2017年7月6日更新

『アメリカン・クライム・ストーリー』の裏話!O・J・シンプソン事件って?

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アメリカン・クライム・ストーリー

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社会派ドラマ『アメリカン・クライム・ストーリー』

1990年代に全米を揺るがしたあのO・J・シンプソン事件がドラマに!日本でも9月から配信が始まった『アメリカン・クライム・ストーリー』は、実際の有名事件を扱いながら現代の社会に疑問を突きつける名作として話題になっています。 アメリカでは知らない人のいないO・J・シンプソン事件。日本では少々馴染みが薄いかもしれません。この記事では事件について詳しく紹介します。背景を知ればドラマがもっと楽しめること間違いなしです。 また、事件の詳細だけでなく、ドラマの裏話も混ぜてご紹介します!

O・J・シンプソン事件の概要

1994年6月13日、アメリカの元プロフットボール選手のO・J・シンプソンの元妻ニコールとその友人の血だらけの遺体が発見されました。生前ニコールはシンプソンによるストーカー被害に悩まされていると警察に通報したこともあったため、警察はすぐに彼を容疑者と考え、逮捕状を出します。 令状が出された時、シンプソンはパトカーの追跡を逃れようとしたため、カーチェイス状態に。その模様はアメリカのテレビで生中継され、全国民が釘付けになりました。 その後裁判が行われるにあたり、彼は完全無罪を主張。「ドリームチーム」とも呼ばれるほどの敏腕弁護士ばかりを全国から集めて刑事裁判に臨んだ結果、無罪であることが言い渡されました。しかしその後の民事裁判では有罪が言い渡され、シンプソンは賠償金を支払うこととなります。

全米が注目した大事件だった

残念なことではありますが、殺人事件は毎日のように起こるもの。その中でこの事件は、容疑者と疑われたのが元プロフットボール選手、そして俳優として有名な人物だったために、全米の注目を集めることとなりました。 O・J・シンプソン事件は、300日以上も続けてアメリカの大手新聞「ロサンゼルス・タイムス」の第1面を飾りました。裁判の前後の様子も24時間ずっとテレビで放映されたため、この事件がリアリティ番組の祖であると考える人もいます。

生中継されたカーチェイス

事件初期の最も有名な出来事が、シンプソンの運転する車とパトカーの2時間にわたる追跡劇。映画さながらのその模様は全国に生中継され、人々は釘付けに。20台のパトカーと20機のヘリコプターが動員された大規模なカーチェイスとなりました。 その際に「Go! O.J.!」と彼を応援する人が続出。また追跡劇は夕食の時間と重なりましたが、食事のためにテレビの前を離れることを嫌った人々により、宅配ピザの注文数が激増しました。その日のドミノピザの売り上げは驚くほど高かったそうです。 その際は逃げ切ったシンプソンですが、カーチェイスの2時間後、弁護士の立会いのもとで逮捕されました。その時逃走に使った車「フォード・ブロンコ」の中からは、何千ドルもの現金、メイク用品、つけひげなどが見つかったそうです。

凄腕弁護団「ドリームチーム」

完全無罪を主張したシンプソンは、当時全米一の弁護士と呼ばれたロバート・シャピーロ、マイケル・ジャクソン裁判を担当したジョニー・コクラン、シンプソンの友人でキム・カーダシアンの父ロバート・カーダシアンなど、「ドリームチーム」と呼ばれるほどの有能な弁護士を集めて裁判に挑みました。 弁護にかかった費用は約5億円とも言われており、その規模が伺えます。 中には私的な友人であるカーダシアンが、有罪の重要な証拠を破壊したのでは、と考える人も。またカーダシアン自身は一貫してシンプソンの側につきましたが、彼の無罪を信じる心が揺らぐこともあった、と語っています。

ドラマでのドリームチームは?

