映画『バビロン』ネタバレあらすじと感想解説 ラストの意味とは?【海外評価は賛否両論】
『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル×ブラッド・ピットで贈る映画『バビロン』が公開されました。 本記事では、黄金期のハリウッドを描く本作のネタバレあらすじから、海外で賛否両論が巻き起こっている作品の評価の理由、またラストシーンの考察など詳しく紹介していきましょう! ※この記事には『バビロン』の結末までのネタバレが含まれます。未鑑賞の方はご注意ください。
映画『バビロン』のあらすじ
舞台は20世紀初頭から徐々に映画人たちが集まり、ゴールデンエイジ(黄金時代)と呼ばれた1920年代のハリウッド。サイレント映画からトーキーへと変化する時代に、映画そして映画の街を一から作り上げる人々の群像劇が繰り広げられます。 ハリウッドで大きな成功を掴もうとする男女の物語とともに、ド派手なパーティやスケールの大きな映画セット、豪華な衣装、ジャズエイジを再現した音楽など、エンタメを凝縮した作品です。 >詳しいネタバレあらすじはこちらから
映画『バビロン』感想・評価【ネタバレなし】
華やかで皮肉的な音楽に踊らされ続ける、あっという間の3時間!!技術が発展していない頃、映画作りは文字通り命をかけた仕事だったと知りました。「自分が死んでも未来に残る大きな魔法を創り上げたい」そんな魂こもる不朽の名作たちを見返したくなります。
前半はサイレント映画産業の立ち上がりに合わせてガンガン登っていくマーゴットロビーの勢いが気持ち良い!シーンもスピーディだし音楽もテンポ良くて引き込まれた。後半は一転、暗雲しか立ち込めてない展開に、どうなるんだろうとドキドキ……。気が付いたら3時間過ぎていました。
海外での映画『バビロン』の評価は賛否両論で、それを知って「映画を観に行こうか迷っていた」という声が多くありました。 しかし実際鑑賞してみると、数々のトーキー映画初期の名作にオマージュが捧げられており、希望を見出すラストに「デイミアン・チャゼル監督の映画愛に心打たれた」という感想が数多くあがりました。 >詳しい感想解説はこちらから
映画『バビロン』結末までのネタバレあらすじ
【起】パーティに乱入し、チャンスを掴むネリー
1920年代、映画業界の中心地であるハリウッドは黄金期を迎えていました。そこで働く人々は、昼は映画製作、夜はゴージャスなパーティに明け暮れています。 映画に携わりたいという夢を抱いて、メキシコからやってきたマニーは、あるパーティで雑用をこなしていました。そんななか、招待されてもいない女優志望のネリーがパーティに乱入。2人はそこで知り合い、夢を語り合いました。 ネリーはクレイジーな言動でパーティの注目を集め、代役のチャンスをつかみます。一方のマニーは、泥酔した大スター、ジャック・コンラッドの世話をしたことで、彼のアシスタントとして雇われることになりました。
【承】順調にキャリアを積むネリーとマニー
代役として撮影に入ったネリーはそこで演技の実力を見せつけ、次々と新たな作品に出演。スター街道をまっしぐらに進んでいきます。すぐに頭角を現した彼女ですが、パーティでは相変わらずやりたい放題。酒やドラッグがあふれるなか、突然ヘビと戦うと言い出したりと、その恐れ知らずな性格でますます注目を集めます。 マニーもまた、どんな無理難題にも食らいつき、業界での信頼を獲得。順調に出世し、さまざまな作品のプロデューサーを務めるまでになります。 一方ジャックはトーキー映画の登場に可能性を見出し、サイレントからの移行に意欲的に取り組むように。彼は新たな時代にも、自分の活躍の場はあると信じていました。
【転】映画はトーキーの時代へ。崩壊していくネリーやジャックの世界
