「3年B組金八先生」全シリーズの生徒キャストからあらすじまでまるっと紹介【ご長寿ドラマになった理由】
TBSが生んだ学園ドラマの金字塔「3年B組金八先生」シリーズ。「金八先生」こと、坂本金八役を演じた俳優・武田鉄矢の代表作です。 桜中学校を主な舞台に、1人の熱血教師が教育現場の様々な問題と向き合い、生徒と共に涙し、怒り、笑いながら奮闘する姿を描きます。生徒キャストは後年、各分野で活躍するタレントを数多く輩出し、若手俳優の登竜門の1つに数えられた作品でした。 当時はまだ珍しい、“中学校が舞台の”学園ドラマはなぜ愛されたのでしょうか? この記事では各シリーズのあらすじ、豪華な生徒キャストを振り返りつつ、「3年B組金八先生」がご長寿ドラマになった理由にも迫ります!
「金八先生」シリーズのあらすじ
「3年B組金八先生」シリーズは、「桜中学シリーズ」と総称されるドラマの1つで、桜中学校の国語教師・坂本金八が主人公の学園ドラマ。 1979年に第1シリーズの放送が始まり、 ナンバリングタイトルでは最後となる第8シリーズの最終回は、2008年3月に放送されました。OBのその後、坂本家の問題を描くSPドラマも12本制作され、2011年3月放送の「ファイナル」にて、32年にわたる歴史に幕を下ろすことに。 第1~8シリーズまで240人の卒業生を見送った金八も、定年退職という卒業を迎えました。 原作・脚本は小山内美江子が務めましたが、第7シリーズ途中で脚本から退き、11話以降は清水有生が引き継いでいます。断続的な放送ではあったものの、ドラマ『水戸黄門』や『渡る世間は鬼ばかり』と並び、TBS系列を代表する長寿作品になりました。
なぜここまで愛された?ご長寿ドラマとなった理由を考察
金八先生が愛された理由は、生徒を上から抑圧するのではなく、同じ目線で寄り添おうとする全く新しい教師像だったからではないでしょうか。 坂本金八という一個人として、結婚し、子どもが産まれて自らの家庭問題に悩むのも、人間臭くて親しみを感じます。放送当時を反映したテーマは非行、進路、親子の絶縁などシリーズごとに変わり、賛否を呼ぶであろう問題にも真正面から取り組みました。 ハマり役だった武田鉄矢のほか、生徒役に伸びしろのある新人、無名キャストを起用したことも視聴者の共感を呼び、支持されたのでしょう。 シリーズ内に明確な時の流れがあり、人間関係が構築されていくのもポイントです。 新シリーズの味方として、かつての教え子や同僚、反発し合った相手まで登場するという熱い展開は、ご長寿ドラマの醍醐味ですよね! それでは、第1シリーズから第8シリーズ、ファイナルまで32年間の歴史を振り返ってみましょう。
伝説はここから始まった!第1シリーズを振り返る
放送期間:1979年10月26日~1980年3月28日/全23話
世田谷の中学校から、桜中学校へ転任になった国語教師・坂本金八。生徒が抱える問題に体当たりで取り組む中、3年B組の女子生徒・浅井雪乃の妊娠が発覚します!何と父親は同じB組の宮沢保で、中絶か出産かで迷う雪乃が出した答えとは……。 第1シリーズは当時議論を呼んだ「未成年の出産」、東大志望の高校生の自殺などを扱い、その衝撃的な内容が反響を呼びました。最終回は39.9%という驚きの視聴率を叩き出し、社会現象を巻き起こしたのでした。 15歳の母・雪乃を演じた杉田かおる、保役の鶴見辰吾のほか、「トシちゃん」こと田原俊彦、「マッチ」こと近藤真彦、野村義男らキャストは現在も各分野で活躍中です。
「金八先生」第2シリーズは非行がテーマ
放送期間:1980年10月3日~1981年3月27日/全25話