ドラマ『アメリカン・クライム・ストーリー』ではもちろんこのドリームチームに注目しましょう!ロバート・シャピーロを演じるのはなんと名優ジョン・トラボルタ。そしてロバート・カーダシアン役は『フレンズ』のロス役でおなじみのデヴィッド・シュウィマーが演じています。 トラボルタはシャピーロを演じることは特に難しくなかったようです。
法律用語にはもともと詳しかったんだ。ここ40年で、弁護士にはたくさんにお世話になったからね。
とのこと。 一方でシュウィマーはカーダシアンの元妻クリス・ジェンナーと会ってリサーチをしたそうです。
彼女はとてもオープンにロバートのことを教えてくれた。彼女から学んだ1番大きなことは、彼の信仰心の厚さだよ。このことは彼の性格と、彼が下した決定を理解するのにとても役立った。

検察側、弁護側それぞれの証拠は?

この事件は、検察側、弁護側ともに有力な証拠が多数あったことから、非常に謎の多い事件となりました。それぞれの側が使った主な証拠をまとめると、以下のようになります。

〈検察側・有罪〉

・シンプソンが離婚後ニコールにつきまとい、脅迫までしていた。 ・被害者の血がついた手袋が片方は事件現場で、もう片方がシンプソンの自宅で発見された。 ・DNA鑑定の結果、現場の血痕等がシンプソンのものと一致した。

〈弁護側・無罪〉

・シンプソンにはアリバイがある。 ・凶器とされたナイフが発見されていない。 ・シンプソンから採取した血液の管理が杜撰であり、DNA鑑定の結果の信頼性が薄い。 ・手袋を発見した警官は黒人差別主義者である。 ・また、証拠の手袋はシンプソンには小さすぎて入らない。

この事件でDNA鑑定が全米で一般化した

DNA鑑定の技術が犯罪捜査に初めて用いられたのは1986年の事で、当時はまだ未発達の最新技術でした。この事件にして、殺害現場の血痕がDNA鑑定の結果シンプソンのものと一致した、ということが検察の大きな主張となりました。 一方で弁護側は警察の管理の杜撰さを指摘し、DNA鑑定が正しく行われていないと主張しました。これが受け入れられたことが、無罪決定に大きく影響しています。 真実がどうであれ、このような大きな事件でDNA鑑定が争点になったことは、DNA鑑定の知名度を大きく上げることになりました。後の「イノセンス・プロジェクト」によって、冤罪で投獄されていた多くの人がDNA鑑定で無罪を証明して自由を取り戻しています。

事件後はどうなった?

事件に関わった多くの人が、後に事件に関する自伝を出版しています。シンプソン自身もその一人。「もしも私がやっていたら」というショッキングなタイトル(と内容)の自伝は、一度は発禁になりながらも飛ぶように売れました。 事件を通して有名になった人物もいます。その一人が俳優のケイトー・ケイリンです。事件発生当日にシンプソンの自宅に滞在していたケイリンは、アリバイを崩す重要な発言をしたことで、一時セレブリティとして祭り上げられました。 当の本人はというと、2007年に武装強盗事件を起こして逮捕され、懲役刑に服しています。仮釈放される日は遠そうです。

ドラマのテーマは「シンプソンはやったのか?やっていないのか?」ではない

一応は無罪が言い渡された彼ですが、今でも真相は謎のまま。真犯人もわかりません。しかし、ドラマ『アメリカン・クライム・ストーリー』の焦点は「シンプソンがやったか否か」ではないと製作者は語ります。 ドラマのエピソード1で、この事件で有罪の証拠が多数あるにもかかわらず、無罪が確定した事件であることが述べられます。そして残りのエピソードで、ゆっくりと証拠一つ一つが覆され、いかにしてシンプソンが無罪を勝ち取っていったかが丁寧に描かれていくのです。 そう、ドラマのメインテーマは「いかにして彼は無罪となったのか」と言うこと。 脚本家のラリー・カラシェフスキは以下のように述べています。
これは確かなことを覆す、ことについての話なんだ。検察側の持っていた武器が、少しずつ奪われていくのが見られるだろう。

アメリカの社会問題に物申す!

