【結末ネタバレ】映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』小西の妄想を考察!原作・ジャルジャル・福徳の小説を解説
2025年4月25日公開の映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』。ジャルジャル・福徳秀介が原作を手掛けた「今日空」の概要やあらすじ、ネタバレ感想を本記事で紹介していきます!
映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』作品概要
映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』あらすじ【ネタバレなし】

冴えない日々を送る大学生・小西徹(萩原利久)の日常は、女子大生・桜田花(河合優実)との出会いで変化が訪れます。花に目を奪われた徹が彼女に声をかけたことをきっかけに、2人は意気投合。 一緒に過ごす時間が楽しいのはもちろん、花がふとこぼした言葉が徹の胸に刺さります。それは徹の亡き祖母がくれた言葉と同じで、ますます徹の中で花の存在が大きくなるのでした。 ところが、2人をある悲劇が襲います。
【結末ネタバレ】映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』
【起】些細な日常のなかでの出会い
銭湯でバイトをしながら、冴えない日々を送る大学生の小西徹(萩原利久)。ある日彼は、授業後に颯爽と教室を出ていく女子学生に目を引かれます。彼女の名前は桜田花(河合優実)。小西が勇気を出して桜田に声をかけると、2人は意気投合しました。 ある日2人は水族館に出かけ、小西は自分の祖母が亡くなった悲しみを吐露します。それを聞いた桜田は自分も父を失った悲しみを打ち明けました。 そうして2人は距離を縮めていきます。
【承】さっちゃんの想い
一方、小西のバイト仲間のさっちゃん(伊東蒼)は、密かに彼に想いを寄せていました。しかし小西はさっちゃんに桜田のことを話しながら、彼女がすすめる音楽はいつまでたっても聞いていませんでした。 ある日さっちゃんは、しびれを切らして小西に告白します。しかし彼女は小西が好きと言いながらも、今つき合ってくれると言われても断る、自分の告白のタイミングの悪さなどを想い人に好意を打ち明けるときには参考にするようにと言います。 思いの丈を精一杯ぶちまけたさっちゃんでしたが、小西は彼女の想いを受け止めることができませんでした。
【転】心を閉ざしてしまう小西
小西と桜田は2度一緒に喫茶店で朝食をとりましたが、マスターの意外な一面を知ってその日の昼、もう一度喫茶店を訪れる約束をします。 しかし、桜田は約束の時間に現れませんでした。そのことから、小西は桜田は自分を嫌っているのではないかと疑心暗鬼に陥ります。そのせいで精神的に不安定になった彼は、友人の山根(黒崎煌代)に八つ当たりし、ケンカ別れしてしまいます。そんななか、さっちゃんはバイト先に顔を見せなくなりました。
【結】突然の悲劇と2人の関係
喫茶店でマスターが苦手と言っていたオムライスを食べた小西は、大学で桜田のバイト先の犬のサクラが構内に入り込んでいるを見つけます。サクラと触れ合ってなにかが吹っ切れた小西は、山根と仲直りしました。 その後、小西は銭湯の主人である佐々木(古田新太)から、さっちゃんが事故で命を落としたことを知らされます。佐々木とともにさっちゃんの仏壇に手を合わせに行った小西は、桜田がさっちゃんの姉であることを知り、驚きます。 小西は桜田に促され、「咲が結婚したときに」と亡くなった父が遺した手紙を読みます。小西が手紙を読み上げるなか、泣き崩れる桜田。手紙を読み終わり、病気で死んだ父より事故で死んだ咲の方が良かったと桜田は肯定しようとします。そんな彼女を慰めようと、小西は犬のマネをします。 その後、落ち着いた桜田は、妹が死んだ夜のことを小西に話します。さっちゃんが亡くなったのは、彼に想いを告白した直後でした。そして2人は、さっちゃんが小西に聞くように言っていたスピッツの「初恋クレイジー」を一緒に聞き、小西は泣き崩れます。そして桜田に想いを打ち明けるのでした。
【考察】主人公・小西の妄想?バイト先の悪口は思い込みなのか
バイト先で桜田が小西の悪口を言っているシーンは被害妄想?
小西はバイト先で桜田が彼の悪口を言っているのを聞いてしまいます。しかしこれは、彼の被害妄想です。 桜田が待ち合わせに現れなかったことで、小西「あんなに意気投合していたのに、嫌われていた」と再び心を閉ざしてしまうのです。 しかしその後、桜田から説明があったように妹の死によってそれどころではなくなってしまっただけで、それ以上の意味、つまり小西を嫌っているわけではありませんでした。
小西の妄想シーンを考察
ほかにも小西の妄想と考えられるシーンがいくつかあります。 1つ目は、水族館で告白するシーンです。これは小西が行きたかった場所で、「心の傷を打ち明けたい」という期待を映像で表現したものと思われます。そもそも関大の近くに水族館はなく、時間的にも不自然なことが妄想と考えられる理由です。 ボーリング場のシーンも、小西の「理想のデート」の妄想と考えられます。ボーリング場には2人しかいなかったためです。 また小西が急にサクラになってしまうシーンも彼の妄想です。桜田がいつもサクラを撫でていたのを見ていた小西は、サクラのように彼女に触ってほしいと思っていたのでしょう。
【ネタバレ感想】小西の生々しい日常と恋の残酷さ
『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』は、とにかく各キャラクターの長台詞が印象的です。小西に想いを打ち明けるさっちゃんのセリフ、桜田が病気で亡くなった父と事故で死んだ妹のどちらがマシだったか、また桜田が妹が事故にあった日の回想、そして桜田に想いを打ち明ける小西の長台詞と、それぞれの俳優たちの演技が光ります。 日常ではありえないほどの独白ですが、それがなぜか生々しく、観る者の心に響きます。また小西と桜田姉妹の三角関係は、誰を好きになるか選べない恋の残酷さが旨を突き刺します。
映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』キャスト・登場人物解説
小西徹役/萩原利久