映画に音声がついたことで最初に注目を集めたのは音楽でした。ジャズトランペット奏者のシドニー・パーマーはパーティで演奏していたところ、その腕を見込まれ、ミュージカル映画で活躍するようになります。そのうち彼を中心とした音楽映画も製作されるようになり、俳優と同じような扱いを受けるように。 しかし彼は見栄えを気にする制作陣に愛想を尽かし、映画業界を去り、ジャズクラブへ戻りました。 ネリーはトーキー映画に出演することになりますが、声の大きさの調整などで悪戦苦闘。さらにスタッフが彼女の声やアクセントについて悪口を言っているのを聞いてしまい、自信を失くします。つらい現実から逃れるように、彼女はさらに酒やドラッグに溺れていくのでした。 サイレント映画で大スターだったジャックもまた、トーキーでは演技の下手さを指摘されるようになり、スターの座を追われていきます。
【結末】ハリウッドの1つの時代が終りを迎えるラスト
あるとき自分が出演したトーキー映画が上映されている映画館に立ち寄ったジャックは、観客が彼の演技を笑っているのを見て不安に駆られます。評論家のエリノアにその理由を聞きに行くと、彼女は「時代が変わっただけ」と言いました。 そんななか、ジャックのもとに友人の訃報が入ります。一緒に一時代を築いてきた彼の死によって、ジャックもまた絶望。あるパーティの最中、トイレで拳銃自殺をしその生涯を閉じます。 映画業界の雰囲気はすっかり変わり、そこに溶け込むことができないネリーはますます酒やドラッグに溺れるように。そんなある日、マニーのもとにネリーから連絡が。彼女はドラッグのために借金をしており、金を返さなければ殺されると涙ながらに訴えます。マニーは彼女とともに街を去る決意をし、2人は車で旅立ちました。しかしその途中で、ハイになったネリーは姿を消してしまいます。 数年後、映画業界を去りニューヨークで暮らしていたマニーは、妻子とともにハリウッドを訪れます。そこで映画館に入った彼は、サイレント時代の自分たちの日々、ネリーやジャックとの思い出を思い起こすと同時に、映画の未来を見て涙を流すのでした。
【解説①】ラストシーンからわかる100年前の映画界とは?
『バビロン』は、ニューヨークで暮らしていたマニーがロサンゼルスに戻り、映画館で映画を観ているシーンで幕を閉じます。スクリーンに映し出されるのは、彼にとって懐かしいサイレント映画からトーキーに移行する時代の作品だけでなく、その後の現在までの映画史をたどる名作の数々。マニーがこの時代に知るはずもない作品も登場します。 これは、映画100年の歴史を振り返る映像になっているのです。マニーはこれを観て、自分のハリウッドでの日々、ネリーやジャックと過ごした青春を思い起こします。そこで自分たちが乗り越えようとしたサイレントからトーキーへの過渡期だけでなく、その後も映画は進化していくことを知るのです。 そしてネリーやジャックが世間から忘れ去られたとしても、彼らとともに働いた時代は映画の進化の一部であり、無駄ではなかったと涙を流します。
【解説②】ジャック・コンラッドが“あの結末”を迎えた理由とは?
トーキー映画が主流になっていくにしたがって、サイレント映画のスターたちは帰路に立たされました。トーキー映画では、彼らの“演技”が通用しなくなってしまったからです。映画に音声がつくと、役者は顔だけでなく、声もよく、聞き取りやすいアクセントで、感情を込めた演技を求められるようになります。 ジャックはカリスマ的なスターでしたが、その波に乗ることができなかったのです。それでもトーキーに可能性を見出していた彼は、新たな時代にも自分の居場所はあると信じていました。しかし、初めてのトーキー映画出演で観客に笑われたことが、彼の不安をあおります。 さらにエリノアの一言で自信を失くし、これまでともに働いてきたジョージの自殺で、彼もまた時代にそぐわない自分の存在に絶望します。そしてこの先、惨めな人生が待ち受けているだろうことを受け入れられず、自殺にいたったのです。
【解説③】『雨に唄えば』との関係性とは?