『アメリカン・クライム・ストーリー』は、近年増加している「リアルな」犯罪ドラマの一つですが、このようなドラマや映画の製作が増えている背景に、アメリカの裁判や警察の制度に対する疑問の声が上がっていることがあります。 プロデューサーのライアン・マーフィーによると、
偉大な犯罪モノというのは、犯罪そのものがメインテーマなのではない。社会における問題や裁判制度の不具合を描いているんだ。
とのこと。原作本の執筆者もまた
これは、アメリカ中の人々を取り囲むすべてのことに関する物語なんだ。これは人種の話であり、セックス、暴力、スポーツ、ハリウッドについての物語でもある。
と述べています。

20年前の人種問題は今も健在

事件が起きた1994年当時、被害者が白人でシンプソンが黒人であったことから、人種問題も大きな争点になりました。タイム誌が実際よりも肌の色を黒く加工した彼の写真を使用したり、陪審員の人種比率が問題になったりと、様々な観点から人種問題が指摘されたのです。 事件はもう20年以上も前のことですが、その人種問題の観点は今でも大いに当てはまると、ドラマの制作者は語ります。エピソード1は1992年のロス暴動(白人の警察官が黒人のタクシー運転手に暴行を加えたことをきっかけに起こった暴動)から始まっています。
それから20年経って、今はファーガソン(ミズーリ州ファーガソンで起こった白人警官による黒人少年射殺事件)が問題になっている。警察による暴力がまた浮上してきたんだ。この対話に終わりはない。肌の色、そして経済状況が違えば、裁判制度や警察制度をどう感じるかも大きく変わってくるのが現実だ。
プロデューサーの一人、ブラッド・シンプソンはこう語りました。

キューバ・グッディング・ジュニアはO・J・シンプソンに会ったことがない

難しい役どころとなる主人公を演じるのは、キューバ・グッディング・ジュニアです。『星の王子 ニューヨークへ行く』で映画デビューしたグッディングは、実際にシンプソンに会ったことも、会うつもりもないと述べています。
投獄されて抜け殻のようになっている今の状態の彼に会うつもりはない。僕にも刑務所に入った友人がいるが、その経験は本当に人の精神を砕くようだ。もし現在のO・Jを演じるのであれば、もちろん毎日彼と会話をするよ。でも、僕が演じるのは昔のO・Jなんだ。カリスマ的で、派手な生活を送る映画スターの彼さ。

シンプソン役はグッディング史上一の難役?

キューバ・グッディング・ジュニアは長いキャリアを誇り、アカデミー助演男優賞を獲得したこともある名優ですが、シンプソンを演じるのは決して簡単ではなかったと述べています。 その理由の一つは、彼が本当は有罪なのか無罪なのかを考えてはならないことにありました。役者であるグッディング自身は、白紙状態のシンプソンを提示し、監督そして視聴者がより自由に彼について考えられるようにするべきだと考えているのです。 グッディングは以下のように語ります。
この役は今までで一番難しい役だった…精神的にも身体的にもキツイ半年だった。毎週毎週、新しい脚本をもらう度に新しい情報を得て、自分の考えがころっと変わってしまう。

『アメリカン・クライム・ストーリー』の撮影に使われた場所のいくつかは本物!

ドラマ『アメリカン・クライム・ストーリー』の撮影に使われた場所のいくつかは、なんと実際の場所で撮影されているそうです!例えば、シンプソンが自殺すると脅すシーン。これは実際にキム・カーダシアンの子供の頃の寝室で撮影されました。ロバート・カーダシアン役のシュウィマーは恐ろしい体験だった、と語ります。 今でも有名人のカーダシアン一家は、この事件においても重要な存在。特に、刑事事件を扱う弁護士でないながらもシンプソンの面倒を見るためだけに弁護団に加わったロバート・シンプソンは、鍵となる人物です。 現在のカーダシアン・ファミリーもドラマの中に少し登場しますが、その役は最小限にとどまっています。