2017年7月6日更新

アナタはどっち派?比べてみました『名探偵ポワロ』VS『アガサ・クリスティー ミス・マープル』

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アガサ・クリスティー

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ストーリーの特徴

『名探偵ポワロ』

「いったい誰が犯人なんだろう?」と、本格的な謎解きが堪能できる緻密な構成でストーリーが進んでいきます。 ほとんどのエピソードで、事件に関わる登場人物の数が多いため、ぼんやり視ていると途中で誰がだれやらわからなくなって混乱してしまうかもしれませんが、それこそ、謎解きが大好きな方にとっての魅力となっているのかもしれません。 中には、「アンフェアかフェアか」と、論争が巻き起こるほどの作品もあったようですが、ともかくは、犯人探しがとても難解であるという点こそ、大きな特徴と言えそうです。 時代設定としては1930年頃~のイギリスが舞台となっているそうですが、古典的で格式を重んじたイメージのドラマセットと、登場人物のファッションなどへのこだわりも統一され、いつ、どのエピソードを視ても違和感なくストーリーに入り込めます。

『アガサ・クリスティー ミス・マープル』

「ポワロ」のように探偵を職業としているわけではない、静かな村に暮らす1人の老婦人ミス・マープルを主人公としてストーリーが展開していきます。(推理力と洞察力で数々の難事件を解決に導くわけですから、結果的に探偵と同じではあるのですが。) 探偵業ではないため、事件解決の依頼を受けるというより、知り得た事件に自分の意思で関わっていく、あるいは、たまたま出かけた先で事件に遭遇する、といったことをきっかけとして謎解きが始まります。 主人公のキャラクター設定もあって、華々しさを感じづらく、ストーリー全体としてやや地味な印象を受けるかもしれませんが、『名探偵ポワロ』同様に、原作者のアガサ・クリスティー独特の、細部にまでこだわる緻密な構成で、本格的な謎解き推理ドラマとして、十分に見ごたえのあるシリーズ作品となっています。

キャラクターと推理法

『名探偵ポワロ』

小柄でちょっと小太りな紳士、卵型の頭とカメモを逆さにしたような口髭、と、およそ名探偵とは見えそうにない風貌。ところが、本人は、自ら世界一の名探偵と公言してはばからない自信家です。 何事もきちんとしていないと気が済まない“超”が付くほどの几帳面な性格が推理にも活かされ、事件関係者とのやりとりの中で、その心理や行動を見落とすことなく冷静に分析しながら、秩序立てて推理していくスタイルです。 また、女性の心理分析に長けていることを感じさせる場面が、多くのエピソード内で見ることができます。 潔癖症、自信家、完璧主義と、高慢と感じられそうな設定ですが、それ故に時折見せる行動がどこか滑稽で、憎めないキャラクターとして、多くのミステリーファンを魅了してきています。

『アガサ・クリスティー ミス・マープル』

田舎の1人暮らしの老婦人が、安楽椅子で編み物をしながらひとり静かに推理を働かせる、といったイメージが広まっているかもしれませんが、実は好奇心が旺盛、他者のと交流にも積極的で、とても活動的であることがドラマを見るとすぐにわかります。 推理方法の特徴としては、関係者から得た情報を、過去に自分自身が積み重ねてきた経験や出来事に当てはめて考えながら謎を解いていくことにあります。 そのため、アガサ・クリスティー作品の中でも、特に犯行動機などの心理描写に重きを置いた構成となっていて、登場人物の人間性に着目して謎を解いていくエピソードが多いと言えます。 「ポワロ」とは違って、とても謙虚な「マープル」なので、最初は過小評価していた警察関係者も、彼女の実力が発揮されていくにつれて、その提案や協力を断ることができなくなり、ついには、少し煙たがられるほど知れ渡ることとなります。 外見的特徴と、隠された実力とのギャップが、彼女の最大の魅力となっていると言えそうです。

その他の主な登場人物(脇役)