主人公・小西徹(こにしとおる)は、キャンパス内でボッチなのをごまかすようにいつも日傘をさしているちょっと変わった大学生。華やかなキャンパスライフを夢見ていたものの、現実は孤独な大学生活と銭湯掃除のバイトをする日々を送っています。 徹を演じるのはドラマ『美しい彼』(2021)で一躍注目を浴び、朝ドラ『おむすび』(2024)にも出演する期待の新星・萩原利久(はぎわらりく)です。
桜田花役/河合優実

徹が惹かれる大学生・桜田花(さくらだはな)は、学生の輪を離れて1人で行動するお団子頭がトレードマークの人物。1人でも凛としている彼女の姿に、徹は惹かれることになります。 ヒロイン・花を演じるのは朝ドラ『あんぱん』(2025)への出演でますます注目度が上がるであろう河合優実(かわいゆうみ)。ドラマ『不適切にもほどがある!』(2024)で話題となった河合にとって今作は、2度目の大九監督作品となります。
さっちゃん役/伊東蒼
さっちゃんは徹がバイトをしている銭湯のバイト仲間です。 さっちゃん役は子役時代から活動する伊東蒼(いとうあおい)。最近ではドラマ『新宿野戦病院』『宙わたる教室』(ともに2024)などに出演しました。
⼭根役/黒崎煌代

山根(やまね)は徹にとって大学で唯一の友人です。 山根を演じるのは朝ドラ『ブギウギ』(2023)で俳優デビューした黒崎煌代(くろさきこうだい)。『さよなら ほやマン』(2023)では「第33回日本映画批評家大賞 新人男優賞」「第21回シネマ夢倶楽部 推薦委員特別賞」を受賞しました。
【原作】ジャルジャル・福徳秀介の小説が映画化

原作小説を手掛けたのはお笑いコンビ・ジャルジャルの福徳秀介(ふくとくしゅうすけ)です。中学時代から文章を書くことが好きだったという福徳は、ジャルジャルとして活動する傍ら関西大学文学部を卒業。2020年に本作で小説家デビューを果たしました。 彼が小説を書く原点に挙げているスピッツの楽曲も、原作通り劇中に登場します。
原作『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』ネタバレ感想
孤独だけどそうであることを受け入れきれない徹が、孤独に前向きな花に惹かれる展開が、ありきたりだけど心に刺さります。序盤はほのぼのとしたボーイミーツガールかと思いきや、徹に思いを寄せるさっちゃんがまさかの不慮の事故に……。 よりいっそうの孤独を突きつけられた徹がもがく姿はしんどいものの、人に向き合って生きることの難しさや大切さを教えてくれます。 本作の見どころは、福徳の独特な言葉の感性でしょう。作中では徹の亡き祖母の言葉、花の亡き父の言葉がとくに印象的です。 「嫌いな人が困っていたら、『ざまあみろ』と思うな。嫌いな人が困っていたら助けてあげなさい。そして、『私に助けられて、ざまあみろ』と思いなさい」は、花の父の言葉。 また、幸せを「さちせ」、好きを「このき」と読む不思議なフレーズも登場しました。これは「『幸せ』を少しでも早く伝えたくて、『好き』を少しでも時間をかけて伝えたいから」という理由。 こういったオリジナルのセンスが詰まった金言が多く登場しており、言葉の力を感じさせてくれる作品でした。
映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』ジャルジャル・福徳のセンス光るストーリー
今日見た空を好きと思えるように、その日を生きられたか。そんな問いが柔らかく胸を締め付ける切なくも温かい恋愛映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』について紹介しました。出会いの春、ぜひ出会ってほしい作品の1つです。