「非行」「校内暴力」を取り上げる第2シリーズでは、桜中学3年B組に札付きの不良生徒、加藤優が転校してきました。加藤は荒谷二中時代の教師の不正を訴えるため、同校を占拠するという暴挙にでたことから、警察沙汰になってしまい……。 一部の不良が周囲の生徒をダメにすることを、箱の中の腐ったミカンに例える“腐ったミカンの方程式”は、社会に大きな衝撃を与えました。 金八が加藤を思い、教師や保護者の前で涙ながらに「われわれは、ミカンや機械を作っているんじゃないんです、われわれは人間を作っているんです!」と訴えた名台詞が有名。 加藤が警察に連行される「卒業式前の暴力」のエピソードは第2シリーズを代表するだけでなく、「3年B組金八先生」屈指の名作として語り継がれています。 後年まで活躍するキャストは少なかったものの、加藤優を演じた直江喜一、松浦悟役の故・沖田浩之を抜きにしては語れません。
浅野忠信や長野博も出演していた第3シリーズ
放送期間:1988年10月10日~12月26日/全12話
舞台はお馴染みの桜中学から、同じ学区内の松ヶ崎中学校へ!「3年B組金八先生」シリーズの放送は基本2クール(半年間)ですが、第3シリーズのみ1クール(3ヶ月)でした。 新任の英語教師の指導も任される中間管理職になった金八と、思春期を特有の無気力感を抱く生徒たちとの、繊細な心のふれあいを描きました。隠れた名作とも呼ばれ、保健室登校を続ける生徒や酒乱の父親と暮らす生徒との交流など、胸を打つ回が盛りだくさん! 生徒役には萩原聖人や浅野忠信(出演時:佐藤忠信)、長野博(V6)、後にオートレーサーに転向した元SMAPの森且行などが出演していました。
「金八先生」第4シリーズではいじめ問題と向き合う
放送期間:1995年10月12日~1996年3月28日/全23話
金八は最愛の妻・里美を乳ガンで亡くし、文部省で研修を受けていましたが、桜中学の要請を受けて教壇へ復帰することに。しかし新3年B組ではいじめが横行し、かつての教え子・雪乃と保の息子、宮沢歩もそのターゲットにされていました。 金八と生徒の対話を通して、一見平和な学校に隠された“いじめ”や不登校、家庭内の不和、偏差値と受験の問題を解決する様を描きます。生徒たちをいじめる側、いじめられる側に振り分け、いじめの心理状態に迫る「いじめのロールプレー」もとても印象的でした。 表では優等生、裏ではいじめのリーダーという難役・広島美香を演じた小嶺麗奈は、美少女として一躍有名になりました。 小嶺の他に、松下恵や藤田瞳子のほか、声優でもある反田孝幸らが出演しています。
金八による愛の授業が行われた第5シリーズ
放送期間:1999年10月14日~2000年3月30日/全23話
舞台となる桜中学には、少子化の波で校内に老人介護施設が併設され、“死”に向かう高齢者と多感な若者が身近な環境になっていました。 3年B組の担任が病院送りになり、生徒たちから葬式用の花を送りつけられたことで、自殺寸前まで追い込まれるという最悪の幕開けを迎えます。後任となった金八は、首謀者の兼末健次郎たちが力で支配する3Bを立て直すため、奮闘していくのでした。 教育現場の新たな火種「学級崩壊」と「突然キレる子ども」をテーマに、50歳になった金八先生の、愛の授業が行われた第5シリーズ。引退したキャストも多いですが、健次郎役の風間俊介を筆頭に、亀梨和也(KAT-TUN)、清水沙映、倉沢桃子らを輩出しました。
第6シリーズのテーマは性同一性障害や人権
放送期間:2001年10月11日~2002年3月28日/全23話