『雨に唄えば』がデイミアン・チャゼル監督のお気に入りの映画であることは、よく知られています。『バビロン』も、『雨に唄えば』と同じく映画がサイレントからトーキーに移行する時代を描いているのです。 そのため本作には、その影響やオマージュを捧げているシーンやキャラクターが多数。たとえばマーゴット・ロビー演じるネリー・ラロイは、同作に登場するサイレント映画のスター女優リナ・ラモントによく似ています。 トーキー映画に出演することになるものの、その声やアクセントにダメ出しされたり、録音がうまくいかず、何度もやり直しになるといった場面が『雨に唄えば』そっくり。また本編のなかでは、『雨に唄えば』の有名なシーンも使われています。
【解説④】上映時間は3時間越え!幻の2時間版が存在した
映画『バビロン』は3時間越えの上映時間!しかし、本作はド派手で煌びやかなオープニングの幕開けから目まぐるしく回るストーリー展開、またクレイジーな人間模様で一瞬たりとも目を離せません! さらに、本作で外せないのがジャスティン・ハーウィッツが手がけるジャズミュージック。思わず口ずさんでしまうようなテンポ感のある音楽が印象的。 実は初期編集版は2時間50分ほどで、完成版より20分ほど短かったのだそう。しかし監督は重要なシーンまでカットしてしまったと思い、それらを復活。結果的に3時間40分になったものを、編集し189分という尺に収めたそう。 上映時間は3時間越えで海外評価は賛否両論ですが、日本ではおおむね高評価。デイミアン・チャゼル監督は「人物に適切な厚みがありつつもテンポの良い、3時間とは感じない映画にしたいと思った」と語っています。
映画『バビロン』のキャラクターは実在した人物がモデルとなっている!
ジャック・コンラッド | モデルはジョン・ギルバート。サイレント映画のスターであったにもかかわらず、トーキーの時代になり声や演技のまずさから人気を失う。アルコール依存症となり、死去。 |
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ネリー・ラロイ | モデルはクララ・ボウ。貧困のどん底からハリウッドスターに。撮影時もブラをつけない奔放さで、セックスシンボルとして人気を獲得。トーキー時代に入り、ハリウッドの自主規制もあって失速した。 |
マニー・トーレス | メキシコの映画プロデューサー、監督、脚本家、俳優のルネ・カルドナがモデル。ハリウッドで初めてスペイン語の映画を製作した人物。 |
シドニー・パーマー | ルイ・アームストロングやデューク・エリントンなど、トーキー映画になったことで突然映画で活躍するようになった複数のジャズ・ミュージシャンがモデル。 |
レディ・フェイ・シュー | サイレント映画でブレイクしたアジア系女優アンナ・メイ・ウォンがモデル。妖艶でミステリアスな東洋人女性役で、立て続けに映画に出演した。 |
ルース・アドラー | 当時珍しかった女性映画監督ドロシー・アーズナーがモデル。クララ・ボウの初めてのトーキー映画『ワイルド・パーティー』(1929年)を監督。 |
映画『バビロン』キャスト一覧・登場人物解説
ジャック・コンラッド役 | ブラッド・ピット |
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ネリー・ラロイ役 | マーゴット・ロビー |
マニー・トーレス役 | ディエゴ・カルバ |
エリノア・セント・ジョン役 | ジーン・スマート |
シドニー・パーマー役 | ジョヴァン・アデポ |
レディ・フェイ・シュー役 | リー・ジュン・リー |
ジョージ・マン役 | ルーカス・ハース |
ルース・アドラー役 | オリビア・ハミルトン |
ジェームズ・マッケイ役 | トビー・マグワイア |
アーヴィング・タルバーグ役 | マックス・ミンゲラ |
ジャック・コンラッド役/ブラット・ピット
ジャック・コンラッドは、サイレント映画時代のスクリーンアイドルです。同じくトーキーの出現でキャリアが衰退した実在の俳優ジョン・ギルバートがもとになった人物だと言われています。 ジャック・コンラッドを演じるのはブラピことブラッド・ピット。本作で共演するマーゴット・ロビーとは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)で共演しており、同作品で受賞したアカデミー賞助演男優賞で自身初の演技部門でのオスカー獲得となりました。
