029年の近未来。米空軍・宇宙探索基地オベロン号は宇宙空間での調査活動中。そこには人間のほかに、遺伝子操作によって高い知能を持った猿人類が乗っていました。 そんな折、謎の磁気嵐にチンパンジーのペリクリーズが乗った探査ポッドが飲み込まれ、通信不可能となってしまいます。 それを追いかけた人間の宇宙飛行士レオが乗ったポッドも、同じように磁気嵐に飲み込まれてしまい、そのまま未知の惑星に到着します。するとそこには、原始的な人類が高知能を持った猿に支配される世界でした。

その後、猿の軍隊に捕らえられたレオは、セード将軍に危険人物として目をつけられますが、人間に協力的なチンパンジーのアリに助けられ、仲間とともに脱走に成功しました。 沼地に水没していたポッドから通信装置を回収したレオは、オベロン号もこの惑星に到着していることを知ります。宇宙船がある場所に向かうと、そこにあったのは数千年前に不時着し、遺跡と化したオベロン号の残骸でした。 たったひとりで危険な任務を遂行したレオを慕って、人間のデイナやチンパンジーのアリら少数のヒト・猿が彼と行動をともにするようになります。 そんなとき、なんと行方不明になっていたチンパンジーのパイロット、ぺリクルーズがオベロン号に乗ってやってきます。彼はこの星の猿たちに「神」として崇められていました。レオはぺリクルーズのちからで猿と人間を和解させ、ひとり地球に戻ります。 そして、やっと帰還した地球で彼が見たのは、人間ではなく猿のモニュメントでした。

オリジナルシリーズのリメイクではなく、リ・イマジネーション版としての製作を希望するティム・バートンが監督として起用されたうえで企画が進んだ本作品。特殊効果については高い評価を獲得したものの、原作とは全く異なるストーリー展開や結末が大きな批判を受けました。 そのため、低評価の作品がノミネートされる映画賞であるゴールデンラズベリー賞では、最低リメイク賞、最低助演男優賞、最低助演女優賞を受賞するなど、酷評が相次ぐ結果となりました。

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不朽の名作『猿の惑星』は不滅!!

映画版の他にも、過去にはテレビシリーズやアニメーション版など、多種多様なジャンルのシリーズ化や映像化が実現された『猿の惑星』。 その独創的なストーリー設定と、随所に込められた人間社会への鋭い風刺表現が、世代を越えた共感を呼び、今日まで多くの人々に愛されてきました。 本記事ではそんな「猿の惑星」のシリーズの情報を整理してきました。未鑑賞の人は今回の記事を参考にすれば、各シリーズの違いや共通点を楽しむことができるはず。世界中で長年愛されてきた名作の世界をこの機会にぜひ堪能してみてはいかがでしょう!