3年B組の2人の転入生、性同一性障害を抱える鶴本直と父親が殺人の罪で服役中の成迫政則を中心に、新たな波乱が起こる第6シリーズ。 クラスの生徒の問題だけでなく、桜中学の校長に金八とは正反対の教育理念を持つ教師が赴任してきたために、金八はより頭を悩ませることに。その上、3年C組に通う長男・幸作の身に異変が起き、金八は”三重苦”の状態をどう解決するのでしょうか!? ちなみに、鶴本直は次の第7シリーズで性転換手術を受け、体も男性になりました。 体は女性、心は男性の直を演じた上戸彩を筆頭に、本仮屋ユイカ、斉藤祥太、佐藤めぐみ、平愛梨、増田貴久(NEWS)などが出演しており、キャストが大豊作でした。
薬物依存というショッキングな内容を扱った第7シリーズ
放送期間:2004年10月15日~2005年3月25日/全22話
第7シリーズでは、第1シリーズの「未成年の出産」を超え、歴代で最もショッキングな「“中学生の”薬物依存」が扱われました。犯罪の低年齢化、学生や地域を取り巻く環境が急速に変化した放送当時を、見事に反映したテーマと言えるかもしれません。 金八が校長と対立し、異動を命じられてから2年後。再び桜中学へ戻った金八は、平成生まれの生徒たち相手に四苦八苦する中、衝撃の事件に直面することに。 父親が薬物に手を染めたせいで家庭が崩壊し、親友が自殺未遂を犯した丸山しゅうは、現実から逃れるため自らもまた、憎むべきドラッグに救いを求めてしまうのでした。 中心生徒・しゅう役の八乙女光を始め、八乙女と同じHey!Say!JUMPの薮宏太、濱田岳、黒川智花などマルチに活躍するキャストが多数出演していました。
学校の存在意義を改めて考えた第8シリーズ
放送期間:2007年10月11日~2008年3月20日/全22話
第8シリーズは、これまでのように大きなテーマを掲げるのではなく、生徒一1ひとりにスポットを当てながら展開されました。 インターネットが普及する裏で、「学校裏サイト」が存在していると知った金八はノートを配り、生徒たちにある宿題を課します。 その内容とは、サイトの代わりに「『私』というタイトルで心のHP(ノート)に書き込む』というもの。金八は浮き彫りになる15歳の少年少女の悩みと向き合いながら、「学校の存在意義」を問いかけるのです。 3年B組の生徒キャストには、本作で女優デビューし『家政婦のミタ』で注目を浴びた忽那汐里、二世俳優の草刈麻有、植草裕太、布川隼汰が名を連ねました。
名作ドラマを締め括った「3年B組金八先生 ファイナル」
放送日:2011年3月27日
4時間SPドラマ『3年B組金八先生 ファイナル 最後の贈る言葉』は、第2シリーズで松浦悟を演じた、故・沖田浩之の13回忌の3月27日に放送されました。 幾度となく中学をたらい回しにされた、素行不良の問題児・景浦裕也。桜中学でも教師や生徒を相手に問題を起こし、クラス内でさえ煙たがられていました。一度は鑑別所に送致されるも、反省する気配が全くない景浦を見かねて、桜中学のOBたちが立ち上がります。 しかし一方で、定年退職を間近に控えた金八が、狭心症で病院に運ばれるのです! 生徒役の岡本圭人、趣里などのほか、杉田かおる、直江喜一、松下恵など(第3シリーズは除く)OBを含め総勢150名以上の歴代キャストが集結しました。
みんなが教え子!多感な中学生に寄り添い続けた金八先生
犯罪が低年齢化する中、高校生ほど大人でも、小学生ほど子どもでもない。精神的な揺らぎの大きい、15歳の少年少女を描いた「3年B組金八先生」。 武田鉄矢のハマりっぷりも相まって、思春期独特の大人への苛立ちを受け止め、理解しようとする新しい教師像は好意的に受け入れられました。生徒と同年代の新人、無名のキャストを多く起用したことから、役と俳優を重ねて観ていた人も多かったのでは? 海援隊(武田鉄矢)による主題歌もノスタルジーを感じますし、大人は過去に思いを馳せ、若者は金八の存在に希望を見たのかもしれません。 こうした視聴者の「共感」を得て、愛され続けるご長寿ドラマになったと言えるでしょう。