ネリー・ラロイ役/マーゴット・ロビー
ネリー・ラロイは、予告で「スーパースターになって大金を稼ぐ」と話している通り、ハリウッドでの成功を夢見る女優です。さらにパーティでのクレイジーな行動で業界人の目にとまった彼女は、女優としてスターダムをのし上がっていきます。 ネリー・ラロイ役のマーゴット・ロビーといえばDC映画の「ハーレイ・クイン」でおなじみ。『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017)と『スキャンダル』(2019)でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされており、本作では、ゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートされました。
マニー・トーレス役/ディエゴ・カルバ
マニー・トーレスはメキシコ系アメリカ人でネリー・ラロイと同様、ハリウッドでの成功を夢見る若き俳優です。 マニー・トーレス演じるディエゴ・カルバはNetflixのドラマ『ナルコス:メキシコ編』に出演するなど徐々に頭角を現し、本作での役を手にしました。本作のデイミアン・チャゼル監督からはオーディション前に名優アル・パチーノの演技を見るよう勧められたとインタビューで語っています。
エリノア・セント・ジョン役/ジーン・スマート
エリノア・セント・ジョンはハリウッドのゴシップ記者です。夜毎パーティに参加しては、記事のネタを拾ってくるエリノア。俳優の成功も破滅も、彼女の筆ひとつにかかっているといっても過言ではありません。 演じるジーン・スマートは、役者としてブロードウェイでデビューし後にテレビや映画業界へ進出したベテラン女優です。ドラマ『24 TWENTY FOUR』のマーサ・ローガン大統領夫人役で一躍有名になり、近年では『スーパーインテリジェンス』(2020)でも大統領役を演じています。
シドニー・パーマー役/ジョヴァン・アデポ
シドニー・パーマーは、トランペットの奏者です。ブラット・ピットらとともにソロショットのポスターが公開されていることからメインキャストの1人になると予想されます。映画の音楽は『ラ・ラ・ランド』(2016)のジャスティン・ハーウィッツが務めており、映画とともにジャズ音楽にも注目です。 ジョヴァン・アデポは、デンゼル・ワシントン監督作『フェンス』(2016)で映画デビューを果たしました。同作での演技が認められ、ドラマ版『ウォッチメン』や「ジャック・ライアン」シリーズなどに出演しています。
レディ・フェイ・シュー役/リー・ジュン・リー
昼はチャイナタウンのランドリーを手伝いながら、サイレント映画の字幕を書いているレディ・フェイ・シュー。夜になると、パーティで妖艶な歌声を披露。業界で生き残るため、さまざまな役割を演じています。 レディ・フェイ・シューを演じるリー・ジュン・リーは、中国・上海出身で、アメリカで活動している俳優です。Netflixのドラマ『五行の刺客』(2019年)などへの出演で知られています。
監督は『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル
監督・脚本を務めるデイミアン・チャゼルは『ラ・ラ・ランド』(2016)以外にもソロドラムが圧巻な『セッション』(2014)やアポロ11号の月面着陸計画を描いた『ファースト・マン』(2018)など名作をいくつも生み出しています。 過去作品からみても分かる通り撮るジャンルはバラバラで、その理由について「『ラ・ラ・ランド』で華やかなものを撮ったあとには、内省的なものをやりたくなり、『ファースト・マン』の静けさの後には、ド派手で騒がしいものを撮りたくなりました。これが『バビロン』です。」と語っています。
映画『バビロン』日本では高評価!ネタバレ感想解説で理解を深めよう
デイミアン・チャゼルを筆頭に、ブラッド・ピットやマーゴット・ロビーとここ数年でもトップクラスに豪華なメンバーが揃った『バビロン』が2023年2月10日に公開されました。 映画の歴史100年を振り返り、そのなかで生きた人々の栄枯盛衰を描く本作に、あなたは何を感じるでしょうか?賛否両論ある評価の本作、ぜひ劇場で確かめてみてください!