『名探偵ポワロ』

「モナミ(フランス語で私の友)」と、親愛の情を込めて呼ぶパートナー「ヘイスティングス大尉」は、よくある“探偵の助手”的な役割とはちょっと違った印象です。時としてポワロをイラつかせる鈍感さと、正義感先行の行動力、そして何よりも、温厚でやさしい人柄が、高圧的と取られがちなポワロとのバランスの取れた絶妙な関係性で、視聴者を安心させてくれます。 他に、実直ながらやや短絡的な、ロンドン警視庁の「ジャップ警部」、ポワロに負けず劣らず几帳面な、秘書の「ミス・レモン」と、個性的な脇役陣も、長期間に渡って圧倒的な人気を保ち続けるためのアクセントとして、欠くことのできない魅力を発揮しています。

『アガサ・クリスティー ミス・マープル』

マープルが暮らしている村が拠点となっているので、何回か登場する人物もいますが、シリーズ全体の構成そのものに、大きく関わってくることは少ないです。同じ人物でありながら、エピソードによってキャスティングが変わったりすることからも、主役一点集中型と表現したくなるような構成です。 それだけに、『名探偵ポワロ』と比べると、ドラマとしてやや単調な印象を持たれる方もいるかもしれません。

放送話数

『名探偵ポワロ』

全70話 (シーズン1:10話/シーズン2:10話/シーズン3:10話/シーズン4:3話/シーズン5:8話/シーズン6:4話/シーズン7:2話/シーズン8:2話/シーズン9:4話/シーズン10:4話/シーズン11:4話/シーズン12:4話/シーズン13:5話) 日本での放送は、1990年1月(第1話の初回放送)~2014年10月(最終話の初回放送)と、実に20年を超えて放送されてきているのです。放送日は不定期だったという点を考慮しても、海外ドラマとしては記録的ではないかと思います。

『アガサ・クリスティー ミス・マープル』

全23話 (シーズン1:4話/シーズン2:4話/シーズン3:4話/シーズン4:4話/シーズン5:4話/シーズン6:3話) 『名探偵ポワロ』と比べるとどうしても見劣りしてしまいますが、堂々たる数字です。テレビ用に、シリーズ外の作品を加えたり、原作の重要な部分を変更するなど、議論が起こったこともあるようですが、それでも、大人気シリーズであることに間違いありません。

注目度

視聴率で比べるのが理想だったのですが、残念ながら、両作品を比較できるような視聴率データを見つけることができませんでした。 そこで、「Amazon」での、イギリスのテレビドラマDVDのランキング(2016年4月22日現在)と、ミステリー専門チャンネル「AXN Mystery」が公開している、直近(2016年4月15日~2016年4月21日)のアクセスデータで比べてみることにします。

「Amazon」の、イギリスのテレビドラマDVDの売れ筋ランキング(2016年4月22日現在)

『名探偵ポワロ 全巻DVD-SET』第13位 『アガサクリスティーのミス・マープル DVD-BOX 2』第62位 それぞれに収録されているエピソードの数が違うなど、きちんとした比較とは言い難いかもしれませんが、結果としては、マープル作品を大きく引き離して、ポワロ作品が上位となっていました。

「AXN Mystery」が公開しているアクセスデータから ※2016年4月15日~2016年4月21日の期間内で、「AXN Mystery」ウェブサイトでアクセスが多かったページのランキングです。

『名探偵ポワロ』第7位 『アガサクリスティー ミス・マープル』第18位 集計期間が1週間なので、放送のタイミングによるところも大きいと思いますが、こちらも上位は、『名探偵ポワロ』という結果でした。

結果

マープルファンの方はちょっと不満があるかもしれませんが、こうして比べてみると、ポワロシリーズの方がやや好成績と言えそうです。最大の要因としては、エピソードの数(放送話数)によるところが大きいと思います。再放送をするときも長期間に渡るため、必然的に注目度も高くなるでしょう。 とは言え、どちらも同じ作家による、本格的ミステリードラマであることに違いはなく、いつ視てもそれぞれに楽しめる要素があります。 それにしても、1人の作家が、個性の異なる二人の探偵とストーリーを創造し、その両者が競うように世界的な人気を保ち続けているわけですから驚くべきことです。 今でも頻繁に再放送されているので、次に視るときには、それぞれの違いに注目しながらご覧になってみるのも面白いかもしれません。